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第四十一話「チュレンヌの繭(後編)」


ウルトラマンゼロの使い魔
第四十一話「チュレンヌの繭(後編)」
コイン怪獣カネゴン
カプセル怪獣ウインダム
円盤生物ブニョ 登場



「あ~、う~、うんだらかんたら~」
 トリスタニアの裏通り、日中でも日光が周囲の建物に遮られて薄暗いので、怪しい雰囲気を
醸し出す一画に建つ占い屋に足を運んだルイズと才人は、カネゴンとなってしまったチュレンヌを
元に戻す方法を占ってもらっていた。どちらかと言うと祈祷師のような格好の老年女性の占い師は、
怪しい呪文をひたすら唱え続けている。
「……ねぇサイト、こんな怪しい人に頼んで、本当に元に戻す方法が分かるのかしら? 
どう見ても信用ならない感じなんだけど……」
 占い師が長々と呪文を唱えている後ろで、才人と並んで正座しているルイズは、ヒソヒソと尋ねかけた。
魔法学院で勉強している彼女には分かるが、占い師の呪文は全くのデタラメで、何か神がかりな効果が
出るとも思えなかった。
「でも、スカロンさんの話じゃ、よく当たると評判ってことだし……。それに俺たちに出来そうなことは、
占いに頼ることぐらいしかないだろ?」
「まぁ、そうなんだけど……」
 カネゴンを元に戻すという、どこから手をつけていいのかもさっぱり分からない難問を前にして、
才人の言うことももっともだとは思うが、それでも半信半疑なルイズであった。
 そうこうしていると、占い師が唐突に呪文をやめ、叫んだ。
「見えたッ!」
「占いの結果が、出たんですか!?」
 占い師が振り向くと、ルイズと才人は真剣に彼女を凝視した。チュレンヌが人間に戻れるかどうかは、
この次の台詞に懸かっているのだ。
 そして、占い師はもったいぶりながら、占いの結果を高々と告げた。
「カネゴンの願いは……緑のぶよぶよが逆立ちした時、叶えられるぞよーッ!」
 ルイズも才人も、ガクゥッ! と肩を落とした。

「……もうッ! 結局インチキだったじゃない! お金の無駄だったわ!」
 『魅惑の妖精』亭に戻り、カネゴンにスカロンたちに才人が事の顛末を話した後で、椅子にどっかと
荒々しく腰を下ろしたルイズは、苛立ちをぶつけるように吐き捨てた。スカロンは眉をひそめて首をひねる。
「おかしいわねぇ……。常連さんたちが口をそろえて話した情報だから、当てになると思ったんだけど」
「あんな訳の分からない占いが、的中する訳ないじゃない! そもそも、緑のぶよぶよって何よ! 
本当、デタラメもいいとこだわ!」
「占いにも、限度があるってことかしらね」
 騙されたと思ってすっかり不機嫌になったルイズはわめき、店の女の子たちも落胆した顔になる。
しかし一番失望しているのは、当事者のカネゴンだ。
「一縷の望みが、こんなにあっさり途切れてしまうなんて……。わたしはこのまま、一生人間に
戻れないのか? そんなぁ~!」
 頭を抱えて(もっとも、腕が短いので届いていないが)落ち込むカネゴンに、スカロンがそっと声を掛けた。
「まだ諦めるのは早いわ、カネゴンちゃん。ここにいる限り、あなたを飢え死になんてさせないわよ。
そして生きてれば、元に戻る方法が見つかる可能性だって、ゼロじゃないわよ。ひょっとしたらその内、
占いが何か予想もつかないことで実現するかもしれないし。とにかく、希望を捨てずに頑張りましょう。
『魅惑の妖精』亭一同、応援するわ」
「店主……しかし、迷惑ではないのか? メイジでなくなったわたしが、何のとりえもない
役立たずだということくらい、自覚している。現に、わたしはここでの仕事を、失敗ばかりしているではないか……」
