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第十八話「空飛ぶジャンボット」


ウルトラマンゼロの使い魔
第十八話「空飛ぶジャンボット」
時空怪獣エアロヴァイパー
時間怪獣クロノーム 登場



「ジ、ジャンボット!? ウルティメイトフォースゼロってことは、ミラーナイトと同じ……」
 目の前の巨大な鋼鉄の塊が仲間のジャンボットと聞かされ、ルイズも才人も目を見張った。
同時にルイズは、以前ゼロの記憶を夢として覗き見た時に、同じものを目にしたことがあることを
思い出した。
「でもまさか、あなたの仲間のジャンボットが、こんな鳥みたいなのだったなんて……」
『それをジャンボットに言うなよ。訳あってあいつ、鳥って呼ばれるのは嫌ってるんだ』
 ジャンバード=ジャンボットであることについて、ゼロが解説する。
『それにもう一つの姿って言ったろ。ジャンボットは変形機能のあるロボットなんだ。分かるか? 
ロボット。ここで言うゴーレムや自動人形みたいなもんなんだが。で、中に人を乗せて移動したり
高速で飛行したりする時に、このジャンバードの状態になるんだ』
「へぇ~」
 才人とルイズはゼロの話に感心するが、シエスタは当然何が何だか分からず、目をパチクリさせている。
『とにかく、ジャンボットからどうしてここにいるのか聞きたい。シエスタがいると都合が悪いから、
席を外すよう頼んでもらえないか?』
「シエスタ。悪いけどわたしたち、この『竜の羽衣』をゆっくり、じっくり見たいの。
先に帰っててもらえないかしら?」
「えッ? でも……」
「俺からも頼むよ。ずっと俺たちにつき合わせるのも悪いし」
 ルイズの頼みに、シエスタが難色を示す。しかし才人も加わると、仕方なく了承する。
「分かりました。お気が済みましたら、村に戻ってきて下さいね」
 シエスタが洞窟から退出すると、ゼロが早速ジャンバードへ呼びかける。
『おい、ジャンボット! 俺だ、ゼロだ! まさかこんなところで再会できるなんてな! 
お前、何でこんな洞窟の中に、ジャンバードの姿でいるんだよ!』
 しかし、ジャンバードからは何の応答もない。
「何か反応する様子がないんだけど」
『おっかしいな……眠ってるのか? 仕方ねぇ。中に入ってみるとするか』
「えッ! あの中に入れるの?」
 ルイズが少々驚く。
『もちろんだぜ。ジャンボットは元々、エスメラルダって星の王族の守護ロボットで、宇宙船の
役割もあるからな。えっと、どこから入るんだったかな?』
 思い出しつつ指示を出すゼロに従って、才人とルイズはジャンバードの中に乗り込むこととなった。

「うわ、すごい……。これ、どうやって造ったのかしら?」
 内部に立ち入った二人、いや三人は、ジャンバードのコックピット内にたどり着いた。
ルイズはハルケギニアの技術を大幅に超越した造りのコックピットを目の当たりにして、
思わず言葉をなくした。
『あんまり下手にいじるなよ。俺も、エスメラルダの技術で作られたジャンボットの構造を
完全に把握してる訳じゃないんだ』
 ルイズに注意をしたゼロは、才人に指示を出してジャンボットの状態を調べる。
「どうだ、ゼロ?」
『うーん……どこ操作しても、うんともすんとも言わないな。どこか重要な部分に故障が発生してるのか……』
 コックピット内のコンソールを操作させていると、不意に前方のモニターに明かりが灯った。
「きゃッ! 何したの?」
『モニターは動くみたいだな。ちょうどいいや。メモリーに保存されてる、超空間ではぐれてから
今日までの記録を見れねぇかな。何が起きたか分かれば、手の打ちようがあると思う』
 ゼロは才人の手を借りて、コンソールを操作する。そして試行錯誤した末に、真っ白だったモニターに
宇宙から宇宙へ渡る時に見た超空間の光景が映し出された。ジャンボットの目が捉えた、ゼロと
はぐれてからの映像記録だ。
『よし、上手く行った。再生するぜ』
 ゼロがスイッチを押すと、止まっている映像が動き始めた……。

『くッ、しまった……! ゼロから完全にはぐれてしまった……』
 超空間を移動中に次元嵐に遭遇し、吹き荒れる暴風に流されたジャンボットは、すっかり
