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Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia-62


ヴロックを倒した後もなおしばらく、ディーキンらは事態の収拾のために忙しく働かねばならなかった。

まず、事態を目撃した店内の客に対するフォローが早急に必要だった。
客にはタバサが自分のシュヴァリエの身分を明かし、王宮の命令でこの店に潜む怪物の調査をしていたのだ、という旨の説明をする。

使用人にはトーマスがオーナーの死を伝え、店の蓄えの中から幾許かの退職金を渡してやった。
残りの金は、おそらく後日王宮を通して、客たちに返金されることになるだろう。

そうして無関係な者たちをさっさと帰らせ、店を封鎖してから、次にこの惨事の後片付けに取りかかった。

最初に、タバサが仕事の完了を報告する際の証拠品とするため、骨と化したサキュバスの亡骸を回収する。
その際にディーキンはサキュバスの所持品を検分し、マジック・アイテムの類については戦利品としてもらっておいた。
それ以外の装飾品等は、店の売上金と一緒に後で王宮へ提出することにしてタバサに委ねる。

ディーキンはこの店にデーモンがいたことで、ますますガリアの王宮内にはデヴィルが入り込んでいるのでは、という疑いを強めていた。
デヴィルとデーモンは悪の頂点の座を争う宿敵同士であり、遥かな太古から血で血を洗うような争いを続けているのだ。
この店にデーモンがいることを知っていて排除させようとしたのだ、と考えてもおかしくはない。

仮にそうでないとしても、デーモンが遺していった品々をそのまま王宮に委ねてしまうのはよくないだろう。
不適当な人物の手に渡れば、どんな不幸の種になるか分かったものではない。
金は客たちに返金しなくてはならないが、不穏当な物品は引き渡さずにこちらで持っておくか、内密に処分してしまった方がいいはずだ。

それから、続けて奥の方の片付けに取り掛かった。

カジノの奥にあったいくつかの部屋の様子は、デーモンが美しい見てくれの下に隠していた、腐敗と堕落とを如実に表していた。
ある部屋には、退廃的・嗜虐的な娯楽に使うための器具や薬品、性的な征服を通して得たおぞましい戦利品のコレクション等が並んでいた。
ディーキンはそれらの物品をざっと検分し、明らかにいかがわしい物、悪の穢れを受けているような物はすべて処分していった。
そうではない物で利用できそうなごく一部の品物は、回収して持っておくことにする。

どこから調達したのか、『苦薬』と呼ばれる麻薬を抽出するための大がかりな機材が設置された部屋もあった。
激しい苦痛に苛まれている犠牲者から魔法的に抽出されるこの悪しき物質は、使用者に強烈な幸福感を与える極めて中毒性の高い麻薬だ。
当然、作成済みの薬と機材の類はすべて完全に破壊して、残骸まで含めて念入りに処分しておいた。

完全にデーモンに屈服して傀儡となった人々が、爛れた行為を行われるために一時的に拘束されている、牢獄のような部屋もあった。
あのサキュバスは、おそらくこれらの虜にした者や攫ってきた者を拷問にかけて、悪しき麻薬を作りだしていたのだろう。
囚われていた犠牲者の中には、件の麻薬に対する中毒症状を呈している者も何人かいた。
ディーキンは詮索されぬよう彼らに目隠しをした上で、招来呪文を用いて呼び出した来訪者に頼み、簡単な治療を施してやった。
その様子を見たほかの3人、特にタバサは、非常に興味を惹かれた様子だったが……。

最奥の倉庫は、特に悲惨な様相を呈していた。

そこには、わけのわからない体液に塗れたり、無残に痛めつけられたりした屍が、何体も押し込まれていたのだ。
おそらくはサキュバスが欲求不満を解消するために攫ってきた不幸な孤児や浮浪者、旅人等であろう。
カジノのオーナーであったというギルモアの遺体も、それらの屍に交じって転がっていた。

トーマスはその腐りかけた遺体の傍に跪いて手を握ると、静かに涙を流しながら彼らに詫びて、死者の魂の安息を祈っていた。
このカジノの店員として、責任を感じているのであろう。
ディーキンらもまた彼に倣って、しばし哀れな犠牲者たちのために祈った。



