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第六十六話「よみがえれ才人」


ウルトラマンゼロの使い魔
第六十六話「よみがえれ才人」
凶剣怪獣カネドラス
隕石小珍獣ミーニン 登場



「ゲエエオオオオオオ!」
 トリスタニアは、今まさに、またも怪獣に狙われる危機の真っ只中にあった。
 今度の怪獣は、前に湾曲した長い一本角から危険な輝きを放つ、見るからに恐ろしげな怪獣。
その名はカネドラス。宇宙を渡り歩き、生命のある星を見境なく襲撃する、外見に負けないほどの
凶悪怪獣である。それがトリスタニアに入り込んだら、世にもおぞましい惨劇が発生するだろう。
 しかしカネドラスは、トリスタニアを囲む平原で立ち往生していた。その理由は、彼の前に
精悍なる勇士が立ちはだかっていてそれ以上進めないからである。
 銀色と緑の輝きを反射する巨躯の勇士は、もう皆さんご存知のミラーナイト!
「ゲエエオオオオオオ!」
 カネドラスはハルケギニア侵攻を邪魔するミラーナイトを排除しようと、猛然と突っ込んでいく。
しかし力任せの突進など、流麗なる技の使い手であるミラーナイトの前では無謀無策でしかない。
『はぁッ!』
 事実、ミラーナイトはカネドラスの突進の軌道を見切り、相手の喉に手刀を入れて弾き返した。
急所に鋭い一撃をもらったカネドラスはむせながらよろよろ後退する。
「ゲエエオオオオオオ!」
 接近戦が駄目ならとばかりに、カネドラスは怪獣らしく口から高熱火炎を吐き出した。
大地も焦がしそうな灼熱の炎が迫る!
 しかしミラーナイトは防御にも優れる。己の前にディフェンスミラーを展開し、火炎を易々と
受け止める。カネドラスの攻撃は、これも通用しない。
「ゲエエオオオオオオ!」
 ここに至り、とうとうカネドラスは自身の最大の武器の使用にふん切った。フック状の両手を、
頭頂部の一本角に沿える。
 すると、角がカネドラスの頭から離れて回転しながら宙を飛び始めた!
 このアイスラッガーよろしく空を飛ぶ角こそが、カネドラスの一番の武器、ドラスカッター。
切れ味はビルも簡単に真っ二つにするほど鋭く、かつ速い上に自動でカネドラスまで戻るので
何回でも使用できる、殺人ブーメラン。かつてウルトラマンレオは自力での攻略が難しく、
専用の特訓を行ったことがある。それほど危険な武器なのだ。
『むッ!』
 ドラスカッターはディフェンスミラーをも切断する。ミラーナイトも危険を感じ、咄嗟にジャンプして
カッターをかわした。だがドラスカッターはカネドラスの頭に戻り、カネドラスはもう一度投げつける。
 この間髪を入れない連続攻撃で敵を消耗させていき、最後にはとどめを刺すのだ! ミラーナイト、危うし!
 が、ミラーナイトの実力はドラスカッターをも超えるものであった!
『やッ!』
 ミラーナイトは宙返りしながらカッターをキャッチ! 真剣白刃取りだ! 武器を奪われた
カネドラスは慌てふためく。
『とぁッ!』
 しかもミラーナイトは宙返りの勢いを活かしながらカッターを投げ返した。軌道の変わった
カッターは、カネドラスの眉間に突き刺さる!
