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Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia-32


デルフとの話もまとまって一段落したあたりで、いよいよディーキンとエンセリックによるルイズの爆発の検証実験が始まった。

「それでははじめますか。御嬢さん、まずは適当に何種類かの呪文を唱えてみてください。
 ああ、目標にするのはそこらの岩とか、何でも構いませんよ」

まず最初に、ルイズに普段通りにいくつか呪文を唱えてもらい、それによって起こる爆発に試みた呪文の違いによって差異があるかどうかを確認していく。
結果はコモンスペルからスクウェアスペルまでどれも同じで、属性による差異も認められなかった。

次に、では立てつづけに呪文を唱えたことで疲労や消耗を感じているか、とルイズに問う。
その返答は、取り立てて疲れたとは感じない、というものだった。

「―――ふむ、おおむね推測していた通りです。
 やはりこれは、明らかに呪文ではありませんね。実際に見て確信ができました」
「そうだね、ディーキンもそう思うの」

納得がいった様子のディーキンとエンセリックに、対照的に不服そうな様子のルイズが詰め寄った。

「な、何であんたたちに、ちょっと見ただけでそんなことがはっきり分かるっていうのよ?
 私の家族も先生方も、みんなこれは呪文の失敗だって言ってるのよ?」

勿論、2人がそう考えるに至った理由は、既に部屋でエンセリックから大まかに聞いてはいる。
そのような能力を持つ存在は、彼らの故郷では然程珍しいものではないということも。
ルイズはその驚きに満ちた話に半ば圧倒されたからこそ、言われるがまま実験をしてみようということに同意してここまでやってきたのだ。

しかし少し冷静になってみれば、いきなり言われて頭からすべて信じられるというような話ではなかった。
何よりも、これまで呪文を唱えて失敗しているとばかり思っていたものが実は呪文ですらなかったと言われては異を唱えたくもなろう。

そこへ静観していたタバサとキュルケも口を挟んだ。

「彼女に特別な力があるかどうかは別。でも、私もこれは呪文だと思う」
「そうよね。ルイズが呪文を唱えて、それによって魔力が解放されて爆発を起こした。
 詠唱も私の聞く限りでは正確だったわ。
 なぜ爆発したのかはわからないけれど、何かの理由による呪文の失敗だって考えるのが普通じゃない?」
「いいえ、そうは思いません。
 爆発が起こっている以上は何らかの超常能力、あなた方の言い方に習えば魔力を解放しているはずだというのは、もちろんその通りです。
 しかしそれが呪文だと言う点については、明らかに誤りですね」
「……それは、何故?」

エンセリックの断定に首を捻るタバサらに、今度はディーキンも参加して説明していく。

「ええと、まず……、どんな呪文を唱えても必ず爆発する、っていうのがひとつだね。
 もし呪文の失敗だとしたら普通は何も起こらないか、呪文の構成によって起こることが違うかでしょ。
 必ず爆発するってことは、それは失敗じゃなくて……、ええと、つまり。
 そういう仕組みで、それが正しく働いてるってことだと思うの」
「その通り。御嬢さんの唱えた呪文は、実は単に失敗して何も起こっていないだけです。
 爆発が起こっているのは、使おうとしている呪文が何であるとか、そういったようなこととは無関係な現象なのですよ。
 関係があるのは、あなたが何かを―――あなたの狙いとしては呪文を―――起こそうとして、それに精神を集中させている、ということです」

例えて言うならば、1レベルのウィザードが9レベルの呪文を唱えようとしているようなものだろう。
それではいくら詠唱が正確でも、なにも起きないに決まっている。
いや、むしろクレリックがウィザード呪文を唱えようとしているようなものだという方が正確かもしれない。
どれほどそのクレリックに強い力があったとしても、使おうとしている力の種類が自分に合っていない、ということなのだ。

しかし、ルイズのどうしても呪文を使いたいという強い一念が、温存魔力特技、もしくはそれに類似した何らかの超常能力を発現させた。
それが彼女の呪文の失敗で起こる爆発の正体だ、というのが、エンセリックが推測し、ディーキンが肯定した結論であった。

「先程部屋でお話していた時にもおおよそは説明したはずでしょう?
 あなた方の常識に反することであるのならなかなか受け入れがたいというのはわかりますがね。
 ……まあとにかく、推測をいつまでも続けるよりも試してみる方が確実ですよ。
 さあ御嬢さん、早くやってみてくれませんか?」

