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第二十一話「魔の眼鏡 スケベ心にご用心!!(前編)」


ウルトラマンゼロの使い魔
第二十一話「魔の眼鏡 スケベ心にご用心!!(前編)」
謀略宇宙人マノン星人 登場



 アンリエッタ率いるトリステイン軍本隊が到着した時には、タルブ村の戦いは既に終わっていた。
怪獣、異星人は完全に駆逐され、残っているのは戦艦を失ったアルビオン兵のみであった。
単純な兵力では以前アルビオン側が上であったが、彼らは戦艦を失い大地に放り出されたことで
戦意が削がれていたので、恐るべき敵がいなくなったことで逆に士気を高めたトリステイン軍に
なす術なく捕らえられ、トリステイン軍が到着する前にはもう姿をくらましたワルドを除いた
全員が捕虜と化した。
 不思議なことに、ハルケギニア外からの侵略者を焼き尽くした光の球は、人間には一切の
危害を加えなかった。そのため、炎上した艦の不時着での怪我人はいても、死者は一人も出なかった。
 ともかく、トリステインは奇跡的な勝利を収めた。更にゴルドンから採取された莫大な黄金が
タルブ村から寄贈されたことで、軍の再建のために尽きかけていた国庫が例年の予算以上に潤った。
トリステインでは戦勝が祝われることになり、アンリエッタは国民から奇跡の勝利を国にもたらした
『聖女』と崇められた。そして戴冠式を経て女王の座に着くことが決定されたのだ。
 同時にゲルマニア皇帝との婚姻の解消も発表された。ゲルマニアは一時は認めようとしなかったものの、
トリステインの立場が劇的に向上した以上、頑なな態度を取ることは出来なかった。アンリエッタは
自由の身になったのだ。
 しかし魔法学院に帰還したルイズたちは、それとは別の話題を盛んに話し合っていた。

「しっかし、すごかったなぁ。『虚無』の魔法」
 ルイズの部屋で、部屋の主を前にしながら、才人がナックル星人の軍勢に決定的なとどめを刺した
『虚無の魔法』について言及した。するとウルティメイトブレスレットの中のゼロと、姿見の中の
ミラーナイトが同意する。
『全く同感だ。あれだけの数を一辺に仕留めるなんて、ウルトラ戦士でも難しいぜ』
『しかもそれでいて、攻撃対象の取捨選択まで出来るとは。まさに『魔法』としか言いようがありませんね。
そんな技が存在していようとは、宇宙の広さは侮れません』
「そ、そう? まぁ、ハルケギニアの伝説の魔法なんだもの。それくらいじゃないと、
むしろ拍子抜けしちゃうわよ」
 ゼロとミラーナイトの言葉を聞いて、ベッドに腰かけているルイズは満更ではなさそうに髪をかき上げた。
 彼女はゼロたちに『虚無の魔法』を持ち上げられて、自分が称賛されているようなこそばゆい気分になっていた。
何しろ、念願の自分の魔法なのだ。今まで何度夢見てきたことだろう。しかもそれを、何回も驚異的な力を
見せつけたゼロらに評価されるのは、彼らに並んだように思えて非常に気分が良かった。
 特に才人にキラキラした目を向けられるのは、今まで味わったことがないほど快感だった。
さぁ、もっとわたしを褒めたたえなさい。そんなことまで考えるが、
「でも喜ばしいことは、それだけじゃないよな。何と言っても、ジャンボットが復活した!」
 才人がもう話題を切り替えたので、ガクッと肩を落とした。それだけか! と言いたくなったが、
彼女を制して第三者が声を上げる。
『サイト、ありがとう。これからは、この鋼鉄の武人、ジャンボットのこともよろしくお願いする!』
 畏まった挨拶をしたのは、才人に名前を呼ばれたジャンボット……だが、さすがに本体ではない。
部屋に入り切る訳がない。
 復活したジャンボットは、ゼロのように人間に一体化することも、ミラーナイトのように
