あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

第四十三話「ファルマガンとタバサ」


ウルトラマンゼロの使い魔
第四十三話「ファルマガンとタバサ」
見習い怪獣ファルマガン
古代怪獣キングザウルス三世
剛力怪獣シルバゴン 登場



 シャルロットがキメラドラゴン討伐の命を受けて『ファンガスの森』に入ってから数日が経過した。
現在は、茂みに身を潜めて待ち伏せをしている最中。これからジルが“獲物”をおびき寄せ、それを
シャルロットが仕留める手筈なのだ。
 しばらくして、目の前にジルが躍り出てきた。その後に、四本腕の熊のようなキメラが飛び出してくる。
シャルロットはそれに合わせて氷の矢を飛ばすが、寸前にキメラが上げた咆哮に動揺してしまい、わずかに
狙いがそれて肩に弾かれてしまった。
 キメラは四本腕を振り上げてシャルロットに襲いかかるが、立ち直ったシャルロットは
魔法で高くジャンプして逃れた。そしてキメラの背中に、ジルの放った矢が突き刺さる。
キメラの注意がジルに向くと、地面に降り立ったシャルロットが呪文を唱え直して氷の矢を再度作った。
 キメラを一撃で倒すには、矢を生物で最も弱い部分の一つ、目に当てなければならない。
当然至難の業だが、シャルロットはキメラに父と母の仇、ジョゼフの顔を重ねることで
静かな怒りを生じ、集中力を高める。
 そして振り返ったキメラの目に、見事矢を突き刺した。
「……ギュ……、グォオオオオァ……」
 キメラの呻きを耳にして、シャルロットは呆然とした。本当に、自分の矢が敵に通用した……。
「とどめ! 早く!」
 ジルの叫びで我に返ると、太い氷の矢をキメラの胸板に突き刺した。それにより、キメラは
絶命して地面に崩れ落ちた。
 それが、シャルロットが初めて敵を討った瞬間。初めて他の命を奪った瞬間で、ジョゼフへの
復讐の第一歩であった。

「あんた! やるじゃない!」
 その夜、ジルはシャルロットを褒めた。彼女の活躍を、ファルマガンにも聞かせる。
「ファルマガン、シャルロットがとうとうやったよ。キメラを倒したんだ!」
「ジルが注意をひいてくれたからよ」
「そうだけど、やったのはあんたの“矢”だよ」
 わずかに声が震えているシャルロットに、ファルマガンが声を掛ける。
「シャルロット、おめでとう」
「あッ……うん、ありがとう……」
 初めて生き物の命を奪うことに、少なからず重圧を覚えていたシャルロットだが、ファルマガンの
祝福で少しばかり心が軽くなった。自分の頑張りを素直に称えてもらえるのはとても嬉しいし、
優しい言葉を掛けられるのも久しぶりのことに思える。
「シャルロット、あんたは第一歩を踏み出したんだよ。敵討ちと、お母さんを助ける第一歩をね。
今はまだまだ険しい道のりだろうけど、この調子でどんどん強くなって、でかい敵を討ち取るんだ。
あんたなら出来るよ」
 ジルが応援の言葉を唱えた。この『ファンガスの森』で出会った二人に支えられ、シャルロットは
幸せと感謝の気持ちを覚えていた。絶望の淵にあった自分が、希望と自信を持てたのは、彼らのお陰だ。
 と思いながらふとファルマガンに目をやると、蜂蜜に黄色い果実の汁を入れたものを舐めていた。
「甘い。すっぱい。美味しい」
「? ジル、ファルマガンは何を舐めてるの?」
「あれは蜂蜜にすっぱい木の実の汁を混ぜただけのものさ。けど、すっぱさが蜂蜜の甘みを引き出すから、
なかなか美味しいんだよ。ファルマガンはあれが好物なのさ」
 ジルの説明を聞いて、シャルロットはファルマガンに呼びかける。
「ねぇファルマガン。わたしが任務を果たして、この森から去る時が来たら、それと同じものを
作ってあげるね。それならわたしにも作れそうだし」
「?」
「わたしを助けてくれたお礼、してなかったし。約束するね」
 と言うと、ファルマガンは嬉しそうに声を弾ませた。
「約束。ファルマガンと、シャルロットの、約束!」
 シャルロットは顔を綻ばせて、思う。
 ファルマガンには本当に感謝している。命を助けられただけでなく、懸命に自分を励まして、
