あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Maximusな使い魔 第07話


トリステイン魔法学院の図書館は大きい。
食堂のある本塔のなかに位置するその場所は、見る人が見れば宝の山に見えることだろう。
本棚の大きさは三十メイル程もあり、それが壁際に並んでいる。
この時間、この場所に人が来る事は滅多に無い。
図書館常連の人間も、この時間は授業中であり、教員も生徒も教室や職員室でそれぞれすごしている。

そんな中、天窓から降り注ぐ日差しをその頭頂部にて反射。人間ランプと化したその人。
四十二にして独身。メガネをかけた何処か冴えない中年教師。
彼の名前はジャン・コルベール。
今日も彼の脳天は不毛の大地である。
彼は、図書館の開館と同時に入館し、教師だけに閲覧を許されている一区画『フェニアのライブラリー』へ来ていた。

前日の夜に図書館に来ていたが、閲覧制限の掛かっていない一般の本棚には、彼の求めている情報は無かった。
彼が求めている情報というのは、使い魔に刻まれるルーンの意味と効果である。
先日ルイズが呼び出した使い魔に刻まれたルーン。
それに彼は興味を持った。
「気になる…気になる…非常に気になる…」

何故かは判らないが気になる。
他の使い魔に刻まれたルーンとは何かが違う。
そう直感が告げている。
ふと一冊の古書が目に入り、本棚から取り出す。
『固定化』の魔法がかかっているにもかかわらず、薄く変色した一冊の本。
かなり古いものだろう。
その本には、始祖ブリミルが使用していた使い魔について記されていた。
寝不足でクマのできた目元を指で軽く揉むと、目の疲れが少し和らいだ気がする。
そしてページをめくる手が動きを止め彼はその本のある一節に注目する。

目を見開き、その一節とルイズの使い魔に刻まれたルーンの模写と見比べる。
そしてその本を抱え、慌てるように走り出した。
向った先は、同じ塔の最上階、学院長室であった。
彼は余程急いでいるのか、授業中である筈の一人の生徒とすれ違ったのにも気が付かなかった。

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この学院の長を務めるオスマン氏は、只今秘書であるミス・ロングビルによって折檻を受けている最中である。
「わしの初登場酷すぎない?」
というのも、オスマン氏がミス・ロングビルのスカートを覗き、あまつさえ白い下着を着けていた彼女に
「黒がいい」とダメだしをして、さらに注意を促した彼女に対して、「そんなだから、婚期を逃すのじゃ」
とのたまった。
ようは自業自得である。

「まって。そこは蹴る所じゃない。蹴ってはいかん。思い直すのじゃ」
彼女は無言のままにオスマン氏の「ソコ」を蹴り上げる。
オスマン氏は下顎が地面に付くのではないかと思うほど開き、見開いた目から大粒の涙を零した。
その5秒ほど後に(オスマン氏。体感にして3分強)、学院長室のドアが勢い良く開けられた。

「オールド・オスマン!。大変です。……どういうプレーかは知りませんが神聖な学び舎で盛らないで下さい」
「盛ってなどおらん。君こそ頭をもうちょっとばかり盛らせた方がいいんじゃないかの」
「ジジイ表に出ろ。…大変ですぞオールド・オスマン!」
オスマン氏は机に座りなおすと、「やれやれ」と首を振った。

「大変なことなど、あるものか。すべては小事じゃ」
あの蹴りに比べたらな。っと呟くオスマン氏に、コルベールは先ほど読んでいた書物を渡した。
「『始祖ブリミルの使い魔たち』とは、また随分古臭いものを持ってきたのぉ。ミスタ…、えーっと…」
「コルベールです」
「それじゃ。それで、これがどうかしたのかね?」
そう問われると、コルベールはルイズの使い魔に記されたルーンのスケッチを、オスマン氏に見せた。
「…ミス・ロングビル。席を」
ミス・ロングビルが部屋から出るのを見届けると、オスマン氏が重々しくコルベールに問いかけた。
「詳しく話すのじゃ。このスケッチと、そしてこの本の関係を」
コルベールは全てを説明した。

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「なるほどのう。で、君はどう思う」
オスマンが問うと、コルベールは少し深呼吸をした。
これを言うのは、かなり恐れ多いですね、と言って続けた。
「彼は伝説の使い魔。『ガンダールヴ』でしょう。断定はできませんが。ただそっくりなだけにしては、似すぎて
います」
「うむ。しかし断定出来んのであれば、様子を見るしかなさそうじゃの」
「そうですな」
話の切りがいいところでドアがノックされた。

「誰じゃ」
「私です。オールド・オスマン」
ミス・ロングビルは平坦な口調で答える。
「何かあったのか?」
「ヴェストリの広場で決闘をしている生徒がいるそうです。止めるために、教師達が『眠りの鐘』の使用許可を求
めています。