ゼロたちの姿を見失って孤立してしまっていた。だだっ広い超空間に独りきりという状況は、
普通なら精神がどうかなってしまいそうだが、ジャンボットは希望を捨てなかった。
『ゼロが目的地にたどり着ければ、私もいずれかはそれに引き寄せられてたどり着けるはずだ……』
 はぐれたとはいえ、ウルティメイトイージスの力の加護はまだ受けている。超空間内ならば、
自然にイージスに引っ張られて同じ場所に到着するだろう。そのことは心配していないのだが、
問題は現状だ。
『しかし、ひどい次元嵐だ……。抜けるか収まるまで、私の身体が持つだろうか……。うおッ!』
 次元嵐から発せられた稲妻が機体を撃ち、うめき声を上げるジャンボット。次元嵐のエネルギーは
すさまじく、いつまでもこの中にいたらバラバラに吹っ飛ばされてしまうかもしれない。
『仕方ない。多少無理をしても、強引に突っ切る……!』
 稲妻を受け続けるのは危険と判断して、背中と足のブースターの火力を強めると、全速力で
次元嵐から抜け出した。
『ふぅ、ひとまずは危機を脱したか……む?』
 嵐を抜けて安全な場所まで来たことでひと息吐くジャンボットだったが、すぐにその視界に、
超空間の中を飛び回る二つの、大きさの大分異なる物体を発見した。
 一つは、翼とプロペラを持つ、ジャンボットからしたらはるかに原始的な航空機。見ている才人は、
タルブ村の神社で目にしたゼロ戦だとすぐに分かった。
「ギィィィィイイイイイ!」
 もう一方は、ハルケギニアに生息する飛竜によく似た巨大生物、つまり怪獣だ。頭頂部にある
鬼のような二本の赤い角が目立つ。
「こいつは……」
 才人は通信端末から怪獣の情報を引き出した。時空怪獣エアロヴァイパー。嘘か真か、
時空間の中を自在に飛行し、時間移動する能力があるという。
「ギィィィィイイイイイ!」
 ゼロ戦は、怪獣エアロヴァイパーに追い回されていた。高い航空能力を持つゼロ戦だが、
エアロヴァイパーを振り切るのには足りなかった。そしてエアロヴァイパーは、口から火球を吐いて
ゼロ戦を撃ち落とそうとしている。
『こんな場所で、人が怪獣に襲われてる!? 助けなければッ!』
 正義感に駆られたジャンボットは、すぐにブースターを噴かせて現場へと急ぎ、握り拳を作った
左腕を前に突き出す。
『ジャンナックル!』
 掛け声とともに、その左腕が炎を噴きながらジャンボットから離れて飛んでいった! 
俗に言うロケットパンチである。
「ギィィィィイイイイイ!?」
 ジャンボットの存在にまだ気がついていなかったエアロヴァイパーはジャンナックルをもろに食らい、
吹っ飛ばされた。火球もあらぬ方向に飛んでいき、ゼロ戦は救われる。
『間に合ったか……』
 ジャンボットがほっと安堵したのも束の間、エアロヴァイパーが体勢を直すと、その頭部の
赤い角がスパークした。
「ギィィィィイイイイイ!」
 その直後に、エアロヴァイパーを中心に空間が波紋を起こすように歪んでいき、エアロヴァイパーの
姿が消えていく。歪みに巻き込まれたゼロ戦も同様だ。
『むッ!? ワープして逃げるつもりか!? そうは行かんッ!』
 ジャンボットはブースターの火力を上げて加速、歪みの中に飛び込んでいく。見たところ、
エアロヴァイパーは凶暴な性質の怪獣のようだ。しかもワープ能力があるとなれば、
放っておけば様々な場所で被害が出る恐れがある。絶対に阻止せねば、と使命感に駆られるジャンボット。
 そして空間の歪みに飛び込んで、抜けた先で、赤と青の二つの月が浮かぶ夜空を目の当たりにした。
『これは……! どこかの惑星に出たようだな』
 ジャンボットのつぶやきを聞きながら、ルイズは二つの月の映像をながめて声を上げる。
「この月……ここってハルケギニアじゃない!」
「それだけじゃねぇみたいだぜ。地上の光景、俺たちの見たタルブ村のもんにそっくりだ」
 才人に背負われたデルフリンガーが指摘する。なるほど、彼の言う通り、地上に見える山の位置が、
シルフィードの上から見た時のものと同じだ。そしてジャンボットの足元に広がる村は、
全く荒らされていない状態なので今一つ確信が持てないが、タルブ村なのだろう。
ジャンボットは既にハルケギニアに到着していたのだ。
『この惑星がある宇宙……我々の目的地の観測データと一致している。ということは、偶然にも