「ゲエエッ!」
『シルバークロス!』
 着地したミラーナイトはすかさず必殺のシルバークロス。その攻撃により、カネドラスの方が
四つに切断されて絶命した。
 今日も見事凶悪怪獣をやっつけて、帰還していくミラーナイト。それをトリステインの
魔法衛士隊が見送っている。
「今回もウルティメイトフォースゼロに助けられましたね」
「うむ。我らがあの怪獣の相手をしていたら、多大な被害が出ていたことだろう。彼らには
真に世話になっている」
 部下の一人の言葉に、隊長がうなずいた。カネドラスのカッターブーメランは実際、脅威であった。
仮にミラーナイトが来なければ、恐ろしい数の死人が出ていたことだろう。皆、ウルティメイトフォースゼロの
活躍に感謝している。
 ……だが、誰かが不意にこんなことを漏らした。
「けど、今日もウルトラマンゼロじゃなかったな……」
 その一言で、騎士たちは一様に重い空気に包まれた。
「……ゼロは、やはりあの戦いで死んでしまったのだろうか……」
「そうなら、ゼロを殺したのは俺たちだ……」
「俺たちが愚かだったから……大恩人のゼロが……」
 次々に後悔の言葉をつぶやく部下たちを、隊長が一喝する。
「やめんか! 今更悔やんだところで何も始まらんだろうが!」
「しかし、隊長……」
「……心苦しいのは私とて同じだ。しかし、我らはこのトリステインの民の盾。やるべきことは
命を守ることだけ。くよくよして、腕を鈍らせる訳にはいかん」
 部下を諭した隊長は、もうひと言つけ加える。
「それに、ゼロが死んだとは決まっておらん。あれほどの戦いだったのだ。負傷が激しく、
どこかで休息を取り続けているだけかもしれん。……それを始祖ブリミルに祈ろうではないか」
「そ、そうですね……!」
「始祖ブリミルなら、俺たちの願いを聞き届けてゼロをお救いくださるかもしれない……!」
 魔法衛士隊はどうにか一抹の希望を抱き、トリステインの王城へと帰投していった。
 ……アルビオンとの戦争……いや、降臨祭の惨劇から既に二週間が経過している。その間、
ウルトラマンゼロの姿を見た者は一人もいない……。

 ヤプールとゼロキラーザウルスの消滅後、トリステイン・ゲルマニア連合と神聖アルビオン共和国との
戦争は、意外な形で幕を閉じた。
 陣営の双方ともに戦い気力など残っておらず、途方に暮れていたところ……突如ガリアの大艦隊が
アルビオンに上陸。その圧倒的武力を背景に、アルビオン軍を瞬く間に制圧。戦争の終結を宣言した。
それまで一切の動向を見せなかったガリア軍が「勝者」となったのである。
 ガリア軍はそのままロサイスに駐屯、戦争の後始末を開始した。そして二週間経った現在、
臨時の調停のテーブルを開こうとしていた。当然アンリエッタもそれに出席する。
 時代がそうやって動いていく中、ルイズは……魔法学院にも帰っていなかった。

 ルイズはあれ以来、ロサイスの宿の一室にずっと閉じこもっていた。本当なら、最後に才人といた
シティオブサウスゴータがよかったのだが、サウスゴータはゼロキラーザウルスに破壊し尽くされて、
街中の店が未だ閉店していて、復旧の目途も立っていないのだ。
 ルイズは二週間経った今も、トリステインに帰国しようともしない。学友らや、実家、
ミラーナイトらからの説得にも全く耳を貸さず、ふさぎ込んだままだ。ここで帰ったら、
才人を置いていってしまうとでも言うかのように……。
 今のルイズの心にあるのは、後悔。それだけだ。どうして戦争をしてしまったのか。どうして父の
忠告に耳を貸さず、参戦したのか。どうしてつまらないことで意地を張り続けたのか……。自分が
積み重ねてきたこと全てが、ここに才人がいないことにつながっているように思えて、ずっと暗い
気分の中にあり続けている。せめて何か一つだけでも違っていれば、こんなことには……。
 ゼロが、才人が死んだなどと……信じられない、いや信じたくない。しかし完全に否定することが
出来ない。生きているのなら、いつものようにすぐに自分の元へ帰ってくるのではないか。
それがないということは……。絶対に認めたくないことだが、その考えを追い払うことが出来ないことが、
余計に暗い気持ちに拍車をかける。
「ばか。あんなに、名誉のために死ぬのはバカらしいなんて言ってたくせに……、自分でやってちゃ
世話ないじゃないの」
 ルイズが今日も陰鬱として、ベッドの上に座り込んでいると……不意に、部屋の扉がノックされた。
 いつもはノックなど無視するルイズだが、今回は違った。初めに長く二回、それから短く三回……。
それは古くからの友の合図だった。
 ずっと絶望の淵にあったルイズは一瞬我に返り、扉に駆け寄って開ける。そこに立っていたのは、
果たしてアンリエッタ。
「ルイズ、二週間ぶりですね……」
「姫さま!? ど、どうしてこんなところに……」
 驚いたルイズは、はっと自分の状態に気がつく。丸二週間、ろくに身だしなみをしていないので
髪はぼさぼさだ。
「い、嫌だ。わたし、こんなひどい姿で……」
「どんな姿だろうと、構いませんわ。わたくしとあなたの仲ではありませんか」
