あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのしもべ9


アメリカ、国防省ペンタゴン。
その中枢にある情報分析室。
エシュロン、軍事衛星、スパイ活動…
あらゆる手段を用いて集められた玉石混合の情報が、優れた科学者とコンピューターにより分析解析される、現代世界最高の
頭脳機関である。
「主任。やはり解析不能です。」
その中枢で諦めにも似た声が起こる。諦めにも似た、ではなく現に諦めかけていた。
「またか。あいかわらず、この地域の分析だけは不可能なままか。」
ホログラフィックで空中に表示された地球儀。その中の解析不能地域を示す光点を憎憎しげに見つめる、主任と呼ばれた男。
「アメリカの誇るあらゆる軍事衛星も、あらゆる工作員も、何一つ情報を持ち帰れない魔のポイントX地点。」
その光点は周辺国の国境が接する地点で輝き、しかも地形の関係からここを避けて軍事行動が不能な砂漠の真ん中にあった。
「この地域が中東情勢における重要軍事地点であるのはわかりきったことだ。だが、イラクも、イランも、イスラエルも、ロシア、
イギリス、フランス、ドイツ、日本、中国、そして我がアメリカのいずれでさえ、この地点には手を出すことはおろか見ることもできない
魔の地点。」
「その通りです。」
「我がアメリカは、半世紀以上もこの地点の情報収集に努めていますが、砂漠であるということ以外なにひとつわかっていません。」
「だが、それだけに情報を手に入れる価値がある。たとえ風車に挑むドン・キホーテのようだと揶揄されようとな。」
主任は光点を睨み付ける。
「このバベルの塔の情報を少しでも手に入れるということは、世界最高の科学技術を有しているという証明に他ならない。
だからこそ我々はあえて風車に挑み続けるのだ。」


偵察衛星が上空を通過しようとすれば、たちどころに砂嵐が巻き起こった。
そして次の瞬間、衛星のコンピューターに異常が発生し、永遠に沈黙する。
いったい何が起こったのか?科学者たちは首を捻るが一切原因はわからない。
現代科学をはるかに超越したバビルの塔の科学力が、おそらくコンピューターを抹殺しているのだろうとしか考えられなかった。
その現代科学でも足元にも及ばぬような科学力を誇るバビルの塔のコンピューターが、メインからサブにいたるまでフル稼働
し続けていた。
『バビル2世ノ消滅カラ2ヶ月。以前トシテ消息不明。』
『3つのしもべモ同様。発信音不通』
『アメリカ合衆国、バビル2世痕跡ナシ』
『日本、同ジクナシ』
『中国モ存在セズ』
『消滅地点、北極海周辺、痕跡ナシ』
『地球周辺、人工衛星オヨビ月面ニモ痕跡ナシ』
『消滅時ノ天候チェック』
『消滅時ノ地形チェック』
『消滅時ノ各国動向チェック』
『消滅時ノ時空振動確認』
『時空振動+TG10976/grBBL2確認』
『以上カラ』
『バビル2世オヨビ3つのしもべハ時空ヲ移動シタ可能性82.1939%』
『救助ノ必要アリ』
『救助ノ必要アリ』
『救助ノ必要アリ』
『分析終了。タダイマカラバビル2世救出作戦ヲ決行スル』


『時空振動+TG10976/grBBL2ノ発生予想ポイント表示」
『1、日本。京都。Lr32TTg9。2098年3月21日18時33分52秒発生。確率43.21222%』
『2、タイ。クアラルンプール。dG77qnJg。2018年9月03日03時10分37秒発生。確率14.85003%』
『3、大西洋。バミューダ諸島周辺・サルガッソー。2Qs684pB。2007年7月08日13時00分41秒発生。確率20.19%』
『4、エチオピア。アジスアベバ。81kQ3nI6。2508年08月31日07時59分07秒発生。確率75.108%』
『以上4候補ヲ確認。救出用特殊端末ロボットタイプK0発進ヲ許可スル。』
バベルの塔のコンピューターがロボット生産システムに指令を行なう。
K0シリーズは人間タイプ、男性である。人間に紛れ込み、目的地へ騒がれないように到着することを目的としたものだ。
最初にバビル2世をバベルの塔で迎えた女性型ロボットはN8というタイプで、ナビゲータータイプであった。
『K0ハMe:1ニ換装。K0-Me:1ノ出動確認』
Meはあらゆる状況でロボットの見聞きした情報をバベルの塔に送り込むシステムである。ロボットの得た情報は例え異次元であろうが
時空の壁を越えてバベルの塔へ到達しする。塔のコンピューターはその情報を瞬時に分析し、ロボットへ転送しなおす。ロボットは
戻ってきた情報をバビル2世に伝えることにより、例え異世界であろうがバビルの塔は情報分析・指南を行なうことができるのである。
すなわちK0-Me:1とはバビル2世が元の世界に戻ってくるために必要な情報を与え、生存せしめる重要な役割をもっているのだ。
なんという恐ろしい塔なのだろう。
ヨミではないが「化け物め」と評したくなるではないか。
『K0-Me:1、バベルの塔メインコンピュータートノリンクヲ実行。K0-Me:1カラノ情報送信確認。メインコンピューターカラノ情報ノ送信ヲ
実行。オールグリーン。』
バベルの塔は動き始めた。己の主人を救出するために。K0-Me:1という姿を借りて。
ロボットの姿は白スーツ姿で口ひげを生やした細身で中年の男であった。手にはなぜかジュリアナの扇のようなものを持っている。
大丈夫なのか、バベルの塔。何百年後でも救出は可能なのか!?
いや、そもそも怪しすぎないか、このロボット。途中で職務質問受けそうだぞ。