目的地にたどり着いたのか……』
 ジャンボットも、この場所が目的のハルケギニアであることを察していた。が、思いに
耽っている場合ではなかった。先ほどのエアロヴァイパーが、今度はタルブ村の上空で
ゼロ戦を襲っていた。
「ギィィィィイイイイイ!」
『はッ! いかん!』
 すぐにゼロ戦を助けに向かうジャンボットだが、エアロヴァイパーはもうゼロ戦の間近に迫っている。
追いつかれて激突されるのは必至だろう。
『間に合わない! ならばッ!』
 それを理解したジャンボットは、目から光線を放ってゼロ戦に浴びせた。直後にエアロヴァイパーの巨体が
ゼロ戦に激突し、ゼロ戦は翼をへし折られて落下。山のふもとに墜落した。
 しかし、その時には搭乗者は誰もいなかった。操縦していた青年は、気がつけばジャンボットの
コックピット内に立っていた。
「なッ……!? こ、ここは……!?」
 青年は何が起きたのか理解できずに、コックピット内を見回していた。
 先ほどジャンボットの放った光線は、人を自らのコックピットに瞬間移動させる転送光線。
それでゼロ戦の操縦者を、エアロヴァイパーにぶつかられる寸前に自分の中に移動させたのだ。
 事態が呑み込めない青年に、コックピットのモニターの上にある赤いリング状のランプが
チカチカと光り、ジャンボットの声が機内に響いた。
『無事だったか、青年』
「うわッ!? しゃべった!?」
『驚くのは無理がないと思うが、今は説明をしている暇はない。私が怪獣を倒すまで、
しっかり掴まっていてくれ』
 青年に頼んだジャンボットは、一つだけ質問する。
『名前だけ聞いておこう。私はジャンボットというのだが、貴殿の名は?』
 状況に対して現実味を感じておらず、呆然としていた青年だが、その問いかけにはこう答えた。
「佐々木武雄……大日本帝国海軍少尉、佐々木武雄だ」
 この名前を聞いたルイズは驚愕した。
「ササキ!? それってシエスタのひいおじいさんの名前じゃない! でも、この人は
おじいさんって言うには明らかに若いわよ。どうなってるの?」
 首を傾げる彼女に、大体のところを理解した才人が説明する。
「この記録の中の時間は、ずっと昔なんだよ。きっとエアロヴァイパーの能力の影響でジャンボットは、
今じゃなくて過去のハルケギニアに到着しちゃったんだ」
 そして佐々木武雄の属する大日本帝国は、才人の時代からはるか過去の時代、開国で江戸時代が
終わりを告げてから大戦期までの日本の国名だ。時空をねじ曲げるエアロヴァイパーが、
過去の地球人と違う宇宙のスーパーロボットとの奇妙な邂逅を作り上げたのだ。
「なるほどね。昔の時間に放り出されたのなら、この人がシエスタの曽祖父になってもおかしくないってことか」
 理解を示したルイズがうなずいていると、モニターの中ではジャンボットとエアロヴァイパーの戦闘が開始される。
『行くぞ怪獣! ジャンミサイル!』
 ジャンボットの背部が開くと、大量のミサイルが発射されてエアロヴァイパーへ突っ込んでいく。
全方位を取り囲むミサイルの群れから、エアロヴァイパーが逃げる道はない。
「ギィィィィイイイイイ!」
 そのはずだったが、エアロヴァイパーの二本角がスパークすると、その姿が瞬く間に消失する。
ミサイルは全て空振りして、何もない空中で炸裂した。
『何ッ!? あんなに早くワープが出来るのか!』
 驚愕したジャンボットの頭上に、エアロヴァイパーが出現して火球をぶつけてきた。
『ぐわぁぁぁぁッ!』
 火球の爆発を受けたジャンボットは地上にまっさかさまに落ちていく。どうにか姿勢を制御して
村の外れに着陸することには成功したが、そこにエアロヴァイパーが急降下してくる。
『このッ!』
 見上げたジャンボットの頭部から銃身が迫り出して、緑色の光線、ビームエメラルドを発射するが、
当たる前にまたもエアロヴァイパーが消える。
「ギィィィィイイイイイ!」
 今度はジャンボットの左側から現れて、体当たりをしてジャンボットを弾き飛ばした。
『ぬぅッ! 厄介な能力を持つものだ……!』
 どんな攻撃も、当てることが出来なければ相手にダメージを与えられない。時空を操作し、
神出鬼没に現れるエアロヴァイパーにジャンボットは手を焼かされる。