 部屋の中に入ってきたアンリエッタは、誰の聞き耳もないことを確かめながら語る。
「戦争を収めたガリアが、各国の代表を招いて調停の会議を開くのです。それに出席するついでに、
あなたがアルビオンに留まっていると聞いて、こうして訪ねました」
 確認が終わると、アンリエッタは……バッとルイズに泣きついた。
「ああ、ルイズ! わたくしのお友達! わたくしは……何と恐ろしいことをしてしまったのでしょうか!」
「えッ!? ひ、姫さま……?」
 突然のことに面食らうルイズ。だがアンリエッタは構わずに、己の悲しみを吐露する。
「戦争の終結後……枢機卿にある書類を見せられました。それは……わたくしの推し進めた戦争で、
戦死した者たちの名簿です」
 戦死、と聞いて、ルイズは息を呑んだ。
「枢機卿は、わかる限りの者の名前を記してあると申しました。……あまりにも多くの人の名前が、
そこにありました……。全ての名前を読み終わった時には、夜が明けていたほど……。そこで愚かな
わたくしは、ようやく己のしでかしたことの重さに気づいたのです……取り返しのつかないことをした、と……!」
 アンリエッタは押し殺した声で、その人生の中で一番嘆く。
「わたくしが、彼らの命を奪ったのです……!  ああ、わたくしは何度地獄の業火で焼かれれば
足りるのでしょうか……」
「し、しかし姫さま……姫さまがアルビオン進撃をお決めになったことで、悪しき侵略者を
このハルケギニアより追い出すことに成功したではありませんか」
 アンリエッタがあまりに嘆き悲しむので、ルイズは自分の心情を抑え、彼女を励ました。
 しかし、アンリエッタは首を横に振る。
「それは間違いです。ヴァリエール公爵……あなたのお父上から呈された苦言の通り、専守防衛に
努めていても、それは出来たはずなのです。それなのに侵攻を押し通したのは、ウェールズさまを
利用した者たちへの報復……たったそれだけの理由でしかなかったのです。己のちっぽけな
感情一つのために……君主として守らなければならない民たちを、最もやってはいけない、
怪獣たちの犠牲にしてしまいました……」
 ひたすら自分を責めるアンリエッタを慰めようと思ったルイズだが、何の言葉も出てこなかった。
民が超獣に殺される様を、彼女自身の目で見ているはず。何を言ったところで、その悪夢の記憶を
紛らわすことなど出来まい。
「……名簿の最後には、あなたの使い魔さんの名前もありました。彼までも犠牲にするなんて……
ずっと、ゼロとしてわたくしたちを助けて下さっていたお方を……」
 そのひと言を聞き、ルイズは唖然とする。
「姫さま……サイトのことに気がついていらっしゃったのですか!?」
「グレンという、異世界からのウェールズさまの救世主と非常に親しいあなたたちを見ていれば、
そのくらいは予想がつきます。……ああ、わたくしははるばる異世界からわたくしたちのために
戦ってくださった彼らまでも、復讐の道具にしてました……。その罪を贖う方法すら、わたくしには
見当がつきません……」
 アンリエッタはひたすら泣き続ける。彼女が抑え切れない感情を吐き出す様子を、ルイズはただ見守り続けた。
 やがて涙腺が枯れ果てると、アンリエッタはようやく落ち着いて顔を上げる。
「……失われた命は、もう戻りません。それだけは、この底なしの愚か者のわたくしでもわかります。
その贖罪になるとは思えませんが……わたくしは、王宮中の王家の財産を処分してお金に換え、
戦死者の遺族への弔意にあてました」
 それを聞いて、再度驚愕するルイズ。
「お、王家の財産を!? 真ですか!?」
「当然です。それでも飽き足らないことを、わたくしはしたのだもの……。残したのはこの王冠だけよ。
これがないと、誰もこんな愚かなわたくしを、王とは認めてくださらないでしょうから」
 アンリエッタの言葉に嘘など一つもないことを感じ取って、ルイズは恐れおののいた。
戦没者のために、そこまでする王など歴史上一人もいない。命を奪う意味をまるで理解しない者たちばかりだ。
 その中でただ一人、命の重みを知る彼女こそが、真の王……。ルイズはそう感じた。
「このあとの会議でも、わたくしはトリステインの利益を最大限に得ようと思ってます。
今日はあなたと話せてよかった……。そのための気力が湧いてきましたわ」
「ひ、姫さまのお役に立てたのならば、幸いです……」
 若干気圧されつつも頭を垂れるルイズ。そんな彼女に、アンリエッタは指摘した。
「ねぇ、ルイズ……あなたは、いつまでここに留まっているのかしら?」
「え?」
「わたくしが偉そうに言えたことではありませんが……いつまでも同じ場所で立ち止まってても、
何も始まらないわ。悲しみに押し潰されてしまいそうで、気持ちを整理する時間も必要だけれど……
いずれは、人はまた一歩を歩み出さないといけないものよ。わたくしは、グレンたちからそのことを教わったわ」
 グレン……ウルティメイトフォースゼロの仲間たち。彼らはどんな暗闇の中にいようとも、
その先に光があることを信じて、歩き続けている。ヤプールという絶望に打ち勝ったのも、
それが主たる理由だ。