鏡の世界にいることも出来ないので、ジャンバードの状態で衛星軌道上に身を置くことになった。
有事の際には、そこから現場へ直行する。
 代わりに部屋にいるのは、コックピットにあったモニター上部のリング型ランプを模したブレスレットだ。
これは一種の無線機で、ジャンボットの電子頭脳と直通している。ジャンボット当人がいられない場所で
仲間と連絡を取り合うために用意したものなんだとか。
「そして、私のこともお願いしますね! サイトさん!」
 そしてその腕輪を嵌めて、にっこり笑ったのは、シエスタだった。
 彼女はタルブ村での戦いの際、才人がゼロに変身するところを目撃していた。それを告白されると、
才人とルイズは隠し通さねばならない秘密を知られて大慌てになった。だが、シエスタは他の者に
言いふらすつもりはなかった。その代わりに、事情を全て説明し、これからは自分もウルトラマンゼロの
秘密を共有する仲間にすることを要求した。
 そういう経緯があって、ジャンボットの腕輪を彼女が嵌めることになったのだ。
「サイトさん、それから私のひいおじいちゃん……違う世界の人だったんですね。驚きでいっぱいです。
でも、これからは私も一緒に戦います! よろしくお願いしますね、サイトさんッ」
「ありがと。でも、シエスタが戦うことはないだろ」
『その通りだ。戦闘は私の仕事。シエスタは私のサポートをしてくれるだけでいい』
「あッ、そうでしたね」
 アハハとおかしそうに笑い合う才人とシエスタの様子を、ルイズはすごく不機嫌そうにながめた。
「……ねぇ、どうしてもシエスタを仲間に入れなきゃいけなかったの?」
 姿見に首を向けてミラーナイトに尋ねかけると、彼はこう答えた。
『仕方ありませんよ。放置するより、仲間に入れておいた方が私たちも秘密をバラされないで
済むと安心できますし。それとも、ルイズはシエスタがいると何か不都合なのですか?』
「べ、別にそういう訳じゃないわ」
 才人と自分だけで共有していた秘密に、シエスタが割り込んできたのが不愉快だからとは、
さすがに言えなかった。
「シエスタのことはもういいわ。でも、腕輪を所持する役割はわたしでも良かったんじゃないかしら? 
わたしの方が、サイトといる時間が多いんだし」
 最後のひと言をわざわざ強調しながらジャンボットに問いかけると、当人からは次のように返答される。
『私もそれは考えたが、シエスタは私がこの星に一人きりで放り出してしまったササキの
曾孫だそうではないか。彼への負い目があるので、シエスタのことを側で見守っていたいのだ』
「『竜の羽衣』さん……ありがとうございます」
『ジャンボットと呼んでくれ』
 ジャンボットの言い分を理解はするルイズだが、ジャンボットとともにあるシエスタと、
ゼロと一体化している才人、そして別にミラーナイトと一緒な訳ではない自分を見比べると、
シエスタに一歩追い抜かれたような気になってやはり気分を悪くした。
『けど、喜んでばかりもいられねぇぜ。大変なことが分かったからな。ヤプールのことだ……』
 話の最中にゼロが、ナックル星人が死に際にしゃべった名前を挙げると、ミラーナイトや
ジャンボット、才人の雰囲気も険しくなった。
『そうですね……。ゼロ、あなたのお父上が言っていた、大いなる邪悪の気配とは、ヤプール人の
ことではないでしょうか?』
『その可能性は高いな。ヤプールは異次元人だ。宇宙間を渡り歩くことも、奴らには難しいことじゃないだろう。
事実、アナザースペースにも現れやがった』
『侵略者たちをこの宇宙へ連れてきたのも、ヤプールに違いあるまい』
「ヤプール人か……。話は散々聞いてたが、実際に出会う日が来るなんて、思いもしてなかったな」
 和やかな雰囲気を一変させ、緊迫した空気で語り合うゼロたちに、「ヤプール人」を知らない
ルイズとシエスタが質問する。