そうしてすべての部屋からデーモンの遺していった穢れの痕跡を完全に始末し終わったころには、既に夜明けが近い時間になっていた。
さすがに皆かなり疲れていたが、誰一人としてこの忌まわしい場所で一眠りしたいなどという者はいなかった。

用件が済み次第足早に店を後にすると、最後に全員で郊外の人気のない丘に、犠牲者たちの遺体や遺品を埋葬しに向かった。
ディーキンはバードとして、犠牲者たちのために鎮魂歌を奏で、いつになく厳粛な調子で祈りの言葉を朗誦した。




 公正なるティールよ
 慈悲深きマイリーキーよ
 温かきラサンダーよ

 すべての善なる人の神々よ、どうか彼らを天上から見守りたまえ
 御使いを遣わし、導きを与えたまえ
 哀れな御魂が、死後もデーモンによって悩まされぬように
 デヴィルが彼らを誑かさぬように

 いと高く高潔なる御方、白金のバハムートよ
 その輝ける翼に乗せて、御魂を浄土に疾く運び賜われ――――

 ……




ディーキンはさらに、呪文でランタン・アルコン(燈火の聖霊)を呼んで、死者たちのために祈ってもらった。

招来された4体のアルコンは、呪文の効力が切れるまでの間ずっとその暖かな輝きで墓標を照らし、柔らかく音楽的な声で歌ってくれた。
その行為に、実際に何らかの効力があるというわけではない。
だが、天上界から聖霊がやってきて導いてくれたのだと思えば、犠牲者たちの御魂も少しは慰められるだろう。

この手の呪文に馴染みのないトーマスらは、驚きと感嘆の念を持って、その様子を見守っていた。



それを終えると、タバサは休む前に、王宮への報告をさっさと済ませてしまうことにした。

プチ・トロワへ赴き、ディーキンやトーマスのことは伏せて、正体不明の魔物が人々を誑かしていたのを始末したことを伝える。
それから、カジノで回収した金品や、これまでの勝ち金を預けてあるシレ銀行の鍵などを引き渡した。

イザベラはそれについて、特に詮索はしてこなかった。

実を言えば、彼女は既にカジノで騒動があったことについて、ある程度の報告は受けていたのである。
その内容は「カジノに現れた魔物と子供が戦った」「少年が魔物を始末した」というようなもので、タバサの報告と矛盾はしていなかった。
タバサ自身子供のような容姿であるし、男装もしていたので、ディーキンに関する話もタバサのものと混同されていたのだ。
仮にタバサ以外にも戦った者がいたという情報が流れていたとしても、カジノには貴族もいたのだからその中の誰かだと思った程度だろう。

そんなわけで、イザベラには特にタバサの報告を疑うべき理由もなかったのだ。
従姉妹が成功したのは面白くはなかったが、まあ自分は先だってその優秀な従姉妹にも勝ったのだと思えば、逆に優越感を感じられる。
それに時刻もまだ早朝なので、彼女を嬲って愉しむよりも、もう少し寝ていたかったというのもあるだろう。

イザベラの背後にいるラークシャサも、別段深く探りを入れようとは考えなかった。

この度の任務は、元々デヴィル側からの要請であった。
カジノにデーモンが潜伏している可能性があるのでそれを探らせ、可能ならば排除させろと言って来たのだ。
大方、邪魔者を始末した上で、そいつが築いたカジノをそっくり頂き、自分たちで利用しようという腹積もりだったのだろう。

だが、魔物騒動が起こったのでは店には当分客が寄り付かなくなり、そのまま利用するのは困難になったはずだ。
デヴィルどもの目論見が外れるのは彼にとっては愉快なことだったし、こちらの役目は果たしたのだから文句を言われる筋合いもない。
そうである以上、この上自主的に何かしてやる気などは毛頭なかった。