希望を与えてくれた。今頑張れているのも、彼の精一杯練習する姿に感化されたということもある。
本当に、ファルマガンは命と人生の恩人なのだ。
 いつか、ジョゼフを倒して母を取り戻し、親子の平和な生活を取り戻した時は……ファルマガンとジルを
家に迎えよう! とも考える。ファルマガンは見た目こそ難があるが、自分の恩人と言えば、母も
迎えてくれることだろう。ジルはどうするか分からないが、ファルマガンとは家族になりたい。
一緒に、幸せな日常を作りたい……。
 その日が来るのを夢見て、シャルロットは更にジョゼフに立ち向かう覚悟を形成するのであった。

 シャルロットが『ファンガスの森』にやってきてから八日後。シャルロットとファルマガンは、
森の地面にくっきりと残った大きな足跡をたどって、直径四メイルはあろうかという洞窟までやってきた。
「ジル……」
 ファルマガンが不安そうにつぶやくと、シャルロットはそれを慰め、同時に静かにさせる。
二人の視線の先では、ジルが洞窟の入り口の前で焚き火を焚き、弓矢を構えている。彼女に
自分たちのいることを悟られる訳にはいかないのだ。
 昨日シャルロットたちは、森を徘徊するキメラドラゴンと遭遇した。運よくこちらの存在は
気取られなかったが、ジルは同時に、キメラドラゴンに生えている大量の首の中に、自分の妹の顔が
あることに気がついた。キメラドラゴンは、食い殺した相手の首を生やす能力があるのだ。
 キメラドラゴンが家族の仇と知ったジルは、自分一人で仕留めると言い出した。シャルロットと
ファルマガンがいくら止めても聞かなかったので、心配になった二人はこっそり後をつけてきたのである。
 やがて焚き火の煙によって、キメラドラゴンが洞窟から這い出してきた。全長十メイルほどで、
ドラゴンとしては大きいサイズではないが、胴体から無数の生物の首を生やした火竜の姿というのは、
あまりに不気味。シャルロットたちは思わず息を呑む。
 キメラドラゴンはジルの存在に気づき、すぐに大口を開いて火のブレスを吐こうとした。
が、その能力は失われているようで、呼吸が漏れるだけだった。
 代わりにジルが、口内に矢を放った。ただの矢ではない。こんな日が来た時のための切り札、
『アイス・アロー』。キメラドラゴンの喉の奥に吸い込まれたそれは、矢尻を中心に頭全体を
氷結させた。そして一瞬の間の後に、頭がバラバラにはじけ飛ぶ。
 ジルの顔が、安堵にゆるむ。シャルロットも息を吐いたが、ファルマガンは急いで茂みの陰から駆け出した。
「危ないッ!」
「ファルマガン!? うわッ!?」
 ファルマガンとジルはもつれ合って倒れ込む。それにより、伸びてきたキメラドラゴンの腕は空を切った。
「!?」
 弾かれたように立ち上がるシャルロット。見ると、キメラドラゴンの胴体からは、失われた頭部に
代わる新しい首が生えてくるところだった。首を失っても死なないようだ。ジルもその状況を理解した。
「あいつ、まだ生きて……くそぅッ!」
 仕留め切れなかったことを激しく悔しがったジルだが、すぐに気を取り直して、シャルロットに呼びかける。
「シャルロット、こうなったら、あんたがやってくれ!」
「わたしが!?」
「あたしにはもう、奴を倒すだけの武器がない。けど、あんたは違う。この絶好の機会を
逃す手はない。……あんたがあたしに代わって、家族の仇を取ってくれ!」
 ジルの要請に、シャルロットは行動で応じた。杖を構えて呪文を紡ぎ、氷の槍『ジャベリン』を作り出す。
氷の矢とは比較にならない威力の魔法だ。
 その呪文を成功させたことはこれまでになかったシャルロットだが、今は必ず出来る自信があった。
ジルの無念に、必ず応えなければならない。
 精神力のほとんど全てを注ぎ込んで威力を限界まで高め、首が再生し切る前に氷の槍を放つ。
首が少女の顔を形作ろうとしたところで、槍は肉を貫き、身体の内側から弾けて全身を引き裂く。
シャルロットは、少女の顔が完成するところをジルに見せずに済んで良かったと考えた。
 キメラドラゴンは全身の首から、ギャアアアアァ、とすさまじい断末魔を響かせ、どう! 