「彼らはゼロが死んだとあきらめずに、彼の行方を今も探し続けていると聞いてます。わたくしも……
ゼロと、使い魔さんが死んだとは信じ切れませんわ。確証なんてないけれど、どこかで生きている、そんな気がします」
 と語ったアンリエッタは、ルイズの瞳を覗き込む。
「ルイズ、あなたはどう思うかしら。そして……自分はどうすべきと考えるかしら?」
「わ、わたしは……」
 今のルイズには、何も答えられなかった。頭の中がごちゃごちゃで、考えが纏まらない。
「……すぐにどうこうしろ、とはわたくしは言いません。あなたのことは、あなた自身で決めるものだもの。
でも……早い内に、あなたが一歩を踏み出すことをお祈りしてます」
 時間が来たのか、その言葉を最後にアンリエッタは退出していった。
 後には、座ったまま途方に暮れるルイズだけが残された。

 ……ルイズの前から姿をくらました才人。その才人は今、不思議な空間の中にいた。
『……あれ? ここは……』
 気がついた才人の視界に、まるでテレビの画面が映し出されるように、ある光景が展開される。
『こ、これは……』
『キャ――――――――オォォウ!』
『ぐッ……ぐぅぅッ……!』
 それは、ゼロが怪獣アントラーの突進を真正面から食い止めている様子。彼のカラータイマーは
ピコンピコン、と赤く点滅している。エネルギーが尽きかけている証だ。
 そして才人は、この光景に見覚えがあった。ハルケギニアの大地に召喚されたばかりの頃……
フーケを追いかけて、アントラーが出現した時のものだ。
『どうして、今になってこんな昔のことを……』
 才人は過去の記憶が目の前で展開されていることで、これが何か一つの考えに至った。
『これが、走馬灯って奴かな……』
 意識が途切れる前、何をやっていたかを思い出す。大いなる絶望、ゼロキラーザウルスを倒すために……
ルイズたちを助けるために……命を犠牲にしたのだった。
 あれで自分が生き残れるはずがない……。つまり今見ているのは、今際の走馬灯に違いない。
『うわあああああああああああああああああああああああッ!!』
 目の前の光景が切り替わる。今度は、最初にアルビオンに赴いた時のこと……ガッツ星人、
テンペラー星人、ナックル星人の三宇宙人の集中砲火をゼロが食らって苦しんでいる。
『ぐああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』
 また光景が変わった。今度はタルブ村での決戦。ゼロがブラックキングとキングジョーに
締め上げられている。
『ぐうおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
 その次は、円盤生物軍団に袋叩きにされているところ。
『うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――――――!!』
 その次は、デスフェイサーのネオマキシマ砲に押し切られて、壮絶な爆発に呑まれるところ。
『くっそぉッ! あんな奴らの好きにさせたままだなんて! このッ! このぉッ!』
 その次は、ヒッポリト星人の罠にかかって屈辱を味わわされながら固められそうになっているところ。
『うあああああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』
 その次は、カブトザキラーのM87光線を食らって追い詰められているところ。
 全て、ハルケギニアに来てからの戦いの中での出来事だ。彼と一心同体の才人も当然経験してきたこと。
 これらを目の当たりにした才人がつぶやく。
『こうして見てみると……俺たちの戦いって、苦戦の連続だったなぁ……』
 ウルトラマンゼロはあのウルトラセブンの血を受け継ぐ、若いながらも凄まじい力を秘めた大いなる戦士。
しかし、実際の戦いはこのように、何度も敵に追い詰められてばかりだった。やはり実戦というものは、
ゼロほどの力があっても楽なものではないのか。
 そう考えた才人の前に、この記憶がよみがえる。
『くぅッ……一体どうなってるんだ……? 身体が重すぎる……!』
『! これは……!』
 雪山の中で、ゼロがアイスロンとスノーギランの二大超獣に追い詰められている。……いや、
ただ追い詰められているだけでなく、ゼロはこの時、明らかに不調だった。
 動きは非常に鈍く、技のキレはなく、光線技は相手まで届かない。いつもなら考えられないくらいに
力が弱っていた。
 そして、その原因というのは……。
『俺には何の異常もない。異常があるのは……才人、お前の方にだよ』
 そうなのだ。この時、ゼロには何も問題がなかった。問題があったのは、才人の方である。
才人が戦いに積極的でなくなっていたから、ゼロがそれに引っ張られて、力が出せなくなったのだった。
 そしてこれを思い出した才人は……ある一つの考えに至ってしまった。
『まさか……これまでのゼロの苦戦は……俺と合体したから……?』
 ゼロは非常に腕の立つ戦士。それがこうも何度も苦しめられたのは……自分が弱かったからではないのか? 
