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第五十六話「異次元の三人」


ウルトラマンゼロの使い魔
第五十六話「異次元の三人」
音波怪人ベル星人
異次元人アクゾーン 登場



 ガリアの王都リュティスで人間が連続で蒸発する事件が発生し、イザベラに影武者を命じられたタバサ。
しかしその両人が一瞬の内に、どことも知れぬ怪しい森の中へ放り出されてしまった。そこに襲い来る怪獣トドラ。
絶体絶命かと思われたその時、見たことのないウルトラマンが参上、二人を救う。その後に一人の青年が
二人の元へと現れた。自身を風来坊と称する青年は、ウルトラマンをダイナ、そして自分をアスカと名乗った……。

「私はタバサ。こっちはイザベラ」
 タバサはアスカと名乗った風来坊に、自身たちを短く紹介し返した。するとイザベラが憤慨する。
「私の名前をそんなおざなりに唱えないでくれる!? 私はガリア王国現国王ジョゼフ一世の
ただ一人の王女、始祖ブリミルの由緒正しき血筋を受け継ぐ、高貴な血統なんだよ!」
 とまくし立てるが、
「ふーん。偉い人なんだな」
 アスカがそっけない反応なので、ガクッと肩を落とした。
「ちょっと! たかが平民の分際で、このイザベラさまに対してその態度は何なのよ!? 
無礼極まりない!」
 怒りの矛先をアスカに向けるが、アスカは烈火のような憤怒をぶつけられても平然としていた。
このやり取りをプチ・トロワの召使いたちが見ていたら、卒倒したことだろう。
「そう言われても、俺はきみたちとは違う国の人間だからさ、ガリアとかシソブリミルとか
言われても、何のことだかわかんないんだよ」
 アスカが「違う国の人間」と言ったことに、タバサが関心を抱く。
「どこの生まれなの? ハルケギニア大陸では、ない?」
「違うよ。ネオフロンティアスペースの地球ってところなんだけど、きみたちの国からは
遠すぎるから、きっと名前も知らないだろうね」
 ネオフロンティアスペースのチキュウ……どういうところなのだろうか。
 そういえば、この人はどことなく雰囲気がルイズの使い魔、サイトに似ている。もしや同郷だろうか。
 そうタバサが考えていたところ、アスカがハッと明後日の咆哮を見上げ、タバサとイザベラに警告する。
「気をつけろ! 新手の敵が近づいてる!」
「えッ!? 嘘!?」
 敵、と聞いて、イザベラが大いに脅えた。その直後に、彼らの耳に鈴の音に似た謎の音が飛び込む。
「くッ! この音は……!」
「うッ……!?」
「な、何!? 頭が、割れるように痛いぃぃぃ!」
 その途端に、三人とも急激な頭痛を感じて頭を抱えた。タバサが痛みをこらえながら音の鳴る
方向を見上げ、思わず息を呑む。
 いつの間にか森の真ん中に、一つ目の虫を混ぜたかのような巨人が立っており、こちらを
見下ろしているのだ! 激しい頭痛を伴う音波は、怪巨人が出しているものに違いない。
「ベル星人! くッ!」
 アスカは怪巨人をそう呼び、腰のホルスターから青と黒の奇抜な形状の銃を抜いた。素早く照準を
ベル星人に合わせ、引き金を引く。
 銃口からは光の弾丸が飛び、はるか遠くのベル星人に見事に命中した。そのダメージにより
ベル星人がよろめく。
「その銃……」
「ガッツブラスターって名前なんだ。見てろよぉ……!」
 タバサはアスカの使う銃が、ハルケギニアに普及しているものとは比較にならないほどの
高性能であることに目を見張った。そして先日目に掛けた、ギラッガスが策略のために
配布した銃に似ていると思った。
 ベル星人は胸の前で両手をバツの字に組むと、残像現象による分身を行いながら移動する。
しかしアスカはその奇怪な動きを見切り、ベル星人の移動先を正確に狙い撃ちした。光弾は再び
ベル星人に命中する。
 二発目の攻撃により、ベル星人の姿がスゥッと溶け込むように消えた。それと同時に、
脳を直接苛む音波攻撃もやむ。
「た、倒したの……?」
 イザベラが顔を上げて恐る恐る訊ねると、アスカが答えた。
「攻撃に驚いて退散しただけさ。それより見つかったのがまずい。敵の追っ手が来るかも。
早く場所を移ろう……」
 とまで言いかけるも、また何かの気配に気がついて顔をしかめる。
「いや、もう来た。隠れるんだ!」
「あッ、ちょっと!」
 アスカはイザベラとタバサの手を引いて、近くの草むらの陰にまぎれ込んだ。直後に、
追っ手らしき者たちが複数駆けつけてくる。
 黄色い服の上に簡素なデザインの鎧兜を被った、一般兵という感じの集団だった。肌は一切見えない。
銃で武装しており、その人数と先ほどから異常事態続きで精神的に参っているイザベラはすっかり脅える。
「ひッ……!」
 そしてたじろいだせいで、パキッ、と足元の小枝を踏んでしまった。
 その音により、兵士たちがこちらの存在に気がつく!
