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デュープリズムゼロ-35

第三十五話 『逃げろ!!脱兎の如く。』

「ちょっと、ミント…あんた正気?」
母カリーヌに向かっての交戦の意思を露わにしたミントに対してルイズは召喚して何度目かは覚えていないが思わず正気を疑ってしまう。生きる伝説烈風カリンに挑むと言う事はハルケギニアのメイジにとっては死に等しい行いだ。

「あったりまえでしょ。第一ちょっと前まであんた貴族は敵に背中は見せないって偉そうに言ってたじゃないの。」

「うぐ…確かにそうだけど…」
「諦めろ、嬢ちゃん。俺様だって腹は括ってんだからよ。」
カチャカチャと鍔を鳴らしてデルフはルイズを何処か的外れな言葉で励まそうとする。ルイズは内心「腹なんて無いじゃない」と思ったがそれを口に出す元気がもう無い。
互いのやり取りの間にも母親から刺さる厳しい視線…それだけでルイズからは生きた心地が消えていく…

と、ここでミントは両手を広げたままに一歩ずいと前に出る。
「とは言ったものの…取り敢えずこのシエスタだけは先に行かせてもらって良いかしら?巻き込んで怪我させてもいけないし、それ位は良いでしょカリーヌさん。」

「勿論です。元々この様な事に平民を巻き込むなど以ての外ですからね。ただしルイズとミス・ミント、貴女を唯で通すつもりはありませんよ。」
これは大切な事だ。ミントの申し出にカリーヌは当然だと二つ返事の了承を返し二人を通す気が無い事を改めて明確にする。
その間、馬上で自分がどうすれば良いのか解らないままだったシエスタは戸惑いながらもミントに促されるままに馬を進ませる。

「シエスタ、道なりに進んだ所に農村あったでしょ?後であそこで落ち合いましょう。」

「あ、はいっ。ミントさんもどうかご無事で。」
シエスタの馬がカリーヌの脇を通り過ぎ石造りの門をくぐり暗がりへと徐々にその姿を眩ませる。
その間はその場の全員の注目はチラチラとこちらを気にしながら戦場を離れるシエスタに集まり、取り敢えずは本格的に戦うまえの下地作りというか適度な緊張感がある剣呑な雰囲気が辺りを包む。

そして…

「あんたもよ…行きなさい。」
シエスタの避難もそろそろ十分かというタイミングでミントが呟く…
その声は最早口にしたミント自身しか聞き取れない様な小さな呟き声でミントは未だにルイズを背に乗せたままの馬の臀部を強く叩き、シエスタの馬に続く様、前進を促す。

「へっ?」
「ヒッ、ヒヒィィィ~~~~~ンンッッ!!!!!!」

「キャアァァァァァーーーーーーッ!!!!!」

突然の衝撃に驚いた馬はそのまま嘶きをあげ、本能的に前を行くシエスタの馬を追う形に真っ直ぐカリーヌに向かって暴走を始める。無論混乱のまま悲鳴をあげるルイズを乗せたまま…
「?!!」
この全く予期せぬ展開にカリーヌはほんの僅かに一瞬戸惑ったがこのままルイズを行かせる訳にはいかぬとウィンドブレイクの呪文を素早く唱えてルイズに杖を向け迎え撃とうとした。
そのまま放たれた風の鎚はルイズとその馬を間違いなく一撃で戦闘不能に出来るだろう桁違いの威力を誇ってはいた…しかしその風の鎚は直撃の瞬間不可思議な事に力無く消失し唯のそよ風となる。

「……………」
カリーヌは無言のままながら目を僅かに細めて一体今己の魔法に何が起きたのかを知ろうとする。
そしてその答えは直ぐに判明した。
「嬢ちゃんそのまま止まるなよ、馬を走らせろ!!」
すれ違いざま確かに見えた、声を張り上げる馬の鞍にまるで突き刺すかの様に強引に取り付けられた白銀の刀身…それは先程までミントの手の中にあったデルフリンガーだった。

(魔法をレジストする剣?!)
一瞬、本当に一瞬…カリーヌの意識はデルフと走り去ろうとするルイズへと捕らわれてしまった。
行かせないとばかりに次いでの魔法による追撃を放とうとしたその瞬間、今度はカリーヌの足下が青白く照らされた…