「そのヤプールってのは何者なの? 宇宙人とはまた別物なのかしら?」
「何だか、相当恐ろしい相手のようですが……」
『ああ、その通りだ。今までの敵とは訳が違う奴だぜ』
 ゼロが二人に対して、ヤプール人の説明を行う。
『ヤプールはそもそも、俺たち惑星の上に生きる「人間」とは根本的なところから違う、
異次元生命体だ』
「イジゲン?」
『異次元の概念は、宇宙以上に説明が難しいから詳しくは省くが……要するに「こことは全く異なる世界」だ。
そしてその世界の生物のヤプール人は、「個人」という概念がない。全体で一個の「生命体」だ』
 全体で一個、と言われてもシエスタにはピンと来なかったが、ルイズは大体のところを理解した。
「それはたとえるなら、ハルケギニア人が個別の意思を持たず、「ハルケギニア」という
巨大な意識の下にある、ということかしら?」
『まぁ、そんなところだ。だがヤプールは、奴らの世界である「異次元」そのものだから、
完全に殺すことが出来ない非常に厄介な存在だ。今まで何人ものウルトラ戦士が奴らを
倒してきたが、その度に復活しやがる。しつこくて敵わねぇぜ』
 世界そのものが一つの生命とは、想像がつき難い。スケールの大き過ぎる話に、ルイズも
シエスタも思わず黙りこくる。
『そしてここからがヤプールの最も厄介なところだが、奴らのエネルギー源は生き物の負の感情から生じる
「マイナスエネルギー」だ。だからより多くのエネルギーを求めるために、次元を超越する能力を使って
いくつもの星を侵略しようと、魔の手を伸ばしてきた。おまけに奴ら、マイナスエネルギーを食ってるからか
性格が卑劣かつ陰湿。悔い改めるって言葉をまるで知らねぇから、始末が悪いのさ』
「俺の故郷、地球も何度かヤプール人に狙われたのさ。その度に、ウルトラ戦士が助けてくれたんだぜ」
 才人が通信端末の画面をルイズたちに見せる。その中にはエース、タロウ、メビウスといった
ウルトラマンの写真が映っている。
『私たちウルティメイトフォースゼロも、ヤプールと戦ったことがあるのです。厳しい戦いでした……』
『あの時は、まだいなかったジャンナインを除いた四人の心と力を合わせることでどうにか撃退したな。
だが今はグレンファイヤーがいない。この現状を狙われるのは危険だ』
 ミラーナイトとジャンボットが言うと、ゼロが才人の中でうなずく。
『そうだな。早いとこ、グレンも見つけないと。あいつ、今どこにいるんだろうな?』
『もう到着していてもおかしくはないと思うのですが……遅いですね』
『もしや、私のようにどこかで動けない身になっているのではないだろうか?』
 ジャンボットの意見に、考え込むミラーナイト。
『それも考えられますね……。では、私が捜索をするとしましょう。無事到着しているといいんですが……』
『私も衛星軌道上から捜すとする。あいつは目立つから、宇宙からでも見つけられるだろう』
『頼んだぜ、二人とも』
 ゼロたちの会話は、それで一旦区切りがつく。するとすかさず、シエスタが才人に飛びついた。
「サイトさん!」
「おわぁッ!? 急にどうしたんだシエスタ!?」
 身体を密着された才人が仰天し、ルイズも目を見開く。
「サイトさん、思えば、私の家族を助けてくれたお礼がまだでしたね。それだけじゃなく、
サイトさんが今まで何度も私たちを助けてくれてたんですよね。何とお礼をすればいいか!」
「そ、そんなのいいよ。ハルケギニアを守ってるのは俺じゃなくてゼロで、俺のしたことなんて
ほんのちょっとしかないから……」
 興奮しているシエスタを落ち着かせてそっとはがそうとする才人だが、そうすると余計に抱きつかれた。
ますます身体同士が密着して、才人の顔が真っ赤になる。
「いいえ、そんなことありません! 少なくとも、私にとってサイトさんはヒーローです! 