『だが、既にカラクリは見抜いたぞ……』
 しかし、ジャンボットはエスメラルダの技術の粋を持って生み出された、卓越した電子頭脳を持つ
高性能ロボット戦士。エアロヴァイパーを観察することで、もう時空移動の弱点を把握していた。
『ジャンブレード!』
 右腕から緑色の刀身の剣が伸び、それを構える。エアロヴァイパーの方は、角を光らせてまた消え失せた。
『……』
 ジリジリと向きを変え、周囲を警戒するジャンボット。そして、正面から右側に向き直った時に、
背後の空間からエアロヴァイパーが飛び出す。
「ギィィィィイイイイイ!」
『そこだぁッ!』
 エアロヴァイパーが迫り来る瞬間に、ジャンボットは振り向きざまにジャンブレードを
水平に薙いだ。
 刃はエアロヴァイパーの頭部の二本角を根本から切り払った。
「ギィィィィイイイイイ!?」
 慌てて軌道を変えてジャンボットからそれると、地面に足を着けたエアロヴァイパーは
自分の頭をかいて狼狽する。だがその手が、角に当たることはなかった。
『お前の空間移動能力の源は、角! それを切断すれば、もう逃げることは出来まい!』
 ジャンボットのセンサーは、エアロヴァイパーが時空移動する寸前に、角から莫大なエネルギーが
発せられるのをしっかりと捉えていた。発生源を叩いてしまえば、エアロヴァイパーは最大の武器を
使用することが出来なくなる。この勝負、もう決まったも同然だ。
『これでとどめだ! 行くぞぉッ!』
 未だ取り乱しているエアロヴァイパーに、ジャンボットが全速力で駆けていき、ジャンブレードを
左肩へと引き寄せて斬撃の構えを取る。
 だがその瞬間に、背面に光弾の直撃を食らった!
『ぐわぁッ!? 何だと!?』
 すぐに振り返ったジャンボットだが、背後にはこれといったものは何も見当たらなかった。
『馬鹿な! 相手はもう空間転移が不可能なはず! しかし、だったら今のは一体……!?』
 たった今の光弾は、エアロヴァイパーが繰り出したものではないことは明らかだ。何故なら、
撃たれた時には目の前にいたのだから。では、一体何者が……。
 動揺していると、ジャンボットの身体に二本の触手が巻きつき、縛り上げた!
『何!? 触手だと!?』
 振り返ると、触手はいつの間にか立ち込めていた白い煙の中から伸びていた。同時に、
ジャンボットのセンサーが海鳴りの音を捉える。
『こんな山間部に、海鳴り……? ぐおおぉぉッ!』
 海鳴りの音の直後に、触手を伝ってジャンボットに高圧電流が浴びせられた。電撃にジャンボットは
苦痛の声を上げる。
 そうしていると、白い煙が晴れていき、中から水色に黄色の斑点模様という派手な色彩の
ウミウシに似た怪獣が姿を現した。
「ギュウッギュッギュッギュッギュウ!」
「こいつは……!」
 才人は先ほどと同じように、通信端末で新たに出現した怪獣の情報を引き出す。
 時間怪獣クロノーム。過去へ移動する能力で時間の流れを滅茶苦茶に破壊し、惑星を丸ごと滅亡させてしまう、
ふざけた外見に反して非常に危険で凶悪な怪獣だ。恐らく、エアロヴァイパーの発する時空エネルギーに
反応して現れたのだろう。
『まさか、別の怪獣が現れるとは……ぐおおぉぉッ!』
 執拗な電流攻撃を食らい、激しく苦しむジャンボット。鋼鉄のロボットである彼には、
金属によく流れる電撃は特に痛いだろう。
「ギュウッギュッギュッギュッギュウ!」
『ぐぅぅぅぅぅ……!』
 締めつけられて身動きが取れない状態で、延々と苦しめ続けられるジャンボット。並みの者では
こんな絶望的状況に陥れば、心が折れて諦めてしまうだろう。
 しかしこの鋼鉄の武人は違った。反撃の意志すら保っていた!
『バトルアックス!』
 掛け声とともに左肩に装備しているシールドが変形する。中心が開いて左右に伸び、柄が迫り出して
巨大な戦斧に変わると、その際の勢いで巻きついている触手を切断してジャンボットを解放した。
「ギュウッギュッギュッギュッギュウ!」
 触手を切られたクロノームがひるんで後ずさった。しかし敵の面前で怖気づくというその行動は、
みすみすジャンボットに反撃のチャンスを与えることになる。
『必殺! 風車ぁッ!』
 バトルアックスを手にしたジャンボットが左回転して遠心力を上乗せした一撃をクロノームに叩き込む!