 昨晩、カネゴンを試しに働かせてみたのだが、チュレンヌは匙と杖より重い物を持ったことがない
典型的なトリステイン貴族。皿洗いも、掃除も、言いつけられることの何もかもに失敗してばかりだった。
給与よりも店への損害の方が大きい始末で、現状は才人たちから金を借りて、文字通り糊口をしのいでいる。
 流石に居所が悪いカネゴンに、スカロンは優しく諭した。
「いいのよ、初めはみんなそんなものなんだから、気にしないで」
「そうそう。俺なんかも、同じ感じだったよ。それに昨日は、早速噂になってるカネゴンを
ひと目見ようとお客さんが集まってたから、むしろ俺よりも店に貢献してるって」
「そ、そうか? 二人とも、ありがとう……」
 才人にも励まされて、カネゴンはしおらしく頭を垂れた。その様子をながめた女の子たちが、
ヒソヒソと話し合う。
「何だかチュレンヌの奴、すっかり大人しくなったわね。人間の時は、あんなに威張り散らして
あたしたちに迷惑掛けまくってたのに」
「怪獣に変身しちゃって、気がまいっちゃってるんじゃないかしら。それとも、環境が変わったから、
性格も変わったのかも」
「今の方が、ずっと感じがいいわよね」
 そんな中で、ルイズがふとスカロンに尋ねかける。
「ところで、ジェシカはまだ帰ってないのかしら? そろそろ帰ってきてもいい頃合いなのに」
「あら、そうね。あの子ったら、どうしちゃったのかしら」
 ジェシカは私用の買い物に出掛けている。それはいいのだが、あまり帰りが遅くなったら、
開店までに彼女の支度が間に合わなくなってしまう。スカロンの娘なので当然、古株のジェシカが
そんな初歩的なミスをするとは思えないのだが……。
「もしかして、怪しい奴に絡まれてるんじゃあ……」
 才人はジェシカの身を危惧する。人の集まるトリスタニアには、日々良からぬことを企む人間も少なくない。
ジェシカはなかなかに魅力的な女性なので、目をつけられる危険性は高いのだ。
 だがスカロンは、才人の言を否定する。
「その線は薄いと思うわ。ジェシカも、トリスタニアの生活は長いもの。怪しい人間を避ける術は
ちゃんと身についてるわ。もう少しだけ待ってみましょう。あの子のことだし、きっとその内、
ひょっこり帰ってくるわよ」
 と父親が言うので、才人たちはそれに従うことにした。

 時間は少々さかのぼる。問題のジェシカは、買い物を済ませて妖精亭に帰るため、裏通りを
進んでいるところだった。
「一個だけ残ってて助かったわ。材料貴重だから、次いつ入荷するか分かんないし」
 目当ての香水を、品切れ前に購入できてほくほく顔のジェシカ。日の光があまり届かない裏道も、
ジェシカにとっては勝手知ったる場所なので、スイスイ進んでいく。
 しかしその途中で、普段は出くわさないものに出くわした。
「いてててて! あいてててててて!」
「?」
 裏通りの端に痩せぎすの男が倒れていて、腹部を抑えて悶え苦しんでいたのだ。見過ごす訳にはいかず、
ジェシカはその男に声を掛ける。
「そこのあんた、随分苦しそうだけど、どうしたの?」
「腹が……腹が痛いんだよ! そこのあんた、助けてくれぇ!」
 男は苦悶に彩られた顔を上げ、ジェシカに頼んだ。しかし、こういう場所には、怪我人を装って
不用意に近づいた人間を罠に嵌める輩もいる。それを知っているジェシカは用心し、男から
一定の距離を保ちつつ告げる。
「じゃあ、誰か人を呼んでくるよ。そして病院に連れてってあげるからさ。ちょっと待ってて」
 だが、男はそれをよしとしなかった。
「そんなこと言わないで……お嬢ちゃんがこっち来てくれよぉ~!」
 突然男の口から長い舌が伸び、ジェシカの細い首に巻きついた!