「まずい! うらッ!」
 相手が攻撃する前に、アスカが自分から飛び出てガッツブラスターの連射で兵士を撃ち抜く。
タバサも氷の槍を飛ばして援護し、兵士たちは瞬く間に全滅した。
「ふぅ。危ないところだったな」
 ひと息吐いたアスカは、クルリとイザベラに振り向く。イザベラはビクッと震えた。
 今のは自分の失態だ。何か責められるのでは……と思ったが、アスカはこう聞いてきた。
「大丈夫だったか?」
「え? ええ……」
「そっか。よかった」
 拍子抜けして反射的にうなずくと、アスカは微笑んでそれきり何も言わなかった。タバサは、
イザベラには目もくれずに兵士の死体を用心深く検分している。
(……な、何だい! どこの馬の骨とも知れない平民が偉そうに! シャルロットも、寛容さを
見せつけて優位に立とうって訳!?)
 糾弾されなかったことに一旦はほっとしたイザベラだが、すぐに二人に対して逆恨みの感情を抱いた。
歪んだ自尊心とタバサへの劣等感が根強い彼女は、許されたことに素直に感謝できないのだ。
 イザベラが悶々としている一方で、やるべきことをやっているタバサがアスカに尋ねる。
「この兵隊は、何者?」
「こいつらは……」
 アスカが兵士の一人の面を剥ぎ取る。その下から出てきた顔は……鱗に覆われた魚類か
爬虫類のような異形の顔だった。
「……!」
「ひぃッ! 何よこいつら!?」
「こいつらは確か、アクゾーンっていう異次元人だ。ということは、遠くないどこかにこいつらの
本拠地があるはずだ」
 アスカは周囲を見回しながら告げる。
「逃げ回ってても埒が明かない。ここから脱出するためにも、アクゾーンを倒すために乗り込まないと」
「ち、ちょっと待ちなさい! 一人で何もかもわかってるって顔しないでよ!」
 自分を置いて話を進めようとするアスカに怒鳴るイザベラ。
「そもそも、ここはどこなのさ! さっきから出てくる怪物どもは一体何なの!?」
「ここがどこかは……あれを見てもらえば、理解しやすいと思う」
 と言ってアスカは頭上、空高くを指差す。イザベラとタバサが釣られて上を見ると、表情を驚愕で染めた。
「な、何なの!? あの空は!?」
 空にはいつの間にか、月が浮かんでいる。
 ……いや、断じて「月」ではなかった。ハルケギニアの月は二つだが、今空に見えるものは一つ。
そして月よりもずっと大きく、空のほとんどを占めている。何より、青や白、緑に茶色とカラフルであった。
 ハルケギニアの科学水準ではまだ知られていないものだが、あれは「惑星」と呼ぶ。そしてイザベラたちが
見ているのは、彼女らの故郷「ハルケギニア」なのだ。
「今俺たちがいる場所は、三次元世界じゃない。ここはさっきのでかい奴、ベル星人の作った
疑似空間なんだ。つまり、人工的に作られた世界なんだ」
「人工的に、世界を作る!? そんなことが出来るの!?」
 イザベラは信じられなかった。ウチュウ人が全く常識外の能力を豊富に持っていることは
聞き及んでいるが、人工的な世界が存在するなど、夢にも思ったことはない。
 しかしこの異常な世界は、そうでもないと説明のつかないようなものであることは確かであった。
「ベル星人とアクゾーンは、この疑似空間で何か悪だくみとしてるに違いない。君たちは見たところ、
それに巻き込まれてしまったみたいだね」
「……あなたは、どうなの?」
 タバサは不思議な男、アスカに聞き返す。
 アスカという男は何者なのだろうか。ハルケギニアでは作れない光線銃を持ち、こんなにも
ウチュウ人たちのことに詳しい。敵ではないようだが、怪しいところだらけだ。
