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第百一話「迷宮のルイズ」


ウルトラマンゼロの使い魔
第百一話「迷宮のルイズ」
暗殺宇宙人ナックル星人グレイ
夢幻魔獣インキュラス 登場



 才人がリシュに連れさらわれたのと同時に、トリステイン各地に実体とも幻影とも取れない
怪獣が出現。そしてクリスは、リシュの正体を語った。リシュはサキュバスという四百年前に
封印された、夢を支配する危険な亜人だったのだ。そして各地に出現した怪獣は、リシュが才人と
ゼロの記憶を元に作り出した代物のようだ。このまま放っておいたら、世界中に怪獣が溢れ返って
手がつけられなくなってしまう。
 そこでルイズが、才人とゼロを救出するために夢の世界へと旅立っていった。だが、それは非常に
危険な旅路であるのだ。果たして、ルイズは無事に才人たちを救い出すことが出来るのだろうか。

 クリスの力を借りて、サキュバス・リシュの作り出した夢の世界へ侵入したルイズだが、
その世界はこれまで見ていた夢と同じようで異なった世界であった。舞台は才人の記憶から
再現された地球の日本なのだが、夢の続きそのままという訳ではなかった。この世界では
ルイズは転校してくる前の段階で、キュルケでさえルイズのことを事前に知らなかった。
ルイズはこの世界の住人と、完全に初対面ということになっていた。ルイズは孤立無援であった。
(……みんなの記憶は、リシュによって調整されてるみたいね。わたしはクリスの手を借りての
侵入で、最初からはいなかったから、わたしの存在はみんなの記憶に反映されてないんだわ)
 そして、夢の世界で肝心の才人を発見することが出来たのだが、才人でさえルイズの顔を見て……。
「えーっと……ごめん、君は誰かな? 誰かと間違えてない?」
 何と、才人までがルイズを覚えていなかった。あれほどともに暮らし、ともに戦ってきたというのに……。
さすがにルイズもショックを禁じ得なかった。
 やはり、才人もリシュに記憶をいじられているのか。
「思い出して、サイト! 本当のことを! あなたの中にいるゼロはどうしちゃったの? 
ほら、あなたの左腕にはゼロのブレスレットが……!」
 才人の左手首を確認したルイズ。そこにはちゃんとウルティメイトブレスレットがあったのだが……。
(!? 明かりが灯ってない……!)
 ブレスレットのランプには光が宿っておらず、電池が切れたかのように黙しているのだ。
ブレスレットの輝きはゼロの意識を表している。それが消えているということは、ゼロは強制的に
眠りに就かされているのか。
 最も心強い味方が封じられてしまっていることに、ルイズは激しく動揺する。クリスの言った通り、
夢の世界ではゼロほどの戦士といえどもサキュバスには逆らえないのか。
 しかも才人自身は、自分の左手首を訝しげに見つめた。
「ブレスレット? 何言ってるんだ? 俺はアクセサリーなんてしてないぞ」
「!? まさか……見えてないの?」
 才人は、ブレスレット事態を見えなくされていた。恐らく、ブレスレットを見て記憶を
取り戻さないようにするための処置。リシュに隙がないことに改めておののくルイズ。
 更には、
「サーイト♪ その子、一体誰?」
 ルイズの記憶にはない謎の女が、才人の腕になれなれしく抱きついたのだ。才人は彼女について、
はにかみながら説明した。
「こいつは、俺がつき合ってる彼女だよ」
 才人に彼女……! それが最もルイズがショックを受けた事柄だった。ひどく心を痛めて、
思わず才人の前から走り去ってしまったほどだ。
 以上のように、夢の世界は想像以上にルイズに辛い世界であった。……しかし、簡単には
行かないということは初めから分かり切っていたことではないか。これしきのことでくじけては、
自分に全てを託してくれた仲間たちに申し訳が立たぬ。ルイズは気を強く持ち直して、この逆境を
打破して才人とゼロを取り返す気概を燃やすのだった。

 無人の高校の教室で、ルイズはここまでで得た情報を整理し、自分がこれから何をするべきかを
定めていた。
「やっぱり、まずはどうにかしてサイトに元の記憶を取り戻させるのが先決よね……」
 才人は完全にリシュの力によって心を操られている。この状態では、夢の世界から連れ出すことは
ほぼ不可能であろう。それにゼロのこともある。才人とゼロは一心同体。才人の力がゼロの力となる。
