あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロと獅子-04


「恐るべき力じゃ……」

 騒動の中心にいたスコールを、遠くから見つめていたオスマンは、椅子に深く体を預けた。

「えぇ……とても強力で強大な力です」

 コルベールもイフリートの破壊力を目の当たりにして、己の炎でもあそこまでの力は出せないだろうと考えていた。
 数分前に揉め事が起きているから眠りの鐘の使用許可を教師が求めている、そうロングビルに伝えられ、その必要は無いと告げると杖を振るい、壁にかけてあった鏡から様子を二人で様子を伺っていたのだった。
 好奇心のつもりで見ていたのだが、あと少し遅ければギーシュはあの攻撃に潰されて命を落としていただろう。

「いかがいたしますか、オールド・オスマン」

 オスマンはその長い白髭を撫で、さてどうしたものかと考え始める。
 正直、スコールの行為はやり過ぎだ、と判断できるものだ。
 あの強大な力を無遠慮に生徒に向けたのだから。下手をすれば、というのはスコールも分かっているだろう。
 だが、オスマンにはスコールがギーシュを殺そうとしたようには見えなかった。

「…まぁ、今回は良いじゃろう。被害は抉られたヴェストリの広場だけのようじゃしな」

 そう言い、窓の外を見る。
 コルベールも少しだけ考えたあと、分かりましたと退室していった。

「(……さて、これからどうなるのかのぅ…)」

 さて、ギーシュの決闘を終えたスコールが現在何をしているかと言うと。

「………はぁ…」

 ため息をつきながら、教室の掃除をしていた。
 あの後、部屋に戻ろうとしたのだがルイズに連れられて教室に向かい、一緒に授業を受けることになった。
 昼の出来事から自分に視線を寄せられて不快感をあらわにしていたスコールが教室から出て行くか考えた時に、その授業でルイズが教師に当てられ、教室が騒然となる。

「やめてください先生!」
「危険だ!」
「ルイズ、お願い、やめて」

 何が起こったんだ? 周りの反応が分からなかったスコールが教壇に立つルイズに注目する。
 何かしら呪文を言い魔法を放つ……ただそれだけのことだったのに、何故か大爆発が怒り、教卓は吹き飛び室内には黒い煙が立ち込めた。
 近くにいたルイズも煤だらけ、教師も吹き飛ばされて気絶、当然授業は中止になりルイズと使い魔であるスコールには滅茶苦茶になった教室の後片付けを命じられたのである。

「………おかしいでしょ。メイジなのに魔法もロクに使えないなんて」
「別に」

 どうでも良さげに即座にルイズとの会話を拒否すると、ルイズはスコールを睨んで、そろそろスコールに慣れてきたのか、すぐに落ち着きを取り戻してため息をついた。

「無愛想」
「…………あんたが魔法を使えるかどうかなんて俺には関係が無い。あんたが落ちこぼれだったり問題児だったとしても、あんたは俺の依頼主でしかないからな」

 突き放すような言い方に、もう少しくらい優しくしてくれても良いじゃない、と頬を膨らませるルイズ。
 だがそれはそれとして、先ほどギーシュを圧倒した力があるスコールに強く出れない。
 仮に、スコールの機嫌を損ねてスコールが自分の元から去ってしまうと、自分は本物のゼロになってしまう。
 初めてちゃんと成功した魔法なのだ、逃したくはない。
 と、そういえば昼食の時にスコールの席を準備していなかったことを思い出した。

「あの……お昼は、ごめんなさい。スコールの分を準備してもらうの、すっかり忘れてて。もう言ってあるから、夜からは普通に食べれるから」
「……あぁ」

 これにもスコールはやはりあまり気にしていなさそうにしていたので、ホッとして掃除を進める。
 黙々と作業をする二人。沈黙が続いていく。

「ねぇ、あのさ、前に魔女と戦ったって話してたわよね?」

 その沈黙に耐えきれなくなったルイズが、口を開いた。

「凄い強い魔女だったんでしょ? どうして勝てたの?」
「……俺一人じゃ無理だった。何度も倒れそうになったが、俺には仲間がいた」
「その仲間も凄く強いのね」
「あぁ。そして誰も諦めなかった。大切なものを守るために戦ったんだ」
「時を圧縮する魔女……彼女は何がしたかったのかしら」
「…………さぁな」

 そんなもの知りたくも無い、と会話を途切れさせる。
 ただ、エスタの大統領が何か戯れ言のようなものを言っていたのを思い出した。

「……俺の知り合いが、「彼女は寂しかったんじゃないか?」と言っていたな」
「寂しかった……?」
「そいつはただのアホで、作戦のことも忘れて時間圧縮に飲まれた間抜けなんだが、時間圧縮の中で、死んだ妻と会ったらしい」
「…魔女にも、大切な何かがあったってこと?」
「どうでもいいことだけどな…」

