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第百十三話「あなたは……だれ?(後編)」


ウルトラマンゼロの使い魔
第百十三話「あなたは……だれ?(後編)」
集団宇宙人フック星人
地底怪獣テレスドン
彗星怪獣再生ドラコ 登場



 深夜、ガリア南部の廃坑の近くの山地にて……。
「キャア――――!」
 二つの月の明かりに照らされながら、山と山の間に一体の巨大怪獣が立った。五本角を持った
シルエットの怪獣は、月に向かって己の存在を誇示するかのように甲高い咆哮を発する。
 するとその声によってか、地面に伏して寝息を立てていた別の怪獣がカッ! とまぶたを開き、
闇夜に鋭い眼光を光らせておもむろに起き上がった。
「ギャアオオオオオオウ! オオオオウ!」
 丸みを帯びたシルエットの怪獣が身を起こすと、五本角の怪獣はそちらに振り向き、牙を
剥き出しにして威嚇する。
「キャア――――!」
「ギャアオオオオオオウ!」
 怪獣たちは闘争本能の赴くままに激突、組み合って喧嘩を始めた。互いに一歩も譲らない
争いを展開する……。
 だがすぐに、人間の耳には聞こえない周波数の音波がどこからか発せられた。その途端に、
二体の怪獣はピタリと動きを止めた。
 そして何事もなかったかのように、二体ともその場にうずくまって暗闇の中に紛れ込んだ……。

 朝。タバサとグレンの二人は、朝食を済ますと早速コボルド退治のために、コボルドが
巣食っているという廃坑まで移動した。人の足なら一時間かかる場所でも、シルフィードに
乗れば十分も掛からなかった。
 だがタバサとシルフィードはどうも昨日から機嫌がよろしくなさそうだった。その理由は、
アンブラン村での食事。村民の全体的な嗜好なのかどうかは知らないが、、村の料理はどこも
かしこも、間違いで老人向けを出されたのかと思うくらいに薄味なのだった。食事は人の元気の源。
二人とも食にはうるさい性質なので、味つけが口に合わないのには大分辟易としたようだ。
 それはともかく、炭鉱の入り口を見つけたタバサたちは、見張りのコボルドに見つからないように
しながら地上に降り、岩の陰に身を隠した。
 岩からグレンが、コボルドに気づかれないよう注意しながらかすかに顔を出し、見張りの
数を確認する。
「見張りに立ってんのは四匹。他に気配はねぇな。外から見えねぇとこに隠れてるなんて
こともねぇぜ、間違いない」
 それを聞いてタバサは安心した。コボルドは用心深い性質の亜人。自分たちの存在を廃坑の
奥部に潜んでいるだろう群れの本隊に知らされてしまったら、この上なくやりづらくなってしまう。
 ロドバルドからの情報によると、コボルドの群れは全部で三十匹程度らしい。単純な計算ならば、
タバサが出せるウィンディ・アイシクルで事が足りる数だが、もちろん戦いとはそんな簡単なものでは
ない。廃坑の中は敵に地の利があるし、群れのボスはまず間違いなく先住魔法を操るコボルド・シャーマン
だろう。となれば、四方八方から土と石の攻撃を受けることになる。当然そんなことは避けるべき。
 そこで立てた作戦は、炭鉱の入り口で火を起こし、煙で中のコボルドたちを燻り出すというもの。
日の光の下に引きずり出してしまえばこっちのものだ。シャーマンも、事前に廃坑の外の精霊と
契約しているほど用意周到でもあるまい。群れのボスさえ倒してしまえば、後は散り散りになって
逃げていくだろう。
 タバサたちは早速、作戦を開始した。まずは邪魔な見張りを片づける。見張りの隙を見つけると、
タバサとグレンは二手に分かれて、見つからないように物陰を進みながら、入り口の左右に陣取った。
 そして示し合わせて、同時に飛び出してコボルドたちに襲いかかった!
「ウグルルッ!?」
 まずは、タバサの速攻の氷の槍が三匹の喉を貫いて、一瞬にして絶命させた。残る一体は
慌てて廃坑へと逃げようと走ったが、顔面にグレンの回し蹴りが決まり、ぶっ飛ばされて
廃坑から引き離された。
 直後にそのコボルドにも氷の槍が命中し、たちまちの内に見張りは全滅した。
「これでオーケーだな。後はこの廃坑の中にいる連中をあぶり出すだけか」
 つぶやくグレン。タバサはすぐに火を起こすために準備に取りかかろうとする……。
 しかしその瞬間に、グレンに石のつぶてが弾丸のように襲いかかってきた!