「もらったぁ!!」
ミントの声がカリーヌの耳に届いた次の瞬間、一筋の電光『ボルト』が天からカリーヌの頭上へと走る…
「シッ!!」
それと違わぬ刹那のタイミングで魔法の予兆を敏感に感じ取っていたカリーヌは雷光を纏った杖で打ち下ろされたボルトを人間離れした反応で切り払う。
「…正直驚かされました。」
「まぁ、そりゃこの程度で倒せる相手じゃ無いわよね…でも。」

雷光と雷光が弾けた閃光の一瞬が開け、一度紫電を纏った鈍い銀色のタクト状の杖を振るって佇まいを正したカリーヌに対し、魔法を撃ち出した姿勢のままのミントがそれぞれ相手の一手に言葉を添えた。

「ミントッ~~~~あんた、覚えてなさいよっーーーーー!!!!!」
そして暴走する馬が消え去った暗闇の向こうから遠ざかって行くルイズの絶叫がこだまする…

「そうですね…これでルイズはまんまと逃げおおせたという訳ですか…まさかあの様なタイミングでルイズをあの様に扱うとは…」
「ルイズはあれ位しないと離れてくれなかっただろうしね。そのくせ戦う気が折れてる奴が側に居てもしょうが無いじゃ無い。」

暗黙の中であったとはいえお互い交戦の意思が整っていない最中で清々しい程の不意打ち。(無論カリーヌもそれを卑怯とは言わない。)
それも仮にも自分の主人であるルイズを陽動の為にあたかも捨て鉢の如く敵に突撃させるという無茶苦茶。保険としてデルフというカードを切る形にはなったが…
だが、ミントは見事『烈風』を出し抜いた…貴族として感心は到底出来ないやり方だが戦士としてならばルイズの門壁突破というこの結果、認めざるを得ない。

「まぁ良いでしょう。確かにルイズは逃がしてしまいましたが貴女を行かせなければそれは結局は同じ事です。」

言いながら再び構えたカリーヌの杖先に風が纏い付く。余程の魔力が渦巻いているのだろうかその風はもはや実体を持っているかの様に視角化されている。

「シッ!!!」
掛け声と共に振り下ろされた杖、撃ち出されたのは巨大な風の刃、詠唱は最早無い。いや厳密にはカリーヌは詠唱をきちんとしているのだがそれが誰よりも早く正確で小声なのに加えミントには口元が鉄仮面で見えないのだ。

「『トライン』」
ミントもカリーヌとほぼ同時に魔法を発動させながら風の刃を転がる様に回避した。直後背後では風の刃が木を砕き石畳を割る音がミントの耳に響く。
ミントから放たれた以前にはワルドの偏在を仕留めた三つの雷撃はそれぞれが弧を描く様にカリーヌへと襲いかかる。

(面白い魔法ね…)
ミントの魔法に対してそう思いながらカリーヌは続けて杖を横薙ぎに振るい風の魔法を放つ。
風で編まれた龍とでも形容すべきかその驚異の破壊力を持ったエアハンマーはあっさりとトラインの一つを飲み込むと体勢を立て直したばかりのミントへとその牙を突き立てようと食らいつく。
と、同時に簡単な風を巻き起こすだけの魔法で残りのトラインを相殺してみせる。(決してトラインが弱い訳では無い。)

「げげっ!!」
その光景がミントの目にどう映ったかは定かでは無いがミントはその圧倒的とも言える力差を前にしながらもその往生際の悪さを遺憾なく発揮してエアハンマーをも回避した。
カリーヌはこれにも内心驚かされた。正規の訓練を受けた軍人でもしっかり当てるつもりで放った今のエアハンマーを回避できるものは少ないだろう。無論これは自惚れでも何でも無い事実だ。

「危ないわね~お返しよ。」
次いでミントは手数で勝負と言わんばかりに素早く『サテライト』を発動させ『バルカン』を同時に撃ち出す。ガンダールブの加護を用いれば同系統の魔法の同時施行位は何とかなる物だ。
ミントが放つ圧倒的な密度の弾幕、それに対してカリーヌは突き出した杖から同じく威力を落とし連射性を高めた風の弾丸を斉射し確実に相殺していく。
自然と二人の弾幕勝負は拮抗する…その間ミントの頬を嫌な汗が流れる…実際戦って感じたが残念な事にどうにもこのルイズの母親に勝てるビジョンが浮かんでこない。
勇気の光ならば確実にカリーヌの魔法を凌げるだろうがアレは攻撃に移る瞬間にどうしても無防備な瞬間が生まれてしまう。使うなら使うでタイミングが鍵となる。