ヴェストリ広場。
普段人気のないこの場所は噂を聞きつけた生徒やらバビル2世やギーシュについてきた連中、暇人やらで溢れかえっていた。
わざわざ教師が立会人という名目でやってきている。
変化のない寮生活学園生活である。よほど暇なのだろうか。
あるいはギーシュがよほど嫌われているのか、どういう負けっぷりを見せてくれるのか楽しみなのか。
あるいはルイズの使い魔の強さに興味があるのか。
「なんで僕の敗北が前提なんだ…」
呟くギーシュ。それは君がギーシュだからだ。
「でも僕だって承太郎やとらやサイトなんかと戦って成長しているんだ。たまには勝てる世界もあるかもしれないじゃないか!」
だが問題は相手が「敵に回したくないキャラ」で1・2を争うバビル2世である。正直、戦いになると冷酷・残酷・残虐と悪魔超人も
裸足で逃げ出すようなキャラクターである。
「それでも闘わなければいけないときがあるんだ!諸君!決闘だ!」
ギーシュが黒マントを翻し薔薇の造花を高々と掲げる。
うわっと歓声が起こる。
バビル2世がゆっくりと広場へ歩を進める。
『なんだ、ここは今朝の広場じゃないか。』
朝、念動力を試した木の生えていた広場だ。ヴェストリ広場というのか。
「よく逃げずに来たな。それは褒めておこうじゃないか。」
口上を聞いてあのとき食堂にいた全員が『おまえがな』と突っ込みを入れる。
だがさすがに軍人の血筋というものだろうか。先ほどの狼狽振りが嘘のように落ち着き威厳に満ちている。
威厳と呼んでいいか迷うが、とにかくいつもの調子に戻っている。
「さて、決闘だが、僕はメイジだ。ゆえに魔法で闘う。」
造花を優雅に振るう。花弁が1枚はらはらと宙を舞い、甲冑を着た金属製の女戦士に化身する。
「僕の二つ名は青銅だ。青銅のギーシュ。したがって青銅のゴーレム「ワルキューレ」に君の相手をしてもらうよ。」
人間大のそれは鈍い橙金色に輝いている。新しい10円玉の色だ。なるほど、確かに青銅製であるらしい。
透視を行うが中には何も入っていない。どうやって動いているのか。魔法で作ったゴーレムは伊達ではないということか。
ワルキューレがファイティングポーズを取り、小刻みにステップを繰り返す。
シャドウボクシングを行い、宙めがけてワンツーを繰り返す。
その光景をジッと見ているバビル2世。


「用意はいいか、使い魔君?」
「ああ」
立会人の教師の腕が天頂へと伸ばされる。
「貴族の精神に基づき、これより決闘を行う。」
腕が振り下ろされる。ワルキューレの身体が砲弾のように突進した。

