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ウルトラ5番目の使い魔、第三部-33b


 だが、明日のささやかな期待すらも奪おうと、闇の中からロマリアの放った刺客が迫りつつある。
 コルベールとベアトリスが伊403潜で語り合っているのと時を同じくして、この街を一望できる丘の上で、一組の若い男女が物珍しそうに街を見下ろしていた。
「やれやれ、やっと着いたかい。割のいい仕事だから張り切ってみたけど、ガリアからロマリアに出向いて、さらにこんな僻地までやってきたらさすがにうんざりするなあ」
「まあ、ドゥドゥー兄さまったら、仕事が始まる前はいつもぼやいているくせに。今回はダミアン兄さまもジャック兄さまも抜きなんだから、しっかりしてよね」
「わかってる、わかってるよジャネット。お前と仕事をするといつも小言ばかりだ」
 ドゥドゥーと呼ばれた少年は、肩をすくめて答えて見せた。年の頃は才人たちとほぼ同じで、華美とは言わないが貴族らしい優雅な服をまとっている。いわゆるキツネ目の持ち主で、表情を読みづらい顔立ちをしているが、とりあえず美少年と呼んでいい。
 もう一人のジャネットと呼ばれた少女は彼の妹らしく、兄のとぼけた態度に呆れた様子を見せているが、彼女も十分に怪しい風体をしていた。彼女自身は紫色の髪をした美少女であるのだが、白いフリルのついた黒いドレスを着ていて、フードから顔だけを覗かせている衣装はかなり目立つ。よほど自分に自信がなければできないことだ。
 ふたりはその後、他愛も無いことを二言三言話し合っていたが、やがてジャネットが思い出したようにドゥドゥーに言った。
「ところでお兄さま? 今回の仕事の資料、ちゃんと覚えていますよね」
「もちろんさ。えーっと、ジョン、いやジークだっけか? ジ……えーっと……その、なんとかいうやつを始末すればいいんだろ?」
 途中でドゥドゥーはもう思い出すのをあきらめて、開き直ったように答えた。が、それでジャネットの白い目が消えるわけはない。
「まあ、ドゥドゥーお兄さまったらやっぱり忘れてたのね。そんなことだろうと思って、念のためにわたしの資料を残しておいて正解だったわ。これを見て、ちゃんと覚えてから焼き捨ててちょうだい」
 わざとらしい態度でジャネットが紙片を手渡すと、ドゥドゥーは気まずそうに受け取った。
「できた妹を持つと兄は幸せだね。ありがたすぎて涙が出てくるよ……ああなるほど、思い出した。思い出したよ! あまりにもさえない人相画だからうっかり忘れていた」
「まったく、しっかりしてほしいわね。この仕事には、後金二十万エキューの報酬がかかっているのよ。ほんとにわかってるのかしら」
「そう言うけどね、ぼくにだって好みってものはあるさ。なにが悲しくてこんな弱そうな男を始末するために苦労しなきゃいけないんだか。ジャネットはいいよね、そっちのターゲットは君好みの可愛い女の子なんだろ? 不公平だよなあ」
 ドゥドゥーがうんざりした様子で言うと、ジャネットは待ってましたとばかりに顔を輝かせた。
「これも日ごろのおこないの差というものよ。楽しみね、金持ちのお嬢様って気が強いのが多いから、可愛がりがいがあるんだもの」
「また、心を操って”人形”を作る気かい? ぼくが言えたもんじゃないけど、仕事に差し支えがないようにね」
 眉をひそめて妹に苦言するドゥドゥー。けれどもジャネットは意にも介さずに笑いながら言う。
「あら? わたしはドゥドゥー兄さまと違ってわきまえるところはちゃんとわきまえているから心配なく。すべてはダミアン兄さまの夢の実現が第一、そのためにはうんとお金が必要。でしょ?」
「ほんとお前はぼくに当て付けるね。まあいいさ、この仕事でいただける額があればダミアン兄さんたちもぼくを見直すだろう。さっさと済ませに行こうか」
 そうして、ドゥドゥーとジャネットは丘を下って街へと向かった。途中で行商人や荷馬車がいくつも通り過ぎていくが、誰もふたりを気にも留めない。それだけふたりは堂々としていた。
 しかし、ふたりの目的は商売でも観光でもない。まるで隣の家にあいさつに行くような気楽な雰囲気を持つのに反して、ふたりの心には悪意が満ちていた。
「ドゥドゥー兄さま、さっきの資料をちゃんと覚えたかテストしてあげますわ。わたしのターゲットはベアトリス・イヴォンヌ・フォン・クルデンホルフ、お兄さまのお相手は?」
「バカにするなよ。ぼくは物忘れはひどいが物覚えはいいんだ。ジャン・コルベールとかいう中年の男、そいつらを……殺せばいいんだろ?」
 そこでドゥドゥーとジャネットは顔を見合わせて、不敵な笑みを交わし合った。
「さて行くか、ロマリアの坊主たちに、ぼくら元素の兄弟の仕事ぶりを見せてあげよう」
 東方号再建を阻むために、ロマリアが送り込んだ暗殺者がふたりの正体であった。だが、ふたりはそんなことを他者にはまったく感じさせないのんびりした空気を漂わせて歩いている。
 紛れもなく、このふたりは殺人に慣れたプロの仕掛人ということだ。自然体で日常に紛れ込み、前触れなくターゲットの前に現れて命を奪う。若いながらも、それだけのことをできるという計算と自信を内に隠し、ドゥドゥーとジャネットは街の雑踏の中に入り込んでいく。


