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第五十八話「軍港SOS」


ウルトラマンゼロの使い魔
第五十八話「軍港SOS」
幻覚宇宙人メトロン星人 登場



 ガリアの軍港サン・マロン。海沿いに造られた巨大な軍港で、ガリア空海軍の一大根拠地である。
ハルケギニア最強と称されるガリア自慢の大艦隊は、普段はここにズラリと帆を並べている。
 その軍港に今、タバサが指令を受けて来ていた。
「爆発未遂は今月に入ってすでに二件目です」
 タバサと人間に化けたシルフィードに若い士官が、現在軍港で発生している事件の詳細を
説明していた。甲板士官のヴィレール少尉という名だ。タバサの案内役を任されている。
「幸い全ての件で、近くにいた水平たちが犯人を寸前で取り押さえることに成功していますが、
そんな幸運が長く続くとは言い切れません。艦隊首脳部も、この連続事件には頭を悩めています。
トリステイン・ゲルマニア連合軍がアルビオン大陸の上陸作戦がもう間もなくになるだろうと
予測される中で、軍内に火種を抱えていては、陛下からの勅令が発せられた際に安心して出港できませんので」
 トリステイン・ゲルマニア連合軍とアルビオン新政府の間に本格的な戦争が勃発するまで
日がないのは、誰の目から見ても明らか。けれども、両陣営から毎日のように参戦を促す特使が
やってきても、ジョゼフ王は未だにどちらに付くのか、黙して語らなかった。
 それでも艦隊を預かるクラヴィル卿は、来たるべき参戦に備え、休みなく艦隊の整備を行っている。
その最中での、この騒ぎ。クラヴィル卿は全く気が気でないだろう。
「……爆破未遂の犯人の調査は?」
 タバサがひと言尋ねると、ヴィレールは残念そうに首を振った。
「もちろん行われましたが、全員に一貫した共通点がなく、何度洗おうと何のつながりも
発見されませんでした。共通している点を強いて挙げるとするならば、全員が自分のやったことを
覚えていないと証言することのみ。どうせ言い逃れでしょうが……」
「他の水兵の中で、犯行に走りそうな者のめぼしは?」
「全員を洗うのは無理です。何せ艦隊増強の結果、水兵の数は以前の倍に膨れ上がりました。
中には元から出自の怪しいものも多数います。それもこれも、生まれを問わずに雇い入れる
陛下の政策のせい……あッ、いえ、今のは聞かなかったことにして下さい」
 愚痴を唱えたヴィレールは、慌てて口をつぐんだ。
 そのとき……、軍港の一角、一隻の戦艦の方で大きな怒号と騒ぎが沸き上がった。
「『グロワール』号の方からです!」
「案内して」
 タバサはすぐに断じた。

