あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ルイズと無重力巫女さん-64-b




 例えばの話だが、ある所に命を懸けた戦いをしている戦士がいるとしよう。

 限られた武器と足手纏いとも言える者たちが周りにいる中、戦士の相手は凶悪な怪物。
 明確な殺意をもって戦士の命を仕留めようとする、無慈悲な殺人マシーンだ。
 戦士は足手纏いな者たちを守りつつ怪物を倒すことになるが、それはとても大変な事である。

 戦う必要のない者たちは自分たちも戦える豪語しつつ、各々が勝手に行動しようとするからだ。
 そうすれば戦士はいつものペースで動くことができないが、一方の怪物は戦いを有利に進めることができる。
 例え向こうが多人数であっても、足並みを揃える事が出来なけれ文字通り単なる烏合の衆と化す。
 結果向かってくる奴だけを順々に片付ければ良いし、運が良ければ思い通りの戦いができない戦士をも殺せる。

 しかし、足手まといな者たちが一致団結して戦う事が出来るとすれば話は変わる。
 訓練された軍隊のように足並み揃えて一斉に襲ってくると、さしもの怪物も対処しづらくなるのだ。
 更にその隙を縫って戦士が強力な一撃仕掛けてくるとなれば、もはや勝ち目などない。

 一見すれば怪物側が有利な戦いは、実際のところたった一つの駆け引きで勝敗が左右する大接戦。
 相手の腹を探りつつどう動くべきかと考えあぐねるその時間は、当人たちにとっては命を懸けた大博打である。


 しかしそれを空の上から眺めてみれば、とても面白いゲームだとも思えるだろう。
 そう、自分たちが傷つくことのない場所から見れば、命を懸けた勝負すら単なるゲームになる。


「ふーん―――何だか見ないうちに、随分とややこしい事になってるじゃないか」
 旧市街地に並ぶ廃屋の屋上に佇む金髪の青年が、やけに楽しそうな調子で一人呟く。
 左右別々の色を持つ眼には、この廃墟群の出入り口で大騒ぎを繰り広げ始めた五人の少女達が映っている。
 彼が今いる位置ではやや遠すぎるかもしれないが、そんな事を気にもせず彼女たちの姿を見つめていた。

 旧市街地の入り口から少し進んだ先で、まるで決闘の場で対峙するかのように向かい合っている紅白の少女が二人。
 青年から見て旧市街地側に佇む紅白の少女の傍に、腰を抜かしているピンクブロンドが目立つ少女。
 そして少し離れた場所には、まるで野次馬の様に三人の様子を眺めている黒白の少女と燃えるような赤い髪の少女がいた。
 日も暮れ始めて来た為か肌の色までは良くわからなかったが、青年にとってそれは些細な事に過ぎない。
 今の彼にとって最も重要なのは、『三人』の姿が見れた事だけであった。

 五人いる内の中ですぐに安否が確認できるのは二人。黒白の金髪少女とピンクブロンドの少女だけ。
 三人目となる紅白の少女は二人いるせいで、どちらを見ればいいのか未だにわからない。
「一体どういう経緯で二人になったのかは知らないけど困るよなぁ~、あんな事勝手にされちゃあ…」
 僕の目が回っちゃうじゃないか、最後にそう付け加えた彼は軽く口笛を吹く。
 まるで観戦中の決闘に予期せぬ乱入者が現れた時の様に、興醒めするどころか楽しんでいるようだ。
 それは正に、安全かつ他人同士の殺し合いをしっかりと見届けられる場所で歓声を上げる観客そのものである。



「しっかし何でだろうな…一人しかいない筈の彼女に二人目がいるだなんて」
 落下防止にと付けられた鉄柵の上に両肘をつけた青年は、またもや呟く。
 彼以外にその疑問を聞く者はいないし、当然返事が来ることも無い。
 生まれた時代が違えば、目の色だけで見世物小屋にいたかもしれない青年にとって、単なる独り言であった。
 そう…単なる独り言だったのだ。