拳。
拳。
肘。
拳。
足。
拳。
肘。

夢枕獏の文章のように、ワルキューレは攻撃を繰り出す。
だがその全てはバビル2世には当たらない。特にすばやく動いているわけでもないのに、だ。
「くそっ!何故当たらない!」
ギーシュがうめき声を上げる。
当たらない理由は簡単。バビル2世はワルキューレではなく、ギーシュを見ていたからである。
たしかにワルキューレの動きは早い。バビル2世が本気を出したほどではないが、普通の人間ならあっという間に大型バイクに
激突したような負傷を負わせることができるだろう。
だがあくまでワルキューレは操られていることを忘れてはならない。
攻撃をする前に、ギーシュはどこに動かすか、どこを狙うか思案し、そこを目で見る。
あるいは目で見るために見やすい位置へ動こうとする。指示をする。
そこに隙ができる。
例えば腹を見てくれば腹へ攻撃が跳んでくるのだから届かぬ位置へ身をかわしておけばよい
腹への攻撃が拳であろうと、蹴りであろうとそういうことは関係ない。
攻撃がくる位置さえわかっていれば、その種類が何であろうが当たらぬのだから意味を成さない。
場所を目で見れば、移動しようとしているのがわかる。
と、なれば次にこちらを見たときに行おうとする攻撃は位置が限定される。ますます避けるのがたやすくなる。
死角へ回り込めばその間ワルキューレの攻撃や移動は鈍る。
その間にワルキューレが移動しなければ攻撃できない位置へ移動しておけば、何もできずにただうろうろするしかできない。


この程度では圧倒的に戦闘経験のあるバビル2世に触れるなど夢のまた夢である。
おそらくメイジの実力が上がればこのような弱点も克服できるのだろうが、ないものねだりをしても意味はない。
とうとうギーシュのほうが一発も当てられぬうちにばててしまった。
「どうした。もう終わりか?」
息も切らせず悠然と言い放つバビル。当然といえば当然で、体力がずば抜けている上バビル2世はギーシュの半分も動いては
いない。
しかもギーシュがひたすらダッシュを繰り返したのに対して、ほとんど歩くのみであった。
ぜえぜえと肩で息をしながら膝に手を置き、上目遣いにバビル2世を見るギーシュ。
「く………そぅ…………ぜぇ…ぜぇ……なんで………ぜえぜえ………あたらないんだ……」
「当たるように動いてないからだ。」
容赦ないバビル。ある意味言葉のダメージのほうが強力である。
そもそも、おそらく禄に作戦も立てずにゴーレムを召喚したのだろう。あったとしてもゴーレムを見せれば、使い魔程度ならビビッて、
すぐにギブアップするだろう、程度の考えしかなかったに違いない。
それに対してバビル2世は、デモンストレーションでシャドウボクシングを行った瞬間に、ゴーレムがギーシュの指示で動いていること。
指示するにはまず目で見て確認していること。つまり目の動きから、ゴーレムワルキューレの動きが予測できることに気づいていた。
そこでギーシュが動き続けなければいけない状況に追い込めば、力を隠したまま勝利することができるだろうと考えたのだ。
現にギーシュはバビル2世の作戦にもろに引っかかり、当たらぬ攻撃を出す指示をするために走り回らされた挙句、ばてて膝に
手を突き体全体で息をする羽目になった。
立会人の教師はさすがにそのあたりはわかっているらしく、「まあまだドットだししょうがないね」というような顔をしている。
そしてバビル2世には「例えドット相手とは言え、たいしたものだよ」とこっそり耳打ちをしてきた。禿げのくせにバビル2世と闘える
自信はあるらしい。たしか召喚されたときにいた教師である。名前を確かハゲ田ハゲ蔵。
「コルベールです!だれがつるピカハゲ丸ですか!」
つるセコ~、と擬音を出して抗議するコルベールであった。


「どうする、終わるのか?」
「い、いや……まだ………続ける………」
ひょろっと薔薇を振るギーシュ。優雅さはかけらもない。
花弁はワルキューレへ変化し、計7体が降臨する。おお、いつもより1体多い。
ぜえぜえ言いながら、1体を防御のために傍に残し、残る6体をバビル2世を囲むように配置する。
「ふむ。7体を同時に動かせるのか。」
これは少し警戒が必要だな、とバビル2世は思う。仮に、7体以上動かせるのを隠しているのだとすれば、8体目・9体目を意外なところ
で使ってくる可能性がある。7体で全部だとしても一方から集中的に攻撃を行い、そちらに気をとられている隙に別方向から攻撃、
など単体よりも非常に厄介なのは間違いない。
場合によっては超能力を使わざるを得ないかもしれない。
『だが、中身のないゴーレムに効きそうな超能力といえば』
衝撃波はどうだろうか。せいぜいサイコキネシスと火炎ぐらいのものだろうか。
ワルキューレに効き目があったとしても、もし他のゴーレムと闘うはめになったとき同じ超能力が効くと断言できないではないか。
魔法には失われた虚無を含めて5つの系統があるという。とするならば水のゴーレムや火のゴーレムがいるはずである。
水のゴーレムに衝撃波や火炎が効くだろうか?火のゴーレムに効くだろうか?
「こういうときの対処方法はただひとつ。」
バビル2世はじっとギーシュを見る。視線に気づくギーシュ。
そう、こういうときは操縦者を狙えばよい。
「な、なんだい?まさか僕を狙うつもりかい?」
ギーシュもバビル2世の意図にすぐ気がつく。
だが意図を飲み込めず、この作戦がバビル2世に有効だと勘違いしてしまったギーシュは
「そうはさせない。このまま押し切る!」
バビル2世を囲んだワルキューレが錬金の力で作り出したスピアを装備する。
さらに木を背後にし、前をワルキューレで固める。攻防ともに万全だ。
「いけえ!」
4体が四方から一斉に攻撃を行う。スピアを突き出し、バビル2世を串刺しにしようとする。
残る2体は下で構えている。
仮に4体の攻撃を避けることができても、逃げ場は上しかない。
契約後、ルイズと使い魔は歩いていた。つまりフライを使えないのだ。
フライが使えない以上、空中では方向転換はできないはず。
ならば着地したところを狙えばいい。