と倒れた。痙攣が止まり、今度こそ絶命した。
「ジル!」
 シャルロットはすぐにジルの元へ駆け寄る。ジルはファルマガンの手を借り、立ち上がるところだった。
ジルは礼を述べる。
「シャルロット……ありがとう。一人で先走って、危うく犬死にするところだったよ。あんたはもう
あたしなんかを超えた、立派な狩人だ」
「ジル……もういいの。あなたが生きてただけで、それで十分」
「ファルマガンも、ありがとう。あんたがいなきゃ、奴の爪にやられてたよ。本当に助かった……」
「どう、いたしまして」
 全員が無事に命を拾い、キメラドラゴンを討ち取ったことで、三人は朗らかに笑い合った。
これでジルとシャルロット、双方の目的は果たされ、彼らは次の道へと進むことが出来るようになったのだ。

 ……これから起こることがなかったなら。
「キイイィ!」
「!?」
 突然木々の向こうから、キングザウルス三世の鳴き声が聞こえた。即座に振り返ると、
その持ち主がまっすぐにこちらへ接近してくるところであった。
「あ、あの巨大竜がこっちに! ジル、逃げよう!」
「ああ! このまんまじゃ、踏み潰される!」
 シャルロットたちは急いで逃げようとしたが、キングザウルス三世の反対側からも、地響きが
近づいてきた。それで、ジルは一気に青ざめる。
「やばい……! 奴まで来る! 巨大生物の中でも群を抜いてやばい奴が! ほとんどの奴は、
あいつが殺したんだよ!」
「えッ!?」
 顔を上げたシャルロットの目に飛び込んだのは、頭の両脇に大山羊のような曲がった角を生やした、
首と胴体の太さがほぼ同じの直立する恐竜型の怪物だった。全身がひび割れたかのように隆起しているが、
あのデコボコはもしかしたら、筋肉か? そうだとしたら、筋肉に全身包まれたあの怪物は、どれだけの
力を発揮するのだ?
「グギュウウウウウウウウ!」
 『ファンガスの森』最後の怪獣、剛力怪獣シルバゴンは咆哮を上げ、キングザウルス三世と同様、
シャルロットたちの元へ迫ってきた。
「くそッ! どうしてこんな時に、怪物どもが同時にやってくるんだ!」
 ジルが毒づくと、シャルロットはハッと気がついた。
「まさか、最後のキメラドラゴンの断末魔が、あの二匹を呼び寄せたんじゃ……」
「何てこった!」
 ジルは降りかかる危機に恨みの声を吐いた。今の自分たちに出来ることは、怪獣たちに
踏み潰されないようにこの場から離れることしかない。三人は慌てて、少しでも遠ざかろうと走る。
「グギュウウウウウウウウ!」
 シルバゴンはシャルロットらには構わず、自分と同等のサイズのキングザウルス三世に
敵意を向けて、そちらへ接近していく。
「キイイィ! キイイィ!」
 キングザウルス三世は首をユラユラ動かして角からバリヤーを展開した。
「あの障壁は……」
 キングザウルス三世のバリヤーは、ダンガーをあっさりと退けた強力な盾だ。シャルロットも
その話を聞いているので、キングザウルス三世の圧勝だと予想する。
 実際、シルバゴンはバリヤーにぶつかって、呆気なく押し返された。
「グギュウウウウウウウウ!」
 だがバリヤーに遮られたシルバゴンは腹を立てると、腕を突き出してバリヤーに触れる。
そして次の瞬間に腕に力を入れ、バリヤーをガラスのように軽々叩き割ってしまった!