「きゃあぁッ!?」
 流石に舌が伸びるとは思ってもいなかったジェシカはろくに反応できず、首をきつく締めつけられる。
「く、苦しい……!」
 助けを呼ぶ声を上げることも出来ず、ほどなくして気を失ってしまった。
「うふふふふふ……! まずは人質の確保、成功だぁ!」
 長い舌を口に収めた男の顔は、緑一色の怪物のものに変化していた。

 『魅惑の妖精』亭では、才人がカネゴンに金貨を渡していた。
「もうじきメーターがゼロになりそうだろ。これで閉店までは持つと思うぜ」
「おぉ、今のわたしのことを、こんなにも気遣ってくれるのか。坊ちゃん、本当にありがとう。感謝する……!」
 金貨をもらったカネゴンは、突き出た目を潤ませて感激した。それに、反対に気が引ける才人。
「そこまで喜ぶことないのに。人間の時は、たくさんの人を従えてたじゃん」
「いいや。今、こんな身の上になって分かったが、これまでわたしの周りにいた人間は皆、
わたしの金目当てに機嫌を取る奴ばかりだった。かくいうわたしも、金こそが全てだと思っていた。
しかし、金で作った人の縁など、非常に儚いもので、肝心な時に役に立たないものだと身に染みたよ……」
 これまでの自身の生き様を反省するカネゴン。金の切れ目が縁の切れ目と言うが、実際金で築いたものは、
金がなくなると呆気なく崩壊するもののようだ。
「しかし、ここにいる人たちは違う。文字通り金食い虫のわたしに親切にしてくれている。
これこそが、人間にとって本当に大切なものだったのだ。わたしは馬鹿だったよ。
徴税官チュレンヌに戻れたら、不正のない真っ当な役人としてやり直したい」
 変な話だが、人間にあらざる存在になって、初めて人情が芽生えたようだ。才人はカネゴンの
心の入れ替えを、にっこりと微笑んで祝福した。
「俺、カネゴン――いや、チュレンヌさんのこと、精一杯応援するよ。どうにかして、絶対に、人間に戻ろうな」
 二人がそんな話をしていたら、スカロンが時間を確かめ、焦った声を出した。
「もう開店間際なのに、ジェシカが相変わらず帰らないわ……。本当にあの子、どうしたのかしら。
こうなったら探しに、いえ、憲兵に連絡するのが先ね……」
 本気でジェシカの心配をし始めたところで、羽扉の外から妖精亭の常連客が、手紙を片手に
スカロンに呼びかけた。
「スカロンさん! 店の前に、こんな書き置きがあったよ!」
「あら、どうもありがとうございます。誰が置いてったのかしら……」
 スカロンはすぐに内容を確かめ、一気にその顔が青ざめた。様子がおかしいことに気がついた
才人とカネゴンが、彼に近寄る。
「スカロンさん、どうしたんだ?」
「た、大変だわ! ジェシカが、誘拐されたみたい!」
「えぇッ!?」
 誘拐という単語に、店の全員が驚愕した。ルイズがスカロンの元に駆け寄る。
「な、何て書いてあるの!? 見せてッ!」
 スカロンから書き置きを預かったルイズは、その内容を才人に伝える。
「サイト、大変よ! 『この店の娘の一人を預かった。返してほしかったら、ヒラガサイトと
ルイズというのの二人だけで、地図のバツ印まで来い。兵士に連絡したら、娘の命はない』って
書いてる! ジェシカのことだわ!」
「な、何だって!? すぐにジェシカに助けに行かなくっちゃ!」
 そのまま店を飛び出しそうな勢いの才人を、スカロンが押し留める。
「待ってちょうだい! 父親のあたしじゃなくて、ルイズちゃんたちを指名したってことは、
犯人はあなたたちの身の上を知ってる奴に違いないわ。きっと、相応の用意をしてるはず。危険よ!」
 自分の娘の危機にも関わらず、ルイズと才人を気遣う心優しいスカロン。ルイズたちはそれを
ありがたく思うと同時に、彼のために尽力したくなる。
「平気よ。わたしたち、こう見えても結構場数踏んでるんだから。ねえサイト」
「ああ! 安心してくれスカロンさん。ジェシカは俺たちが必ず助け出すから!」
 胸を張った才人がデルフリンガーを取ってくると、ルイズとともに犯人が指定した場所へ向かう。
「すぐ戻ってくるから! みんなはいつも通りに営業しててくれ!」
 才人のひと言を最後に、二人は妖精亭を飛び出していった。ジェシカが人質にされているので、
それを見送ることしか出来ないスカロンたちだが、その中でカネゴンが言う。
「……わたしも行こう!」
「ええッ!? カネゴンちゃん、本気? 今のあなたじゃ、危険すぎるわよ!」
 スカロンの問い返しに、カネゴンは答える。
「確かに魔法の力はなくなったが、この怪物の容姿がある。犯人も、わたしが顔を見せたら
一瞬でも驚くはずだ。何より、行き場を失ったわたしを助けてくれたここのみんなの力になりたいのだ! 