 そういえば、そんなところもサイトに似ている。
「言ったろ、俺は風来坊さ」
 しかし、アスカはそれ以上何も語らなかった。

「なぁにぃ!? 疑似空間に放っていたトドラがウルトラ戦士にやられた上に、差し向けた
部隊までが全滅しただとぅ!?」
 アクゾーンの本拠地で、部下からの報告を受けたボスが声を荒げた。
 ボスは部下と異なり、放射状に角を伸ばした異形の仮面を被った風貌だ。仮面は一部が欠け、
下の顔が露出している。そのボスがギリギリと歯ぎしりする。
「よもやベル星人の疑似空間まで嗅ぎつけるとは……おのれぇウルトラマン80め!」
 と吐き捨てると、部下に指摘される。
「ん? 80ではない別人だと? ……やかましいッ! そんな些細なことはどうでもよいのだぁ!」
 逆ギレするボス。それから感情を落ち着かせると、邪な笑みを口の端に浮かべる。
「だが、我らアクゾーンッ! に二度目の敗北はないぞ。ウルトラマンめ、来るなら来てみるがいい。
今度は返り討ちにしてくれるわ! ワーハッハッハッハッハッ!」

 タバサ、イザベラ、そしてアスカの三人は森の中を彷徨った末に、アクゾーンの本拠地と
思わしき建築物を発見した。
 それは石垣の基礎の上に木材を組み合わせ、白塗りを施した、ハルケギニアには見られない
建築技法で出来た五層作りの城郭であった。
「随分和風な城だな……」
「ワフー?」
 タバサには何のことかよく分からなかった。
「そんなことより、アクゾーンの兵士が厳重に見張ってるな。これは突破するのは困難みたいだ……」
 城の周りには、何人ものアクゾーンが一分の隙もなく城の周囲を監視していた。これでは、
アスカたちは身を隠している森から出ていくことも出来ない。
 どうしたものか、と思っていると、タバサがアイディアを出す。
「さっき倒した、敵の装備を利用するのは」
「何だって?」
 タバサは三人分の兵士の武装を剥ぎ取って運んできていた。こんなことのために持ってきていたのだ。
「これを着て、敵の親玉の元まで目をあざむく」
「なるほど! 敵の兵士の振りをして潜入するって訳だな!」
 と言って、アスカはぐっと親指を立ててサムズアップする。
「……そのポーズは?」
「これは了解って意味だ。俺が前にいたところでの敬礼でな」
「これが敬礼……?」
 不思議がるタバサ。文化の違いはあるだろうか、握り拳から指を立てたポーズは、あまり敬礼には見えない。
そう思っていると、アスカはこう言う。
「このポーズ、力強さを感じるだろう? 見せられた相手が、安心するような。この敬礼には、
自分は大丈夫です、任せて下さい! っていう意味が込められてるんだよ」
「……」
 ともかく、敵陣に侵入するために兵士の格好に手を掛けるアスカとタバサだが、ここでイザベラが文句を言った。
「ちょっと、私にまでそんな危険な真似をさせようって訳!? 冗談じゃない! 私は行かないわよ!」
 彼女に対して、アスカは機嫌を害すでもなく告げた。
「それなら、どこか安全な場所に隠れててくれ。その間、俺が行って連中をやっつけてくるから」
 寛容な言葉にまたも拍子抜けするイザベラだが、やはり逆恨みめいた不満を胸の内に募らせる。
(何さ、平民が格好つけて! ちょっとは腕が立つみたいだけれど、それでいい気になって英雄気取り? 
馬鹿げたものね!)
 そしてアスカと同じように鎧を身につけようとしているタバサに、八つ当たりのように怒鳴る。
「ちょっと、シャルロット! 仕えるべき主人のわたしを置いてどこに行こうというの!? 