「嘘!?」
 ダンガーは手も足も出なかったバリヤーを力ずくで攻略したシルバゴンに愕然とするシャルロット。
キングザウルス三世もあからさまに動揺した。
「キイイィ!」
 後ずさりながら角からの波状光線を浴びせるが、シルバゴンはびくともしない。そして
長い首がむんずと掴まれて、吊るし上げられた。
「グギュウウウウウウウウ!」
「キイイィ……!」
 剛力で首を絞められるキングザウルス三世は白目を剥き、ブクブクと口から泡が噴き出る。
そしてたちまち窒息死して、首と足がダラリと垂れ下がった。
「グギュウウウウウウウウ!」
 キングザウルス三世が死んだことを確かめたシルバゴンは、その死体を投げ捨て、勝利を
見せつけるかのように激しくドラミングする。
 そして落ち着くと、今度は逃走の最中のシャルロットたちに目を向け、追いかけてきた!
「わ、わたしたちには目もくれないんじゃなかったの!?」
「他の怪物がみんないなくなって、あたしたちだけになったからだろう! 早く逃げるよ!」
 とジルは言うものの、歩幅が全く違う。三人は瞬く間にシルバゴンに追いつかれそうになる。
「もう駄目……!」
 泣き言を吐くシャルロット。しかし無理もないだろう。先ほどの戦闘で精神力を使い果たして、
もう何の魔法も使えない。それでは逃げることも、ましてや立ち向かうことなど出来るはずがない。
 喜びも束の間、最早これまでかと思ったその時……ファルマガンが二人から離れて、シルバゴンへ
大きく手を振りながら跳びはねた。
「こっち! こっち!」
「ファルマガン!? まさか、わたしたちのために囮に……!?」
 シルバゴンは見事に釣られ、ファルマガンを追いかけてシャルロットとジルからは離れていく。
しかしこれでは、ファルマガンが犠牲になる。
「シャルロット、ファルマガンを助けてやって……! あたしはさっき突き飛ばされた時に足を痛めて、
追いかけられそうにない……! どうにか隙を見て、ファルマガンを連れて身を隠すんだよ!」
「う、うん!」
 ジルの指示で、シャルロットは一人ファルマガンを追いかけていく。だがその時には、
シルバゴンが蹴り上げた土砂が降ってきた余波で、ファルマガンは大きく吹っ飛ばされた。
「ああああああああッ!」
「ファルマガンッ!」
 地面に叩きつけられて動かなくなるファルマガン。生きてはいるようだが、このままでは風前の灯火だ。
 とその時、叩きつけられたファルマガンの身体から、巨大怪物が現れる原因になったという
赤い球が放り出され、シャルロットの足元まで転がってきた。反射的に拾い上げたシャルロットは、
それに願いを込める。
「赤い球……これが本当に怪物を呼んだのなら……あの竜を倒して、わたしたちを助けてくれるような、
そんな勇者をわたしの前に出して! イーヴァルディのような勇者が、欲しいッ!」
 イーヴァルディの勇者。ハルケギニアで広く読まれる英雄譚で、シャルロットもその話が好きだった。
ジョゼフの陰謀に追い詰められた時も、勇者がいてくれたら、と心の底から望んだものだ。
 その望みを球に捧げると、赤い球は一瞬だけ強く発光した。

 球の発光の直後に、騒乱に包まれる『ファンガスの森』のどこかに、突如として一人の青年が出現し、
地面に降り立った。青と銀の、ハルケギニアではどこにも見られない素材で出来た服装を纏っており、
その服の左胸には「XIG」という紋章が刺繍されている。
「ここは……? 一体どこなんだろう。僕は勉君の世界を救って、元の世界に戻るところだったんじゃ……。
ここは元の世界なのか?」
 青年は自分が放り出された環境を見回し、呆然とつぶやく。しかしそれも束の間、シルバゴンの
咆哮とシャルロットの悲鳴が耳に届く。
「グギュウウウウウウウウ!」
「きゃああああああ!」
「この声は……!」
 顔を上げると、シルバゴンの後ろ姿が見えた。それだけで状況を察する。
「誰かが怪獣に襲われてるのか! すぐに助けなきゃ!」
 判断を決めた青年は、懐から青い発光体が埋め込まれた、V字型の小型の装置を取り出す。
そして取っ手を右手に握り締めたそれを前に突き出し、高々と叫ぶ。
「ガイアァァ―――――!!」
 発光体から赤と青の輝きが発せられ、青年の姿が瞬く間に変貌。シルバゴンにも負けない背丈の、
胸に黒いラインの走った赤と銀の巨人となった!