才人に記憶が戻ってゼロのことも思い出せば、きっとゼロも封印を破って覚醒するはずだ。一度ゼロに
力が戻れば、たとえ夢の世界だろうとサキュバスにも負けないはず。
「そのためには、あのサイトの彼女とかいう女が障害となるわ……。あれはきっと、リシュが
サイトを夢に縛りつけておくために送りつけた刺客……」
 才人の彼女を名乗る女の顔を忌々しく思い返すルイズ。それまで見てきた夢の記憶を手繰り
寄せてみたら、春奈もいたのにあんな女は一度として登場したことがなかった。それに、仮に
現実に才人に彼女がいたのならば、普段からもうちょっと女慣れしているはずだ。そういうこと
なので、才人の彼女はこの世界で設定された架空の存在なのだと推理する。
「あの女が側にいたら、サイトに手出し出来ないわ。どうにかしてあの女を遠ざけて、サイトが
一人でいる状況を作らなくちゃ……」
 それから何とか説得を……と算段を立てていたところ、不意に誰かから声を掛けられる。
「ルイズさん、こんなところで何をやってるのかしら?」
 振り返れば、ちょうど例の才人の彼女が一人でこちらに接触してきた。ルイズは警戒心を強める。
「……そっちこそこんなところに一人でやって来て、何の用かしら」
 ルイズがにらみ返すと、女はこんなことを正面から告げた。
「ルイズさんに、サキュバスのことでお話しがあります……と言ったらどうかしら?」
「!?」
 ルイズはますます身を強張らせた。まさか、こんな直球に自分に挑戦してくるとは。
「もったいぶらなくていいわ。話を聞こうじゃない」
 ここで逃げても仕方がない。ルイズはその挑戦を真っ向から受けた。
「ふふッ……」
 笑んだ女はパチリと指を鳴らす。
 すると、教室の空間がグニャリと歪んで、戻った時には肌に触れる空気が、上手くは説明できないが
妙なことになっていた。
「な、何をしたの?」
「気づいた? ここを、あなたかあたしが出ていくまで余計な人が入って来れないようにしたのよ。
これで思う存分話せるわ」
 女の言葉にひと筋の冷や汗を垂らすルイズ。いきなり、お互いの核心に迫る話をするつもりのようだ。
「最初に聞きたいんだけど、あなたがここに来たのはあの、封印の一族に連なるお嬢様の差し金かしら?」
 問いかけてくる女。ルイズは答えるべきか否か少し考えたが、今更隠し立てしても有利に
なることはない。ここは強気で行こう、と判断する。
「ええ、そうよ。クリスの力を借りてサイトとゼロを取り返しに来たの! どんなことをしても、
サイトを連れて帰るんだから!」
 サッと杖を抜いて女に向けるルイズ。クリスの力で、武器を一緒に送ってもらったのだ。
「知ってるかもしれないけど、わたしもただのメイジじゃないわ。ちょっと簡単にはいかないわよ。
覚悟しなさい!」
 精神的に優位に立とうと脅しを掛けるが、女は動じもしない。
「もちろんあなたのことも知ってるわ。伝説の“虚無”の使い手……。でもいくら伝説でも、
頭の中をいじられて、意思や記憶を操作されて同じことが言えるのかしらぁ?」
「お、脅かそうったって無駄よ! 確かにこの世界はいじれるでしょうけど、クリスの力で
夢の世界に来たわたし自身は変えられないでしょ!」
 ルイズが突き返すと、女は不敵に笑む。
「……何故そう思うの?」
「出来るなら、最初からやってるに決まってるじゃない!」
 それがルイズの根拠。しかし、女は嘲るようにクスクス笑い声を立てる。
「ルイズ、あなた面白いわねぇ」
「な、何が面白いのよ!」
「あなたが侵入者であることはすぐに分かったわ。ただの余興でそのままにしてあげてる
だけだっていうのに、得意そうにして」
「う、嘘よ。はったりかまして、こっちを屈服させようとしてるんでしょ!」
「嘘じゃないわぁ。その証拠に、現実世界に現れた怪獣を操って動かしてたのは、このあたしなのよ。
あたしはあんな大きな生き物の意思も自由に出来るのよ。あなた一人を思い通りにするくらいは
お茶の子さいさいだわ」
 そう指摘されて、ハッと息を呑むルイズ。確かに、リシュは他者の精神を支配できる実例がある。
自分自身、リシュの手先となったダリーに侵されて危機に陥った。
「今だって、既にあなたに縛りを与えてること、気づかない?」
「えッ……!?」
「今、その縛りを解いたわ。あたしの身体を見て、よーく思い出して?」
「身体って……その翼……!?」
 ルイズは驚愕して目を見開いた。先ほどまでは普通の女子生徒にしか見えなかったが、
今目の前に立つ女には、角があり、翼がある。そしてその顔は……!