そうして、イザベラへの報告は特に問題もなく、ごくあっさりと済んだ。



当面の用件をすべて終えると、一行はようやく人心地がついた。
元の姿に戻ったシルフィードと一旦別れると、残った3人は休息のために、適当な宿で部屋を取る。

それから、眠る前に同じ部屋に集まって、トーマスの今後の身の振り方について相談をした。

「ねえ、トーマスさん。もしよかったら、トリステインに来ない?
 あんたは手品が上手なんでしょ、それにナイフ投げとかもできるみたいだし、ハンサムだよね。
 だからきっと、『魅惑の妖精』亭でディーキンと一緒に仕事をしたら、すごーく人気が出ると思うんだよ!
 タバサも今はその近くの学校に通ってるから、お互いに会いに行きやすいしね」

「私も……、そうしてくれると嬉しい」

「……何から何までお世話になりましたのに、なおそのように気遣っていただいて……。
 ありがとうございます、シャルロットお嬢様、ディーキンス様。いえ、ディーキンさん、でしたね」

トーマスは2人からの提案に控えめな笑みを浮かべると、深々とお辞儀をした。

ディーキンもシルフィードも、既にタバサからの信頼厚い彼に対しては正体を明かしていた。
しかし、彼は相手が貴族であろうと平民であろうと、あるいは亜人であろうと、それだけで態度を変えたりはしない主義のようだ。

もちろんディーキンとしては大変に嬉しいことであり、彼に対する敬意を新たにしていた。
シエスタの時と同様、様付けで呼ぶのは止めてほしいとだけは頼んでおいたが。

「私には、もはや身内もありません。かつて仕えたシャルル様にも、ギルモア様にも、とうとう何のご恩返しもできずじまいです。
 大恩を受けたあなたと懐かしいシャルロットお嬢様のお役に立てるのであれば、喜んでまいりましょう」

それを聞いたタバサは僅かに、しかしはっきりと、嬉しそうな笑みを浮かべた。
懐かしい使用人に再会できたためか、普段よりも表情が柔らかい。

それから、トーマスとタバサはしばらくの間、思い出話などに花を咲かせて旧交を温めた。

ディーキンは彼らの話の邪魔をしないように静かに耳をそばだてて、様々な情報を知った。
タバサの本名がシャルロットといい、オルレアン家なる、非常に身分の高い貴族家の出であるらしいこと。
そのオルレアン家は、何らかの陰謀に巻き込まれて没落したらしいこと。
それにタバサとトーマスとの関係とか、昔遊んだ時の思い出話とか、その他にも色々な細かいことを……。

2人には積もる話があったし、ディーキンにとっても彼らの話は興味深かった。
とはいえ、今日はみな疲れている。
ある程度話して一区切りつくと、続きはまた翌日にして解散し、一行は各々の部屋に引き取って寝ることになった。



「ンー……、今日も楽しかったの」

ディーキンは自分にあてがわれた部屋に入ると、大きく伸びをした。
今日もまた、いろいろなことがあった。

犠牲者のことや、デヴィルの件などを考えれば、楽しかった、などというのは不謹慎だという者もいるかもしれない。

しかし、そんなことを言っていたらこの世の中は何ひとつ楽しむには値しなくなってしまうのだ、とディーキンは考えている。
コボルドの部族の洞窟で過ごした日々は辛く、恐ろしいものだった。
それでも時には楽しいこともあったし、多くの役に立つ教訓を学びもした。

今日のことも、それと同じだ。
初めて学院から大きく離れて別の国を見たし、トーマスという新しい友人とも知り合えた。
そしてデーモンを打ち倒して、その悪事を終わらせることもできた。

哀しいことがあったからと言って、良いことの方を喜んではいけないなどとは思わない。

とにかくここへ来てから、毎日が刺激的で、退屈しない日々が続いている。
ディーキンは、明日が来るのが心から楽しみだった。

自前の魔法の寝袋で眠るのが一番快適ではあるだろうが、せっかくなのであえて宿のベッドに横になってみた。

安めの宿なのでそんなに柔らかいわけでもなかったし、寝ている間にウロコや翼などで傷めないように気をつけもしなくてはならない。
しかし、何でも新しい物は試してみたいというのがディーキンの性分である。