 『グロワール』号というフネが係留されている桟橋では、二十歳を出たばかりくらいの若い男が、
幾人もの屈強な水兵たちに腕ずくで拘束されて『グロワール』号から引きずりおろされるところだった。
ヴィレールが水兵たちに尋ねる。
「何事だ?」
 水兵の一人が答えた。
「今さっきこいつが、火薬庫に火を点けようとしてたんです。危ないところで、俺たち纏めて
木端微塵にされるとこでしたよ」
「この『グロワール』号の、今日の当直歩哨だった奴です」
「また爆破未遂事件か……。おい、貴様、何の目的でこんな真似をしたんだ。火を点けてたら、
貴様もあの世行きのところだったんだぞ」
 ヴィレールが尋問しようとしたが……顔を上げた男は、歯を剥き出しにして獣のようにうなるばかりだった。
「うぅぅぅ……うがぁぁぁッ!」
「駄目です。こいつは正気じゃありません。話は通じませんよ」
「仕方ない……。営倉へ連れていけ!」
 ヴィレールが命ずる。それに従って男を連行しようとする水兵たちに、シルフィードが一つ質問した。
「それにしても、よく何度も危ないとこを防げるものね。見回りしてたの?」
 それに水兵たちは、一様にニカッと笑って答えた。
「それくらい、当然のことです。自分たちの身を守るためなんだから、命令がなくても自主的に
フネを守ってますよ」
「自分だけのためじゃない。フネの乗組員は全員、家族みたいなものです。家族のために
一致団結するのは当たり前でしょう」
「そ、そう……」
 水兵たちのあまりにはきはきとした回答に、シルフィードは思わず引いてしまった。
 去っていく水兵たちの後ろ姿を見つめたタバサが、ヴィレールに問いかける。
「……随分、仲がいい」
 爆破未遂犯の男を連行した水平たちは、見たところ出身も貧富もバラバラなようだった。
それなのに、何と息の合っていることか。
 ヴィレールは首肯する。
「ええ。さっきは批判的なこと言いましたけど、実際はこの軍港のほとんどの水兵同士の仲は
かなり良好ですよ。その数も、日増しに増えていってるようです」
 そこまで語ると、声を潜めた。
「ただ……あまりに行き過ぎてるので、私はいささか不気味に感じてますけどね。生まれの違いが
ある者同士だったら、いがみ合うのが普通でしょう。それなのに、そういうのがないんですから。
もちろんいいことなんでしょうけど、何がきっかけであそこまで友好関係を築けるのか……。
裏で新教が流行してるんじゃないか、なんて洒落にならない噂も流れてます」
 タバサは、周りに集まった野次馬の群集を見渡す。と、水兵たちの中に混じって、聖衣姿の
女性を発見した。屈強な男たちの間にいるのが似つかわしくないほど、清楚で柔らかな雰囲気の女性だ。
「彼女は?」
「シスター・リュシー。『ヴィラ』号の艦付き神官です」
 戦列艦以上のフネには、神官が乗り込むのが通例。戦死者が出れば彼らの死に水も取る、
なくてはならない存在だ。しかし、
「どうして他のフネの神官が、ここに?」
 タバサの疑問に、ヴィレールはこう答える。
「彼女は未遂事件が起こる度に、姿を見せますよ。ただ、野次馬って訳じゃなく、祈りを捧げるためです。
フネの爆破による大量死が阻止されたことを、始祖ブリミルに感謝してるんでしょう」
 ヴィレールの言う通り、リュシーは聖具を握り締めて熱心に祈っていた。そこに下世話な
感情がないことは、遠目からでもタバサは見て取った。
「実は、事件が起こり始めた頃は、シスターが首謀者ではないかとの疑いも掛かりました」
 ヴィレールが語る。
「彼女の父はオルレアン公派で、宮廷の一斉粛清で命を落としましたからね。犯行の動機としては
まっとうですよ。しかしどれだけ調べても何も出てこなかったので、白と断定されました。まぁ、
私は彼女が首謀者なんてこと、端から信じてませんでしたが。他の威張り散らした神官と違って、
シスターは誰にでも分け隔てなく優しいですので。水兵たちに何度も差し入れをするくらいですよ。
食べ物だったり、ワインだったり、タバコなんて高価なものまで。清貧というのは、シスターのために
あるような言葉ですね」
 タバコは、ハルケギニアの文明ではまだ高級品だ。それも気前良く差し入れにするとは、
なかなか出来ることではない。
 それはともかく、タバサはこの後、例の男が爆破未遂を起こした現場の検証を行った。
しかし、手掛かりとなりそうなものは何一つ発見できなかった。
 手掛かりは、犯人から聞き出さなくてはいけないみたいだ。