「私も良くは知らないが、アレに関してはお前たちの方は心当たりがあるんじゃないか?」
 気づかぬうちに、自分の後ろにいた゛者゛の言葉を聞くまでは。


「――は?」
 突然背後から耳に入ってきた声に、青年はその目を見開かせてしまう。
 しかし驚きはしたものの、数時間前に似たような事を経験をした彼は声が誰のものなのかを分析しようとする。
 良く透き通るうえに大人びた女性の声は、想像の範囲だがきっと二十代後半なのだろう。
 あるいはマジックアイテムが魔法で細工しているかもしれないが、実際のところは良くわからない。
 それよりも今の青年が気になる所はたった一つだけ。それは、どうやって自分の背後に近づいたのかという事だ。
 青年が経験した「数時間前に似たような事」というのは、正にそれであった。

 ◆

 時間をさかのぼり今日のお昼頃であったか。
 彼はちょっとした用事でブルドンネ街で買い物を楽しんでいた三人の少女を、旧市街地の教会から観察していた。
 その三人こそ、今の彼が屋上から眺めている「ピンクブロンドの貴族少女」と「黒白の金髪少女」。そして何故か二人いる「紅白の黒髪少女」である。
 望遠鏡を使ってわざわざ遠くから見ていた青年の姿は、他人から見れば通報されても仕方がないであろう。
 そのリスクを避ける為に人気のない旧市街地から覗いていたのだが、そこで変な事が起こった。
 何と誰もいなかった筈だというのに、突如自分の後ろから女の声が聞こえてきたのである。

 その後は色々とありその場は置き土産を置いて後にしたが、青年は観察事態を諦めてはいなかった。
 そもそも彼が三人を覗いてた理由である「ちょっとした用事」というのは、彼にとって「仕事の内の一つ」なのだ。
 だからその場を去った後は、三人の動きをしっかりと見張れる所に移動していたのである。
 そして三人が導かれるようにブルドンネ街からチクトンネ街へ行くところはバッチリと見ていた。
 不幸か否かチクトンネ街へ行った際に一時的に見失ってしまったが、数分前にこうして再開すことができた。
 偶然にも自分が昼頃にいた旧市街地へ舞い戻る事になったのは、一種の皮肉と言えるかもしれない。

 ◆

 そうこうして、良からぬ展開に巻き込まれた三人の様子を観察していて、今に至る。
(一瞬聞き間違いかと思ったが…どうやら僕の予想は正しかったようだ)
 彼は先程聞こえたものと、昼に聞いた声がそれぞれ別々のモノであると既に理解していた。
 今聞こえた声からは、昼頃に聞いたものとは違う゛凛々しさ゛を感じていた。
 昼の声は「貴婦人さ」というものが漂っていたが、今の声にはそれとは逆の…俗にいう「働く女性」というイメージがぴったりと合う。
 しっかりとした性格の持ち主で、上司に対しちゃんとした敬意を払うキャリアウーマンだ。
 自分とは正反対だな。月目の青年は一人そう思いながら、ゆっくりと後ろを振り返る。

 彼は予想していた。振り返った先には誰もいないし、それが当然なのだと。
 ただ見えるのは、落ちていく夕日と共に影に蝕まれる寂れた床だけなのだと。
 昼頃の体験もそうであったし、それと似通った部分が多い今の事も同じような結末を辿るのだと、勝手に決めつけていた。
 しかし、現実というのは時に奇妙で刺激的な事を不特定多数の人間に体感させる。
 一人から数十人、下手すれば数百から千単位に万単位、もっともっと大きければ国家単位の人口が奇妙な体験をするのだ。 
 今回、現実という日常的な神様は月目の青年に奇妙な「存在」を目にする機会を与えてくれた。

 そう…国を傾けかねない美貌と、この世界に不釣り合いな衣服を纏う「存在」と、彼は出会ったのである。


「君が口にしたややこしいという言葉は…残念だが私たち側も吐露したいんだがね」
 距離にして四メイル程離れた所に、明らかに場違いな金髪の美女が、腰を手を当ててそう呟いた。
 明らかにハルケギニア大陸の文明から作りえない青と白を基調にした衣装を身に纏った体は、まだ二十代前半といったところか。
 これまで生きてきた中で数々の女性と付き合ってきた彼が直感的に思いつつも、次いでその視線を美女の衣装に注いでいく。
 一目見ただけでもハルケギニアの民族衣装とも異なるが、蛮族領域に住む亜人たちや砂漠に住まうエルフたちの衣装とも印象が違う。
 どちらかと言えば東方の地から時折流れてくる衣服のカタログで、似たようなものを見たことがあったと彼は思い出す。 
 白い服の上に着ている青い前掛けには、大した意味が無さそうに見えてその実難解そうな記号が踊っている。
 もしかするとあれが東方の地で用いられる言葉なのかもしれないが、今の青年にはそれよりも気がかりな事が二つほど合った。

