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エデンの林檎 七話

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七話 『間違えたんだからスルー進行で』


 新たに実がなった。実っているのは五つの“バクバクの実”
 シエスタにそれらを採取させながら、ルイズは小屋へ戻る。机の上には分解されたショットシェル。

「バクバクの実ですか~どういうものなんですか?」
「錬金よ。ただし金属どころか生物無生物に関わらず、食べて作り変える能力」
「……土のメイジの方々が昏倒しそうな能力ですね」
「ギーシュ当たりが欲しがりそうな能力ではあるわね」
「何よりおなかがすかなくなるのがいいですねぇ」

 土でも石でも何でも食べてその腹を満たすことができる、それは確かに飢えから逃れるには最良の能力といえた。

「でもダイアルを見ても条件はわからないですねぇ」
「まあ五つも手に入ったしいいんだけどね」


 ルイズはじっとその実を見つめた。
 じっと見つめる。
 錬金の魔法を力技で実行するこの身の能力は、魔法を常に失敗するルイズには魅力的に映った。

 だがしかしここに不文律がある。

『悪魔の実は二つは食べられない。食べれば体が破裂する』

 実に手をかざしそのうちを覗き見る。
 流れるのはかつて二つ以上を喰らったものの末路。
 血しぶきを撒き散らしながら体の前面が裂け、胃が、腸が、肺が、心臓が、肝臓が、裂け目から外に飛び出している。
 悪魔の実という名の寄生生物が同種に感じる免疫拒絶反応。

 実から手を離し、ルイズはナイフを手に取った。


 昼食の場、ルイズはそれを己の食事に放り込む。
 ミョズニトニルンの能力を徹底活用して作り上げた希釈した悪魔の実のペースト。
 己の未来を覚悟しつつも、ルイズはそれを混ぜ込んだスープをあおった。
 いつもどおりうまい。

「ああああああがああああああ!」

 直後、ルイズは大量の血を吐き出す。
 ふくらみ血管の浮き出る腹部。

「ガボッ」

 腹が裂け、臓腑が飛び出した。




 結果から言えばルイズは助かった。一から十まで計画通りに。
 食堂はまさに大惨事だった。
 倒れる死に体の少女と腹から飛び出た臓物。

 実のかけらを悪魔の木の樹液から作った溶液で希釈し効果を軽減し持続時間を延長。
 あえて食堂で行うことで治療の水の魔法を得意とするメイジたちの前で爆散、治療への近道を用意する。
 加えて魔法の拘束具を使って胴体を固定、飛び散りを軽減する。

 初めからゼロだった少女にとって、すべてを失うことへの恐怖はなかった。

 誤算は唯一つ、信じがたい痛みにショック死しかけたこと。
 予想をはるかに上回る痛みは彼女にトラウマを刻み込む。“痛いのは怖い”
 この日からしばらくの間、恐怖で眠れなくなりシエスタかキュルケに添い寝を頼むようになるのだが、それはまた別の話。
 某CMのチワワっぽくてたまらないと二人がとろけた笑顔を浮かべていたが、怖いから視界から外そう。


「それで原因はわかるかね?」
「魔法の失敗だと思います」

 オールド・オスマンに取り調べられるも知らぬぞんぜぬを貫き通す。自分の爆発魔法が暴走したのだろう、と。
 魔法により修復された腹部を撫でながら、ルイズは結果に満足していた。
 実同士が起こす拒絶反応、免疫機能が起こすショックが水の魔法により整合させられている。
 魔法という現象が起こす“こじ付けのつじつま合わせ”
 それが彼女を救うだろうという、ミョズニトニルンの知識から組み立てた“絶対当たる未来予想図”
 ベッドの中で付き添いのキュルケの胸に顔をうずめながら、ルイズは一人笑みを浮かべた。

 ああ、やはりコレはいいものだ。なんて弾力があってやわらかいのか。


 研究観察用の小屋の中、ルイズはシエスタにもたれながら古びたさび釘をかじっている。
 鉄でできたそれがまるでクッキーのようにコリコリ音を立てる。
 うまい、体に毒でしかないはずの酸化鉄まみれのさび釘が無性にうまい。
 コレがバクバクの実の恩恵か、と驚きながらルイズはギーシュから決闘後に巻き上げた青銅製のバラの造花をかじりだした。

「本当に何でもだべれるんですねぇ」
「しかもおいしいのよこれが。とんでもないわ」

 バラの造花をムシャムシャ平らげた後、傍らに積み上げられた鉄くずと残骸の山に目をやる。
 その中から衛士のものだろうか、ポッキリへし折れた剣をかじりだす。
 鞘ごとごりごり食べながら、ルイズは紅茶に手を伸ばした。

 デルフリンガーは御満悦だった。
 さびだらけの己をいきなり飲み込みだしたルイズに慌てふためきはしたが、なにやら暗いところでごちゃごちゃした後出て着てみれば自分は新品のようにピカピカになっていた。
 研いでも落ちなかったさびや汚れは完全にきれいに落とされ、布を巻かれた古い柄はヴァリエール家の紋章が入った金銀の装飾つきのものに作り変えられている。
 鞘にいたっては花をイメージしたらしい華美さにあふれるデザイン、中央のヴァリエール家の紋章がアクセントだ。
 デルフリンガーは武器として使われなかった己のこれまでをきれいさっぱり忘れることにした。
 主の新しい能力の何とすばらしいことか!