 ある程度の掃除を終えたのはかなり遅い時間になってしまった。
 他の授業も既に終わっているとのことだったので、ルイズとスコールはアンヴィーズの食堂へ。
 アンヴィーズの食堂には、先ほどルイズが言った通りにスコールの席が用意されていた。
 ただし、その席は何故か教員達が座る席と同じ所にあり、スコールはまた不躾な視線に晒されて居心地が悪くなっていたのだが、随分とマシになっただろう。
 特に目の前に座る男はスコールをゴミでも見るかのように見ているので、それについても気分がまるでよくなかった。
 だが食べた物はかなり美味しかったので、それほど気にしないことにしたスコールだった。

 実の所、スコールに食べ物の好みは無い。
 あるものを食べ、あるものを飲む。その中で美味い不味いというものが付随してくるのだ。
 なので、コルベールに酒を勧められた時、スコールは面倒だ、と思った。
 というのも、食事が終わった後に「君の世界について聞きたいから、私の部屋で飲まないかね? 美味しいワインがあるんだ」と言われたのだ。
 であるが、どんな些細なことが元の世界へ戻ることに繋がるかは分からない。
 なるべくならそういうことに協力しよう…そう思って、ルイズにそれを告げてコルベールの部屋で二時間ほどの会話をした。
 普段酒を好んで飲まない(酒を飲んだのはバラムガーデンでのパーティ、その後のスコールたちの祝勝会、それとエスタの大統領に招かれてくらいだ)スコールにアルコールはそれなりにキツく、酔いを覚ます為に外の風に当たっている。

「…ふぅ……」

 この世界に来てから既に二日目の夜を終えようとしている。今日の朝まではそれなりに焦りのようなものを感じていたのに、今日一日で様々なことが起こり、そんな焦りも感じなくなりつつあった。
 それにスコール自身驚きを感じている。

「(バラムガーデンはシド学園長がなんとかしてくれているだろう。今俺が欠けて困ることは何も無い)」

 スコールは現在、バラムガーデンの最高責任者という立場であり、世界中から英雄として扱われている。
 そんなスコールが消えたことにその世界が震撼していることなどスコールは知らない。

「(キスティス、ゼル、セルフィ、リノア、アーヴァイン。元気でやってるかな)」

 キスティスとゼルが、スコールが行方不明になったのはサイファーが絡んでいるかも知れない。
 そう言って風神雷神共々ボコボコにして尋問という名の拷問をしていることなど、スコールは知らない。
 もちろんサイファーに覚えは無いので、ひたすら口論という名の口げんかを繰り広げていることも知らない。

「…ふぅ…」

 再度ため息を吐き、部屋で戻ろうと立ち上がる。
 ルイズの部屋の前まで来て、ふと視線に気づいた。
 ……あれは…なんだ?
 トカゲのような生物がスコールをじっ、と見つめていた。スコールも負けじとじっ、と見つめる。
 やがてトカゲはスコールの足元へ近づいていくと、スコールの足を噛もうと口を開けた。
 後ろにスッと足を下げると、何もない空中で口を閉じる。

「なんだ?」

 そのスコールの問いに、トカゲはただ見つめることで答える。
 残念ながら何を言っているかサッパリ分からないので、謎のトカゲと睨めっこすることになった。

「キュルル…」

 そう鳴いたトカゲが、振り返るとノソノソと歩き出す。
 そして、キュル、と鳴いてスコールの方へ顔だけ向けた。

「…ついて来い、ってことか?」

 なんだか不思議な体験をしているものだが、酔いが回ったスコールは、とにかくいってみようとトカゲが向かった扉の前へ着いて行く。
 扉の前へ来た所で、何の前触れもなくガチャと扉が開くと、中から伸びて来た手がスコールの腕を掴んで中へ引きこんだ。
 少しだけ警戒をしたが、目の前ではかなりきわどい格好をした女がいて、スコールは呆然としてしまった。
 スコールの背後でガチャ、と鍵が閉まる音が聞こえる。

「………。何の用だ?」

 すぐに落ち着きを取り戻したスコールは、眉間に皺を寄せてその女から目を逸らす。
 若干自分に何が起こっているのかに見当が付き始めていた。
 バラムガーデンでも同じようなことが起き、その時は冷たく突き放して泣き喚かれた上に他の部屋の連中が何事かと見に来て大騒動になったものの、スコールの言い分を信じてくれたので問題は解決した。
 が、こちらではスコールの人となりを知っている人物が殆どいない。何か問題でも起きたら…と内心ため息を吐く。