そしてその僅かな均衡は直ぐに再び破られた。

「ここまでです。」
「なぬっ!?」
ミントが二つの魔法を同時使用した様にカリーヌもまたミントに悟られぬ様に長い時間を掛けて同時に強力な魔法を唱えていた。

ミントの目の前を塞ぐ様に巻き上がった風の壁、それは怪炎竜ウィーラーフの巻き起こす竜巻に似ていた。違いがあるとすればカリーヌの竜巻『カッタートルネード』はミントを目として発生している事だ。

(……これはやばいわね…)

カリーヌの意志に従ってルイズのトラウマ、カッタートルネードはミントを追い詰める様に徐々にその範囲を狭めていく。勿論風の勢いはそのまま、むしろより強い勢いを得ながらである。

「『ゲイル』『インパルス』『フレア』『リップル』『グラビトン』!!!!」

ミント自身も徐々に近づいてくる風の壁に対し、様々な魔法を撃ち込んで脱出を試みるもそれは流れ落ちる流水に穴を穿つかの様な事でありそれは叶わなかった…

(あ~………………ちょっとこれは勝てそうに無いわね…正真正銘の化け物だわこの人…)

通常の魔法を粗方撃ち込んだミントは内心でそう愚痴をこぼす…カリーヌに比べればワルドなどどれだけ容易い相手だったか…

だが…それでもミントの表情に諦めは決して無かった…



カリーヌは完全に周囲の風その物を掌握したままゆっくりと収縮していく自らの唱えた『カッタートルネード』を油断無く見つめていた…
時折、風の障壁を貫いたり激しい閃光を放つミントの魔法に風が破られそうになるがそれをこのトリステインにおける最強は許しはしない。
そうしてミントの無駄とも思える足掻きがしばらく続いたがある瞬間からそれはピタリと止まった。

「何が…」

抵抗が無くなればこのまま竜巻は収縮を終えて最終的には周囲の一切合切と共にミントを上空へと巻き上げて決着となるだろう。
しかしカリーヌがその最中に覚えたのは奇妙な風の気配だった…
この一帯の完全に制御している風の中に明らかに異質な風の存在を感じる…例えるならばまるで水の中に浮き続けてている一欠片の溶けない氷の様な異質さ…
それもその場所はまさにミントが居るであろうカッタートルネードのど真ん中。何かがおかしいとカリーヌの中の戦士の感が警戒をしろと告げる。




「とりゃぁぁぁあああーーーーー!!!!」

次の瞬間、気合いの掛け声と共にカッタートルネードをぶち抜いて飛び出してきたのは二つのデュアルハーロウを揃え頭上に構えたミントの姿だった。

「なっ!?」

カリーヌにとってもこれはとても信じがたい光景だった…己のカッタートルネードを身体一つで突破するなど到底信じられた物では無い。触れれば鉄さえ寸断し、巻き込めば大岩ですら天に打ち上げる。そんな暴風を身体一つで突破など…

(それも全くの無傷で…)

カリーヌが見上げる様な高さで器用にも空中で身を捻ったミントはまるで重力を無視するかの様に軽やかで華麗な動きで天地を逆転させる。そうしてその勢いに身体を任せたまま大きくデュアルハーロウを振りかぶる。

ミントの姿がカッタートルネードから飛び出してその瞬間までは時間にして3秒も無かっただろう…
自分の頭上に今振り下ろされようとしている黄金のリングに対し、カリーヌは鉄仮面の下に隠された口元を思わず笑みで歪ませていた。これ程に闘争を楽しませてくれた敵が嘗ていたであろうか?否、いない!!