「何処のどいつじゃ。決闘は禁止にしているはずじゃが」
「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」
「あのバカのバカ息子か。おおかた女の子関係じゃろうな」
そう言うとオスマンは、自分の白い髭を撫でつけ、椅子に深く腰掛ける。
「で、相手は?」
「…それが、メイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔です」
オスマンの目が鋭く光った。
「子供のケンカに秘宝を使ってどうするのじゃ。放っておきなさい」
「わかりました」

オスマン氏とコルベールは顔を見合わせると、オスマン氏が杖を振る。
すると、壁にかかった大きい鏡に、広場の様子が映し出される。

「では、『様子を見る』とするかのう」


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「諸君。決闘だ」
周りから歓声が上がる。
「ギーシュが決闘するぞ!。相手はルイズの使い魔だ!」
ギーシュはひとしきり歓声に答えると、マキシマに造花の薔薇を突きつけた。

「よく逃げなかったな。ほめてやろうじゃないか」
「もっとほめていいぞ。何なら靴も舐めさせてやろうか?」
「フン。安い挑発だな。では、始めよう」
(もっとブチ切れてくれると思ったが、結構冷静だな…)
マキシマはギーシュの体をサーチ・アイでスキャンする。
骨格や筋肉の密度、相手の体温まで、敵の情報を観察する。

(本気で殴ったら即死だな)
「よーく見えるぜ…」

そんなマキシマの様子を見て、ギーシュが眉をひそめる。
「なんだ。怖気づいたのかい?来ないならこっちから行こう」

言うが早いが造花の杖を振る。
すると、杖から花弁が二枚宙に舞う…。
その二枚の花弁は形を変え、鎧を着た女性の姿になる。
全身を金属の光沢で鈍く輝かせる二対の女戦士は、ギーシュの前に並ぶように立つ。

「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。文句などあるまいね?」
「文句はないが、お話は終わりか?」
「終わりなのは君の人生さ。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』
が君の相手だ!」

ゴーレムの一体が、マキシマに突進してくる。
右の手を後ろに引き、マキシマの前まで来ると、右手は矢のようにマキシマの顔めがけて突き出される。
しかし、ワルキューレの放った右ストレートがマキシマの顔に届く事はなかった。
「さすがに魔法を数値化することは出来ないか。底は見えたがな」
ワルキューレの右拳を左の掌で受け止めたマキシマは呟くと、空いた手でワルキューレの頭を鷲掴みにする。

そのままワルキューレの頭を、まるで紙コップのように握りつぶした。
美しい青銅の像は頭だけを失い、崩れるように倒れる。
その光景を、ギーシュは口をポカンと開け、見届けることしか出来なかった。
周りの生徒も、その光景を信じられないように見ている。

「おい。終わりなのか?来ないのなら俺からいくぞ?」
マキシマがそう告げ、ギーシュに向かい歩を進めようとする。
するとギーシュは、やっと正気に戻った。
「い、いや!まだ終わりじゃない!だからまだ来るな!!」
「いつからターン制になった。…まぁいいが」

ギーシュが杖を振ると、新たに6体のワルキューレが姿を現す。
合計7体のワルキューレは、最初に出た二体の片割れ以外がそれぞれに剣や槍を持ち武装している。

「ギーシュの奴本気だぞ!」
「本当に殺すつもりだ!」
周りが騒ぎ立てる。
「あの使い魔…。ゴーレムの頭握りつぶさなかったか?」
「そ、そんなわけないだろ!!あれだ!ギーシュの奴、ワザと使い魔の前でゴーレムの頭が潰れるようにしたんだ!」
「なんで!?」

観衆はそれぞれ口にするが、ギーシュの耳に届かない。
目の前の相手を、それほど恐ろしく感じていたのだ。

しかし、後には引けない。
ギーシュは恐怖を押し殺し、気丈に振舞う。
「華は持たせてやった。これからは一方的に君を痛めつける。覚悟はいいか?」
「おしゃべりが好きならしりとりでもしようか?もっとも、そんなものでもお前は俺に勝てないがな」
「ほざけ!」

ワルキューレが一斉にマキシマに踊りかかる。
マキシマの体に剣が突き立ち、槍が胸を貫く。生意気で得意げな顔をズタズタに切り裂く。

そんな想像をし、ある者は顔を背け、ある者は期待と興奮に目を輝かせる。

しかしマキシマは、手ごろなワルキューレを掴むと、剣を振り上げる別のワルキューレに叩き付ける。
二体のワルキューレがバラバラになり地面に散らばる。
そしてまた、近くのワルキューレを片手づつ二体捕まえると、頭と頭をぶつけてクラッシュさせる。
槍を持った二体には、それぞれ打撃をお見舞いする。
首に水平にチョップを食らったゴーレムは、首を無くして崩れ、胸を殴られた青銅の像は、殴られた部分からひしゃげて
吹っ飛び、壁に叩き付けられると動かなくなった。