エンセリックがそう促すも、ルイズは明らかに躊躇していた。

「で、でも。杖を置いて……、しかもわざと爆発を起こす気でやれだなんて……」

「ええと、ルイズ、もしかしてどうやったらいいかで悩んでるの?
 ディーキンはあんまり詳しくはないけど、たぶん呪文を唱える時と同じような感じで集中して、頭の中で杖を振るつもりでやればいいと思うの」
「そうですね、彼の言うとおりでしょう。
 ひとつ補足するなら、呪文を唱えるようなつもりでといっても実際に口や体を動かすのは駄目です。
 呪文を唱えるのとまったく同じにしては、杖がないとできるはずがないという先入観が先立ちますからきっと上手くいかないでしょう。
 上手くやれるようになったら、カモフラージュのために普段は杖を振って適当な呪文を唱えるようにするというのはアリでしょうがね」

2人がそう助言するも、ルイズは顔をしかめて俯いたままだ。
ややあって、小さく首を横に振った。

「………無理よ。できないわ」

ディーキンは首を傾げると、とことことルイズの傍に近寄って顔を覗き込んだ。

「ンー……、ディーキンは、そんなことはないと思うの。
 ねえ、ルイズは今までずっと呪文ができなくても諦めなかったんでしょ?
 なのにどうして、今はやりたくないの?」

ルイズは僅かに頬を染めると、やや不躾とも思えるその質問には答えずにむっつりと押し黙ったまま、ディーキンの視線を避けるように顔を反らした。
が、ディーキンはじいっと問いかけるようにルイズの顔を見つめたままで、離れようとしない。

ややあって、ルイズは観念したようにぽつぽつと自分の心情を告白していった。

「……だって。私は、普通の呪文も、コモンルーンさえ何ひとつできないのよ?
 そんな特別な力なんて、あるはずがないもの……。
 今さらそんな自惚れたようなこと、恥ずかしくて試す気にもなれないわ。それに………」
「それに?」
「そ、それに……、そんな吸血鬼みたいな力を自分が持っているなんて、本当だとしても嬉しくないわ。
 私はそんな、わけのわからない力が欲しいわけじゃないの。
 ただ、一人前の……、普通のメイジになりたいっていうだけなのよ」

ルイズは先程、部屋でエンセリックから呪文以外の超常能力について、簡単な説明を受けていた。
詠唱も身振りもなく超常の力を発揮する生物が、ディーキンやエンセリックの故郷であるフェイルーンという場所には大勢いる、というのだ。
例えば、睨んだだけで犠牲者を石化したり、発火させたり、殺したりできる生物や、念じただけで対峙した相手の思考を読みとれる生物など。

驚くべき話ではあったが、自分の既知の知識に当てはめてみて、それらはある種の危険な幻獣や妖魔の類なのだろうとルイズは理解した。

ハルケギニアにも、呪文とはまた違う生来の超常の力を備えた生物は若干存在している。
例えば血を吸って殺した犠牲者に先住の水の力で偽りの命を吹き込み、グールと呼ばれる魔物に変えて操る吸血鬼などがそうだ。

つまり、ルイズの認識ではそれは、人間に敵対する忌まわしい魔物の持つ力なのだ。
そのような力が自分に備わっていると証明したところで、ルイズが願う、普通に呪文を使える一人前のメイジになれるわけでもない。
それどころか、自分を異端のバケモノのような存在だと証明するようなものだ。
そんな実験に気乗りするわけがなかった。

「ふうん?」

ディーキンはそれを聞いてしばらく考え込んでいたが、やがて、おもむろにルイズの顔の前でパンパン、と手を叩いた。
そうして彼女の注意を惹くと、小さく咳払いをする。

「オホン。……ルイズ、ディーキンは……、ええと、おおよそ……、大体……、
 アー、約2つか3つか……、つまり、いくつかの点から、その意見には反対なの」
「反対って……、何よ、それは?」

ディーキンはぴっと指を立てて、説明を始めた。

「まず……、ルイズの爆発は呪文じゃないとしても、ルイズが何ひとつ呪文を使えないっていうのは、明らかに間違ってるの。
 ディーキンは、ルイズに召喚されたからここにいるんだよ。忘れたの?」
「そ、そりゃ、まあ、そうだけど……。
 けど、あの後も一向に他の呪文は使えるようにならないし……」