 この世界では、彼のことを知る者はいない。しかしこの巨人は、イーヴァルディのような平和を愛し、
悪をくじく勇者なのだ。地球生まれの光の巨人で、根源的破滅招来体という巨悪と戦う正義の使者、
ウルトラマンガイアである!

「デュワッ!」
 シャルロットが今にもシルバゴンに踏み潰されそうになっていたその時、ガイアは背後から
シルバゴンに掴みかかり、足の振り下ろしを阻止した。
「えッ……!? あ、あの巨人は……!?」
 シャルロットは当然、突然現れたガイアの存在に驚愕する。彼女の見ている先で、ガイアは
腕力を振り絞ってシルバゴンを投げ飛ばし、シャルロットを救った。
 それからガイアはシャルロットを見下ろす。シャルロットは一瞬脅えて身体を震わせたが、
ガイアは安心させるようにうなずくと、起き上がろうとしているシルバゴンに向き直った。
「……まさか……あの巨人が、勇者なの……?」
 先ほど赤い球に勇者を願ったことを思い出して、シャルロットはつぶやく。ガイアはその言葉を
肯定するかのように、左脇を引き締め右の平手を前に伸ばしたファイティングポーズを取ると、
命を脅かす大怪獣にまっすぐに向かっていく。
「デャッ!」
 シルバゴンの懐に飛び込んだガイアは、チョップやパンチ、キックを目一杯お見舞いする。
が、シルバゴンは少しもたじろがない。
「グギュウウウウウウウウ!」
「オワァッ!?」
 逆に、シルバゴンの打撃でガイアが殴り飛ばされる。
「デュワッ!」
 ガイアは負けじと起き上がって、再度シルバゴンにぶつかっていくが、やはり打撃が通用していない。
今度も殴り飛ばされて宙を舞った。
「ウゥ……デュワァーッ!」
 格闘が駄目ならと、立ち上がって光線技の構えを取る。立てた左腕に光輪が吸い込まれて
エネルギーが充填されると、右手首を左手首に合わせ、光が尾を引く右腕を持ち上げていく。
そして左手を右腕の関節に乗せたポーズから、右前腕より赤い光の奔流が発射された! 
ガイアの必殺技の一つ、クァンタムストリームである。
「グギュウウウウウウウウ!」
 クァンタムストリームは見事シルバゴンに直撃! 倒れるシルバゴンだが……すぐに起き上がった! 
効いていないのだ!
「デュワッ!?」
 たじろぐガイア。一方のシルバゴンは、何故かガイアがやったように腕をL字に組む。
……が、当然何も出ない。
「……グギュウウウウウウウウ!」
 シルバゴンは駄々をこねるようにドタドタ足踏みすると、ガイアに突進する。筋肉の塊に
ぶつかられたガイアは大きく吹き飛び、地面に叩きつけられる。
「オワァァッ!」
 シルバゴンの圧倒的パワーの前に苦しめられ、うつ伏せに倒れるガイア。エネルギーを消耗したために
胸のライフゲージが赤く点滅し出す。ピンチの合図だ。
「あぁっ! 巨人が……!」
 戦いを見守るシャルロットは焦燥する。自分たちを助けてくれる勇者が来てくれたと思ったのに、
彼も怪物に太刀打ち出来ない。やはり助からないのか?