 ジュリオの命を受けて、ロマリアの放った刺客が何も知らないコルベールとベアトリスに迫りつつある。ガリアの北花壇騎士団に籍を置くという彼らの実力は折紙つきで、このままでは、日を置かずして死体がふたつ転がるのは確実かと思われた。


 だが、暗殺計画の成功を確信するジュリオやヴィットーリオは極めて現実主義者であり、怜悧な思考を持っていたが、このハルケギニアのすべてを知り尽くしていたわけではなかった。だがそれは仕方がない。彼らの概念で言えば狭いであろうこのハルケギニアの大陸にも、人間以外にも無数の生物があらゆる場所に息づき、まだ解明されていない謎が数多く存在し、それらをすべて把握することなどはそれこそ神業に等しい。
 問題は、平時であればなにも影響をもたらさなかったであろうそれらの要素が、現在の混乱したハルケギニアではどこでどう作用してくるかまったく読めなくなっているということであった。
 そしてその危険要素は、実はすでに動き出し、それが教皇たちの用意した狂騒劇をある意味の喜劇に変えようとは、それこそ神ならぬ”神の代理人”を自称する彼らには想像の埒外であったのだ。


 さて唐突だが、ここで物語はその時間軸を少し多めに戻すことになるのをお許し願いたい。
 具体的には才人たちがティファニアをアーハンブラから救出して少し後、初代東方号が完成したあたりに巻き戻る。ここで才人たちがサハラ行きの使命を与えられ、それを妨害しようとするミミー星人の操るバラックシップ、アイアンロックスとの戦いにつながっていくのは少し懐かしい思い出である。
 しかしここで、実はミミー星人の影に隠れて、同時にもう一組の宇宙人がラグドリアン湖に来ていた事実があった。

「ミミー星人よ、本当に我らはこの星の海洋調査をすればいいだけなのだな?」
「もちろんだとも、我々にとっても君たちの星の調査技術はありがたいし、君たちにとっても我々の武力の庇護はありがたかろう。なにせこの星には、かつて君たちの同胞をひどい目に合わせた地球人と同じ人間たちが住んでいるのだからね」
「ああ、あの生き物は本当に危険だ。姿かたちこそ我々に似ているが、奴らの心には悪魔が住んでいる」

 その星人は、元々M78星雲のある次元に住む宇宙人で、ハルケギニアでの資源収奪をもくろむミミー星人に請われてやってきた。彼らの名はパラダイ星人、GUYSのドキュメントMACに記載のある星人で、ミミー星人やバルキー星人などと同じく水棲型の宇宙人だ。姿かたちは人間と大差はなく、かつては同族が地球に海洋調査のために訪れていたことがある。
 ただ、彼らはミミー星人とは違って本来は平和的な種族で、メイツ星人やミラクル星人のように他の星を観察しに来ることはあっても、侵略行為に加担するようなことはない。
 しかし、ヤプールを出し抜くことを目論むミミー星人は、自分の星の発展のために他の惑星の海洋調査データを欲していたパラダイ星人をそそのかした。あの地球と同じように、広大な海と豊かな自然を持つ惑星がある。そのデータが欲しくないか? と。
 パラダイ星人たちは悩んだ。ミミー星人があまりいい評判を持つ宇宙人ではないことは聞いていたが、ミミー星人は巧みにヤプールとの関連性はごまかしており、ミミー星人も彼らと同じく海生型の宇宙人であるために話に信憑性があったからだ。
 結果、パラダイ星人はあくまで海洋調査のみという条件での協力でハルケギニアに来訪することを決めた。むろん彼らはミミー星人への不信を拭い去ったわけではなかったので、派遣されたのは、専門の技術者一人とその助手ふたりだけに限られたが。