雪山の時だけでなく、本当は最初から……自分はゼロの足枷になっていたのではないか?
『そ、そんな! 俺のせいで、ゼロが苦しみ続けたなんてこと……そんなことはないはずだッ! 
誰か、誰か否定してくれッ!』
 その考えを振り払おうとする才人だが、その時……真っ暗闇の中に、ゼロの背中が浮かび上がった。
『ゼロ……?』
 その背中は……どんどんと才人から遠ざかって、小さくなっていく。
『待ってくれ! ゼロ、行かないでくれぇッ! お前がいなくなっちまったら、俺は、俺はどうしたら……! 
ゼロぉぉぉぉぉぉぉぉ――――――――――――――――!!』
 必死に手を伸ばそうとした才人だが、身体が動かない。いや、身体の感覚もない。
 その間に無情にも、ゼロの背中は離れていき……闇の中に消えてしまった……。
 そして……。

「ゼロぉぉぉぉぉッ!!」
 目を覚ました才人は絶叫した。
 ぜぇぜぇ、と荒い息をついて、ひと言発する。
「夢かぁ……」
 寝ぼけ眼から覚め、今自分の置かれている状況を把握しようとする。
 ここはどこだ? 見たことのない場所だ。こぢんまりとした部屋の中で、自分は粗末だが
清潔なベッドの上で寝ていたようだ。
 どうしてこんなところにいるのかは皆目見当がつかないが、一つだけわかったことがある。
「……俺、助かったのか……」
 自分は絶対に死んだものだと思っていた。が、しかし、こうして生きている。ここが死後の
世界という訳でもなさそうだ。
 安堵していると……目の前にいきなり、赤い何かがぬっと顔を出してきた。
「キュー?」
「……うわぁぁぁッ!?」
 ギョッと驚く才人。赤い何かは、全身赤いヒレみたいなものに覆われた厳つい顔つきの、
けれど鳴き声は小動物のような不思議な生物だった。
「ぴ、ピグモン!?」
 才人は思わずそう叫んだ。この生き物は、地球で人気の高い小怪獣、ピグモンによく似ているのだ。
しかしよく見ると、ピグモンよりもガタイがいい。近縁種か何かだろうか?
 そして気がつけば、近くにいるのは赤い生き物だけではない。周りには、大小男女取り混ぜた
子供たちが自分をじっと見つめている。どの子も薄汚れた服装だが、目はいきいきと輝いている。
「変な人だ! 怪しい人だ!」
「ミーニン、行こう!」
「キュッ、キュッ」
 子供たちは才人の奇声に驚いたのか、赤い生物を連れてあっという間に隣の部屋に逃げていく。
「お、おい……、誤解だ誤解!」
「変人だ! 近づいちゃダメな種類の人だ!」
 才人は言い訳しようとしたが、子供たちは止まらずに全員部屋を去っていった。
「なんなんだよ、あいつら……。それにしても、ここはどこなんだろう」
 はぁとため息を吐きつつも、今の自分の状態を確認する才人。確実に死んだと思われた自分が
生きていることが一番の疑問だったが、そこは魔法使いの世界だから、何が起きても不思議ではないと
適当に解釈した。
 それから自身の身体を確かめると……とんでもない変化に気がついた。
「な、ない!? ガンダールヴのルーンが……!?」
 左手の甲に、ルイズと契約してからずっと刻まれていたルーンが、綺麗さっぱりなくなっているのだ。
最初から何もなかったかのように。
「ゼロ、大変だ! 俺のルーンが……ゼロッ!?」
 咄嗟に手首のウルティメイトブレスレットに視線を移したが、更に驚くべきことに気がついた。
 ブレスレットのランプに、光が灯っていないのだ。これはゼロの命の輝きも示している。
それが消えているということは……まさか!?
「う、嘘だろゼロ!? 俺たち、一心同体じゃないのかよ! 俺だけ助かって、お前は助からなかったなんて
ことはありえないだろ! 何とか言ってくれよ、ゼロぉぉぉッ!」
「あ、あの……大丈夫?」
 腕のブレスレットに必死で呼びかけていたら、子供が逃げていったドアから、涼しげな美声が聞こえた。
 はっ、とそちらへ振り向くと、ドアから流れる星の川のような金髪の娘が現れた。
 その娘は、非常に胸が大きかった。


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