「グギュウウウウウウウウ?」
 しかしここで、意外な事態。ガイアが倒れたまま動かない、攻撃の絶好の機会なのに、
シルバゴンはキョロキョロ辺りを見回して立ち尽くしているのだ。丸で、目の前にいるはずの
ガイアを見失ったように。
「……そういえば……」
 ここでシャルロットは思い出す。先ほどファルマガンが吹き飛ばされて動かなくなった時も、
シルバゴンは唐突に攻撃の手を止め、辺りを見回していた。ファルマガンに興味を失ったのかと思ったが……。
「まさか、動くものしか襲わないんじゃ……」
 との考えが浮かぶと、起き上がろうとしているガイアへ慌てて叫んだ。
「動いちゃ駄目! その怪物は、動くものだけを攻撃するの!」
 その助言を受けて停止するガイアだが、代わりに前に乗り出したシャルロットがシルバゴンの
標的になってしまった。
「グギュウウウウウウウウ!」
「あああぁぁぁッ!?」
 シルバゴンが尻尾を振り回し、シャルロットはそれが巻き起こした土砂に呑まれて弾き飛ばされてしまった。
「デュワッ!?」
 ガイアはたまらず跳ね起き、シルバゴンに飛び蹴りを食らわせる。当然怒って振り返る
シルバゴンだが、ガイアは同時にピタッと静止した。
「?」
 するとシャルロットの予測通り、シルバゴンは目の前のガイアを見失い困惑した。そして後ろを
向いた隙に、ガイアは両腕を頭上高くに伸ばす。
「オオオォォ……! デュワッ!!」
 伸ばした腕を胸の前まで下ろすと、素早く左右に開く。同時にガイアの身体が激しく輝き、
体色に青が追加されてより筋肉質な体型に変身した。
 これはもう一人のウルトラマン、アグルの力を授かったことで変身できるようになった最強形態、
スプリームヴァージョンである! ガイアは左肩を後ろに向け、右肩を前に出した体勢から
左腕を頭上に、右の握り拳を突き出した力強いファイティングポーズを取り、シルバゴンに飛び掛かる!
「デュワァッ!」
「グギュウウウウウウウウ!」
 ガイアSVの強烈なパンチがシルバゴンに襲い掛かる! シルバゴンは反撃しようとするも
その時には、ガイアは停止して見失う。無茶苦茶に腕を振るうも、そんな攻撃は空を切るだけであった。
「デャアッ!」
 シルバゴンを散々殴りつけて弱らせたガイアは、その巨体をむんずと捕らえて投げる。
投げる、投げる、投げる、投げ飛ばす!
「グギュウウウウウウウウ……!」
 繰り返し地面に叩きつけてフラフラに弱らせると、最後とばかりに空高く放り投げた。
そうして、胸の下で交差した両腕を開いて外回りに頭上へ持っていく。
「デュワーッ!!」
 エネルギーが集まると、胸の前で腕を開いた勢いで光のブーメランを発射した。スプリームヴァージョンの
必殺技、シャイニングブレードだ!