「ああッ! な、なななななッ! あなた、リシュ?」
「いい反応ねぇ。うふふ、そうよ。こんにちはルイルイ」
 どうしてこんなことに気がつけなかったのか。杖を持つ手が震えるルイズに、リシュが得意げに告げる。
「驚く必要はないわ。あたしが気づけないようにしてたんだから」
「な、何でこんなことするのよッ!」
「余興だって言ってるじゃない。すぐに黒幕が分かったら面白くないでしょぉ?」
 リシュの言うことは正しくないだろう。ルイズにも影響が及ぼせることを分からせるための
デモンストレーションだ。
「だけど、これ以上サイトにちょっかい出すようなら……あなたの記憶を奪って、出口のない
部屋に閉じ込めてあげる。息をすることくらいしかやることのない部屋にね。きっと、楽しいわよぉ?」
「くッ……!?」
 本当にリシュが、この世界を自在に操作できるのだと思い知らされ、ルイズは大きくひるむ。それでも……。
「それでも、わたしは諦めないわッ!」
 自分を奮い立たせて杖を握り直す。リシュの魔法が夢の世界で万能であろうとも、“虚無”は
魔法の中で最上位。そのルールは夢の世界でも変わらないはず。ディスペルなら夢の魔法を解除
できるだろうし、最悪ちょっとした爆発でも起こせばリシュとも戦えるはずだ。
 そう思っていたのだが、しかし、
『もうッ、お馬鹿な子ね! しつこい女は嫌われるわよぉ~?』
 教室に更なる怪人が現れた。才人がさらわれる直前に、自分とシエスタを足止めしたナックル星人だ!
「! あんたまでこっちの世界に……!」
『当たり前でしょぉ~? アタシとリシュはお友達、協力してるんだから!』
 敵が増えたことに動じるルイズ。リシュとの一対一ならともかく、宇宙人が向こうに加勢したら
圧倒的にこっちが不利だ。
 しかもそれだけではなかった。
『オホホ、窓の外をご覧なさいな』
「窓……?」
 言われた通り振り返ると、校舎の外、校庭にいつの間にか巨大怪獣が出現していた!
「グウウウウ……!」
 直立した羊のような姿だが、顔面には眼球が七つも並んでいる、悪魔のような容貌の怪獣だ。
「あれは……!」
『夢幻魔獣インキュラス! 夢の中に確かな実体を持つ怪獣よぉ。お嬢ちゃんがちょっとでも
変なことをしようとしたなら、すぐにインキュラスがペシャンコにしちゃうわよッ。分かる? 
あなただって無駄に命を散らしたくはないでしょ? 大人しくしといた方が身のためよぉ~』
 脂汗を滝のように流すルイズ。リシュだけでも厳しいのに、宇宙人、怪獣まで敵にいては、
とてもではないが孤立無援の自分ではどうすることも出来ない。
 震え上がるルイズの姿に、リシュはクスクス笑う。
「そんなに怖がらないでぇルイルイ。そもそも、あたしたちとあなたが敵だというのが早計よ」
「なッ、それはどういう意味よ! サイトをさらって、いいように操っておいて!」
 リシュは真面目な面持ちになり、語り始めた。
「あたしたちの目的は、サイトをこの世界に引き込んで現実世界に怪獣を作り出してるだけには
留まらないわ。このまま夢の世界を拡大していき……最終的には現実世界も夢の世界で覆い込む。
夢と現実の境界をなくすのよ」
「なッ……!?」
「そうなったら素敵だと思わない? 世界はなぁんでもみんなの思い通りになるの! 人間同士で
いがみ合ったり、憎み合ったり、争い合ったりすることもなくなる。理想郷が実現するのよ! 