もごもごと口篭もるルイズに、続けてもう一本指を立ててみせる。

「二つめに……、ルイズは吸血鬼みたいな力っていったけど、超常能力は何も悪い生き物だけが持ってる力ってわけじゃないの」
「……そんなこと言ったって……、吸血鬼じゃなかったら、何だっていうのよ。
 どっちにしろそれは、人間じゃなくて、化け物の力じゃないの」
「ンー? そんな事もないの。たとえば……、そうだね……」

ディーキンはそこで、ちょっと躊躇いがちに、問いかけるような目でシエスタの方に視線を送った。

「? ………あ、」

シエスタはディーキンから視線を送られてしばらく不思議そうにしていたが、やがて何かに気が付いたような声を漏らすと、微笑んで小さく頷き返した。
そうして、ゆっくりとルイズの方へ歩み寄る。

「あの、ミス・ヴァリエール。僭越ながら……、」
「……? 何よ」
「先程からお話は伺っておりましたが、それでは。
 ……ミス・ヴァリエールは、私を見て、化け物だと思われますか?」
「はあ……?」

ルイズは、それを聞くと訝しげに眉根を寄せた。

「……何言ってるのよ。あんたはただの、平民でしょう。
 そりゃ昨日ギーシュに勝ったのには驚いたし、大したものだとは思うけど、あのくらいで化け物だなんて言えるもんじゃないわよ」

平民でもメイジに勝つほどの高い技量を持つ、メイジ殺しという優秀な戦士の例もないわけではない。
ましてギーシュは、まだ勉学中の半人前の学生メイジであり、ランクも最下級のドットだ。
もちろん、それでも平民が勝つというのは並大抵のことではなく、驚きもしたし、感心もした。
戦士だというわけでもないのにあれだけの腕前というのは、大したものだと思った。

が……、まあ言ってしまえば、ただそれだけのことだ。
化け物扱いするほどに異常なことというわけではない。

「いえ、先日あのお方に勝てたのは、私の力ではありません。ただ……。
 私にも、その、少しだけですが……、呪文を唱えずに魔法のような力を使うことができるとしたら、どうでしょうか?」
「え?」

思いがけぬ話にきょとんとしているルイズらの見つめる前で、シエスタはひとつ深呼吸をして雑念を払い、精神を集中していく。
自分自身の内側を覗き込み、生まれた時からその身に宿っている、ささやかな天上の力に触れるために。

シエスタは自分の血筋から来るこの力に誇りを持ってはいたが、それを他人の前で見せびらかしたいと思ったことはない。
無闇に力を誇示などして傲慢の罪に塗れたくはないし、それに人外の力を持つ亜人や異端者の類だと思われれば迫害さえされかねないのだから。
だが、シエスタはこの場にいる3人の貴族が、短慮に人を迫害するような人物でないことを知っている。
それに何よりも、ディーキンが傍にいてくれている。
自分の力を示すことで多少なりともルイズにとって慰めとなり、彼女を奮い立たせる役に立つのならば、パラディンとしてそれを躊躇する理由はない。

数秒と経たぬうちにシエスタの意識は自身の魂の内から溢れ出る天上の輝きに触れ、それを外界へと解き放つ準備が整った。
そうして、光源とするために足元に落ちている小石をゆっくりと拾い上げ、ルイズの前に差し出す。

「ちょっとあんた、さっきからいったい何をわけの、――――――!?」

ルイズが言いかけた文句は、差し出された小石から急に放たれた眩い輝きによって遮られた。

それは、タバサが夜分ということで杖の先に灯していたライトの呪文の小さな光が、まるで問題にならないほどの光量だった。
深夜であるにもかかわらず、小石の周囲数十メイルの範囲がたちまちのうちに、真昼のように明るく照らし出される。

「な、何よ、これって………、」
「平民が魔法を……!? せ、先住魔法とか?」
「……違う。呪文は唱えてなかった」

一様に驚いた様子のメイジたちを見つめながら、残る一人と2振りとはひそひそと話に興じていた。

(ふうむ。メイジともあろうものがアアシマールの生得能力程度でこれほど驚くとは、やはり相当に我々の世界とはかけ離れた異界のようですね)
(ンー、でもディーキンの呪文はここでもみんな普通に使えたよ? 案外近いかも知れないの)
(おお、そういやあ天使の血を引く連中はこんなことができるんだっけな。よくは覚えてねーが、なんとなく懐かしいぜ)