 シャイニングブレードは投げ飛ばされたシルバゴンを追い、その身体を両断。シルバゴンは
瞬時に爆散して、『ファンガスの森』の露となった。
「や、やった……うぅッ!」
 『ファンガスの森』の最後の怪獣が倒され、伏したまま喜ぶシャルロットだったが、すぐに苦痛にうめいた。
彼女の身体は、土砂に巻き込まれたことでボロボロの危篤状態であった。このままでは、間もなく命が失われてしまう。
 ガイアは彼女を救おうと前に踏み出したが、己の身体がどんどん透けていくことに気づいて、思わず固まった。
『これは……!? 勉君の世界から一度消えた時の状況に似てる……!』
 ガイアの中の変身者の意識は、瞬時にこの現象を判断する。
『この世界は、僕の世界じゃない。ここでの役割を果たしたから、今度こそ元の世界に戻ろうとしてるのか。
けれど……』
 まだ少女を助けていないではないか。そう思うものの、身体は無情にも消えかかる。もう後数秒も
この世界にはいられないだろう。
『名前も知らない女の子。誰か、僕に代わって彼女を助けてあげてくれ……!』
 最後に望みを見知らぬ誰かに託し、ガイアはこの世界から消え去り、元の世界へと帰っていった。
これからも彼は、根源的破滅招来体との激闘に身を投じていくのだが、それは別の話だ。

 ガイアが消滅し、騒乱が静まった『ファンガスの森』の中で、シャルロットの命は消えかけようとしていた。
そこに、ファルマガンが傷ついた身体を引きずってシャルロットの元に駆けつける。
「シャ、シャルロット……」
「ファルマガン……無事だったんだね……」
 もう起き上がる力もないシャルロットは、ファルマガンに笑いかける。それは、何もかも
諦めた者の虚ろな笑みだった。
「あなただけでも、助かって良かった……。本当に、良か……」
 と言いかけるシャルロットだが、すぐに目尻から涙がこぼれた。
「良くないよ……。せっかく……せっかく、キメラドラゴンをやっつけたのに……! 
お母さんを助けられると思ったのに……こんなところで、終わっちゃうなんて……!」
 悔しそうにうめき、ポロポロ涙を流す。本当は、諦めてなんていないのだ。薄れていく意識の中に、
後悔ばかりが湧き上がる。
「嫌だよ……死にたくないよ……! 助けて……誰か助けてよぉ……!」
 一度は死を望んだ少女は今、生を失うことを恐れた。その心からの言葉を耳にしたファルマガンは、腹をくくる。
「シャルロット……」
 傷ついたシャルロットの頭に手をかざすと、淡い光を放出する。彼女の傷を治すつもりだ。
「ファルマガン……? 無理だよ……あなた、人の傷は、治せないでしょ……」
 シャルロットは、ファルマガンが自分を治せるとは思えなかった。ファルマガンの能力は、
今の彼女の重傷を治癒できるほどには達していないのだ。いや、仮に高位の水のメイジがいたとしても、
匙を投げるところだろう。それほどの致命傷だ。
 しかしファルマガンは、投げ出さなかった。
「練習。超える」
 手の平からあふれる光が、どんどんと輝きを増していく。それは彼らの周囲を呑み込む勢いであった。
同時に、ファルマガンの頭の一部がバックリと割れ、穴が広がっていく。
「ファルマガン……!?」
 足を引きずって、現場に駆けつけたジルがその光景を目の当たりにして、目を見開いた。
だがファルマガンは手を止めなかった。彼からあふれる光は、視界を白く塗り潰していく。
 完全に光に包まれる前に、ファルマガンは空いている手で、シャルロットが拾った赤い球を掴み取った。
この赤い球は本来、災厄しか呼び込まない、世界にあってはならないもの。ファルマガンは元来優しい性格で、
「破壊」の意思など欠片も抱いたことがないが、この時だけは、シャルロットのために、持ち得ない意思を発現した。
「球……消えろ」
 災厄を終わらせる、たった一つだけの方法によって、赤い球は粉々に砕け散って、文字通り
塵も残さずに消滅した。
 そして、森は光に包まれた。

「……う……」
 シャルロットが目を覚ますと、そこは元の場所であった。シルバゴンが残した破壊の爪痕も全てそのまま。
ただ一つだけ違うところは、自分の怪我が夢だったかのように完治しているところだ。
「嘘……!?」
 すっくと立ち上がるシャルロット。もう悪いところはどこにもない。後遺症も見受けられない。
それに大きく喜ぶ。
「ファルマガンだ……! ファルマガンが、助けてくれたんだ……!」
「シャルロット……」
 打ち震えているシャルロットに、ジルが近寄ってきた。彼女に振り向いたシャルロットは、
はしゃぎながら報告した。
「ジル、見て! ファルマガンがやってくれたの! 死にかけてたわたしの命を、助けてくれたの! 