店主、いやスカロンさん、止めてくれるな!」
「ああッ! カネゴンちゃん!」
 カネゴンは制止を振り切って、ルイズたちの後を追いかけていってしまった。

「ルイズ、犯人が指定した場所は、どの辺りなんだ?」
「病院のすぐ横よ。どうしてそんなところを……」
 ルイズと才人は、地図に印された場所に急行した。その場所、病院の真横の通りでは痩せぎすの男が、
気絶したままのジェシカを足元に寝かせ、その首筋に二又の刀を突きつけていた。
「うふふふ、来たなぁウルトラマンゼロ! 待ってたぞぉ」
「! お前は誰だ!」
 男の姿を確かめた才人が問う。
「オイラは円盤生物ブニョ。お前を抹殺するために、ヤプールに雇われたのさ」
「円盤生物……姫さまが誘拐されかけた時の怪獣たちの生き残りね。わたしたちが狙いなら、
直接掛かってくればいいじゃない! ジェシカを巻き込むなんて卑怯よ!」
 ルイズが非難すると、人間状態のブニョは嫌らしい笑みを顔に張りつけ、言い放った。
「ゼロは人類の守り神だそうだからなぁ。病人がいっぱいいる病院の真横じゃ戦えない。
変身もしない。な? そうだろ?」
「なッ……! そのために、ここを選んだのね……!」
 激しい憤りに包まれるルイズ。どこの軍隊の末端の兵士も、質の悪い傭兵でも、最低限の
情けというものがある。怪我人や病人をわざわざ巻き込むような卑劣な真似はしない。だが、
ブニョは平然と盾に利用している。吐き気がするくらいの、許しがたい蛮行だ。
 しかし、ブニョの手元にはジェシカの命がある。そのため、ルイズと才人は武器を手にすることも出来なかった。
「ジェシカを返せ! 病院の人たちも、巻き添えにするんじゃない!」
 才人が怒鳴ると、ブニョは条件を突き出す。
「お前たちの身柄と交換だ。ゼロのお前と、強い力を持つその娘が大人しく捕まるのなら、
傷一つつけずに返してやる。嫌なら、今この場で……ウヒヒヒヒッ!」
 刀でジェシカの喉笛を切り裂く真似をするブニョ。才人とルイズは仕方なく、その条件を呑む。
「分かった、言う通りにする……。その代わりに、先にジェシカを返してくれ!」
「よしよし、いいだろう。流石は人間の味方、ウルトラマンゼロだけのことはある。それ、受け取るがいい」
 ブニョは無造作にジェシカを起こすと、才人に突き出す。才人は油断なくゆっくりと近づき、
ジェシカの身柄を預かった。
「今だッ!」
 その瞬間を狙って、ブニョはどこからともなく出した赤いロープを才人の両手首に巻きつけた。
才人の腕は、ウルティメイトブレスレットの上から縛り上げられる。これでは、ウルトラゼロアイを
出すことが出来ない!
「サイト!」
「うッ……!」
 両腕を使えなくなった才人に代わり、ルイズがジェシカを預かる。才人はロープをほどこうともがくが、
ブニョがそれを嘲笑した。
「無駄だ無駄だ! 宇宙鋼線で作ったロープだ。どんな力でも切れることはなぁい! 