「うおッ!?」
 戦士の勘によってギリギリのところで攻撃を察知し、回避したグレン。タバサは突然のことに
目を剥いて、石つぶてが飛んできた方向へ振り返るが……直後に足元の地面が泥のようにぬかるみ、
二人の下半身が土の中に埋まってしまう。
「!!」
「し、しまった!」
 即座に脱しようとしたが、もう遅かった。土は再び固まり、タバサもグレンも半ば埋められた
形になった。これでは身動きを取ることが出来ない!
「ククク、愚かな毛なしザルどもめ。我らを嵌めようとしていたようだが、罠に嵌まったのは
貴様らの方なのだよ」
 そんな言葉とともに、周りの草むらの陰より、一匹のコボルドが現れた。その個体は普通の
ものよりひと回りほど大きく、鳥の羽根や獣の骨で出来た仮面を被り、獣の血で黒く染め上げられた
ローブを身に纏っていた。
 間違いない、コボルド・シャーマンである。しかし最も重要な群れのボスが、こんな場所に
いることにタバサは心底驚かされた。
 どうやら自分たちの強襲を事前に察知して、見張りを囮にした罠を仕掛けていたようだ。
だが、何故自分たちのことを知ることが出来た? コボルドは夜行性、斥候も夜のアンブラン村に
しか来られないはずだ。自分たちは夜間には一歩も外に出なかったので、情報を得ることは
出来なかったはず。それなのに……。
「どうして……?」
 疑問が口から出ると、コボルド・シャーマンは意気揚々と語り始めた。
「ククク、貴様らの肝を我らの神に捧げる前に、あの世への土産話として教えてやろう。
貴様らのことは、この身に降臨された我らの神が教えて下さったのだ」
「神……?」
「そうとも。我は二十年前にこの地の人間の族長が持つ宝、巨大な“土精魂”を奪い取ろうと
して、失敗をした」
 “土精魂”というのは、つまり土石のことだ。コボルドは、やはり『アンブランの星』を
狙っていたようだ。
「二十年掛けて壊滅した群れを大きくして、今度こそ宝を手に入れようとしていたある日、
神は降臨され、この身に宿ったのだ!」
 誇らしげに述べたコボルドの身体に一瞬、コボルトとは違う怪人の影が被さった。それを
目にしたグレンがあっと驚く。
「あいつには、宇宙人が取り憑いてやがるぜ!」
「!」
 タバサは驚きとともに納得した。そして己の迂闊さを後悔した。思えば、コボルドがわざわざ
村を脅迫した時点から何かおかしいことは感じていた。それなのに、そこからコボルド・シャーマンが
いるということにしか考えが至らなかった。
 もっと深く思慮していれば、更に何らかの裏があることには思い至れただろうに……。
先住魔法の使い手を攻略する手段にばかり気が向いていた己の考えの甘さを恥じるタバサだった。
 そしてコボルド・シャーマンに取り憑いている宇宙人は、フック星人。ゼロに倒されたものの
生き残りだった。流浪の末にコボルドの群れに出くわし、獣人に似た顔面から神と誤解された。
そしてそれをいいことに、コボルドを己の手足として利用しているのだ。グレンが先ほど、
シャーマンの存在に気づけなかったのも、フック星人の力に違いあるまい。
「けど、何で宇宙人がこんな田舎の小さな村を狙うんだ!? アンブラン村にゃ何があるってんだ!」
 今度はグレンが問う番だった。それらしい理由となる『アンブランの星』は、ロドバルドの
言葉を信じるならもうないのだという。
 それにコボルドはクククと笑いながら答えた。
「神は“土精魂”が既にないことも見抜かれた。そしてその“土精魂”が、この土地の人間の
群れに変わっていることも!」
「な、何……!?」
 グレンとタバサは、コボルドが一瞬何を言っているのか理解できなかった。
「神は“土精魂”によって作られた人間をご所望なのだ。……そろそろよかろう。貴様らの肝を
いただくぞ!」
 コボルドが手に持っている節くれだった杖をこちらに向ける。魔法で息の根を止めるつもりだ。
 それなのにタバサたちは、文字通り手も足も出せない状態! シルフィードを呼ぶか? 
いや、自分たちの道連れになるだけだ。しかしどうすれば……!
 結局自分にはどうしようもないとタバサの思考が行き着くのに時間は掛からなかった。
「くッ、やむを得ねぇッ!」
 彼女の代わりに、グレンが動いた。彼は拘束された状態のまま変身、巨大化して土の中より脱する!