「そういえば、ルイズはどうしてるかな……」

使い魔の仕事はラヴォエラに頼んで来たし、何も心配はいらないだろう。
だが、仮にも“主人”である彼女を放って、勝手に出てきたのは申し訳なかったと思っている。
それにラヴォエラにも、あまり長い間仕事を押し付けておくわけにもいくまい。

この国の上層部にデヴィルが入り込んでいるかも知れないというのは不安だが、現状では踏み入った調査をするのも難しそうだ。
任務とやらも終わったことだし、今はひとまず学院に戻ろう。
それからみんなに、念のためデヴィルに関する説明をして、注意を促しておこう。
タバサには、今後の『任務』の時には自分を必ず同行させてくれるように頼んでおいて。

それから……。

「ウーン、あとは……。
 みんなに何か、お土産でも買って帰ろうかな?」

ベッドに寝転がって少しうとうとしながらそんな風に考えていたとき、部屋のドアがコンコンとノックされた。
ディーキンはベッドの上で身を起こして、ちょっと首を傾げると、外の人物に向かって呼びかける。

「誰? ディーキンに用事なの?」

返事の代わりにドアが僅かに軋んで開き、声の主が姿を現した。

「……タバサ?」

彼女はカジノで着ていた男装とヴロックに破かれたシュミーズとを脱ぎ捨てて、下着の上から宿に備え付けのナイトウェアを着ていた。
貴族が着るにしては質素なものだったし、若干ぶかぶかだったが、タバサは別に気にした様子もなかった。
窮屈な男装や、学院の制服で寝るよりはいいと思ったのだろう。

「もう少し、話したいことがある。……いい?」

ディーキンは、やや不思議そうに目をしばたたかせた。

話があるのなら、さっきトーマスと一緒にいた時にすればよかっただろうに。
何か、話し忘れたことでもあったのだろうか。

なんにせよ、別段断る理由もないので素直に頷く。
タバサはとことこと部屋に入って来ると、ベッドの脇、ディーキンの横の方に正座した。
そうすると、ベッドの上にいるディーキンよりも、いくらか目の高さが低くなる。

他人と同じベッドの上にずかずかと登っていかないのは、まあ当然のことだが……。
ディーキンにはそればかりではなく、何かあえてタバサが、自分をより低い位置に置こうとしているかのように思えた。
ゆえに、少し迷ったが、あえてベッドから降りずに彼女と応対することにした。

彼女はそのまましばらく、押し黙ったままだった。
どこかそわそわした様子でじっと俯き、時折ディーキンの方を上目遣いに見たりする。
なにか思い悩んでいるらしいことは察せられたので、ディーキンは彼女が話し出すまで、急かさずに待つことにした。

やがて、タバサは顔を上げてじっとディーキンの方を見つめると、重い口を開いた。

「……今日は、ありがとう」

「どういたしまして。でも、ディーキンはそんな、大したことはしてないと思うの。
 それに、タバサにもずいぶん、危険なことをお願いしたりもしたし……」

「元々は私の仕事、私が危険を冒すのは当然。
 あなたがいなかったら、私はどうなっていたかわからない。
 それに、トーマスも助けてくれた……」

タバサは自分の杖を捧げるように持って、深々と頭を下げた。
それから、またしばらく押し黙ってしまう。

彼女は、ここまで来たものの、どうしても話す決心がつかずに悩んでいた。

どんな任務でも恐れずためらわないタバサにも、躊躇することはあるのだ。
自分がこれからしようとしている頼み事は、聞き入れればガリア王家を敵に回しかねない危険なことだから。

そうであっても、彼が決して断らないであろうことはよく分かっていた。
彼なら、物語の中の英雄のように自分を救ってくれたこの人なら。

だからこそ躊躇するのだ。
ここまで世話になっているこの人に、この上そんなことを頼んでもよいものかと。

これが自分一人のためのことなら、決して頼まないだろう。
だがこれは、大切な身内のためでもあるのだ。

それでも後ろめたさを感じて、なかなか切り出すことができないでいた。

(……ウーン)