お前がゼロに変身できなくなってる内に、五体をバラバラに切り落としてやるぅ!」
 刀を振り上げ、才人ににじり寄ってくるブニョ。
「相棒危ねえ!」
「分かってるよ! でも、今逃げたらジェシカが……!」
 デルフリンガーが叫ぶが、今の才人は彼を手に取ることも出来ない。更に失神している
ジェシカを連れてブニョから逃げるのも無理だ。ルイズの魔法も間に合いそうにない。八方ふさがりである。
「ウルトラマンゼロもこれでおしまいだなぁ! なぁ!? ハルケギニアはとうとう、
ヤプール人のものだ! ウヒヒヒヒヒヒッ!」
 才人たちが立ちすくむことしか出来ない間にも、ブニョの凶刃が刻一刻と迫る!
 その時になって、カネゴンがこの場に到着した。
「いかんいかん、迷ってしまった……。む、あれは!?」
 カネゴンは状況を目にすると仰天。そしてすぐに自分のやるべきことを判断する。
「うおおおお―――――! 坊ちゃん、女官殿、危なーいッ!」
「チュレンヌさん!?」
「うぎゃあッ!? 何だぁ~!?」
 カネゴンは全速力でブニョに飛び掛かり、ブニョともつれ合って倒れた。そのお陰で、
才人とルイズはジェシカを連れてブニョから距離を取ることに成功する。
「こ、この怪獣~! 後ちょっとというところで、よくも邪魔してくれたな~! お前から先に始末してやるぅ~!」
 とどめまで後一歩の時に妨害されたブニョは怒り心頭。怪物の顔を晒して、カネゴンを斬殺しようとする。
「ひ、ヒィィィ―――――――! お助けぇ―――――――!」
「サイト! チュレンヌが危ないわ!」
「ああ! ルイズ、カプセル怪獣を取ってくれ!」
 手が使えない才人の代わりに、ルイズがカプセルを取り出し、放り投げた。召喚されたのはウインダムだ。
「グワアアアアアアア!」
「ウインダム、ブニョを追っ払うんだ!」
 ウインダムは即座に指示に従い、今にも押し倒したカネゴンの喉を切り裂こうとしていた
ブニョを手で払いのける。
「うひゃあああ――――――!?」
「グワアアアアアアア!」
 更に額からのレーザーで追撃。ブニョはほうほうの体で逃走していった。ひとまずは窮地を
脱することが出来た。
「チュレンヌさん、大丈夫か!?」
「よかった。どこもやられてないわね」
「あ、ありがとう……。結局、助けられてしまったな……」
「いや、こっちこそ本当に危ないところだった。助けてくれてありがとう」
 ブニョがいなくなったので、ルイズたちはカネゴンに手を貸して助け起こした。しかし、
ブニョの脅威はまだ消えていなかったのだ。
「ブヨヨヨヨヨヨ!」
 逃走したブニョは巨大化、緑一色の怪獣の姿を露わにして、夜のトリスタニアの真ん中に出現した。
街からは人々の悲鳴が湧き上がり出す。
「グワアアアアアアア!」
 ウインダムは怪獣ブニョが出現すると、すぐにそちらへ突撃していく。距離を詰められた
ブニョは激しく拳を振るい、ウインダムも負けじとパンチを繰り出して、両者殴り合いになった。
「グワアアアアアアア!」
「ブヨヨヨヨヨヨ!」
 しかし、勝敗はすぐに決す。非力なブニョは呆気なく押し負け、両方の頬にワンツーパンチを
もらってぶっ飛んだ。
「グワアアアアアアア!」
 ウインダムは倒れたブニョに追撃のレーザーを撃ち込もうとする。が、即座に上半身を上げた
ブニョが緑色のヌルヌルとしたオイルを吐き、ウインダムの足元にまき散らすと、ウインダムは
足を滑らせてバッターン! と大きく転倒してしまった。
 その余波で、レンガ造りの商店がバラバラに崩れた。
「わあああぁぁぁぁぁぁ! わしの店ぇぇぇぇぇぇ!」
「グワアアアアアアア!?」
 顔を上げたウインダムはガーン! とショックを受けたかのように開いた口を手の平で隠し、
商店を元に戻そうと、崩れたレンガを必死に積み上げる。
「ブヨヨヨヨヨヨ!」
 しかしそこに、背後からブニョに蹴りを入れられ、その衝撃でレンガは余計に崩れてしまった。
ブニョは口から火花を放ち、倒れたままのウインダムを追い詰める。
「グワアアアアアアア!」
 背面を焼かれるウインダムが悲鳴を上げて悶えた。

「怪獣が出てきたわ! ジェシカは無事なのかしら……?」