「ギュウッギュッギュウッ!!」
 袈裟に斬られたクロノームは、胴体がズズッとずれ落ちると、一瞬で爆散して粉々に砕け散った。
『危ないところだった……ぐッ!?』
 しかし、勝利した側のジャンボットが急によろめく。身体が一瞬、激しくスパークした。
『しまった、損傷が激しすぎる……!』
 ここまでジャンボットは、超空間内で強烈な稲妻に打たれ、エアロヴァイパーの火球を食らい、
クロノームの攻撃を受け続けた。そのせいで、これ以上下手に身体に負荷を掛けると自動修復機能では
対処し切れなくなるほどの深手を負ってしまったのだ。
「ギィィィィイイイイイ!」
『むッ!?』
 その時、クロノームを一撃で葬ったジャンボットに恐れを抱いたのか、エアロヴァイパーが
空高く飛び立って逃げ始めた。
 既にジャンボットの射程範囲外に逃げられてしまっている。倒すには、全速力で追いかける他ない。
しかし今の状態でそれをやれば、本当に取り返しのつかないことになるかもしれない……。
『逃がさんッ!』
 だがジャンボットはためらわなかった。この星に文明が存在することは、一瞬タルブ村を
見下ろしたことでもう分かった。水準が如何ほどかは知らないが、怪獣を相手取るほど
高いレベルだと考えるのは楽観的すぎる。この星の誰かがエアロヴァイパーの被害で
泣くことを防げるのは、今は自分しかいないのだ……。
 見ず知らずの人間たちのために身体を張ることを躊躇なく選んだ勇者ジャンボットは、
すぐにジャンバードに変形してエアロヴァイパーを追った。今才人とルイズが乗っているのと
全く同じ宇宙船だ。
「ギィィィィイイイイイ!」
 エアロヴァイパーは翼竜型の見た目通り、飛行能力に優れた怪獣だが、ジャンバードは
平和ながら非常に卓越した科学力を持つエスメラルダの誇るスターコルベット。あっという間に
彼我の距離を詰めて、射程範囲内に入れた。
『ぐぅッ……!?』
 しかし、その瞬間に機体が激しくショートし、噴射ノズルのジェットが弱まって速度が落ちる。
やはり負荷が大き過ぎたのだ。これ以上無理をすれば、本当に自動修復で直せないほどの
故障が生じるだろう。
『ジャンミサイル……発射ぁッ!』
 それでも、ジャンバードは己よりハルケギニアの人間を選んだ。ジャンミサイルとビームエメラルドの
集中砲火を、背を向けているエアロヴァイパーに叩き込む。
「ギィィィィイイイイイ!」
 全方位をミサイルで取り囲まれたエアロヴァイパーには逃れる術がなく、集中砲火の直撃を
食らって跡形もなく吹っ飛んだ。
『やったぞ……ぐッ……!?』
 だが己に課した使命を果たしたのも束の間、遂にジャンバードの最重要な配線が焼き切れた。
その瞬間にジャンバードは意識が遠のき、ふらふらと高度を下げていく。
「ジ、ジャンボットとやら! 大丈夫か!?」
 コックピット内の佐々木は、丸で事態が呑み込めずにいたが、ジャンバードが危険な状態に
陥ったということは察して心配した。その彼に、ジャンバードが告げる。
『ササキ少尉……残念ながら、説明をする力は、もう私には残っていないようだ……。何も分からぬ貴殿を、
一人でこの地に放り出すことになることを、どうか許してほしい……』
 ジャンバードは最後の力を振り絞って山間に飛び込み、崖の岩壁に向けてビームエメラルドを照射した。
レーザー光線は岩を溶かし、崖に大きな空洞を作る。それが、今のジャンバードを収めている洞窟であることを
ルイズはすぐ把握した。
 洞窟の中にすっぽりと入ったジャンバードは、その場に着陸。また佐々木に呼びかける。
『すまないが、ササキ少尉……私は今すぐにでも、機能停止する。しかしいずれ、私を修理できる者たちが、
必ずこの地にやってくる……。それまで、私がここに隠れていることは、極力秘密にしてほしい……』
 ジャンバードは機能停止してしまえば、完全に無防備になってしまう。そこを心なき者や
悪しき心の者の手に侵されないように、後のことを佐々木に頼み込んでいた。
『少し関わっただけの貴殿に、多大な迷惑を掛けるが、どうかお願い出来ないだろうか……』
「そ、そんなことは、お安い御用だ! 私は貴殿に命を救われた! この恩に報いないのは、
日本男児として恥ずべきことだ!」
 ジャンバードの頼みを、佐々木は当然とばかりに承諾した。
「しかし、その貴殿を助けられる者は、どうやって見分ければいいのだ?」
 それだけ聞くと、ジャンバードはこう答える。
『簡単だ……。貴殿の母国語……この世界の者では読むことの叶わぬはずの文字を読める者が、
私を助けてくれる者だ……。……どうやら、これ以上はもう持たないようだ……。どうか、
私が眠っている間のことを、頼む……』
 どうにか重要なことは全て伝え終えたジャンバードは、とうとう限界が来て、視界がブラックアウトした。
同時に録画された記録も終わり、モニターから輝きが消えた。

 ジャンボットに起きたことを全て知った才人とルイズは、彼の献身ぶりに感動して目をうるませていた。
「うぅ、何ていい奴なんだ……。自分の身を省みないで、会ったこともない人たちのために
あそこまで戦うなんて……」
「騎士でも、あそこまで出来る人はいないわ……。彼こそ誉れ高い真の騎士よ!」
 ルイズは感涙しつつゼロにお願いする。
「ゼロ、ジャンボットを助けてあげて!」
『もちろんだ。けど、さっき言った通り、俺はジャンボットの構造を把握してる訳じゃない。
ここは、同じ出身地のあいつに頼もう』
 と語ったゼロは、ルイズが指に嵌めた『水のルビー』に呼びかける。
『ミラーナイト、聞こえてるか!? ジャンボットを見つけた! お前の手を貸してほしい! 