ディーキンはどうしても決心がつかない様子のタバサを見て、内心で考え込んだ。

思うに、彼女には何か、自分に持ちかけたい頼みごとでもあるのだろう。
しかし、明らかに躊躇っている様子だ。

彼女の性格からして、おそらくは危険なことなのでこちらの身を案じているか、あまりに図々しいとでも思って遠慮しているのか……。

もちろん自分はそんなことを気にしないが、こちらから遠慮なく話せなどといっても逆効果でしかないだろう。
ここは大人しく、彼女が話す気になるまで待つことにしよう。
そう、思っていたのだが……。

この分では、こちらからなんとかして水を向けた方がいいかもしれない。
ディーキンはひとつ咳払いをしてタバサの注意を引くと、じっと彼女の顔を見つめて、真面目な調子で話し始めた。

「オホン……。ねえ、タバサ。
 タバサは、もしかしてディーキンのことを信じてくれてないの?」

「! ……そんなことは、ない」

「うん、タバサにそんなつもりがあるなんて思わないよ。
 でも、ディーキンは冒険者なの。冒険者の間で信頼するっていうのは、危険を分かち合ってくれることだよ。
 ボスがよく、そう言ってるの」

「……」

ディーキンはベッドから降りると、押し黙ったタバサの手を取った。
そうしてから、無邪気そうな笑顔を浮かべて見せる。

「だから、タバサがディーキンを信じてくれるなら、ちゃんと話してほしいの。
 どんな危険なことでも、大変なことでもね。
 それともタバサは、ディーキンがタバサに隠し事をしてても、それを話してほしいとも思ってくれないの?」

――そんな調子で、しばらく<交渉>を続けた結果。
タバサはようやく、ディーキンに自分の望みを打ち明けることを決心してくれたようだった。

「……わかった。だけど、その前にひとつ教えてほしい。
 その答え次第では、私の頼み事は意味がなくなる。その時は、このことは忘れると約束して」

「ンー、そう? わかったの。
 ディーキンはボスに誓って、頑張って忘れるの。自分に催眠術とか記憶を消す呪文とかを掛けてでも」

微かに頬を染めたタバサは、深々と頭を下げてひとつ深呼吸をすると、質問を始めた。
彼の言う催眠術や記憶を消す呪文とやらにも興味はあったが、そんなことを聞くのはまた今度だ。

「……質問は、あなたがカジノで私や客の傷を治す時に呼びだした、亜人のこと」

「亜人? ……アア、ケルヴィダルのこと?
 あの人たちは、亜人じゃなくてガーディナルっていうんだよ。ラヴォエラみたいな天使に近い種族らしいの」

ガーディナルは天上の諸次元界に住まい、中立にして善の属性を代表する、獣人めいた姿をしたセレスチャルの一種別である。
ケルヴィダルは山羊のような角や蹄を持つ、サテュロスに似た姿をしたガーディナルの一種だ。

タバサはあの獣人めいた姿をした存在が天使の仲間だと聞いて、少なからず興味を惹かれた。
だが、今聞きたいのは種族に関する話ではない。

「……そのケルヴィダルというのは、麻薬の中毒になった人でさえ癒していた。
 どんな毒でも、治すことができる?」

タバサの望みは勿論、叔父によって自分の母が飲まされ、正気を失わされた毒の効力を消し去って、彼女を救うことだ。
これまでどんな水の秘薬を用いても、母の陥った狂気を癒すことはできなかった。

だが、フーケとの一件の際にディーキンは、ブララニとかいう名のエルフめいた姿の存在を呼び出した。
それが自分の治癒魔法がまるで効かなかった傷をたちまち塞いだのを見たとき、タバサは一抹の希望を抱いたのである。

その希望は、先程カジノでディーキンが呼び出したまた別種の獣人めいた存在、ケルヴィダルの力を見て、ますます高まった。
それはただ触れただけで自分が魔物から受けた深手をたちまち塞ぎ、麻薬中毒に苦しむ患者をも癒してみせたのである。

果たしてディーキンの答えは、タバサの望み通りのものだった。
彼はあっさりと首肯して、何でもないことのように言った。

「うん、できると思うよ。
 ケルヴィダルはどんな毒でも病気でも、ただ角で触るだけで治してくれるの」


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