「何ッ! ぐわあああぁぁぁぁぁぁぁ――――――――ッ!」
 コボルド・シャーマンは一瞬にして、グレンファイヤーの拳によって叩き潰された。
グレンファイヤーは同時にタバサを土の中から掘り出し、地面にそっと下ろした。
 いささか反則気味ではあるが、コボルドの群れの長は倒すことが出来た。が、しかし……。
「ギャアオオオオオオウ! オオオオウ!」
「!」
 次の瞬間に、山の間から怪獣が出現した! シャープな頭部に蛇腹状の四肢、地底怪獣テレスドンだ!
『宇宙人が俺たちに対抗するために用意してたのか!』
 グレンファイヤーはすぐさまテレスドンに向かって戦闘の構えを取った。
「ギャアオオオオオオウ! オオオオウ!」
 テレスドンは口を開き、溶岩熱線を吐いてくる。だがグレンファイヤーはそれを手の甲で打ち払った。
『へッ、この程度の熱攻撃なんざ……!』
「キャア――――!」
 勇んだがその瞬間に、背後から更なる怪獣が出現した。
 体表にひび割れたかのような網目状の模様がある、彗星怪獣ドラコ! しかも飛行能力の要である
羽がない代わりに、手が五本指となって格闘戦に特化したタイプのものであった。
『ちッ! もう一匹いやがったか!』
「キャア――――!」
 振り返ったグレンファイヤーはドラコとがっぷりと組み合う。パワーならチームでも随一の
グレンファイヤーであるが、相手も格闘戦特化。グレンファイヤーと対等に渡り合うほどの
パワーを見せつける。
「ギャアオオオオオオウ! オオオオウ!」
『でりゃッ!』
 そこにテレスドンがグレンファイヤーに背後から襲いかかるが、後ろ蹴りで撃退された。
更にグレンファイヤーは腕の筋肉を盛り上がらせて、ドラコを持ち上げて投げ飛ばす。
「キャア――――!」
『うらぁぁぁッ! どんなもんだぁッ!』
 二大怪獣相手にも引けを取らないグレンファイヤーだが、その時テレスドンが地を蹴って跳ぶ。
「ギャアオオオオオオウ!」
 そして高速できりもみ回転し、グレンファイヤーに突進! 全身がドリルのようであった!
『うおあぁッ!?』
 この強烈な一撃はさしものグレンファイヤーも耐えられず、膝を突く。テレスドンはその
回転のまま地中に潜って姿を消した。
「キャア――――!」
 片膝を突いたグレンファイヤーにドラコが殴り掛かり、更にダメージを与える。
『ぐッ!』
 張り手を食らわせてドラコを突き飛ばしたが、立ち上がった時に足元からテレスドンの首が
出てきて、足をすくわれてしまう。
『おわぁッ!』
 激しく倒れ込むグレンファイヤー。そこをドラコに狙われ、ゲシゲシと蹴りつけられた。
『くッ、このぉぉッ……!』
 テレスドンが再び地上に這い出してきて、暴行に加わる。グレンファイヤーが苦しめられる一方で、
タバサの方にもある事態が発生した。
「キャア―――ッ!」
「!!」
 グレンファイヤーに潰されたコボルド・シャーマンであったが、その爆散跡からフック星人が
出現したのだ! 潰される直前にコボルドの身体を捨てて回避していたのだ。
 フック星人はそのまま背を向けて、山地の奥深くへと逃げていこうとする。このまま逃がしては、
またどこかで大事件を起こすかもしれない。だがグレンファイヤーは怪獣たちに抑えられていて、
フック星人にまで手が回らない。
 そこでタバサは今度こそシルフィードを呼び、その背に飛び乗ってフック星人を追いかけ始めた。
 一方のグレンファイヤーは、二体の怪獣の挟撃から脱することには成功したものの、フック星人に
コントロールされることで隙のない連携を見せる怪獣たちにてこずっていることには変わりなかった。
『どうにかしてどっちか片方を先に倒さねぇと苦しいまんまだな……』
「ギャアオオオオオオウ! オオオオウ!」
 テレスドンが口から熱線を吐いてくる。グレンファイヤーは腕でガード。
『だからこんなもんは……そうだッ!』
 この時、グレンファイヤーは閃いた。そしてテレスドンの顔面に小さな火球を飛ばして炸裂させる。
「ギャアオオオオオオウ! オオオオウ!」
『へへッ、テメーの火炎なんざそんぐらいの弱火と同じだぜ! もっと力を込めたのを俺に当ててみな!』
 眉間に食らってひるんだテレスドンを挑発する。テレスドンはたちまち憤怒し、一層火力を
高めた熱線を吐き始めた。
「ギャアオオオオオオウ! オオオオウ!」
 それをかわしながら、あえて怪獣たちの間へと向かっていくグレンファイヤー。
『はッ、こっちだよ!』
 そしてテレスドンの攻撃のタイミングを見計らって、ドラコの前を通り抜けていった。
 グレンファイヤーに殴りかかろうとしたドラコだが、そこに流れ弾となった熱線が命中する! 
