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Adventure-seeker Killy in the magian world quest-13


LOG-13 傷跡

東に進めば荒野と砂漠が広がっていくことはハルケギニアの誰もが知っている。
荒涼とした不毛の地だ。
それにしても、これはあまりに酷い。
驚くことに、この辺りの地面は砂ではないのだ。
ガラス化して光沢を放つ一枚岩に代わり、未だに熱と煙を放っている。
辺り一面の視界が漂う灰で曇り、上空には巻き上げられたより軽い灰の大雲がどろどろと広がる。
辛うじて残る残滓から、どうやらこの惨状の中心地に、オアシスとそれなりの規模の町があったらしいことが分かる。
これほどの破壊に曝される悲劇を思うと、唾棄すべきエルフたちであったとしても、憐れみすら感じる。
この破壊が一瞬で行われたことは、はるか遠方で振動と発光を確認していたので分かる。
何の予兆も無く…逃げ果せたものは居たのだろうか。
「こんなところに活火山でもあったと言うのか?」
唖然とした状態から、どうにか立ち直った老騎士がつぶやく。
はっとした様子で、若い騎士が応じた。
「エルフ共が、何かやらかしたのでは?」
「連中の先住魔法と言え、せいぜい“町を焼く”程度。こいつは紛れもない天災の範疇だ。神官の言う奇跡の類だな」
「とは言っても、エルフ共も最近は内部抗争やらで忙しいと聞きます。我らがいつもに増してコソ泥のように動くのもそのためだと」
「少なくとも、名誉ある花壇騎士の仕事ではないな。祖国ガリアのため、誰かがやらねばならぬとは言え」

花壇騎士―――ハルケギニアでも最大の国家と謳われるガリアにおいて、名誉をほしいままにする国家騎士団。
そんな誉ある彼らは、王の気まぐれで戦功とは無縁の惨めな任務に投入され、あまり士気は高くなかった。
特に最近は、情勢の悪化からいつも以上に潜みながら活動している。
このエルフの住処も、当初の予定では大きく迂回するはずだったが、今はそうも言っていられない。
救助などするつもりはないが、これだけのことが起こったのを調査もせず、おめおめ国に帰れるはずがない。

「生存者はおらんようですな」
隊を二つに分け、東回りと西回りにこの地獄を探ってみているが、今のところ強烈な臭いと熱で気分を害された以外に収穫は無い。
「皆殺しか。見たところ、外縁の方は殺されてから焼かれているようだ」
「天変地異ではなく、人の手…エルフの手によるものとしか」
「にわかには信じがたいがな」
東のエルフとハルケギニアの人間たちの戦いの歴史は長く、一概に語れる単純なものではないものの、総じて言えることが一つ。
“常にエルフの側が優勢であった”ことだ。
無論、聖地回復を訴え、長躯遠征を行うハルケギニア側が、守勢のエルフより不利なのは言うまでもない。
それでも、彼我の戦力の差は圧倒的で、それは“数”ではなく“質”の差だった。
数倍する兵力を跳ね返し、十倍の兵力を持って拮抗。
そこまで言われ、畏れられてきたエルフ。
ここにも相応の数の戦士が居たのは間違いないだろう。
それが百名であれば、自国の兵士たち千名に匹敵するものである。
果たしてどの程度の規模の居住地であったかは分からないが、決して小さくは無いはずである。
老騎士は思わずぞっとして震えた。
一体どれほどの軍勢を用意すれば、抵抗の暇も与えずに彼らを完膚なきまでに打ちのめし、街を大地ごと灰も残さず焼き払えようか?
花壇騎士を総動員しても困難…いや、不可能だろう。

「そろそろ半周ですな」
どこまで進んでも、やはり同様の惨状が広がるばかりだ。
「西回りの連中、のろのろと……」
西回りに進ませた一隊が、また四半リーグほどの距離で屯しているのが見える。
「いや、一騎だけ駆けてきます」
熱気で歪んで見えるが、酷く焦った様子だ。
「隊長殿、驚くべき発見です。こちらへ!」
到着するなりそう告げて折り返し走る。
「なんだと言うのだ」
続いて老騎士以下も西回りの隊へ駆け寄る。
さては生存者でも見つけたかとも思ったが、その割には妙な焦り方が気になったので、自然と鐙に力が入る。
「おお、来ましたな」
「見せろ、何があった」
無言で道を開ける騎士たちの先にあったのは、エルフではなかった。
人型ではあるが、人ではない。
「ゴーレム………いや、これはもしや」
「破損したものや、化石は今までにも見てきたが、これはまるで昨日造られたように美しい!!」
特に経験の浅い騎士は無邪気に喜んだ。
外殻の肌理は魔法による工芸のような精密さを持ち、球体間接には液体とも固体とも言えない奇妙な質感が、陶器を思わせる冷たい光沢を持った頭部には眠るような表情が浮かんでいる。
なにより、地中に埋没することなく、うっすらと灰を被りながら地表にあったのだ。