是非ともお礼させて下さい! サイトさんが望むことなら、何だってします!」
「何でも!?」
「はい、何でも!」
 シエスタの豊満な胸が自分に押しつけられ、ムギュウと形が変わる。それを見下ろし、
才人は思わずムホッ、と小さく変な声を上げた。
 だがその直後に、強烈な怒気を感じ取って顔が青ざめる。振り返ると、ルイズがゴゴゴ……
という擬音が似合いそうなほどの怒りの表情を浮かべて、鞭を手に立ち上がっていた。
「ル、ル、ルイズ!? ま、待て! 落ち着くんだ! これは違う!」
「な~に~が~、違うのかしらぁ~?」
 シエスタを離して必死になだめるが、こうなったルイズはもう彼の手には負えない。
いつものことだ。
「メイドなんかにいやらしい目を向けてッ! 何度言っても分からないわね! このエロ犬ぅー!!」
「ひいいいいッ!」
 ルイズが鞭を振り上げると、才人が恐怖に震えて頭を抱える。いつものように、才人が
ボロボロになるほどのお仕置きがすぐにも始まる。
『やめたまえッ!』
「えッ!?」
 と思われたが、その直前にジャンボットが制止の声を上げた。思わぬ横槍に、ルイズは
ついピタリと停止した。
 動きの止まった彼女を、ジャンボットが激しく叱り出す。
『罪のないサイトを鞭打とうとは、何たる蛮行か! それでも淑女か!』
「で、でも……」
『口答えをするな! そこに座りたまえ!』
 顔は見えないが、ジャンボットのあまりの剣幕にルイズは逆らえず、シエスタの前でペタリと
床に正座した。するとジャンボットの説教が始まる。
『良いか? そもそも私は、サイトの待遇に納得が行かんのだ。「使い魔」などと、彼の人権を無視している。
故意に選出した訳ではないとはいえ、頼るものがないのをいいことに彼をこき使い、あまつさえ藁の上に
寝かすなど、言語道断! まるで奴隷ではないか! 私はここに、サイトの待遇の改善を要求する!』
「いや、ある程度は俺も納得してることだし、最近は良くなってるし……」
『部外者は黙っていたまえ!』
 口出ししたら、お叱りを受ける才人。俺が当事者なんだけど……と思ったが、とても入り込める様子ではなかった。
『しかも今度は、彼が異性と密着していただけで犬呼ばわりして侮辱し、暴力を振るおうとする始末! 
もう我慢がならんぞ! 君には羞恥というものがないのか!?』
 説教が先ほどの状況のことになると、ルイズは反論する。
「た、ただくっついてたから怒ったんじゃないわ! サイトが、シエスタをいやらしい目で見てるから! 
使い魔の品性は召喚主のわたしの品位につながるのよ! そこは正さなくっちゃ……!」
 だがジャンボットは引き下がらなかった。
『そんなものは、君の主観ではないか! サイトがふしだらな態度を取ったという証拠はあるのか!?』
「そ、それは……ないけど……」
『ほら見たことか! 少なくともサイトは、一切卑猥な行為を働いていない! シエスタと
ともにある私はよく分かる! 証拠もなしに、彼を理不尽に罰しようなどと、無礼にも程がある! 