 二時間後、犯人のヨハンという男は目を覚ました。
「本当ですよ! フネを爆破しようとしたなんて、そんな恐ろしい……」
 しかし、ヨハンもまたこれまでの犯人と同じく、自分のやったことを覚えていないとの証言を
繰り返していた。
「黙れッ! 貴様は現行犯だ。貴様が火薬庫に火を点けようとしていたところを、何人もが
目撃してるんだぞ!」
 尋問の担当官がきつく当たっても、ヨハンは戸惑うばかり。その様子を、タバサとシルフィードが
壁際で静観している。
「知りません……本当に知らないんです……」
「……じゃあ、反対に、今日のことで覚えていることを全て話せ」
「今日はいつも通りに、水兵の仕事と当直任務を……。食べたものは朝飯のパン二つとミルク、
他には休憩の時にタバコくらい。他には、友人と他愛ない話をしたくらいで、特別なことは何も……」
 尋問は続くが、タバサはこれ以上有益な情報は出てこないと判断して、シルフィードを連れて
早々に尋問室から出た。
 営倉には、ヨハンの友人と思しき水兵が押しかけて、士官に抑えられていた。
「大尉! ヨハンはフネの爆破を目論むような奴じゃありません! あいつは本当に真面目な奴で、
金を貯めて田舎の家族のために土地を買うんだって張り切ってました! 何かの間違いですよ!」
「そんなことは知ったことじゃない。奴が点火を図ろうとしたことは、間違いのない事実なんだ」
 友人の訴えは、まるで取り合ってもらえなかった。決定的な証拠があるためでもあるが。
 タバサは待っていたヴィレールに尋ねかける。
「……ヨハンという士官が、心を操る術を掛けられていたということは?」
 水系統の魔法には、人の精神を操作するものもある。特に強力かつ厄介なのは、禁呪の
“制約(ギアス)”だろうか。発動に時間や場所の指定が出来、それまでは見破ることが出来ない代物だ。
 しかし、ヴィレールはその可能性を否定する。
「『ディティクト・マジック』で調べられましたが、誰かに魔法を使われた形跡はなかったとのことです。
この点は、これまでの犯人も同じです」
「そう……」
 犯人からも、手掛かりを得ることは出来なかったように見える。しかしタバサは一つの可能性に
思考が至り、一旦ヴィレールから離れて別の場所へと移動していく。

「おねえさま、これからどこ行くつもりなの? シルフィ、もう訳が分からないのね。
何が真実なのかしら。きゅい」
 移動の途中、シルフィードが質問した。タバサは次のように答える。
「水平の宿舎。ヨハンの持ち物を調べる」
「持ち物って、そんなのは軍人さんたちがとっくに調べてるはずなのね」
「彼らが調べていないものを、確かめる」
「そんなことして、何になるのね……?」
 シルフィードには皆目見当がつかなかったが、それでもタバサについていく。
 と、人気のない場所を通過していたその時……タバサは近くに、怪しい気配を感じ取って足を止めた。
どうやら、こちらを注意深く観察しているようだ。
「おねえさま?」
 油断なく辺りに目をやり……そして、背後にいつの間にか、謎の男が立っているのを発見した。
黒い服に黒い帽子、黒眼鏡と、全身黒づくしの明らかな不審者だ。
「だ、誰なのね!?」
 タバサとシルフィードはすぐさま警戒態勢を取る。一方で男は、淡々とタバサに告げた。
「タバサ……いや、シャルロット姫。我々の邪魔をするな。今すぐに手を引け」
「!?」
 仰天する二人。タバサの本当の名前は、極々一部の者しか知らないことだ。それを言い当てた
あの男は、一体!?
「我々にとって君を倒すことは問題ではない。だが、君と争うことなどは愚かなことだ。
もう一度忠告しておく。すぐにこの軍港から立ち去るのだ、シャルロット姫!」
 男は一方的に告げ、倉庫の陰へと飛び込んだ。
「ま、待つのね!」
 すぐに追いかけるタバサとシルフィードだが……角を曲がった時には、男は初めから
いなかったかのように消え失せていた。

 怪しい男がいた痕跡は、どこにもない。そこから真実をたどることは出来ないと判断したタバサは、
男の警告も構わず、予定通りの捜査を進めた。
 ヨハンは連れていかれた時、明らかに普通の状態ではなかった。しかし尋問の際には完璧に正気だった。
裏の世界で事件をいくつも解決したタバサは、彼の証言の中に一切の嘘がなく、また両方の時でも
彼が演技をしていなかったことを確信していた。
 となると、ヨハンの異常は外的要因によるものとしか思えない。しかし、他者から魔法は
使われていないという。ならば、彼の持ち物や口に入れた物の中に真実へ至る手掛かりが
あるのではないか。もしこれでも何も出なかったら、完全に手詰まりだ。
 そのため、タバサは一切の見落としがないように徹底的に調べた。食堂で彼が食べたパンやミルクの
成分を確かめたり、どんなにつまらないもののように思える持ち物も分解したり……。
 その末に、ヨハンの吸い残しと思われるタバコの中から、小さな赤い結晶がいくつもこぼれ出てきた。
知識の広いタバサは、普通のタバコにこんなものは含まれていないことがすぐに分かった……。