「やった!勝ったぞ!」
勝利を確信し、叫ぶギーシュ。苦節数年、ようやく創作系SSで勝利する日が来たのだ。
だが、それは地響きと共に消え去った。
ギーシュの上に突然木が落ちて来たのだ
「な、なにごとだぁ~!?」
尻餅をつき情けない声を上げるギーシュ。
バビル2世が朝、念動力で引っこ抜いた木を念動力で倒したのである。
ギーシュにとって不運だったのはよりによってその木を背にしてしまったことか。
護衛にしておいたワルキューレは倒れてきた木でへしゃげて身体が捻じ曲がっている。
まるで潰れたゴキブリのようだ。
気づくと、囲みの中からバビル2世が出てギーシュの傍に立っていた。
ギーシュが指示を出せなくなった隙を突いての行動であった。
おまけに木が倒れてきたときにうっかり落としてしまったのだろう。薔薇の造花が地面に転がっている。
杖がなくてはメイジは魔法を扱うことはできない。もはやワルキューレはただの金属の塊に過ぎない。
「なるほど。やはり操っている人間が操縦できなくなると、ゴーレムは動かなくなるようだな。」
この距離ではたとえワルキューレを呼び戻してもバビル2世の攻撃が当たるほうがはるかに早い。
「貴族が……平民に負けるなんて………」
敗北を悟ったギーシュががっくりとうなだれる。
「僕の負けだ……」
メイジの決闘は、杖が落ちた時点で敗北が決まる。もはや抗弁などできない、完全な敗北だ。
『なるほど。操縦者ではなく杖を狙っても動きをとめることはできそうだな。』
うん、とここになってバビル2世がはじめて自分の左手の異変に気がついた。
手の甲に刻まれた紋章が、いつの間にか白い光を放っていた。
「勝者、えーっと……ミス・ヴァリエールの使い魔!」
ハゲ、いや田コルベールがギーシュの敗北宣言を受け、高らかに宣告する。
腕を広げ宣告しながら、視線は紋章を捕らえて離そうとしていない。
「うん?」
視線に気づくバビル2世。慌てて外すコルベール。
「だ、大丈夫!?」
ルイズが慌てて走り寄ってきた。そのドサクサに離れていくコルベール。
その手は、誰かに知らせるように指で○印を作っていたのだった。


「ふーむ。やはりあの左手のルーン……伝説の使い魔ガンダールヴに刻まれていたものと同じであったか。」
長い白髪、長い白髭。
遠見の鏡、と呼ばれるアイテムを通してコルベールのサインを確かめた老人がそう呟く。
トリステイン魔法学院院長。
御年200歳とも、300歳とも呼ばれる伝説のスクウェアメイジ。
曰く、寿命を克服した男。曰く、超越者。曰く、不死身のオスマン。
わざわざ教師、コルベールが決闘の立会人となっていたのは彼の指示によるものであった。

時系列は少し遡る。
決闘の前、ちょうどバビル2世が食堂でまかないを振るまわれているころである。
「い、いくぅ…」
「お、おやめください!いくでは!いくではござりませぬ!」
身体をまさぐられる女性と、胸や尻をわしづかみにする老人。
この曖昧な老人こそ、トリステイン魔法学院を指揮下に置くスクウェアメイジ、オールド・オスマンその人物である。
まさぐられている人物こそ、オスマンの秘書を務めるミス・ロングビルであった。
書類を届けるために入室しただけでうける傍若無人なセクハラ。そのためオスマンの秘書を勤め上げるのはドラゴンの逆鱗を触って
生きて帰るよりも難しいと表現される。その困難な職務を果たしているのが、このミス・ロングビルである。
「た、種ぇ」
曖昧な状態が続くオスマン。演技なのかマジなのか疑わしいのが困ったところだ。
曖昧な状態は一説に「長寿を得た魔法との引き換え」であると言われているが定かではない。本人が詳しいことを誤魔化すため
である。オスマンは曖昧と覚醒を繰り返して、200年という歳月を過ごしているのだという。
通常、覚醒時間は長くて1時間。時期は冬場が多い。
そのわずかな時間のうちに、トリステイン魔法学院の全ての方針を決定するのだ。