恥を知りたまえ!』
「う、うぅ……」
『私が仕えているエメラナ姫は、まことに心が広い、寛大なお方だ! ルイズ、君も貴族を
名乗るならば、姫様のようなお人になることを目指すべきだと……!』
 畳みかけるようにガミガミ叱るジャンボット。それを端からながめているデルフリンガーが、
ミラーナイトに話しかける。
「あのジャンボットって奴、すげえな。娘っ子がタジタジになるとこなんて、初めて見たぜ」
『ジャンボットは融通の利かないところがあるほど厳しい性格ですからね……。ああなった彼を
かわせるのは、グレンファイヤーくらいでしょう』
 それからしばらく、ジャンボットの説教は続いた。そのためその間は、ルイズがメイドの
シエスタの前で座り込んで頭を垂れるという、普段の彼女を知る者が見たら目を疑いたくなる
光景が続くことになった。
 ……しかしルイズは、熱い説教を受けても才人への態度を考え直しはしなかった。むしろ、
こんなことを考えた。
「証拠がないのがいけないんでしょ……。だったら、あるようにすればいいんだわ……」
 その考えが、翌日に大変な騒動を起こすことになる。

 日付が変わり、ルイズの部屋。トリスタニアで戦勝祝いのお祭りが開催されるのだが、
それに向かう直前に、才人はルイズからあるものをプレゼントされた。
「何だこれ。眼鏡?」
 才人が受け取ったのは、縁を宝石で彩った派手な眼鏡だった。舞踏会用のマスクにも見える。
「俺、目は割といい方だけど?」
「ただの眼鏡じゃないわ。昔から我が家に伝わる秘宝の一つを、お姉様に頼んで送ってもらったの」
「へー……」
 説明を聞きながら、試しに眼鏡を着用してみる才人。背を向けているルイズが、グッと
ガッツポーズを作ったのにも気づかずに。
「ふーん? 度は入ってないみたいだな……」
 才人はすぐに眼鏡を外そうとするが、何故か顔にピッタリと貼りついて、はがれない。
「あれ? 外れねぇんだけど!?」
「さ、さぁ、出掛けるわよぉ!」
「えッ? このまんま?」
 才人が奮闘している間に、ルイズは丸で無理矢理話題を切り替えるかのように、さっさと
部屋を後にした。仕方なく、才人はその背中を追いかけていった。

 寮塔を出た二人は、早速洗濯物を入れた籠を運んでいるシエスタに出くわした。
「おッ、シエスター!」
「サイトさん! ……?」
 才人に呼び止められて振り返ったシエスタは、すぐに才人の顔に掛かっている眼鏡に疑問を持つ。
「サイトさん、それ、何ですか?」
「これはルイズがくれたものでさ。それより、よかったらお祭り一緒に行かない?」
「いえ、私はまだ仕事がありますから……」
 シエスタも誘う才人が、ふと彼女の胸元に目を落とした。
「うおッ!? これは……!」
 何と、シエスタのふくよかな胸が、カゴの縁に押し上げられて強調されているのだ。
この何気なくも強烈な画に、才人は思わず目を奪われる。
 その瞬間に、眼鏡の中央の一番大きな赤い宝石が点滅して光り出した。丸で危険を知らせる
カラータイマーのように。
「? あ、あの……その眼鏡、急に光り始めましたけど……」
「えッ? な、何だこれ? 急にどうして……」
 眼鏡の存在を思い出した才人は取り外そうとするが、やはり顔に密着していて外れなかった。
すると、
「外れないわよ……」
 後ろからルイズの、地獄の底から響くような剣呑な声がした。才人が恐る恐る背後に目を向けると……。
「その『メデューサの眼鏡』はマジックアイテムなの……。送り主であるわたし以外の女の子を
いやらしい目で見ると、周りの宝石が光るようになってるのよ……」
 ルイズが、ゴウゴウと憤怒の炎を燃えたぎらせている……ように才人には見えた。
「な、何だよそれ! そんなの聞いてねぇぞぉー!」
 必死に眼鏡を外そうともがく才人だったが、ルイズが杖をバシンッ! と鳴らしたので、
恐怖で動きが止まる。
「使い魔の分際で、他の女の子をいやらしい気持ちでながめるなんて……卑猥な目で……
血走った目でぇぇぇぇぇ!!」
 ルイズの怒声が頂点に達すると、振り上げられた杖の先端が猛烈に光った。

 魔法学院の庭から、轟音と共に黒い煙が立ち昇った。

「ふんッ!!」
 そして後には、黒こげになった才人が転がった。するとシエスタの腕輪から、ジャンボットが
慌てふためいた声を上げる。
『ル、ルイズ! 君は、何ということをッ!』
 怒りも見せているジャンボットだったが、今回はルイズの方が何倍も怒りが深かった。
「何か文句でも!? 今回は、ちゃんと証拠があったわよ! 証拠なしに罰するのがいけなかったんでしょ!?」
『い、いや、確かにそんなことを言ったが、さすがにこれはやりすぎでは……』
 ルイズのあまりの剣幕に、今度はジャンボットがタジタジする側になっていた。
「これでも手加減はしたわ! そこんところは、わたしがよく分かってるんだから! 