 捜査に時間がかかり、もう日は傾きかけていた。空は朱色に染まっている。
 その空の下で、タバサとシルフィードは軍港付きの寺院を目指していた。
「おねえさま、一体どんなものを見つけたの?」
 シルフィードが尋ねると、タバサは先ほどの赤い結晶の粒をつまみ上げて見せた。
「タバコから出てきた。捕まえてかごに入れたネズミの一匹に、これを飲ませて実験したら……」
「実験したら?」
「たちまち獰猛になって、他のネズミを食い殺した」
 ぎょっと、シルフィードが目を見開いた。
「これには理性を失わせて、周りを全て敵に見せ、攻撃性を高める効力があるみたい。これを含んだ
タバコを吸った者は、周りの人間を一気に消し飛ばそうとして……」
 タバコから赤い結晶を発見したことで、もう一つの犯人の共通点をタバサは発見した。
犯人たちは、全員事件を起こす寸前にタバコを吸っていたのだ。
 そしてそのタバコは、シスター・リュシーの差し入れしたものだったのだ……。
「まさか! あのシスターさんが、事件の首謀者?」
 そこまで説明されても、シルフィードはにわかには信じられなかった。
「とてもそんな恐ろしいことするような人には見えなかったのね。何かの間違いなのよ。
……そうだ! さっきのあの黒い男が真犯人なのね! そうなのね! きゅい!」
 タバサも、先ほどの黒ずくめの男が何者なのか、その謎はまだ解いていなかった。
 しかし、それもすぐに明かされそうだ。教会の前までたどり着いたところで、教会に入ろうと
している黒い男の後ろ姿を発見したからだ。
「あッ! あの男なのね! シルフィの言った通りなのね!」
「追いかけよう」
 すぐさま後を追いかけ、扉をくぐる二人。男は聖堂を突っ切り、神官の居住域へと身体を
滑り込ませていった。
「あそこなのね!」
 ここから先、教会の奥は、もう逃げ場などない。タバサとシルフィードはすぐに踏み込み、
一つの部屋の扉の前に立った。
「おねえさま……」
 小さく呼びかけるシルフィードにおもむろにうなずき返し、タバサが一気に扉を開け放つ!
 そこで二人を待ち構えていたのは!
「ようこそ、シャルロット姫! 私は君の来るのを待っていたのだ。……なーんちゃってねぇ!」
 サイケデリックな色彩の体表をした、何かの種子に手足が生えたかのような奇抜な外見をした怪生物だった!
「か、怪人!? し、し、侵略者なのね!!」
 予想外の出来事に、シルフィードは思わず叫んだ。タバサも声もなく驚いているが、目の前の怪人が、
黒い男の正体なのだと直感で理解した。
「おっと、自己紹介しておかなくっちゃね。こっちばかりが、そっちのことを知ってるなんてのは不公平だ。
私はメトロン星人というものだよ。お二人とも、歓迎しよう。まぁ立ち話も何だし、こっちに来て座りなさいな」
 メトロン星人と名乗る怪人は、異形の見た目に似つかわしくないほどのフレンドリーな口調で
タバサたちを部屋の奥へ誘い入れた。
 部屋はメトロン星人が改造したのだろう、ハルケギニアでは見られない様相になっている。
草を結って作ったらしい板のようなものの上に丸くて脚の短いテーブルが置いてあり、メトロン星人は
その板の上に腰を下ろす。
「これは「畳」というものだよ。上がる時は、履き物を脱いでね。それがマナーだから」
 タバサとシルフィードは警戒しながらも、言われた通りにタタミという板の上に乗って、
腰を下ろし目線を合わせた。怪人とテーブル、「ちゃぶ台」を囲む、何とも異様な構図が出来上がる。
「何か飲む? はい、眼兎龍茶」
 メトロン星人は筒状の腕で器用に、二人の前に小さな缶を置いた。当然、こんな得体の知れないものに
易々と手をつける二人ではない。
 警戒する二人を笑うメトロン星人。
「毒なんか入っちゃいないよぉ! こんな感じにぐっと行きなさい。ズズー」
 メトロン星人は自分の分の缶に刺したストローを、口……らしいところに当てて、中身を一気に吸い上げた。
「ッハ~。おいちい~!」
 からかっているような態度に、シルフィードは神経を逆撫でされた。
「こんなのに付き合っていられないのね! あんたの陰謀はおねえさまが暴いたわ! もう大人しく
出ていきなさい!」
 強い口調で言いつけるが、メトロン星人にはさっぱり効いていないようだった。