これがグレンファイヤーの狙いであった。
「キャア――――!?」
「ギャアオオオオオオウ!」
 不意打ちを食らったドラコはたちまちの内に火だるまになり、そのまま爆散した。同士討ちを
させられたテレスドンは思わず頭を抱える。
『よっしゃあッ! 上手いこと行ったぜ! さぁーてここからが勝負だ! 覚悟しなッ!』
「ギャアオオオオオオウ! オオオオウ!」
 戦況を切り返して調子を戻したグレンファイヤーに、テレスドンが再び回転アタックを仕掛ける。
が、グレンファイヤーはそれを真正面から受け止めた。
『その技は見切ったぜぇぇぇッ!』
 テレスドンの身体をがっしり抱え込んで、回転を停止させると、高く持ち上げてそのまま
地面に叩き落とした。
『どっせぇッ!』
「ギャアオオオオオオウ! オオオオウ!」
 力の差が歴然であることを感じ取ったか、テレスドンは起き上がらずに地面に穴を掘り、
高速で地中へと逃げていく。
『逃がすかってんだぁッ!』
 テレスドンの潜行速度は非常に速く、最早止められなかったが、グレンファイヤーは代わりの
ように攻撃を放つ。
『グレンスパークッ!』
 両腕から巨大火炎弾を発射。しかし水平に飛んでいく火炎弾で、地中に潜っていくテレスドンを
どうやって倒すのか。
 と思いきや、火炎弾は穴の上に来ると急停止。そして軌道を九十度下に曲げ、穴の中に
すっぽりと入っていった。
 その数秒後に、盛大な爆炎が穴から噴き上がった。地中でテレスドンが火炎弾を食らい、
大爆発した証拠だった。
 怪獣は倒したが、肝心の黒幕のフック星人がまだ生き残っている。そちらはタバサが追跡中で
あるが、フック星人は光線銃を乱射して彼女を迎撃しようとしていた。タバサを乗せるシルフィードは
巧みに飛び回り、光線をかわすものの、このままではこちらから攻撃できない。
 するとタバサはシルフィードにそっと何かを耳打ちした。シルフィードはうなずくと、
隙を見てフック星人の背後へと素早く回り込む。
 即座に反応して振り返るフック星人だが……シルフィードの背にタバサがいない!
「キャア―――ッ!?」
 ハッとして向き直ると、地面の上に下りていたタバサがこちらに杖を向けていた。背後に
回り込むと見せかけて、途中で飛び降りてシルフィードだけを旋回させたのだ。
 そして放たれるウィンディ・アイシクル。氷の矢はフック星人に引き金を引くことを許さずに、
どてっ腹を貫通した。
 ドサリと倒れ込んだフック星人が消滅する。これでコボルドを隠れ蓑にした侵略宇宙人の
生き残りの目論見は完全にくじかれたのだった。

 その後、生き残りのコボルドは頭が討たれたことで、アンブラン村から散り散りになって
逃げていった。一体二体だけならそこまで恐ろしい亜人でもない。タバサたちは追撃せずに、
そのまま見逃した。
 これで依頼は達成したことになるが……それとは別に、どうしても解き明かしておきたい
謎がある。コボルドが、アンブラン村の住民が土石によって作られたものと語ったことだ。
 その点について、グレンは語った。
「元から奇妙なとこはあった。村の人間からは誰からも、生々しい感情が感じられねぇ。
ユルバンを除けばな」
 同意するタバサ。昔の雪辱を晴らそうと必死に懇願してきたユルバン以外の人間は、コボルドの
脅迫に震える様子もなければ、事件解決後も喜びに沸く姿もなかった。全体的に、感情の発露が
一律なのだ。
 料理の味つけも、村全体で同じであることに気がついた。どこへ行っても『違い』がない村……。
ここに住む『人間』は、アンドロイドか何かのようだった。
 その疑問を、事件解決の報告とともにロドバルドにぶつけた時に、彼女から回答が得られた。
 それは、思わず身震いしたくなるような内容だった。
「二十年前のことです。このアンブラン村はご存じのとおり、コボルドの群れに襲われました。
その際……村は全滅したのです」
 ユルバンは二十年前に、コボルドはロドバルドが撃退したと語った。コボルド・シャーマンは
二十年前に『アンブランの星』を奪うことに失敗したと話した。だが、その話はそれで終わりでは