 ブニョの出現により、トリスタニアの街は一気に騒然となり、あらゆる通りは逃げ惑う人々で
ごった返した。スカロンたちも妖精亭から外に出て、ジェシカやルイズらの心配をした。
 また別の場所では、チュレンヌの屋敷の衛兵たちが、状況を確認するために街へと出てきていた。
「こんな時に、チュレンヌさまはどこへ行ってしまったのだ……」
 衛兵たちは、未だに自分たちの追い出したカネゴンがチュレンヌであることに気が付いていなかった。
と、その時に、彼らの近くで、財産を抱えて避難しているところの男性がスッ転んで金貨を辺りにぶちまけた。
「あッ」
 衛兵たちは全員、思わず足元に転がってきた金貨を見下ろした。

 ウインダムが苦しめられている中で、才人はカネゴンにまだ失神中のジェシカを託した。
「チュレンヌさん、ジェシカを妖精亭まで運んであげて下さい! 俺たちは、このロープを
どうにかしてから追いかけます!」
「う、うむ! 君たちもすぐに来てくれよ!」
 言われた通りに、ジェシカを抱え上げて瞬く間に走り去っていくカネゴン。残る問題は、
どうやって宇宙鋼線製のロープを解いて、ゼロに変身するかだ。
「うッ、くッ……か、固い……!」
「全然ほどける気配がないわ……!」
 二人掛かりで解こうとするも、ロープは才人の手首をガッチリ締めつけていて、全く効果がない。
如何なる力でも切れないというのは伊達ではないようだ。
「こんなんじゃ駄目だ。何かいい手は……」
 考えた才人は、天啓を得たかのように案を思いつく。
「そうだ! ルイズ、俺に『爆発』を浴びせろ!」
「えッ!? いきなり何言い出すの!?」
「お前の『爆発』の衝撃は相当なもんだ! それなら、このロープも緩むかも!」
 いつもは癇癪任せに才人を爆発させているルイズだが、こんな時に限って戸惑う。しかし考えている
時間はないのだ。駄目元でやってみる。
「後で文句言わないでよね! 『爆発』!」
 最も短い形で呪文を詠唱すると、たちまち才人を爆発が包んだ。
「うげッ! げほッ! 相変わらず強烈だな……」
 激しく咳き込む才人だが、もう爆発にも慣れた。割と平然としている。
 それとは反対に、ロープは思惑通りに緩んでくれた。成功だ。
「よっしゃあッ! これで、とうとう変身できるぜ!」
 すかさずロープから手首を抜くと、念願のウルトラゼロアイを出し、すぐに顔に装着した。
「デュワッ!」
 一瞬で才人はゼロに変身、巨大化を果たした。街からは、待ち望んでいたヒーローの登場に
歓喜の声が沸き起こった。
『散々好き勝手してくれやがったな! だが、そろそろ年貢の徴税の時間だぜ!』
「ブヨヨヨヨヨヨ!?」
 ブニョはゼロが目の前に現れたことに激しく動揺した。その隙に、ゼロはウインダムをカプセルに戻した。
『よぉし! 行くぜぇッ!』
 ブニョへとまっすぐ駆けていくゼロ。彼の腕前ならば、一撃でブニョを破裂できることだろう。
「ブヨヨヨヨヨヨ!」
 だがブニョも黙ってやられる真似はしない。再びオイルを吐き、ゼロの足元にまいた。
『うおぉッ!?』
 ゼロも足を滑らせ、転倒してしまった。どんな力のある者も、オイルをまかれて踏ん張るのは無理なことだ。
「ブヨヨヨヨヨヨ!」
 そしてブニョは舌を伸ばし、ゼロの首に巻きつけると、そのまま引っ張って市中引き回しにする。
大変非力なブニョだが、舌の筋力だけは自信があるのだ。
『うおおおおッ! くそッ、つまらねぇ真似すんじゃねぇぜ!』
 しかしゼロほどの男が、されるままになる訳がない。顔を上げてエメリウムスラッシュを放ち、
舌を焼き切ったのだ。
「ブヨヨヨヨヨヨ!!」
『はぁッ!』
 ブニョが舌を切断されて狼狽している間に、ゼロは高く跳躍した。降り立った場所は、ブニョの真後ろ。
『テメェのような奴には、一片の情けもねぇぜ! こいつでフィニッシュだぁぁぁぁ―――――――――――――!!』
 ゼロは好機を逃さず、ブニョを背後から捕らえると、きりもみ回転をつけて真上に投げ飛ばした。
それからゼロも跳び、無防備なブニョの逆さまな身体を押さえて、真下の地面に激しく叩きつけた! 