「私は何も陰謀なんかしちゃいないよぉ。それに言われるまでもなく、私はもうすぐこの星から
おさらばするのさ」
「え?」
 言っている意味はよく分からなかったが、シルフィードはやはりからかわれていると受け取った。
「何でもいいから! とっとと出てくのね! リュシーさんに罪を被せようとしておいて
教会に居座るなんて、図々しすぎなのよ!」
「罪を被せるぅ……? ハッハッハッ!」
「何がおかしいのね!?」
 何故か肩を揺すって笑うメトロン星人。シルフィードはますます怒るが、それでもどこ吹く風といった様子。
「まぁまぁ、そう慌てなさるな。帰る前に、私の元までたどり着いた君たちに! 私がどうしてここにいて、
何のために、何をやっていたのか! ということを一つ一つ教えてあげようじゃない」
 メトロン星人はいきり立っているシルフィードに構わず、話し始めた。
「まずは爆破事件……いや、爆破未遂事件の手口から話そうかね。まぁ、至って単純だよ。
トリックはシャルロット姫、君が突き止めたので正解。タバコに仕込んだ宇宙ケシの実で、
タバコを吸った人を凶暴化させて、火薬満載のフネに火を点けてドッカーン! っていう風に
差し向ける。それだけ。タバコを利用するというのは、昔私の同族が使った手段でねぇ。
今回利用させてもらった」
 犯行の手口を語ったメトロン星人は、次にシルフィードにとって驚くべきことを口にした。
「そのために、リュシーくんは差し入れにタバコを選んだんだ」
「そ、その言い方……リュシーさんも共犯だったって言いたいの!?」
 シルフィードはバンッ、と激しくちゃぶ台を叩いた。
「嘘おっしゃい! リュシーさんは、あんたみたいのに協力するような人じゃないのね!」
 それに対して、メトロン星人はこう返した。
「まッ、確かに昼間のリュシーくんに、自分が毒薬を配ってるなんて自覚はなかったね」
「ど、どういうこと?」
「それと一つ訂正するなら、リュシーくんが私に協力したんじゃないよ。関係が逆だ。私が、
リュシーくんの計画に手を貸したんだよ」
 その言葉に、シルフィードはますます混乱する。
「それって、リュシーさんの方が主犯だって言いたいの? そんなはずないのね! あんなに人の
良さそうな人が、そんなひどいことをしようなんてこと! 訳分かんないこと言って、はぐらかそうと
しないでよね!」
「ハッハッハッ、それは言い掛かりだよ。いいかね、君。人が本当に心の奥底で抱えているものというのは、
そと見からではそうそう分からないものなんだよ。昼と夜では違う顔、というのも珍しくはない」
 おどけた態度を崩さないメトロン星人はうそぶき、ポンと手を叩いた。
「百聞は一見に如かず。夜のリュシーくんをお見せしようじゃないか。おーい、リュシーく~ん、
入っておいで~」
 扉へ向かって呼びかけるメトロン星人。すると、外から扉が開かれて、噂のシスター・リュシーが
彼らの元へと歩み寄ってきた。
「リュシーさん……ッ!」
 その表情をひと目見て、シルフィードは凍りついた。
 昼間は纏められていた金色の後ろ髪が、今は解かれている。雰囲気が大きく違うのは、
決してそのせいではない。
 今のリュシーは、神官ではなかった。冬の大気よりも冷たい、触れるだけで肌を切り裂かれるような
怒りのオーラを纏っている。その質は魔力の域にまで達していて、シルフィードが思わず身を引いたほどだ。
 シルフィードはリュシーの正体を、直感で知った。彼女は、怒りのままに身体を突き動かす、
復讐者なのだと――。
 メトロン星人の横に座ったリュシーは氷のような眼差しでタバサを見つめ、一礼した。
「お昼ぶりですね。改めて名乗ります。わたくし、神官の皮を被って殺された父と離散させられた
家族の復讐の機会を窺っていたリュシーと申します、騎士殿……いえ、シャルロット様。――ひと目でお察ししました」
 タバサの中の謎の一つが、氷解した。メトロン星人が何故自分の正体を知っていたのか。

 神官を装う復讐者、リュシー。それと宇宙人、メトロン星人。彼らは一体どのような関係なのだろうか。


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