それからややあって、シエスタに対するメイジ3人の質問攻めが始まった。

途中ディーキンやエンセリックが助け舟を出したり、たまにデルフが昔の事を思い出して口を挟んだりしながら。
シエスタは祖先から天使の血を引いている、アアシマールと呼ばれる混血の人間なのだ、ということをどうにかルイズらに説明していった。

「い、いきなり天使とか言われても……、そりゃ、何か凄い力を持ってるのは確かだし、あんたたちを疑う気もないけど、でも……」
「そうね、いきなりそんな突拍子もない事を言われてもにわかには信じがたいわ。
 亜人の血を引いているとか言われた方が、まだ説得力があるわね」
「……天使……?」

ハルケギニアの若きメイジたちは、その説明を聞いても半信半疑といった様子だった。
まあ、それは無理もないことである
ここでは天使などというのは御伽噺か、さもなければ始祖ブリミル等にまつわる神話の中の存在なのだから。

ルイズはディーキンやシエスタが嘘をついているとは思わないものの、天使の血を引く人間が目の前にいるなどといわれてもどうにも実感が湧かなかった。
キュルケはシエスタは実は翼人か何かの、天使だと誤認されてもおかしくないような姿をした亜人の子孫なのではないかと考えていた。
そしてタバサはというと、首を傾げながらシエスタとルイズとをしばらくじろじろと見つめていた。やがて、ぽつりと呟く。

「……似てない」

ディーキンは3人の様子を見ると肩を竦めて、ちっちっと指を振って見せた。

「別にディーキンは、ルイズもシエスタみたいに天使の血を引いてるって思ってるわけじゃないよ。
 ただ、そういう力を持ってるのが吸血鬼とか、そういう悪そうな生き物だけじゃないっていうことを言いたかっただけなの。
 きらきらした天使だっておんなじような力を持ってるって思えば、そんなに嫌じゃないって思わない?
 ね、ルイズは是非やってみるべきなの。どう?」

シエスタはそれを聞いて力強く頷くと、自分もルイズを励まそうとするように声を掛ける。

「その、ミス・ヴァリエール。差し出がましい事だとは思いますが……、
 貴族の方々は皆、その血筋と祖先から受け継がれた魔法の力に強い誇りをお持ちで、それは素晴らしい事だと思います。
 私も平民とはいえ祖先の血筋とささやかながら受け継いだこの力には誇りを持っております。
 呪文ではない力をお持ちであるというのなら、それが受け継いだものであれ努力して身に付けられたものであれ、もっと誇られてよいと思いますわ」

そして、2振りの剣も。

「コボルド君や侍女の御嬢さんも気を使ってくれているようですし……、私も今や剣の身の上なのを我慢して、魔術師として考えたのですからね。
 今さら少しばかり試してみるのだけのことを、いつまでも嫌だなどとは言い張らないで下さいよ、御嬢さん」
「まあそこのエン公の言うとおりだな、娘っ子。俺もおめえも、嫌だろうが何だろうがなるようにしかならねえんだしよ。
 おめえにそんな力があるもんかどうかも、俺が使い手以外の奴に持たれてどうなるもんかも、試してみるしかねえってことだぜ」

更に流れに乗って、キュルケとタバサまで。

「ま、ヴァリエールの三女がなんにもできない子だっていうんじゃツェルプストー家としても張りがありませんわね。
 そんな力があるのなら、ここはひとつやれるところを見せていただきたいものですわ」
「プライドがあって諦めないのがあなたのいい所」

ルイズは周り中から励ましを受けて、しばし顔を真っ赤にして俯いていた。
が、やがて顔を上げると、ぐっと胸を反らして杖を地面に置く。

「ふ、ふん。何よ、あんたたちに言われるまでもないわ!
 さっきは、ちょっと弱気になっただけなんだから!
 見てなさい、天使だか何だか知らないけど、メイドにできることくらい私だってやって見せるわよ!」