あんたは北薔薇騎士七号なのよ。他に誰もいないのなら、あんたのやることはわたしの護衛だろう!」
 命令するが、しかし、
「断る」
「はッ……!?」
「わたしは、元の世界に帰りたい。じっとしていたら、帰ることは出来ない。だから、脱出のために
行動することを最優先にする」
 タバサの言うことはもっともだ。しかしはいそうですかと引き下がるイザベラではない。
「あんた、自分の立場を忘れたんじゃないだろうね!? わたしに逆らったらどうなるか、
教えてあげてもいいんだよ!」
「帰れなければ、立場の上下もない」
 正論に、うっ、と言葉を詰まらせるイザベラ。アスカはタバサの味方になる。
「君たちがどういう関係かはよく知らないけど、ここはタバサの自由にさせてあげなよ。
君だって、このまま帰れないのは困るだろう」
「平民が口を挟んでるんじゃないよ!」
「時間が惜しい。もう行く」
「あッ、こらぁッ!」
 タバサはそれ以上つき合わず、変装を済ませてさっさと出発する。アスカもそれに続いて、
イザベラから離れていった。
「……」
 一人残されるイザベラ。途端に心細い気持ちがどっと沸いてくる。
「……あーもうッ! 置いてかないでよッ!」
 急いで残った鎧で身を包み、二人の後を追いかけていった。

「侵入者の件について、重大な報告があります。首領の元まで通してください」
 兵士の振りをしてまんまと城の内部に侵入したアスカたち三人。先頭のアスカがそう言って
敵を騙しながら、天守閣へと板張りの城内を進んでいく。
「! あれは、ガリアの人たち……」
 道中で三人は、首都リュティスから蒸発した人々の姿を発見した。誰も彼もが、アクゾーンに
物を運んだり武器を作らされたりなどの強制労働をさせられている。
「う、うぅ……」
「や、やめて! もう打たないで……!」
 彼らは休ませてもらうこともなく、こき使われているようだった。少しでも能率が下がると、
鞭で打たれる。まるで奴隷のような虐待だ。
「ひでぇことしやがる……。アクゾーンめ、これ以上は好きにはさせないぞ……!」
 仮面の下で、アスカは静かに義憤にたぎっていた。タバサもまた、表には出さない怒りを覚える。
 だがイザベラだけは、気まずそうに顔をしかめていた。普段のタバサや使用人らの扱いが
アクゾーンと大差ないのである。むしろ、こう思っていた。
(貴賎に関係なく働かされてる……。少し間違ったら、わたしもああなってるところだったのか。
わたしはああならなくてよかった)
 自分のことしか心配しないイザベラ。そんなことは知らず、アスカたちは天守閣の襖の前に到着した。
「首領、大事な報告があります」
「ほう。入れ!」
 襖の向こうから返事が来て、アスカたちは首領の間の中へと入り込む。
 だがその途端に、控えていた兵士たちが撃った光線がアスカの膝に命中した!
「ぐわッ!?」
「なッ……!?」
 たまらず膝を突くアスカ。突然のことに唖然とするタバサとイザベラ。よく見れば、広い首領の間の
中には大勢の兵士がいて、彼女たちに銃を向けていた。
「うわはははは――――――! バァカめぇ! 我らを騙したと思っていたようだが、騙されていたのは
貴様らの方だぁッ!」
 一番奥にいる、一人だけ格好の違う男がアスカたちを嘲った。
「私はアクゾーンッ! 首領のメビーズ二世! 私は先代と同じ策に引っ掛かったりはしない。
残念だったなぁ侵入者ども!」
「くッ……! バレてたのか……!」
 ぎりっ、と悔しがるアスカ。タバサは隠し持っていた杖を取り出すも、この状況では呪文を
唱えている暇もない。
「武器を捨てろ! 蜂の巣になりたいか?」
 仕方なく、アスカとタバサは銃と杖を床に放り投げた。イザベラも真っ青になりながら、
自分の杖を捨てる。
「それでいい。次は兜を取って、顔を見せろ!」
 言われるままに三人が素顔を晒すと、メビーズ二世という首領はタバサとイザベラに目をつける。
「お前たち二人は、我らアクゾーンッ! が三次元世界から引っこ抜いた人間どもの国の王女と騎士だな。
先ほど引っこ抜いた二人だ。影武者などという真似をしていたようだが、このアクゾーンッ! 首領の目を
ごまかすことは出来んのだ」
 クックッ、と嗤う首領。イザベラは自分の思惑が無意味だったことに、ますます青ざめる。
「お前たちの国の人間はよく役に立っているぞ。お陰で、我らアクゾーンッ! の侵略計画の用意は整ったのだ!」
「アクゾーン……人間たちをさらって、何をしようとしてる!」
 アスカがにらみつけると、首領は見下しながら答える。
「黄泉の国への土産話に教えてやろう。我らアクゾーンッ! は、この怪獣ゲラを始めとした
怪獣軍団を大量に三次元世界に送り込み、人間どもを皆殺しにさせる! それから悠々と、