 デルフの目の前でルイズは剣を一本かじり終わった。
 しばらくもごもごと口を動かした後、流し込むように紅茶を空ける。
 近くの薬ビンのふたを開けてそこに何かを吐き出した。それはどろどろに溶けた赤錆。
 赤錆をすべて吐き出した後、右手を口の中に突っ込んだ。
 シエスタとデルフが驚く中、ルイズは口から一本の剣を鞘ごと抜き出していく。
 明らかに鋼を後付された、青銅のバラをあしらった青い鞘のレイピア。
 ギーシュのバラを使ったためか、デルフには魔法の力を感じ取れた。

「これギーシュは何と交換って言うかしらね?」
「杖にもなるんですよね? だとしたらかなりじゃないですか」
「……おでれーた。娘っこは世を席巻する彫金師になれるぜ」


 錬金の授業の前、いつの間にか召喚した木の実から出てきた変なブタ、ということになっていたカツ丼をフレイムの上に乗せ、ルイズは着席する。場所はギーシュの隣。

「ギーシュ、いいものがあるんだけど」
「ルイズ、藪から棒になんだい?」
「いいからみなさいって」

 布に包まれていたそれは、少なくともギーシュの人生において一二を争う美しさのレイピアであった。
 その青銅のバラをあしらったレイピアに回りは一斉に息を呑む。
 ギーシュは恐る恐るといった様子でそれを手に取った。

―精神力が通る!―

 それはつまりコレの材料が数日前に巻き上げられた自分の杖であるということ。
 そして何より杖の代わりになるということ。

「ルルルルルルルイズ! こここここれは一体!?」
「森の前に私の観察小屋があるでしょ? そこであんたのバラを使って作ってみたの。どう?」
「すすすすすばらしいよ! こんなに美しい剣を僕は見たことがない!」
「それは良かった。で、ギーシュ」

 ずいっと前に出てレイピアを取り返す。

「これの代わりに何をくれる?」
「僕のヴェルダンデに宝石や鉱石を探させよう! 好きなだけもっていってくれるといい!」
「成立ね。じゃあ上げる」

 ギーシュはレイピアをもらって、ルイズはさまざまな原石を大量にもらって御満悦だった。
 その光景に目が行き過ぎたのか、ルイズが錬金の魔法はできないのだということは忘れ去られていた。


 カツ丼はシエスタに餌をもらっていた。
 学園内でイノシシになったりブタに戻ったりしていたせいか、いつの間にかカツ丼は『ルイズの召喚した実から生まれた』だの『ルイズの召喚した実を食った』だの言われるようになり、気がつけばルイズの使い魔扱いになっていた。
 まあ一部当たっていないでもない。

 木の実よりは体面も良かろうということで木の実の変わりに使い魔登録されたカツ丼は、ブタブタと餌をほおばっていた。


 キュルケは自分の感情をもてあましていた。
 妙に可愛らしい様子を見せたかと思えばいきなり黒くなるルイズ、その寝姿は顔の形が崩れるほど愛らしい。
 そんな感想を同性に抱く自分に驚きつつ、キュルケはルイズを探す。
 この感情をどうすればいいのか、考えながらたどり着き、ひとまず思考を変更する。

 目の前でルイズが材木をかじるのを止めるべきかどうか。


 変則的な錬金魔法、そんな明らかに間違った説明をしながら、ルイズはギーシュから受け取った宝石の原石をかじる。
 少しの間もぐもぐ咀嚼したあと脇に吐き出すのは不純物のみ、直後卵形の純鉱石を吐き出す。

「ルイズ、これももしかしてサファイア?」
「サファイアの単結晶。土のメイジには金やプラチナにも勝る価値があるでしょうね」
「……反則じゃない?」


 授業の合間にもルイズは何かをかじっている。
 今かじっているのは貝殻。
 壊れたダイアルを食べ、修復して吐き出す。
 それを延々と繰り返していた。

「うあ、これ排撃(リジェクト)ダイアルのかけら? かけらだけ? ちえ~」

 周りの生徒たちには偏食にしか見えなかったという。


 悪魔の木の裏手、暗い森の中、手書きの的を設置したそれにルイズは相対している。
 手の中には単発式拳銃。バクバクの実の能力で作り上げたオーバーテクノロジーの塊。
 横のテーブルにシエスタが荷物を置いていく。内容は鉛、真鍮のインゴット、硫黄などの火薬の原料。
 それらをすべて口の中に放り込み、しばし後に吐き出す。
 吐き出されたそれは最も初期の金属薬莢弾。
 各種鋳型や機材を用いなければならないそれらの製造過程を無理やりスキップして結果だけを導き出す、悪魔の実の能力。

「黒色火薬は弱いからいやなんだけどね~」
「無煙火薬、でしたっけ? そっちは駄目なんですか?」
「材料がわからないのよ」
「材料ですか?」
「あの獣の大筒のおまけで弾丸の情報も拾えたけど、“りゅうさん”とか“しょうさん”とか名前しかわからないの」

 作り出した弾丸を銃に込め的に向かって構える。シエスタが後ろについて固定。

 パァン、と軽いほおを張るような音、的の少し上側が粉々に吹き飛ぶ。

「思ったより反動がないわね」
「火薬が弱いって本当なんですね」

 ふうむと銃を見薬莢を口に放り込む。ゴリゴリと咀嚼し再度銃弾を生成、装てんする。
 もう一度構えて発射、今度は的の下方が破裂した。

「微妙な出来ね。やっぱりあれをやってみるか。実は十二番のやつね」
「用意しときます」

 かさかさと小屋へ向かうシエスタを見やり、ルイズは銃をくわえて噛み砕いていく。
 小屋の中でシエスタが実と鋼を用意していた。
 机にはルイズの手記、『無機物への悪魔の実の適応方法』


「ところでルイズ、使い魔の品評会はどうするの?」
「カツ丼を出すわ」
「……あれはペットでしょ?」
「黙ってればわからないもの」


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