「いきなりごめんなさい。でも、この溢れる情熱を鎮火する手段を私は持ち合わせていないの」

 そんなことを言う女は、スコールの手を引くと無理やりベッドに座らせた。
 その強引な感じにリノアを思い出す。

「私の名前はキュルケ、そしてこの子は使い魔のフレイム、サラマンダー」
「……それで?」
「あなたはあたしをはしたない女だと思うでしょうね…見ず知らずの男を連れ込むなんて」
「あまり興味が無い」
「でも、私は微熱……松明のように突然燃え上がることもあるの」
「…そうか」
「あなたの姿……あのとてつもない力を持った竜と戦っていた時、そして、あの全てを燃え消そうとする程の力を持った炎の魔人を使役するあなたを見て、私の心も燃え上ってしまったの!」
「………」
「でも、あなたはきっとこんなはしたない女を許してくださると思うわ」
「………」
「あたし、あなたに恋をしてしまったの! まったく、恋はいつも突然ね」

 恋だとか愛だとか良く分からないスコールにとって、この手のアプローチは驚く程無意味だった。
 胸を押し付けられようと、露わになった足を開くような動作をしようと、スコールの表情一つ動かすに至らない。
 そんなスコールに、キュルケは不思議そうな顔をした。
 そしてキュルケにとってはあまりにも意外なことに、スコールはキュルケの肩をそれなりの強さでドンと押して、自分から離れさせ、立ち上がる。

「キャッ!」
「……悪いが、俺はそういうことにも、お前自身にも興味が無い。他を当たれ」
「あなたじゃなきゃダメなの!」
「一方的な行為なんて一人でしているのと変わらないだろ。だったら勝手にやってろ。俺を巻き込むな」
「………!」

 言い終えると部屋から出て行く。
 今まで男子にそんな扱いをされたことが無かったキュルケは、呆然とスコールが出て行った扉を見つめる。

「……ふ、ふふ…クールなのね。でもね、その程度の水をかけられた所で、私の情熱は消せないわよ…!」

 そう決意し、一人で燃え上がるキュルケだった。
 むしろ無下に断られたことでより一層火を強めるのは、キュルケの強さでもあった。

 廊下に出たスコールはそんなキュルケの決意など知る由も無く、目の前にいるこちらを睨むルイズにため息を漏らした。

「あんた、何してたのよ」
「別に」
「確か、ミスタ・コルベールとお話しをするって言ってたわよね?」
「あぁ」
「そそそそれがなんでミス・ツェルプストーの部屋から出てきているんですかねぇ?」
「………」
「お酒の匂いまでして! あああああんたキュルケに盛っていた訳ね? そそそそうなのね?」
「そんな事実は無い(なんで声が震えているんだ?)」

 スコールもさっさと否定すればルイズの怒りも収まったかも知れないのに、適当にあしらおうとしてしまうので、余計に風当りをよくしてしまう。
 というか既に嵐の前の静けさのようになりつつあるのだが、それでもスコールは弁明しようとしない。

「ダメ、キュルケだけは、絶対にダメ。手を出されるのも、手を出すのも、ぜぇーったいにダメ!」
「そもそも興味が無い。キュルケにも誰にもだ」

 その一言で、そういえばスコールはこういう奴だった……と怒りの風船から空気が抜けていく。

「………じゃあ、キュルケとは何にも無かったの?」
「コルベールと酒を飲んで戻ってきている最中にあいつにつかまっただけだ。面倒になったからすぐに出てきたが」
「…はぁ……それを先に言いなさいよ…」
「………。いや……。そうだな、悪かった」
「え?」

 スコールの意外な謝罪に、ルイズは素の返事を返してしまう。
 その反応に、若干拗ねたようになるスコール。

「俺だって謝罪くらいできる」
「あ、う、うん…そうね…」
「そこまで考えがいかなかった。すぐに経緯を説明すればよかったな」
「いや、私もその、問い詰める形になっちゃって、ごめん」
「いや」

 二人して謝罪をしあい、お互いに見つめ合うと、ルイズが面白そうに笑いだしてしまう。
 既に夜になっている為押し殺すように笑ってはいたが、今すぐにでも腹を抱えて笑い出しそうな様子だった。

「フッ……」
「あ……」

 スコールが、微笑んだ。
 それを見て、ルイズは、「(こんな顔もできるんだ…)」と心底驚いた。

「夜も遅い。早く寝るぞ」
「あ、うん」

 スコールが少しだけ、ルイズに心を開いた一日の夜。
 ルイズはスコールの顔を思い浮かべ、寝ているスコールをチラ見したりと悶々とした夜を過ごす事になった。


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