「――――コイツは驚いたね。さっきまで誰もいなかった場所に、僕好みの美人さんが立っているとは」
 見開いていた月目をスッと細めた彼は、両腕をすっと横に伸ばし冗談めいた言葉を放つ。
 大げさすぎるその動作を見た異国情緒漂う女性もまた目を細め、その口から小さな吐息を漏らす。
 反応だけ見ても呆れているのかこちらの動きを読んでいるのか、それすらハッキリとしない。
 こういう相手は綺麗でも付き合うのはちょっと遠慮したいな。彼がそう思おうとした直前、女性の口が開いた。
「良く言うよ…君は知っているんだろう?―――私がそこら辺にいる゛ニンゲン゛とは違うって事を」
「……?それは一体―――――!」
 夕闇の中、金色の瞳を光らせた彼女がそう言ったのに対し、ジュリオは怪訝な表情を浮かべようとする。
 だがその瞬間。目の前の女性を中心に、この場所ではやや不釣り合いと思える程度の匂いが突如漂い始めた。
 その匂いはこの建物を降りて適当な路地裏を歩けば出会いそうな連中が放っているモノと似通っている所がある。
 青年は仕事上そういう連中と接する機会が多いため、唐突に自分の鼻を刺激した匂いの正体を断定できる自信もあった。

 群れを成して路地裏に屯し、時として真夜中の街へ繰り出し生ごみを漁る大都市の掃除屋。
 おおよそ武器を持たなければ人間でも太刀打ちできない゛奴ら゛と似たような匂いを放つ金髪の女。
 それが意味するものはたった一つ――――――文字通りの意味で、女は人間ではないという事だ。

「もしかして君、常に体を清潔にしないタイプの人かい?」
 匂いの根源と、その理由を何となく把握できた青年は、ふと冗談を放つ。
 プロポーズどころかデートのお誘いですらない言葉に不快なものを感じたか、目を瞑った女はこう返す。
「生憎ですが私は主人と違い、そういうお話にはあまりお付き合いできませんよ?」
「そいつは残念だ。――――…おっと、ここまで話し合ったんだから名前ぐらい教えておこうか」
 女性の辛辣な返事に青年も素っ気ない言葉で対応したかと思えば、笑顔を崩さぬまま唐突な名乗りを上げた。


「僕はジュリオ…ジュリオ・チェザーレ。気軽に呼んでくれてもいいし様づけしたっていいよ?」
 青年、ジュリオの名前を知った女性は呆れた風なため息をつきつつ、その口を開ける。
「―――――八雲藍だ。別にどんな風に呼んでくれたって構いはしない」
 憂鬱気味な吐息を漏らした口から出た言葉は、今の彼女を作り上げた主からの贈り物。
 遠い昔の時代に、東の大陸で跳梁跋扈した妖獣の一族である彼女の今が、八雲藍という存在であった。




「おぉ…。さっきとは打って変わって、奴さん積極的じゃないか」

 明らかに先程とは動きの違う偽レイムの後姿を眺めつつ、魔理沙が気楽そうに言った。
 先程までこちらに背を向けている相手に殺されかけたというのに、その言葉から緊張感というものを殆ど感じられない。
 流石に物凄い勢いでナイフを放り投げ、口論を続けていた霊夢とルイズに急接近した時は軽く驚いたが、今はその顔にうっすらと笑みを浮かべている。

 箒を右手に持ち、キュルケの隣に佇むその姿はすぐに戦えるという気配が全く見えない。
 自分に危害が及ぶ事が無いと分かっているのか、それとも知り合いである巫女が勝つことを予想しているのだろう。
 とにもかくにも、この場には不釣り合いと言えるくらいに、魔理沙は霊夢達の動きを傍観していた。

「さて、この似た者同士の勝負。どちらが最後まで立ってられるかな」
「三人して同じ部屋で暮らしているというのに、観客様の気分で見ているのね貴女は…」
 すっかり回復し、楽しげな言葉を放つ魔理沙とは対照的に、その隣にいるキュルケは安堵することができなかった。