あたしのサキュバスの力って、そのためにあるんだわ! だからルイルイも、あたしたちの仲間に
なりましょうよ。そしたらあたしが、ルイルイのお望みの世界も作ってあげるわぁ」
 リシュの語る世界に、戦慄を覚えるルイズ。リシュは良いように語っているが、結局は全てが
リシュの意思一つで何もかもが決定してしまう、人間の自由と尊厳が奪われた偽りの世界だ。
そんなのを実現させる訳にはいかない。……だが、今の自分に何が出来るのか。現状は完全に
手詰まりだ。しかし……。
 ルイズの反抗的な視線に気づいてか、ナックル星人が口を開く。
『まだ気持ちの整理がつかないみたいねぇ。リシュちゃん、ちょっと考え直す時間をあげましょうよ。
すこーしお利口さんになれば、自分がどうすべきかすぐに分かってくれるわぁ~』
「ええ、そうね。それでは、さよならルイズさん。また明日、教室で会いましょうね」
 たっぷりと余裕を見せつけて、リシュとナックル星人は教室から立ち去っていった。
インキュラスもまた、校庭から姿を消す。
 後には、打ちひしがれて立ち尽くすルイズだけが残された……。

 その後、ルイズもうなだれた状態で教室から出た。
 正直なところ、ルイズは“虚無”の魔法を駆り、才人と会いさえすれば何とかなると心のどこかに
甘い考えを持っていた。だが、それは大きな誤りだったのだと見せつけられた。クリスたちには心を
強く持てと言われたが……ルイズの精神は既に折れそうであった。
「わたし、一体どうすれば……」
 力なくつぶやいたその時、
「ルイズさん、大丈夫?」
 自分に掛けられる、優しい声音。顔を上げると、目の前に五人の男女がいた。
「えっと、あなたたちは……」
「同じクラスの塚本だよ。こっちの四人は仲良し四人組」
「毎度お馴染み、落語でございます! そして博士とスーパー、ファッションでござい!」
 才人と同じ黒髪に黒い瞳。ハルケギニアにはいないタイプの容姿と名前だ。彼らは春奈のように、
才人の本来のクラスメイトなのだろう。
 五人の内、ファッションがルイズを気遣う。
「ルイズさん、すごく元気がないわね。どうしたの?」
 彼女たちに本当のところを言っても、どうしようもあるまい。ルイズは曖昧に答える。
「さっき、わたしの力じゃどうしようもないことに直面してね……。もうどうしたらいいか
分からないの……。わたしには、何も出来ない……」
 それを聞いた塚本は、何を思ったか、唐突にその場で逆立ちをした。
「よっと!」
「えッ? 急にどうしたの……?」
 呆気にとられたルイズが問うと、塚本は答えた。
「こうしてると、地球を支えてる気分になるんだ。地球をしょって立つ!」
 突飛な発言にルイズが目をパチクリしている内に、塚本が足を下ろして立ち上がり、ルイズを諭した。
「僕は以前、登校拒否をしてたんだ。もう何もかもが嫌な、どうも出来ない気分だった。
でもそんな時に矢的先生がこうやって元気づけてくれたんだよ。地球を背負うことに比べたら、
どんなことも難しいことじゃないんだって」
「ヤマト先生……?」
「僕たちの担任の先生ですよ」
 博士に教えてもらって、ルイズは思い出す。魔法学院にはいないほどの、熱心で生徒想いな
教師であることがよく伝わってくる先生。情熱に溢れている、という点ではコルベールを思い出させる。
 続いてスーパーが言った。
「矢的先生、こんなこともよく言うんだ。『一所懸命になれ』って」
「イッショケンメイ?」
「人には一生、命を懸けてやらねばならないことがある。その大きな目的を達するためには、
その人が今いるところで、今やっていることに最大を尽くす。そういうことが必要なんだって」
 『一所懸命』の教えに、ルイズの伏しがちな目が少し開かれた。
「ルイズさんが何をしようとしてるのかは知らないけど、全力を尽くしたらきっと何かが変わる。
僕はそう思うよ」
「ルイズさんが良ければ、僕たち相談に乗りますからね」
「私、同じ女の子としてルイズさんのこと応援するわ! がんばって!」
「あぁッ! みんな俺の言いたいこと全部言っちゃってさぁ。ルイズさん、俺も応援するぜ!」