すぐ来てくれ!』
 その途端にルビーが光り、等身大に身長を調整したミラーナイトがコックピット内に着地した。
『はい、話はもう全て聞きました。まさかジャンボットが過去のこの世界に来ていて、こんな場所で
意識を失っていたとは私も予想外です』
「ミラーナイト、ジャンボットを直してあげられるか?」
 才人が若干不安を含んだ顔つきで尋ねると、ミラーナイトはおもむろにうなずいた。
『お任せ下さい。私も以前は、ジャンボットと同じくエスメラルダの王家に仕えていた身。
万一の時のために、ジャンボットの修理方法は学んでいます。恐らく付きっ切りで修理をすれば、
二、三日で完全に直るでしょう』
『そっか! そいつを聞いて安心したぜ。あぁ、早く起きてるジャンボットとも顔を合わせたいな』
『そうですね。これでグレンも見つかれば、ウルティメイトフォースゼロ出張組が無事に勢ぞろいです』
 嬉しそうに語らい合うゼロとミラーナイト。やはり二人も、仲間の所在が分かって喜んでいるようだ。
その二人に感応されて、ルイズと才人も和やかな笑顔になった。

 その後は、ジャンバードのことはミラーナイトに任せて、ルイズと才人はタルブ村に戻っていった。
そこでルイズは、シエスタから学院からの伝書フクロウが届いたこと、授業をボイコットしたことで
先生方がカンカンだということを知らされ、
「ああああ! よく考えたら、これって立派なサボりじゃない! しかも祝詞も結局出来上がってないし! 
どどど、どうしましょう! これがお母様や姉様のお耳に入ったりしたらぁ!!」
 と喚いて慌てふためいたが、それは別の話である。

 ルイズたち一行が宝探しに興じていた頃、アルビオンの空軍工廠の街、ロサイスの発令所では、
アルビオン皇帝となったクロムウェルがお供を連れて、工廠内の『レキシントン』号などの
空中戦艦を視察していた。
「見たまえ。あの大砲を!」
 クロムウェルは『レキシントン』号の舷側に突き出た大砲を指差して、『レキシントン』号の
艤装主任のサー・ヘンリ・ボーウッドに呼びかけた。しかしボーウッドは、今やアルビオンの
最高権力者になったクロムウェルに対し、非常に愛想のない表情を見せている。
「余のきみへの信頼を象徴する、新兵器だ。アルビオン中の錬金術師を集めて鋳造された、
長砲身の大砲だ! 設計士の計算では……」
「トリステインやゲルマニアの戦列艦が装備するカノン砲の射程の、おおよそ一・五倍の射程を有します」
「そうだな、ミス・シェフィールド」
 クロムウェルが言いよどむと、彼の側につき従う、黒いコートの冷たい雰囲気を纏わせた、
奇妙な女性が説明を代行した。シェフィールドという彼女はクロムウェルの秘書らしいが、
ボーウッドは正直興味がなかった。
 彼は心情的には、実のところ王党派だった。だが同時に、軍人は政治に関与すべからずとの
意思を強く持つ生粋の武人だった。そのため上官の艦隊司令が反乱軍側についた際、仕方なく
貴族派の軍門に下ったのだ。彼にとっては、アルビオンは未だ王国であり、クロムウェルは
王位の簒奪者だ。そう考えるボーウッドがクロムウェルを面白く思うはずがない。
「しかしながら、たかが結婚式の出席に新型の大砲をつんでいくとは、下品な示威行為と取られますぞ」
 何食わぬ顔で毒を吐くボーウッド。『レキシントン』号は、トリステイン王女とゲルマニア皇帝の結婚式に、
国賓として出席するクロムウェルらを乗せる御召艦なのだ。その親善訪問に新型の武器をつんでいくなど、
砲艦外交ここに極まれり、である。
「『親善訪問』? ああ、きみにはまだ伝えてはいなかったな」
 だが、クロムウェルはボーウッドが耳を疑いたくなる台詞をこの次に唱えた。
「我々は『親善訪問』などという無駄なことをしに行くのではない。『開戦』を行うのだよ」
「は!?」
 ボーウッドの顔色が一瞬で青ざめた。それほどに信じられない言葉だった。
「『開戦』!? バカな! トリステインとは、不可侵条約を結んだばかりではありませんか! 