じゃあ、わたしたちはお祭りに行くから、これで!!」
 有無を言わせないまま、倒れた才人を腕ずくで引きずっていく才人。シエスタとジャンボットは
それを呆然と見送った。
『い、行ってしまった……。確かにサイトに非はあったが、何もあそこまで怒らなくとも
いいのではないだろうか? 何も、彼がルイズに不利益になるようなことをした訳でもないだろうに……』
「あはは……。男女の間は、難しいものなんですよ……」
 戸惑うジャンボットに、シエスタが愛想笑いを浮かべつつ語った。
『そういうものなのか? うぅむ、人間の心というものは、この私の頭脳をもってしても
度し難いものなのだな……』
 ロボットなので、そういうことには疎いジャンボットはうなり声を上げた。

 それから数時間後……。
『おい才人、もうちょっと自制心ってものを持てよ……。いい加減こっちまで痛くなってきたぜ……』
「そんなこと言われたって……。俺だって、好きでこの眼鏡鳴らしてる訳じゃねぇよ……」
 トリスタニアで、アンリエッタのパレードを待つ列に混ざりながら、ボロボロになった
才人がゼロから文句を言われていた。
 魔法学院からトリスタニアに移動するまでの間、『メデューサの眼鏡』はほぼ鳴りっぱなしだった。
才人が女性を見る度に鳴り出しているようにも思えるほどに。判定は相当厳しいようだ。
『いっそのこと、ずっと目を閉じてた方がいいんじゃないか? 誘導は俺がするからさ』
「すまないな。変なことになっちゃって……」
 ゼロの好意に預かり、目を閉ざす才人。しかしその直後に、戴冠式を終わらせて女王となった
アンリエッタのパレードがやってくる。
「あぁッ、姫さまぁ!」
 才人のせいですっかり不機嫌になっていたルイズだが、さすがにアンリエッタの姿を目の当たりにすると、
不機嫌さは吹き飛んで一気に恍惚とした表情になった。
「見て見て! サイト、目をつむってる場合じゃないでしょ? 姫さまがあんな立派なお姿に!」
 促されて、才人も目を開けてアンリエッタの姿を見やる。
「おぉ……」
 思わず、声が漏れた。今のアンリエッタの、式典用に美しく着飾ったドレス姿に目を奪われた。
特に、ドレスの上からでも存在を主張している胸元の膨らみに……。
「サイト……」
「はッ!?」
 気がつけば、また眼鏡がけたたましく鳴っていた。そして目の前には、鬼の形相をした
ルイズが回り込んでいた。
「よりによって姫さまに、女王陛下にいやらしい目を向けるなんてぇ……」
「ま、待てルイズ! ここはまずい!」
 バチバチ杖がスパークしているルイズを止めようとする才人だったが、無駄だった。
「あんたって超最低―――――――!!」
 今日一番の爆発が起こった。

「……」
『おい才人、大丈夫か?』
 そして才人は、城の地下牢の中で転がる羽目になった。先ほどの爆発を、爆破テロと勘違いされて
とっ捕まったのだ。
 『メデューサの眼鏡』は、壊れて才人の顔から外れていた。さすがに着用者が何度も爆発を
食らうという事態は想定していなかったようだ。
「くそ……何がプレゼントだッ!」
 散々な目に遭った才人は怒りのままに眼鏡を投げ捨てようとしたが、ルイズの顔を思い返すと
その意気がしぼみ、力なく腕を降ろした。そして眼鏡の残骸を懐にしまう。
「俺ってやっぱ、こういう扱いなのか……」