「ということですのでルイズさん、わたくしども一同、心より応援をしております! それでは、お達者でー!」
 塚本、博士、ファッション、スーパー、そして落語の順にルイズを励まし、五人は去っていった。
彼らのお陰で、絶望の淵にあったルイズの心は、気がつけばいくばくか軽くなっていた。
「へへッ、なかなか気持ちのいい小僧どもじゃねえか。娘っ子もそう思わねえか?」
 突然、特定の者だけが使う自分への呼び名が聞こえた。
「えッ!? 今の声……今の呼び方! まさかッ!」
 驚いたルイズは声の元を探り、その結果、ポケットからあるものを引っ張り出した。
 才人が使用しているのと同タイプの通信端末。それから、かのデルフリンガーの声が
発せられていたのだった。
「デルフ! どうしてここに……? というかあんた、ツーシンタンマツになってるわよ!?」
「何だ、今の俺ぁそんな姿になってんのか」
 デルフリンガーは、自分の姿に気がついてなかったようだ。
「俺も相棒と娘っ子のことが心配になってね、おまえさんの後にあのブシの娘っ子を説得して、
こっちに送ってもらったんだ。今の姿は、この世界に合わせた結果さね。この世界じゃ、剣の
ままじゃ目立ってしょうがねえみてえだしよ」
「……そう。でも来てくれたこと、嬉しいわ」
 実際、デルフリンガーがこの夢の世界まで追って来てくれたことは、これ以上ないほどの
ルイズの心の助けとなった。味方がいないと思われた世界で、自分を知っている者が側にいると
いうのがこんなにも嬉しいことだとは。
「で、早速だがちっこいの、いやサキュバスのことだ。娘っ子、また随分と追い詰められてたじゃねえか」
 どうやらデルフリンガーは、リシュと相対した時点で既にポケットの中に隠れていたようだ。
それで事情は分かっているらしい。
「だが実際のとこは、どうにも出来ない訳じゃあなさそうだぜ」
「え! それってどういうこと!? ちゃんと説明しなさい!」
 意外なところから光明を見せられ、ルイズは若干焦って尋ね返した。
「ちょっと落ち着けっての。いいか? サキュバスはあんなこと言ってたが、本当にこの世界を
自由に出来る訳じゃねえ。恐らく、世界の設定というか状況を決められるだけで、個々の人間の
意識を完全に操れる訳じゃあない」
「で、でも、怪獣を操ってたし、さっきわたしだって……」
「そいつは姿を変えてのごまかしを、記憶を操った結果と誤認させただけのトリックだよ。
角と翼っていう印象に残る部分を消しときゃ、意外と人って分からなくなるもんだぜ」
 さすがは六千年も生きたインテリジェンスソード。含蓄がある。
「怪獣の方も、ここに行けとかの大雑把な暗示しか掛けられねえはずさ。じゃなきゃ、わざわざ
彼女になるくらい相棒を気に入ってんのなら、相棒が変身して飛び出した段階で怪獣を退かせてるはずだろ」
「確かに……ゼロはイコールサイトだものね。危険な目には遭わせないはずだわ」
「何より、さっきの奴らみてえな娘っ子に味方する奴をこの世界に作るはずがねえ。余興って
言葉も、結局は嘘さ。惑わされんな」
 デルフリンガーの言う通りだ。あそこまで脅迫してきた後で、夢の登場人物を使って自分を
励ます訳などない。
「それともう一つ、ウチュウ人がちょいと妙なことを口走ってたじゃねえか」
「妙なこと? それって何?」
「怪獣を紹介する時、夢の中に確かな実体を持つなんて変に念押ししてただろ。それだと他のもん、
たとえばサキュバスの力が幻みてえじゃねえか」
「あッ、なるほど……!」
 デルフリンガーの慧眼に感心するルイズ。ナックル星人は、ルイズを確かに殺せるという意味で
言ったのだろうが、それが裏目に出て、こうしてデルフリンガーにサキュバスの能力のカラクリを
気づかせることとなった。
「つまり、サキュバスはあくまで夢をコントロールできるだけで、この夢の世界の本当の主は
相棒なのさ。相棒の腕にブレスレットがしたまんまなのも、サキュバスの限界を示してるね。
夢の魔法じゃあ、一つになってる魂と魂を切り離すことは出来ない。結局夢ってのは、見てる
本人と現実には敵わねえのさ」
「ということは、サイトが現実の記憶を取り戻せば、リシュはこの夢の支配者じゃなくなるってことね! 