労することなく地上の土地をいただくという訳だ」
 首領は傍らにある、天井いっぱいの大掛かりな機械をさすった。その機械のカプセルの中には、
爬虫類か恐竜のような怪獣が収められている。
「……そんな小さい怪獣で、何が出来るの?」
 聞き返すタバサ。そう、首領が紹介した怪獣ゲラというのは、人間の手の平に乗るほどの
小型怪獣であった。こんなものを送ったところで、さすがにハルケギニア人は負けたりしないだろう。
 だが、首領の計画はもっと恐ろしいものだった。
「今の状態では小さいが、この装置はメタモルシステムというもの。どんなに小さい生物も、
これを使えばたちまち大怪獣に早変わりするのだ!」
「!」
「見ろ!」
 首領が指し示した先にあるのは、大きく開いた窓の向こうに見える、巨大なパラボラアンテナ型の装置。
「あの転送装置から三次元世界へ、ゲラを始めとしたメタモルシステムによる大怪獣たちを次々と送り出す。
我らアクゾーンッ! はこのベル星人の作った疑似空間内にいるので、外の奴らは怪獣の転送を止めることも
出来ない。我らアクゾーンッ! は絶対安全という訳だ。どうだ、完璧な作戦だろう! ウワッハッハッハッハッハッ!」
 勝ち誇って高笑いする首領。
「くそ、このまんまじゃまずいぜ……!」
 アスカは毒づく。そんな作戦が実行されれば、ハルケギニア中に恐ろしい数の犠牲が出てしまう。
止められるのはここにいる自分たちだけだが、今は敵の渦中にまんまと嵌まってしまった。
状況はかなり非常に悪い。
「さぁ、話はおしまいだ。そろそろ死んでもらおうか!」
 首領の指示で、兵士たちが銃口を三人に向け直す。アスカとタバサは、どうにか反撃の糸口を
掴もうと険しい顔つきになる。
 それを見て取った首領は、何かを考えついたようだった。
「その目、まだ諦めていないようだな。不愉快な目だ! もっと死の絶望を味わってもらわねば、
面白くない。そうだ……」
 首領は何を思ったか、イザベラに目をつける。
「そこの王女。お前がその二人を殴り、床にみじめったらしく這いつくばらせろ! そうすれば、
お前の命だけは助けてやろう」
「な、何ですって……!?」
 それまで血の気が失せて口をパクパクさせていたイザベラが、ギョッと驚く。
「何を馬鹿なことを……!」
 アスカとタバサは、とんでもないことを言い出した首領をきつくにらみつける。が、
「……悪く思わないでよッ!」
 何とイザベラは、二人の後頭部を打ち据えて殴り倒した!
「うッ!?」
「ぐわッ!」
「グワーッハッハッハッハッハッ! 本当にやったわ! どうだ、仲間に裏切られて少しは絶望したかぁ!」
 思惑通りに這いつくばったアスカたちを、首領は散々に侮蔑する。イザベラはアスカとタバサを
見捨て、首領の元へと寝返った。
(し、仕方ないのよ! あのままじゃ、どの道みんな死ぬだけなんだから! だったら、
自分が助かることをしても何も悪いことないじゃない!)
 と自分に言い訳をして、首領にすがりつく。
「ねぇ、言う通りにしたわ! これでわたしは助けてくれるんでしょ!?」
「ん~? ふふ、それはだな……」
 すると首領は……。
「そんな訳があるか馬鹿がぁッ!」
「きゃあッ!!」
 イザベラの頬を引っぱたいて、アスカたちのように床に引き倒した! 背中を踏みつけて、
起き上がれないようにする。
「ワーハハハハハハハッ! お前ほどの底抜けの馬鹿は見たことないわ! こんな甘言にあっさりと
踊らされるとは! 王女だ何だと言いながら、一皮剥けば醜い性根のただのガキに過ぎんッ!」
「ち、ちくしょう……!」
 首領は始めからイザベラを騙すつもりだったのだ。それなのに、我が身かわいさのあまり焦って
あっさり引っ掛かってしまい、こんな醜態を晒した。イザベラは自分の迂闊さを呪うが、それでも
どうにか助かろうと首領に向けて喚く。
「わ、わたしはガリア王国のただ一人の王女なのよ!? それを手に掛けるなんてことをしたら、
どうなるか分かってるの!?」
 だがそんな悪あがきは、首領にはもちろん通じなかった。
「とことん馬鹿な娘よ! この疑似空間で、そんな肩書きが意味をなすと思うか!? この世界では、
貴様はただのちっぽけな人間にしか過ぎないのだッ!」
 最後に残された、彼女の自尊心がすがれる唯一の身分も、その価値を簡単に否定された。
もうイザベラには、何も残されたものがない。
(うぅ……悔しい……悔しい……!)
 絶対君主の威光にあやかる特権階級の身分から一転、着飾っていたものを全て剥がされ、
みじめな姿にされたイザベラは、ただ悔し泣きをすることしか出来なかった。


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