“場違いな工芸品”―――ハルケギニア、ひいては東方やエルフの技術力ですら再現不能の遺失物。

それがこのような姿で発見されたとなれば、大手柄に違いない。
だが、対する老騎士の貌は蒼白であった。
「“駆除系”―――これほど完全なものが…………」
「どうなされた、ガラクタ集めとは別格の手柄ですぞ」
老騎士は、死体と称するにはあまりに“新鮮”な、眠っているようにも見える駆除系から目を離さずに思考を巡らせる。
考えれば考えるほどまずい。
(馬鹿共が……これがただ偶然に、惨劇の舞台に転がっていたわけがあるまい)
部下達には極めて秘匿性の高い情報は開示されておらず、自身と同じ考えに至るはずはない。
それでも、口には出さなかったが、彼は部下を罵った。
恐怖ゆえのことだった。

彼の知る“駆除系”の知識とは、そのおぼろげな脅威についてである。
人知を超えた存在たる“場違いな工芸品”とは、その多くが用途不明であり、常軌を逸した構造の頑強さもあって分析を許さず、利用価値も見いだせないものが大半を占める。
その中にあって、「自律的に機能する」ものは、ハルケギニアの住人に分かり易い“力”を見せつけた。
周囲の物理法則を乱し、物質を変成させ、奇怪な構造を産み出し、膨大なエネルギーを放出し、時として自身を含めたすべてが灰燼に帰してしまう大破壊を巻き起こす。
特に一部のものは、誰が言い出したのか、駆除系と呼ばれる。
なかなか優れた言い表し方だと、彼は思ったものだ。
駆除系とはすなわち、虫を叩き落とし巣を踏み潰すように、亜人種を含むヒト種を一切の感情や高度な判断なく、機械的に“駆除”する存在なのだ。
場違いな工芸品と言う区分そのものが、往々にして脅威と言うにふさわしいものだが、直接的なものと言う意味で群を抜く。
正確な記録には乏しいが、幾つかの伝承―――特にエルフたちの間で悪魔として語り継がれるもの―――こそ、これらの活動の記録であると言う。
内でも、年代の新しいものは、検証によると歴史的事実として疑いようがないらしい。
ハルケギニアにおいて、一般的には被害の深刻さから天変地異の類と認識されるものだ。
未だ聖地奪還運動が激しかった時期に執筆された古文書に曰く「たった一人の仮面の男が聖地へ進軍する数千の軍勢を焼き尽くした」と言った具合である。
今では、取るに足らぬお伽噺と扱われ、その実態は「進路を誤り飢えと渇きで息絶えた」ことを面白おかしく記したのだと伝えられており、何の予備知識もなく読んだ限りではそれがもっともらしいと思える。
この老練の騎士すら数年前までは、せいぜい軍の醜聞を恐れて、なんらかの作戦的な失敗を書記官が適当に誤魔化したのだろうと言う程度にしか考えなかった。
ガラス化した地面に埋もれた、一万にも届こうと言う兵士たちの炭化した遺骸をこの東方の荒野で掘り起こし、それを報告した当時の上官から秘密を明かされるまで、であるが。

「これは捨て置け、すぐに戻るぞ!」

はっきりいって、手柄を放り出せと言う内容の言葉だ。
「報告を急ぎたいのならば、一隊を先に駆けさせればすむこと。これほどの代物を放っておくとはどういう事です」
明らかに動揺する部下を無視して、馬を急かす。
すぐに副官が続き、徐々に階級の低い者たちも引きずられるようにして、これ以上ないほどに真新しい場違いな工芸品を尻目に、一途帰路に就く。
不満はあったが、いままでにない上官の異様な振る舞いは、これ以上それについて口にすることを許さなかった・・・

LOG.13@END


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