これだけ言われては、負けず嫌いのルイズとしては挑戦してみないわけにはいかない。

しかし、周囲の応援に押されてやってみる気にはなったものの、まだ自分にできると本心から信じてはいないのをディーキンは見抜いた。
ルイズはプライドと負けん気の強さで気張ってはいても、内心では自分には才能がないのだと落ち込み、長年に渡って劣等感を持ち続けていたのだから。

せっかくやる気を出してくれたのだから、ここは是非とも一発で成功してもらいたい。
もっと自信を持って取り組めば、きっとうまくいくだろう。そうすれば、そのことが更なる自信にもつながるはずだ。
そう考えて、ディーキンはリュートを手に取った。

「オホン……、ルイズがせっかく挑戦してくれるんだから、ディーキンもひとつ、集中力を高めるような音楽でルイズを応援するよ。
 そうすればきっと、成功間違いなしだと思うからね!」

シエスタが見せた生来の疑似呪文能力と同じように、ディーキンにも呪文とは違う超常の能力がいくつか備わっている。
もっともディーキンのそれは、生来のものではなく訓練によって後天的に会得したものだが。
今用いようとしているバードの呪歌も、そのひとつだ。

すうっとひとつ深呼吸をした後、ディーキンはリュートを勢いよくかき鳴らしながら、なにやらハイテンポで、やたらと熱い感じの歌を歌い始めた。
シエスタが使って見せた疑似呪文能力と同じく、呪文によらない超常の力。バードの『自信鼓舞の呪歌』だ。




 ア~!

 頑張れ頑張れできるできる絶対できる頑張れもっとやれるって~!
 やれる気持ちの問題だ、頑張れ頑張れそこだ~~!!

 ハ~、もっと熱くなれよおおぉおおぉォォ~!
 おおオォ~~!!

 ………




……無駄に暑苦しく、周囲で聞いている皆も最初はかえって集中の邪魔になりそうな歌だと思ったが……。
不思議と、聞いているうちに強い熱意と元気が溢れだし、誰もが自信がみなぎってくるような感覚を覚えはじめた。

そして目を閉じて精神を集中しているルイズは、他の者よりもなお一層、強い自信と熱意とが湧き上がってくるのを、はっきりと感じとっていた。

(ええ、やれる! やれるわ! 分かるわよディーキン、あなたといれば私はやれる!)

ディーキンの歌う歌詞が、旋律が、ルイズの中に心地よく染み込んでいく。
それが不安を沈め、勇気と自信を湧き出させてくれた。
耳から入った音楽は一度心に染み込み、そこから湧き出してきた新たな勇気と自信の旋律が、今や心の中で強くうねり出している。
神経は研ぎ澄まされ、それ以外の雑音はもう一切耳に入らない。

あるいはそれは、一人では何もできない臆病者のための勇気、後ろ盾あっての偽りの自信でしかないのかもしれない。
けれど、自分の使い魔と共にあることで勇気や自信が出せるのなら、それでもいいとルイズは思った。

(体の中で、何かが生まれ、行き先を求めてそれが回転していく感じ……)

誰かが言っていたそんなセリフを、ルイズはふと思い出した。

自分の生まれ持った『系統』の呪文を唱える時に、メイジはそんな感じがするという。
今まで一度もそんな感じがしたことはなかったけれど、もしかしたら、それは今のような感覚なのかもしれない。
だとすると、温存魔力特技とかいうものかもしれないという、この爆発こそが自分にとっての『系統』のようなものなのだろうか?
それとも、ディーキンのこの歌が……。
あるいは、自分の使い魔の歌だから、そう感じるだけなのか……。

いや、そんなことを考えるのは、すべてやり終えてからだ。

完全に心の準備を終えてきっと目を見開くと、あらかじめ爆発の目標にしようと決めていた石、ただ一つだけをしっかりと見据える。
その集中力の強さのためか、10メイル近く離れた場所にある石ころがやけに近く感じられた。
ルイズは事前にアドバイスされたとおりに、心の中だけで呪文の身振りと詠唱を始める。

(―――――ウル・カーノ……、『炎球(ファイヤー・ボール)』!)

己の中で呪文の詠唱を完成させ、石に向けて炎球を放つイメージを思い描く。
その想像上の炎球が石に炸裂したとき、ルイズにとっては見慣れた眩い閃光が石から放たれ……。
そして、聞き慣れた爆音が周囲に轟いた。


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