『ブレイド!!』

振り下ろす様な形で叩き付けられたデュアルハーロウに対してカリーヌは最速で発動させた魔法によって刃となった自らの杖で切り上げる様な形で迎え撃つ…

「ちっ!!」
「はぁっ!!」

魔力と魔力の衝突による凄まじい閃光が二人の得物の間で刹那、明滅する…
強烈な一撃に競り負けたと感じ取ったカリーヌは自分の杖を握る右手に強い痺れを感じながら思わず顔をしかめる…
そして一方で上空に弾かれ、鳥の羽の様にミントの身体が軽やかに再び宙に舞ってはカリーヌが背にしていたヴァリエール領の大門の真正面に着地していた。片膝を地面に着き、両手で体重を支える様な前屈姿勢で…


そこからは二人のとった行動は極めて早く、極めて対照的だった…


所謂クラウチングスタートの姿勢から一切振り返る気配も見せず、無防備な背中を躊躇いなく晒してまさに脱兎の如く全力疾走でその場から逃げ出すミント。
その気配を察してか僅かな時間でつぎ込めるだけの魔力をつぎ込んで最大級の且つ範囲を絞り込んだ『ウィンドブレイク』をミントに向けて発射したカリーヌ。


その結果は…


「じゃあねっ、カリーヌさん!」


まるでカリーヌの超弩級のウィンドブレイクを追い風とするかの様にしてあっという間に走り去ったミント…

「まさか…本当に出し抜かれてしまうとは…」

驚きも隠せず最早更地と言える程に荒れ果てた門前に一人残されたカリーヌはミントが走り去って行った方向を見つめる。
最早追おうとは思わなかった…正確に言えば追う事は出来なかった。

「思えば闘いに負けるというのは初めてですね…」

カリーヌの右手に握られた銀の杖からビシリビシリと不快な音が響く…
ミントからの強力な一撃を防いだ際、この杖にはどうやら限界が来ていたらしくその上で最後のウィンドブレイクを放った際に遂に折れてしまっていたのだ。
端から見れば逃げ出したミントの負けにも思えるが杖を折られるというのはメイジにとってはこれ以上無い敗北の証、そこをこの生粋の武人は誤魔化す気にはなれなかった。



「まさかこの様な結果になるとはな…私はお前を前にして大人しく屋敷に戻ると思っておったが…」

ふと、初めての敗北の余韻に浸っていたカリーヌの背中に声がかけられる。それは少々離れた場所で始終を眺めていたヴァリエール公爵だった。

「えぇ、それなりの力を示しさえすれば行かせるつもりではありましたが…少なくともミス・ミントは我々が思っていた以上のメイジですわ。策の打ち方、引き際の潔さ、彼女は間違いなく戦の相手にはしたくない相手です。しかし、まぁ是が非でももう一度手合わせは願いたいですわ。」

言いながら砕けて折れた杖を公爵へと掲示してカリーヌは率直な感想を述べる。これにはヴァリエール公も目を丸くした。

「まさか教練用の杖とは言えお前の杖を折ってしまうとは………ルイズの奴とてつもない使い魔を呼び出した物だ…とにかく無事であれば良いのだが…」

「…そうですね………戦に参加すると言う事には思う所は多々ありますが…今はルイズとミス・ミントを信じましょう。ブリミルの加護があらん事を…」

ヴァリエール夫妻は己の娘とその使い魔の前途への加護を祈るのだった。


___  森の街道



「はぁ~~~………………流石にここまで逃げれば大丈夫よね…」

精も根も尽き果てたといった様子で道脇の木に手をついたミントはチラリと背後を見やり呼吸を整えるともう一度さっきの闘いを振り返ってゾッとする。
「て言うか何なのよあの人…何とか逃げ切れたけどあれは完敗だわ。」

ミントは知らないがカリーヌの方もミントと同じように負けたのは自分だと思っていたりしている。
ミントが最後に使った魔法は『緑』の魔法、タイプ『ハイパー』、名は『疾風の如く』風を身に纏い自身すらも風と同化し、一切の攻撃を無効化するというある意味で反則じみた魔法。一言で言うならば『すてきに無敵』というやつである。
勿論ハイパーの例に漏れず燃費がすこぶる悪く、城門を突破してから本当に直ぐにミントの魔力は底をついてしまっていた…


「それにしても…世の中上には上がいるもんね…さて、早い所ルイズ達に追いつかなきゃ…」


気を取り直して顔を起こしたミントは再び走り出した。

ミントはまだ知るよしもなかったがこの辛勝は後にミントにとっての大きな心労の種となるのだった…


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