それを正当な理由もなしに一方的に破り捨てるなど、破廉恥極まりない! ハルケギニア中に
悪名をとどろかせることになりますぞ!」
 さすがに我慢ならずに激昂するが、クロムウェルは平然と言い返す。
「悪名? ハルケギニアは我々レコン・キスタの旗の下、一つにまとまるのだ。聖地をエルフどもより
取り返した暁には、そんな些細な外交上のいきさつなど、誰も気にとめまい」
 ボーウッドは、クロムウェルにつめよった。
「条約破りが些細な外交上のいきさつですと? 下手をすれば、エルフどものみならず、
ハルケギニア中を敵に回しかねない蛮行ですぞ! あなたは祖国をも裏切るつもりか!」
 だが、クロムウェルは鼻を鳴らして言い放つ。
「それがどうしたというのかね? 少し前までならともかく、今のレコン・キスタはハルケギニア全てを、
いやその倍を敵に回したとしても絶対に勝利の栄光を手中に収めることが出来るようになったのだよ」
「は……? おっしゃる意味がよく分かりませんが……」
 訳の分からないことを述べるクロムウェルに、ボーウッドは頭がおかしいのではないかと一瞬考えた。
そんな彼の戸惑いを置いて、クロムウェルは踵を返す。
「時にきみは、世界を変えるものが何か分かるかね? 革命を成そうという確固とした精神? 
信仰? はたまた理念?」
 クロムウェルはボーウッドとシェフィールドを連れて、工廠の奥へ足を運んだ。この工廠は、
クロムウェルの命により急遽増設がなされ、奥行きが倍以上になっている。それでいて、
増設部分はどういう訳か、クロムウェルの選んだ者以外の立ち入りが禁止された。
ボーウッドは仮にも『レキシントン』号の艦長なのに、選ばれていなかった。もっとも、
クロムウェルを嫌う彼は特に気にしていなかったが。
「どれも違う。世界を変えるのは、いつの時代、どこの『世界』も、『力』なのだよ! 誰が何と言おうと、
圧倒的な『力』が全てをねじ伏せ、覇権を握るのだ!」
 その立入禁止の区域へ続く扉を、クロムウェルがシェフィールドに開かせ、ボーウッドを初めて中へ通した。
「なぁッ……!? こ、これは一体……!?」
 そしてボーウッドは、禁止区域に広がる光景を目の当たりにして、絶句した。
 工廠の奥には、現在のハルケギニアの技術では再現することが到底出来ない、金属で出来ていながら空を、
それだけでなく宇宙空間を航行することの出来る飛行物……いわゆる 『円盤』が何機も停泊していた。
話によれば、以前このような円盤がハルケギニアの各国家の首都を攻撃したという。それが何故、
アルビオンの工廠に存在している……!?