……でも、ファルマガンはどこに?」
 辺りを見回しても、ファルマガンの姿が見えなくなっている。そのことについて、ジルは
重い面持ちで、はっきりと告げた。
「ファルマガンは……もう、いないよ」
「……え?」
 言葉の意味が分からなかったシャルロット。ジルはよく言い聞かせる。
「あたしは、確かに見た。ファルマガンは、あんたを助けるために、全ての力を使い果たしたんだよ。
あんたを治した後……ファルマガンは……消滅したんだ……」
 その言葉を受け止めたシャルロットは、絶句した。しばらくは何も考えられなかったが、はっと思いつく。
「そうだ、赤い球! あれが巨人の勇者を呼んでくれたんだよ。あの力を使えば、ファルマガンを……!」
 しかし、その望みも絶たれる。
「赤い球も、ファルマガンが壊したよ。きっと、あんたがそうしないようにするためだろうね……」
 ファルマガンがもう戻らないと悟ったシャルロットは、途端に自分の身体を激しく叩き出した。
「返して! ファルマガンを返してよ! ファルマガンを犠牲にしてまで、助かりたかった訳じゃない! 
約束したのに! 家族に迎えようと思ってたのに! こんなのあんまりだよ! 返してぇ!」
「シャルロットッ!」
 駄々をこねるシャルロットを、ジルが叱りつけた。
「やめな! そんなことしたって、時間は戻らないんだよ。それに……あんたは、ファルマガンの
想いを無駄にするつもり?」
「え……」
「ファルマガンは……あんたに生きててほしいと思ったから、自分の犠牲を省みずに、あんたを助けたんだよ。
そのあんたには……泣きわめいて後悔するより、しなきゃいけないことがいっぱいあるだろう。お母さんは
どうするつもりなんだい?」
 諭されて、シャルロットは手を止めてうつむいた。その目からは、涙がこぼれ続ける。
「……そうだ。あんたは、立ち止まってちゃいけないんだ。前に進み続けることが、ファルマガンの
想いに応える、唯一の手段なんだよ」
 そのジルの言葉を最後に、シャルロットはあふれる涙をぬぐい、顔を上げた。
 その目には、強い力と覚悟が宿っていた。あどけない少女の面影は、消えてなくなっていた。

 それからシャルロットとジルは、住処の洞窟の横に、手作りの墓を建てた。ファルマガンの墓だ。
「……あたしは、この森に残ろうと思う。キメラはまだまだ生き残ってるから、『ファンガスの森』が
危険なところには変わりないんだ。そんな危険に迷い込む人を助ける狩人になる。両親がそうしてたように……」
 ファルマガンを弔ってから、ジルはシャルロットに告げた。
「言われなくても分かってるけど……あんたはお母さんを助けるために、戦い続けるんだろう? 
応援してるからね」
 うなずいたシャルロットは、討ち取ったキメラドラゴンの鱗を取り出し、長い長髪をそれで断ち切った。
ジルは思わず驚く。
 切られた青髪が風に乗って舞い散っていく中、シャルロットは冷徹な表情で、誓いを立てた。
「わたしは、今から、シャルロットの名前を捨てる。その名前は、母さまを取り戻した時に、一緒に取り戻す」
「……じゃあ、これからは何て名乗るんだい?」
 ジルに尋ねられ、シャルロットではなくなった少女は、かつて自分が「タバサ」と名づけた
人形があることを思い出した。それは心を失った母が、シャルロットと思い込んで誰にも
触れさせないように守っている人形だ。今では、その人形が「シャルロット」なのだ。
 そして自分は、代わりに人形となるのだ。表向きはジョゼフに従順を装いながら、奥底では
復讐を誓い続ける、研ぎ澄ました刃を隠した人形に。
「タバサ。わたしの名前は、タバサ」
 その名を自身に刻み込むと同時に、タバサは墓とジルに背を向け、孤独な戦いの日々へと足を踏み出した。


新着情報

取得中です。