残るワルキューレは一体。
「お人形遊びは終わりだぞ?まだ続けるのか?」
その陰に隠れていたギーシュに、マキシマは問いかける。
すると、最後のワルキューレは青銅の輝きを失い、土くれとなって崩れ去る。

「いや…。もう逆立ちしても勝てないだろう…。悔しいが、それくらいは判るよ」
花びらの無くなった杖を捨て、ギーシュは「やれやれ…」と首を振る。

「しかし…だ…」
続けながらギーシュは、拳を作り体の前に構える。
その眼はマキシマを捉えたまま、必死で恐怖を抑えこみ、逸らすまいとしている。
「杖が無くとも、僕は貴族だ!貴族であり、一人の男だ!自分から仕掛けた決闘で、自ら退く訳にはいかない!」
マキシマに向かい、全力で駆け出す。
その様子に、マキシマは「ほう…」っと思わず感嘆に声を漏らす。

マキシマの手前、体五つ分の辺りで、急にギーシュの姿勢が低くなった。
そして、マキシマの周りに転がっているワルキューレの残骸から折れ曲がった槍を拾うと、体を起こす反動を付けながら
敵の喉を突こうとする。
それをマキシマは体を横にずらすようにかわし、ギーシュの顔の前に拳を突きつける。
ギーシュはそのままの勢いで、自分の顔ほどもある拳に顔面から突っ込むと、鼻血を噴出して地面に倒れこんだ。

「勝負ありだな」
マキシマが宣言すると、周りから歓声が上がる。
「おたくも負けを認めるかい?」
彼の問いにギーシュはゴロンと仰向けになり、鼻血と土で汚れた顔で苦笑いを浮かべながら答える。
「使い魔君、もう少しカッコよく負かしてくれないものかな」
「贅沢言うなよ。二股をして女の子を泣かしたヤツにはお似合いだろ?」

「言わないでくれ。本当は理解していたさ。僕が悪かったなんてね」
ギーシュは仰向けに寝たまま続けた。
「すまなかったね。僕もムキになっていた。君の主人にまで当たったのはさすがに自分でもどうかと思うよ」
「そう思うなら本人に謝っておくことだ。許してもらえるかは別としてな」
「分かってるさ。僕だって男だ。あぁしかし…」
「どうした?」

ギーシュの煮え切らない返事に、マキシマが問う。
「いや、女の子達にも謝らなければと思ってね。モンモランシーとケティは許してくれるだろうか…。モンモランシーは結構
キツイ所があるから」
「今誰がキツイって言ったのかしら?」
「いやあモンモランシー。いつ見ても君は素敵だね。まるで蝶のようだ」
いつの間にか近くに来ていたモンモランシーの機嫌を取るために、必死で褒めるギーシュ。
「そんなことより、もっと私に言うべきことがあるんじゃないの?」
「すいませんでした!」
フラフラと立ち上がり頭を下げるギーシュ。その様子を見て、モンモランシーは「はぁ…」とため息を吐いた。

「いいわよもう。後であの一年生にも謝っておくこと。いい?」
「そうだね。彼女にもひどい事をしてしまった」
そう言うと、マキシマの方に向き直る。
「改めて自己紹介しよう。僕の名はギーシュ・ド・グラモン。『青銅のギーシュ』だ。君にはとんだ迷惑を掛けてしまった」
「これっきりにしておけよ?二股も八つ当たりもな」
「ハハッ。耳が痛いね」
「普通のことでしょうが」
モンモランシーからのツッコミを受け、頭を掻くギーシュ。
そのやり取りを見て、マキシマは笑いながら右手を差し出す。

「マキシマだ」
その右手を取り、ギーシュとマキシマは握手を交わす。
「所で君の主人はどこに居るんだい?彼女にも謝っておかないと…」
そう言いつつ辺りを見回すと、すぐにルイズの姿を見つける。
「おお!ルイズ!ミス・ヴァリエール!すまなかった!君にも酷いことを言ってしまったね。いやはや、仮にもレディに対して
あんな言い草をしてしまうとは。僕の人生の汚点だ。申し訳ない」

「え、ええ。もう気にしてないわ。それよりマキシマ?」
「なんだ?」
「あんた、あんなに強かったのね。びっくりしたわ」
「そうだよ!僕のワルキューレがまったく相手にならないなんて。一体何者なんだ君は」

「なに、簡単な話だ」
歓声の鳴り止まぬ広場で、二人の問いに、マキシマは平然と答える。

「このお嬢ちゃんはアタリを引いたのさ」
ルイズ、ギーシュ、モンモランシーは顔を見合わせる。
「おい。そんなことより早く食堂に戻るぞ」
「食堂?どうしてまた戻るの?」

「俺はまだケーキを食べてないからだ」
そんなマキシマの言葉を聞いて、三人は笑いながら食堂へとついていった。


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