なかったのだ。
 ロドバルドの魔法によってコボルドが追い払われたのは確かだが、その時には彼女とユルバンを
除いて、村民は皆殺しにされていた。そしてロドバルドも致命傷を負っていた。生き残れるのは、
ユルバンのみ。だが実直な戦士のユルバンが、自分だけが生き残った事実を抱えて生きていけるだろうか。
 そのため、ロドバルドは何十年も仕えてきた老戦士のために、『アンブランの星』を用いて
村の健在を偽装することにした。傷を押して村人そっくり、傍目からは人間と何も変わらない
ほどに精巧なガーゴイルを大量に制作し、最後には自分もガーゴイルに置き換えた……。
 村全体で料理の味が同じなのは、ガーゴイルは食事の必要がないからだ。その必要があるのは、
たった一人の人間のユルバンのみ。だから村の全ての機能は、ユルバンを中心に作られる。
 フック星人が村人の身柄を要求したのも、ガーゴイルの技術を利用するために違いあるまい。
人間に限りなく近い操り人形……悪用しようと思えばいくらでも出来る。こんな僻地で、おぞましい
たくらみが行われていたものだ。
 これらの事実を知った時、グレンたちはすっかり青ざめていた。ロドバルドの姿のガーゴイルは、
最後にこう述べた。
「私たちは、ユルバンが寿命を迎えるとともに、活動を止めて土に還るようになっています。
その時が来るまで、この村の真実は誰にも口外しないで下さい」

 アンブラン村を後にしたタバサ、シルフィード、グレンの三人は、帰路の途中で村のある
方角へ振り返った。
 タバサたちはロドバルドの頼みに応じた。もちろんユルバンにも、何も話していない。
真実を教えるには、彼は歳を取り過ぎている。せめて最期の瞬間まで、『村を守り続けた』
という夢を見させてやるべきだろう。
 グレンの見立てでは、ユルバンはもう余命がいくばくもない。数年後には、ガリアの片隅に
ある日突然住人が一人残らず消えた村があるという怪談が語り継がれるようになっているかも
しれない。
「あのユルバンさん、幸せなのかしらね。きゅい」
 シルフィードはふとそんなことをつぶやいた。
「あの村は、ユルバンさん一人のために存在しているのよね。でも……全部が偽もの。本物じゃない。
それって、幸せなのかしら」
 タバサは何も言わなかったが、グレンはこう答えた。
「今更、あの村でどうすんのが正しかったのかなんてことを言ってもしょうがねぇだろうさ。
けど……もし俺がユルバンだったとしたら、二十年前に本当のことを教えてもらいたかった
とは思うぜ。あそこで行われてるのは、たとえ『優しさ』から生まれたものだとしても……
結局は『夢』でしかないからな」
 その意見に、タバサは内心で同意していた。ユルバンが守っている村の営みは、結局は
虚構であり……ユルバンの半生を虚しいものにしているからだ。
 それともう一つ、タバサは今回の件で課題を背負った。それは、浅慮のためにまんまと
敵の罠に嵌まってしまったことだ。グレンがいなければ間違いなくお陀仏していた。自分の
本棟の敵はもっと強大なのに、今の段階でこんなありさまでは母を取り返せるものかどうか。
 母の奪還のためには、もっと精進が必要だと、タバサは己を戒めた。

 ……あの時の自戒は、最終的には無駄なものとなってしまった。そのことを残念に思う気持ちはある。
 しかし今のタバサの心には、幸せな感情が溢れていた。心のどこかでずっと待ち望んでいた、
自分を救い出してくれる勇者に、遂に出逢うことが出来たから。
「……あッ、タバサが目を覚ましたみたいよ」
 夢から覚め、おもむろに身震いをすると、トリステインの友の声が耳に入った。そしてその後に、
もう一人の男の子の声。
「ほんとか? タバサ、どこか怪我はないか? もうお前は大丈夫だからな」
 自分に向けた慈しみが声音に溢れた、勇者の顔を、タバサは寝ぼけ眼で見上げた……。


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