グレンファイヤーから技を盗んで編み出した強力な一撃、ゼロドライバーだ!
 その一撃によりブニョは絶命したのだが、ゼロドライバーが決まった瞬間、戦いをながめていた
ルイズが思わず叫んだ。
「あッ! 緑のぶよぶよが逆立ちした!」
 直後にブニョは全身が破裂し、緑の粘液が弾けた。
 それに合わせるかのように、スカロンたちの元にジェシカを届けたカネゴンが、突然下部から
ロケット噴射を出して大空へ飛び上がった!
「ええええええええええ――――――――――――――――――――!!?」
 ルイズやスカロンたちは、予想外すぎる展開に絶叫を上げてあんぐり口を開いた。
 ぐんぐん高度を上げていくカネゴンだが、その途中で、パラシュートが切り離された。
「何か落ちてくる!」
「行ってみましょうよ!」
 パラシュートを追って走っていくルイズやスカロンたち。そうして街中に着地したパラシュートを
発見する。その傘の下から、何かが這い出てきた。
「あぁぁぁぁッ!! チュレンヌさん、元の姿に戻ってる!」
 出てきたのはチュレンヌ。もうカネゴンの姿ではなくなっていた。それを、自身の身体に
触れて確かめたチュレンヌは、即座に大歓喜した。
「も、元に戻ってる! やったやったぁ~! やったぞぉ~!」
 貴族らしい振る舞いも忘れ、子供のようにはしゃぐチュレンヌに、変身を解いた才人とルイズが近寄っていく。
「よかったですね、チュレンヌさん。これでもうひと安心ですよ」
「でも、もうお金にがめつくなったら駄目よ。またカネゴンになられたらたまらないもの」
「ああ、ああ、分かっておりますとも! もう金儲けはコリゴリだ。これからは慎ましやかに
生きていくことを誓いますぞ!」
 チュレンヌはカネゴンへの変身を通して、すっかり心を入れ替えたようだ。それを見て取って、
ルイズたちは満足そうに笑い返した。
「スカロンさん、世話になった! あんたたちは、我が人生の恩人だ! 本当に感謝する!」
「こちらこそ、短い間でしたけど、賑やかで楽しかったですよ。チュレンヌさま、どうぞお達者で~!」
 スカロンやルイズらに見送られて、チュレンヌはスキップのように跳びはねながら、
自分の屋敷に帰っていった。

「うっほほい! うっほほい! 人間に戻れたぞ~!」
 チュレンヌは道中ずっとはしゃぎながら、自身の屋敷の前まで到着した。すぐに正門を開き、帰宅を果たす。
「皆の者、チュレンヌが帰ったぞ! ――ぬええぇぇッ!?」
 中に入ると同時に呼びかけたのだが、目に入った光景によって、その声は裏返った。
「あッ、チュレンヌさま~。お帰りなさいませ~」
 何と屋敷の吹き抜けの玄関で、槍を持ったカネゴンたちが縦列を作っていたのだ。チュレンヌはすぐに
それらが、城の衛兵たちだと理解した。
「お、お前たち……」
 ぼんやりと突っ立っているカネゴンたちの光景に衝撃を受けたチュレンヌは、同時に才人の
言っていたことを思い出す。
「……道に落ちてる金を、ネコババしたのだな……」
 自分が戻った矢先にコレ。チュレンヌは目の前が真っ暗になって、頭を抱えて天を仰いだ。


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