そうすればゼロも復活して、勝ちの目が見えてくる……!」
「そういうこった。……だが、そのための時間はあんまり掛けられねえ。分かるだろ?」
 固い表情でうなずくルイズ。いざルイズが才人の目を覚まさせようとしたら、リシュとナックル星人が
黙っているはずがない。インキュラスも、才人の夢の産物ではないので、才人の状態に関係なくルイズに
危害を加えられる。それらの妨害をかいくぐるためには、なるべく時間を掛けずに才人を覚醒させる他ない。
「って簡単に言うけれど、実際にはどうすればいいのよ。“虚無”は詠唱に時間がかかるし……」
「方法があるとすりゃあ、相棒のガンダールヴの力を呼び覚ますことだ。要するに相棒の感情を
揺り動かすってことだな」
「感情を揺り動かすって……短い時間の中で、どうやって? 剣を握らせれば簡単だけど、
この世界にはないわ。あんたも今はちっさいタンマツだし……」
「それくらいはそっちで考えてほしいとこだがね。まぁ手っ取り早い方法を挙げるなら、
キスするとかだろうね」
「き、き、キスぅぅぅ!?」
 思わず真っ赤になるルイズ。全くデルフリンガーは何てこと言うのか。デリカシーはないのかと憤る。
 しかし、何も才人とキスをするのは初めてではない。恥ずかしくない訳でもないが……
リシュに才人の唇を奪われたままというのも何だか癪だ。それにいざとなったら手段を選んでいる
余裕はないだろう。
 実際キスするかどうかは別として、現実世界では皆が待っているのだ。ルイズは、明日には
決着をつけるという意気込みを固めたのだった。

 ルイズに散々脅しを掛けた後、リシュは廊下を歩いていたら、ある人物から呼びかけられた。
「リシュ、少しいいかな」
「……ヤマト先生」
 矢的猛。リシュのクラス……つまり才人の担任の教師。リシュは少々警戒する。
 というのも、彼を含めた一部の人物は、才人の記憶を覗き見たリシュにとっても未知の部分が
多いからだ。彼らについて、才人の記憶から得られた情報が妙に少ない。夢の世界に怪獣が出現
し続けたのも、リシュの仕業ではない。どういう訳か、勝手に出てきてしまっていたのだ。才人が
ハルケギニア外から来た未知の異邦人だから、自分の力でも制御し切れないのか……。
 そういうことなので、この矢的がどういう行動に出るのか今一つ判別し難い。それ故に警戒心だった。
「リシュ、君が平賀とつき合ってるのは僕も知ってるが……変な言い方だが、それは正しいことなんだろうか?」
 実際、矢的はリシュの行いの核心を突くようなことを言ってきた。
「……どういうことですか?」
「先生が生徒を疑うなんてあるまじきことだが……君たちの関係はどうも不自然な感じがする。
リシュ、君が平賀を自分の方向へ誘導してるようだ。本当に愛し合ってるなら、立場は対等の
はずだろう?」
「……」
 何とも鋭い人物だ。面倒だ、と内心舌打ちするリシュ。いなかったことにしてしまえたら
いいのだが……あまり下手に夢の世界を変更すると、才人が現実の記憶を取り戻すかもしれない。
そうなったら全てが水の泡だ。
「それに……リシュ、君は何だか、いつもどこか悲しそうな目をしてる」
「!!」
「君が今のままではいけないって、先生思うんだ。君が抱えているものについて、先生に
話してもらえないだろうか。きっと君の力に……」
「もういいですッ!」
 熱心に説く矢的だが、リシュはひどく気分を害してそれを振り払った。
「先生にそんなことを言われる筋合いなんて、ありませんから。余計なお世話です。もうあたしたちの
ことは放っておいて下さい。さよならッ!」
 一方的に言いつけ、リシュは憤然と矢的に背を向け立ち去っていった。
 その背中を、矢的は心配そうな、それでいて何かを決心したかのような表情で見つめていた。


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