「失礼します。」
ノックの音。好機とばかりに慌てて離れるロングビル。チッと舌打ちするオスマン。おいおい、曖昧とか嘘だろう。
入ってきたのはコルベールであった。入れ違いにそそくさと出て行くロングビル。
「先日報告した、ミス・ヴァリエールが召喚した平民の使い魔についてですが……」
「うむ、聞いておる。変わったルーンを持っていたというあれであろう?」
普通に反応するオスマン。曖昧は絶対に嘘だ!
「はい。平民ではなくエルフである、という情報もありますが。その使い魔が決闘をするらしく……」
「決闘?」
「はい。ですが、問題はそんなことよりも……」
「わかっておるよ。直接確認したいのであろう?あのガンダールヴのルーンかどうか。」
こくり、とコルベールが頷く。
「はい、今朝の報告の通りかどうか、直接この眼で見て確かめたいのです。。」
今朝、ルイズの呼び出した使い魔のルーンが気になっていたコルベールは、他の用事で調べ物をしていたときに偶然開いた
「始祖ブリミルの使い魔たち」に載っていた伝説の使い魔「ガンダールヴ」に刻まれていたというルーンを読み、度肝を抜かれた。
『これはあの使い魔に刻まれていたものと同一ではないか!?』
だがあの時はさほど注意を払っていなかったこともあり、「確かに同一である」と断言はできない。
オスマンに報告するといつになく深刻に対応されたものの、「確証がないんじゃどうしようもないのぅ」ということで終わってしまった。
「またとない機会です。直接、この目で確かめたいと考えまして…」
「ふむ。たしかに、もしあのガンダールヴと同一であるとすれば、決闘でその片鱗を見せるやも知れんな」
眼光が鋭さを増す。まるで虎のようである。
なるほど、この老人只者ではなさそうである。
以上の経緯を経て、コルベールは立会人として、オスマンは遠見の鏡を用いて、決闘を観戦することとなったのである。

コルベールの確認の合図を受け、思案するオスマン。
「ガンダールヴ、か。なにやら不吉な予感がするわい。」
このときこの老練な魔術師は、世界に迫る陰謀と恐怖の影を感じていたのだろう。
だが、ロングビルがやってくればおそらくすぐに曖昧に戻るに違いない。大丈夫なのか、魔法学院。


「なんて奴なの…」
ロングビルが呆れたように呟いた。
ロングビル、またの名を土くれのフーケ。
彼女は仮面の男の依頼を受け、バビル2世の観察を行っていた。
「馬車は持ち上げるし、闘いなれしてるみたいだし……まともにかかったらただじゃ済みそうにないわね。」
そう、昼のあの事故もフーケの仕業であった。
あえて正体がばれるかもしれない危険を冒してまであの事故を引き起こしたのは、観察というアルバイトのこともあったがそれ以上に
バビル2世に興味があったからである。
なにしろここで仕事を行おうというのだ。不安材料は限りなく0にしておく必要がある。
少なくとも、障害になりうる存在の能力は把握しておく必要があった。
「できるだけ、敵に回さないようにしたほうが懸命そうね……ひい!?」
グリフィスににらまれた大臣のような反応をして後ずさるフーケ。
なぜならば、気づくとバビル2世がジッとフーケを見ていたからである。
慌てて柱の影に姿を隠し、懐から仮面の男に渡された紙片を取り出す。鮮明な絵が描かれた紙だ。
「まさか、気づかれたというの!?それとも偶然!?いったい何者なのよこいつ……」
その紙片を我々はよく知っている。なぜならばそれを我々は写真と呼ぶのだから。

『いったい何者だろうか。ぼくを観察しているのか?』
たしかにこれだけ目立ってしまえば興味を抱く人間がいても不思議ではない。むしろ自然であろう。
たとえば立会人のコルベールという教師もそうであった。
『ガンダールヴという使い魔に刻まれていた紋章か。』
自分の手を見る。光は消えたが、くっきりと紋章が刻まれている。だが先ほどの視線はこのガンダールヴを観察するものとは
少し違っていた。
『たとえるならばぼく自身の力を測っているようなかんじだったな。』
なにかこの学院で陰謀が渦巻いているのではないか。そう直感するバビルであった。



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