「驚いたかね? これが『力』だよ。私はハルケギニアとは違う世界からの来訪者と『ともだち』なのだよ。
この『力』があれば、ハルケギニアの統一どころか、聖地の奪還も難しいことではなくなる」
 異常な光景に対して、クロムウェルは何でもないことのように説明した。ボーウッドの方は、
冷や汗が噴き出るのが止まらない。
「うぎゃあああああッ!!」
 そうしていると、左手の扉から、複数の人間の断末魔がとどろいてきた。それでボーウッドは
バッと振り返り、クロムウェルの方は呆れ顔になる。
「おや……あれほど近づいてはいけないと注意したのに、禁を破った人たちがいるな。
気の毒だが、仕方ない。彼らの自己責任だ」
 ボーウッドは恐る恐る扉に近づき、開いて中を覗き込んだ。
「グルルルル……グアアアアァァァァ!」
 そして見えたのは、巨大な檻に入れられた、黒い蛇腹状の皮膚を持った山のような巨大生物。
頭部を見上げると、前に折れ曲がった金色の角が生えているのが見えた。
「あれはもしや、怪獣では……!?」
「そうとも。私は怪獣とも『ともだち』なのだよ」
 愕然として一歩も動けなくなったボーウッドの言葉を、クロムウェルはあっさり肯定した。
「これらの『力』を『人間』に喩えるならば、きみの言い分のような批判は、
路傍の小石のようなものだ。小石が人間の歩行を妨げるかね? そういうことなのだよ」
 と言い残して、クロムウェルは満足したようにシェフィールドとともに立ち去っていく。
後に取り残されたボーウッドは、認めがたい現実を一気に見せつけられ、意識が遠のくような気分になった。
「『虚無』を操るのみならず、このような人外までも味方にするとは……クロムウェル、あいつは、
ハルケギニアをどうしようというのだ……」

 視察を済ませて、アルビオン王家から奪い取った城の執務室に帰ってきたクロムウェルは、
一人になった途端に貼りつけたような笑顔をかなぐり捨て、憎々しげに独白した。
「全く、いつまでこんな貧相な人間の姿に化けていなくてはならないのだ……忌々しい」
 アルビオンの戦いの時に既に見せたが、このクロムウェルは本物ではない。ナックル星人が
取って代わって化けているのだ。そしてナックル星人は、骨の髄まで見下している
ハルケギニアの人間に変身していることが我慢ならないようだった。
 ハルケギニアを侵略しに来た宇宙人連合は、ハルケギニアの社会に巧妙に溶け込んで潜伏をしている。
大っぴらに活動していては、ウルトラマンゼロに目をつけられて圧倒的戦闘力で討伐されることが
分かっているからだ。ナックル星人の場合は、侵略にも役立てる目的で、本物のクロムウェルを始末して
成り代わり、彼の率いているレコン・キスタをそのまま乗っ取ったのだった。もっとも上記の理由で、
ナックル星人はクロムウェルの姿になっているのを忌み嫌っている。
「それもこれも、ウルトラマンゼロとその仲間のせいだ……! 奴らのせいで、私の計画が大幅に狂った。
この恨みは、次の作戦で必ず晴らしてやるぞ……!」
 ナックル星人が恨み言を吐いていると、今部屋には彼しかいないはずなのに、どこからか呼びかける声がした。
『ナックルよ……次の作戦は上手く行くのだろうな?』
「む! 貴様はッ!」
 どこか嘲りの色を含んだ呼びかけで、ナックル星人は何もない虚空に、鋭い目つきを送った。
その虚空から、声がしているのだ。
『貴様があれだけ大口を叩いておいて、おめおめ逃げ帰ってきた時は呆れてものが言えなかったぞ。
今度はあのような醜態は晒さないだろうな』
「黙れッ! ああなった原因の一端は、貴様にもあるのだぞ!」
 挑発めいたことを言う虚空の声に、ナックル星人は怒声を返す。
「何故我々に、ウルトラマンゼロに仲間がいることを話さなかった! 異なる宇宙で、
「直接相対した」ことのある貴様が知らなかったとは言わせんぞ!」
 それに、声は淡々と答える。
『聞かれなかったからだ。もう少し用心をしておけば、あんな無残なことにはならなかったろうになぁ』
「何だと!? 貴様、それほど重要なことを、聞かれなかったから話さなかったで済ませる気か!」
 ナックル星人は虚空の声を責めるが、声はその話にすっかり興味を失ったように、さっさと話題を切り替えた。
『それより、問題は次の作戦だ。今度はひっくり返されたりしないのだろうな?』
 と聞くと、ナックル星人は誇るように胸を張る。
「当然だ! 今度はどんなイレギュラーがあろうと問題ないように、練りに練った作戦を用意した! 
今度こそ、ウルトラマンゼロたちを地獄に送ってやるわ!」
『その言葉、信じようではないか……』
 声は実に偉そうに、ナックル星人に指摘をする。
『貴様ら宇宙人連合を、この次元の宇宙に連れてきたのは我々だ。その労力を無下にしてくれないことを
祈っているぞ』
「言われるまでもない! 貴様はそこで黙って見ているといい! このナックル星人が完全勝利する様をな!」
 宣言したナックル星人は、もう声と同じ空間にいることに嫌気が差したのか、執務室を飛び出した。
彼がいなくなってから、声がおかしそうにつぶやいた。
『果たして、ナックル星人が本当にあのウルティメイトフォースゼロに勝てるか……お言葉に甘えて、
座して見届けさせてもらおうか……』


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