 下手すれば死んでいたかもしれない黒白がどんな態度を見せようとも、彼女とって今の状況は゛非日常的な危機゛であることに変わりはない。
 急な動きを見せた偽レイムの傍には抜かした腰に力を入れて立とうとするルイズがおり、そんな二人から少し離れた所に本物の霊夢がいる。
 もし立ち上がったルイズが下手に動こうとすれば、突然殴り掛かってくるような相手に何をそれるのかわからない。
 その事をキュルケ自身が察する前に霊夢も気づいているのだろうか、ナイフを片手に身構えた状態からその場を一歩も動いていない。
 一方の偽レイムも先程まで霊夢達がいた場所から動いてはいないものの、いつでも仕掛けられるよう腰を低くしている。
 正に先に動いたら負けという状況の中にいる三人を不安そうな目で見つめているのが、今のキュルケであった。

(本当に参ったわね…いつもとは全く違う刺激があるのは良い事だけど…あぁでもこういうのは良くないわ)
 少しだけ似合っていない魔理沙の微笑を横目でチラチラ見つめつつ、手に持った杖をゆっくりと頭上に掲げていく。
 それと同時に多くの男を虜にする艶やかな声でもって素早くかつ正確に、呪文の詠唱を始める。
 別にあの三人の戦いの輪に巻き込まれたいという、自殺願望に近い何かを胸中に抱いているワケでは無い。
 ただキュルケ本人としてはどうしてこんな事になっているのか知りたいし、その目的を達成するためにはルイズの存在が必要だ。
 恐らく、自分が巻き込まれたであろう刺激に満ちた今の事態の発端を詳しく話せるのは彼女しかいないであろう。
 なら彼女の使い魔と居候となっている黒白でもいいかもしれないが、部外者である自分に話してくれる可能性はかなり低い。
 そこでワザと彼女らが直面している事態に首を突っ込み、彼女らと同じ場所に立つ。そんな計画がキュルケの脳内で出来上がっていた。
 故に彼女は決断していた。この刺激的な一日の最後を飾るであろう魔法を、偽レイムにお見舞いしてやろうと。

 幼少の頃に覚えたスペルの発言は数秒で済み、短くとも今この場で最適と思える魔法の発動が準備できた時、魔理沙が声を上げた。
「あ、お前も混じるのか。何だか随分と賑やかになってきたじゃないか」
 まるでこれから起ころうとしている事を知っているのか、彼女の顔にはその場にそぐわない喜色が浮かんでいる。
 実際、この世界へ来て数週間ほどしか立ってない魔理沙にとってキュルケの魔法を見るのはこれが初めてなのだ。


 しかしそんな彼女にとうとう嫌気がさしたのか、嬉しそうな黒白に向けてゲルマニアの留学生魔理沙の方へ顔を向け、目を細めて言う。
「本当に呆れるわね貴女。…こんな状況でそんな表情と態度を出せるのは一種の才能なの?」
「私から見れば、これから死出の行軍に出ようとしているようなアンタの顔が、ちょっと見てられないぜ」
 遠まわしに空気を読めという解釈にも取れるキュルケの言葉を聞いても、魔理沙の態度は変わりはしない。
 それどころか、緊張しすぎている彼女を笑わせようと灰色の冗談を飛ばしてくる始末であった。

 もはや怒るどころか呆れるしかないキュルケは、ため息つく気にもなれず相手を見下すかのような表情を浮かべる。
「そう…じゃあそこでずっと見ていなさいよ?何が起こっても私は助けないけどね」
 私にとって貴女は、まだ得体の知れない相手なんだから。最後にそう付け加え、キュルケは偽レイムの方へ顔を向ける。

「生憎だがアレは不意打ちだったんだぜ。それにお前が手を出すと霊夢が嫌がるかもよ?」
 まぁそれはそれで見ものだけどね。魔理沙もまたそんな言葉を付け加え、キュルケに助言を送る。
 しかし魔法使いからの言葉を聞き流したキュルケは、今か今かと攻撃のタイミングを伺っている時であった。
 日常からやや抜けた刺激を活性化させる為に、常人では考えもしない異世界の事件に首を突っ込もうとしている。
 その結果に何が待ち受けているのかは知らないが、キュルケ自身は後悔しない筈だろう。

 後戻りができそうにない、非日常的な刺激こそ……彼女が求めてやまぬ心身の特効薬なのだから。




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