 そして、彼らはミミー星人によって次元を超えてハルケギニアに来訪した。彼らの宇宙船は潜水艇にもなっており、海の底を自由に巡りながら海水の成分や生態系の分布、海底資源の有無などのデータが瞬く間に集まっていった。
 ただ、パラダイ星人の技術者は、かつて地球を訪れた者たちが現地住民に迫害された経験から、この世界では一切陸上に上がろうとはせず、海中で秘密裏に惑星の海洋を調査した。
 だが、技術者のそんな姿勢を、ふたりの若い助手は退屈そうに見ていた。

「ねえ先生、ちょっとでいいから陸に上がりましょうよ。これだけ海がきれいな星なんだから、きっと陸も素敵ですって」
「だめだ、何度も言っているだろう。以前地球という星に降りた我々の同胞は、うかつに陸に上がってしまったばかりに原住民に子供を殺されかけた。この星も文明は未開だが同種の人間が支配している。危険すぎるのだ」
「ちぇっ」
「仕方ないわよ、わたしたちはまだ見習いなんだもの。いつか一人前になったら、もう一度この星にやってこよう」

 ふたりの助手は不満げであったが、許可が下りないのであれば仕方がない。パラダイ星人たちは宇宙船の中で紆余曲折ありつつも調査を続け、やがて満足すべき成果を得た。
 だが、まとまった観測データを持って、ミミー星人の待つラグドリアン湖へ戻ったとき、ミミー星人は完全に彼らの期待に応えた。悪いほうに完璧なまでに。

「裏切ったなあ! ミミー星人」

 バラックシップから放たれた魚雷を受けて沈み行く宇宙船の中で、パラダイ星人たちは怒りに震えたが遅かった。
 観測データを伝送した瞬間、ミミー星人は本性を表した。立ち向かおうにもバラックシップの火力は強大で、たいした武装のされていない彼らの宇宙船ではとても太刀打ちできるものではなかった。

「やはり我々が愚かだった! あんな奴らを信用したばかりに。あんな奴を信用さえしなければっ! せ、せめて研究資料だけは、うおおぉぉっ!」

 そう叫んだのを最期に、宇宙船のブリッジは魚雷の直撃を受けて大破し、直後に彼らの宇宙船はバラックシップからのとどめの魚雷を受けて爆発四散した。
 強力な水中爆発が起こり、助手ふたりが資料の持ち出しをはかっていた研究ブロックも破壊されて、ふたりはラグドリアン湖の中へと投げ出された。

「ティ……ね、姉さん……」
「手を、離さないで……」

 バラックシップの魚雷攻撃で湖水は滅茶苦茶にかき回され、ふたりはその中で上も下もわからず、ただお互いにはぐれまいとかばい合い続けた。このままでは、いくらふたりが水棲宇宙人であるといっても、濁流に放り込まれたハンカチのようになってしまっただろう。だが、ふたりが力尽きる直前に、魔力を帯びた水のカプセルがふたりを守るように包み込んだのだ。

『この単なる者たちは、この地に生まれたものではない……だが、邪なるものも感じぬ。よかろう……』

 このラグドリアンに住まう主の加護を受けて、ふたりの宇宙人の子はゆっくりと安全な湖岸へと運ばれた。
 やがて気がつき、ふたりは自分たちが置かれた状況を知る。

「助かったのね、わたしたち」
「そうだね……これからどうしよう?」
「見て、あそこに明かりが見える。きっと、人間という生き物の町だよ」
「行くの? 先生は、人間は信用するなって」
「行かなければ、わたしたちは飢えるだけ。それに、わたしたちは学者のはしくれだよ。人の言ったことを、はいそうですかと鵜呑みにして満足できる?」
「ふふ、こんな時なのになにか楽しそうだね。いいよ、わたしたちの歴史書はわたしたちで書きましょう……さあ」
 ふたりは手をつなぎ、声をそろえて言った。
「「行こう」」

 そしてふたりはラグドリアン湖畔の町のひとつにたどり着き、人間に紛れて生きていくことを選んだ。
 この直後、ミミー星人はバラックシップとアイアンロックスを駆ってウルトラマンAと戦い、東方号の特攻で倒される。そうしてラグドリアン湖には平和が戻り、人々の心から次第にこの戦いの印象は薄れていき、現在に続くこととなる。
 だがその間に、このふたりの宇宙人がどこで何をしていたのか? その答えが、これから少ししてから起こる事件で大きく羅針盤を動かすことになるのだ。


 続く



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