『元気出せよ。ルイズがすぐに誤解を解いてくれるさ。すぐにここから出られるぜ』
 落ち込む才人を励ますゼロ。そのすぐ後に、牢の扉が外から開かれる。
『お? 随分と早いな』
 才人とゼロが扉に目を向けると、見慣れないメイドが一人だけ、扉を開放して牢に入ってきた。
「サイト・ヒラガさん、でよろしいでしょうか?」
「そうですけど……えっと、あなたは?」
「私は女王陛下に、誤解で捕らえられたあなた様を釈放するよう命じられた者です。外まで
ご案内致しますので、どうぞついて来て下さい」
「あッ、わざわざすいません」
 へこへこ頭を下げて、メイドと一緒に牢を出ようとする才人。だがその時、
「あら? 扉が開いてるわ……?」
「へ? 今の声……」
 外から聞き覚えのある、涼やかな声が聞こえたので、驚いて足を止める。メイドは何故か慌て始めた。
「使い魔さん? いらっしゃいますか?」
「えッ? 女王陛下!?」
 入り口から顔を覗かせて中に入ってきたのは、メイドを遣わしたはずのアンリエッタ当人だった。
呆然としている才人は彼女に尋ねかける。
「どうしてここに?」
「ルイズとともに話があるので、会いに来たんですが……ここの扉、誰が開けたのかしら?」
「そこのメイドさんですけど……女王陛下が寄越してくれたんでしょ?」
 冷や汗を垂らしているメイドを指して聞き返すと、アンリエッタはキョトンとした。
「わたくしが? そんな覚えはありませんが……」
「へ? じゃあ、この人誰?」
 どうも話が噛み合わないでいると、外から剣を腰に佩いた女兵士がズカズカ踏み込んできて、
メイドに銃を突きつけた。
「陛下、お下がりを! 貴様、何者だ! 正体を現せ!」
 突然入ってきた女兵士について、才人がアンリエッタに尋ねる。
「この人は?」
「新しく組織した近衛隊の銃士隊隊長、アニエス・シュヴァリエ・ド・ミランです」
 そのアニエスに対し、メイドは汗をかきながら答える。
「わ、私は王宮に仕える一介のメイドですよ。そんな、正体なんて……」
「とぼけるな! 私は王宮に仕える人間は、たとえ小間使いであろうと一人残らず顔と名前を記憶している。
王宮の勅使が侵略者の傀儡になる事件があったからな。その中に、貴様の顔はない。言え! どこから送られた間者だ!」
 論破されたメイドは、一瞬で冷酷な表情を顔に浮かべた。
「バレてしまったのなら仕方ないッ!」
 そしてアニエスの虚を突いていきなり才人に飛び掛かり、タックルをかました。
「うぐッ!?」
「使い魔さん!?」
 うめいた才人は、懐をまさぐられて中の物を奪い取られた感触を覚えた。
「なッ! あんた!」
「貴様!」
 アニエスがメイドに発砲するが、メイドは人間離れした軽やかさで跳躍し、牢の入り口から脱け出た。
「ふふふ……文明の遅れた原始人だと高をくくって甘く見ていたか。いいだろう、本当の姿をお見せする……」
 不敵な笑みを見せたメイドの姿がたちまち変化し、体色が鋼の色をした怪人へと変身した。
頭部の輪郭は虫かカニに似ていて、顔つきは能面によく似ている。
『私はレスカウト星系マノン星の宇宙人。宇宙人連合の刺客のマノン星人だ!』
 メイドに化けてトリステイン城に侵入していた宇宙人は、自らをそう名乗った。


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