あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

るろうに使い魔-26



 トリステインのどこか、生い茂る森が立ち並び、その中にひっそりと隠れる廃墟の近く。ここには、オーク鬼なる生物が、廃墟を根城にして住みついていた。
 人間のように立った豚。その言葉がしっくりと来るその怪物は、今、一人の人間を前に大勢で取り囲んでいた。
 人間の肉が大好物な、野生の本能のままに動くオーク鬼共は、もしこれが『普通』の人間だったら、即座に襲いかかり、その血肉を喰らっていたことだろう。こんな堂々と人と対峙する機会は、滅多にないからである。
 では、何故襲いかからず、様子を見守っているのか。その理由は簡単だった。
 その人間は『普通』じゃないからだ。

「ウグ…ウグルル…」
 周りを数十ものオーク鬼が、取り囲んだこの状況。
例えメイジであろうと、この数相手に立ち向かえるほどではない。それはオーク鬼も経験から知っている。少し犠牲が出るが、やってやれないことはない。
 だが、同時に野生の本能が、この男と戦うな。と警鐘を鳴らしてくるのだ。
 その証拠に、他のオーク鬼も、囲んではいるが遠巻きに、その手に持つ棍棒を威嚇がわりに振り回すだけで、我こそは、と先手を切って立ち向かう者はいなかった。

 少しの間、そんな風に時間だけが流れていた。
 しかし、遂にしびれを切らしたのか、何体のオーク鬼は、棍棒を振り上げて、人間に襲いかかった。だが…。
「グッ…グルル…」
 その人間に睨まれただけで、腕は硬直し、足は止まり、戦意は容易く吹っ飛んでしまう。かわりに頭をもたげるのは、『その後』の事。
 脳天を割られるのか、首を飛ばされるのか、それとも心臓を貫かれるのか。
『死』という強いイメージを抱かせる程に、その目は刃のように鋭く、そして冷たかった。
 こんな相手は、オーク鬼が生きてきた中で初めてのことだった。
 そんな中、遂に人間は動き出す。
 足を止めたオーク鬼が、襲うためではなく、防衛の為に棍棒を構える中、人間は、ゆっくり目を瞑り、そして…。


「うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」


 人間の叫び声と共に、溢れんばかりの気迫が、オーク鬼を襲った。
 木の葉は弾け、周りの木々はそれにざわつく。オーク鬼は、ただただこの見たこともない現象に驚くばかりだった。
「グッ…グルアアアア!!?」
 もう、オーク鬼に戦う意思など残ってはいない。
 人肉よりも命が大事。欲求より本能の方を取ったオーク鬼は、そう決断すると行動はすごく早かった。
 まるで脱兎の如く、オーク鬼は蜘蛛の子を散らすかの如く逃げ出していった。



     第二十六幕 『タルブと謎の秘宝』



「オーク鬼が逃げてったよ…」
「ここは任せて、なんて言うから見てみれば…ねえ」
 草木の後ろから、万が一を備えていたキュルケとギーシュは、ただポカンと口を開けていた。
「今のも飛天御剣流か何かかしら?」
「いえ…あれは、確か『気を引き締める』だったと思います」
「はぁ? 何よそれ…」
「さあ…?」
 そう話しているのは、さらにその後ろから見守っていたルイズとシエスタ。
 シエスタの返答に、ルイズ達は疑問符を浮かべるが、シエスタ自身、何を言っているのかさっぱり分かっていないようだった。
「まあ、正確に言えば、あれは『剣気』でござるよ」
 先程までオーク鬼と対峙していた人間、剣心は、不思議そうな顔を並べているシエスタ達に向かって言った。
「……ケンキ?」
「気合の一種でござる」
 益々ギーシュ達は首をかしげた。気合でオーク鬼が逃げ出すなんて、聞いたことなかったからだ。
「ってことは…あれは僕にも出来るってことかい?」
「頑張れば、そうでござるな」
 冗談で言ったつもりだったのに…あっさり答える剣心を見て、ギーシュは余計混乱した。
 いっその事、あれは『先住魔法』の一種。とか『実は虚無の力』とか言ってくれれば、まだ納得のしがいがあるというものだった。
 というよりギーシュ達は、まだ剣心を「この世界」での常識で当てはめようとしていたのだった。
 だって…魔法が絶対のこの世界。それなのにも関わらず、その魔法も無しにあんなに速く動く人間なんて、この世界の常識に考えて、いるはずないのだから。
「それより、早速彼等に退いてもらったのだから、今の内に早く探索を済ませるでござるよ」



 こうして、お宝探索に出てから、それなりの日数が経った。
 キュルケの持つ、宝の地図を頼りに捜索を進めてはいるが、大体は偽物や古い情報ばかりで、何もなかったり既に発掘されたあとだったりした。
 ちなみに、この冒険には剣心が、あれ以来どこか仲良くなったコルベールを介して、オスマンにちゃんと許可をとっていた。任務をこなした褒美として、これぐらいは目を瞑ると、オスマンはそう言ったのだ。
 しかし、未だに収穫はゼロ。まだ宝の「た」の字も見てはなかった。


「いい加減にしなさいよ。これで七件目じゃないの!!」
「だから、ある『かも』って言ったじゃない!!」
「まあまあ、二人とも」
 その夜、またもやハズレを引いた一行は、皆消沈の意気を隠せなかった。
 ぶつかり合うルイズとキュルケを嗜めながら、剣心は宝専用にとキュルケ達が持ってきた大きめな袋を見る。
 理想だったら、中身は今頃金銀財宝で満帆になっていただろうが、悲しいかな、現実にそんなことが起こり得るわけが無く、入っているのは少ない銀貨銅貨ばかり。
 ルイズ達貴族からしてみれば、端金と言っても過言でもないような額に、一行はガックリと項垂れているのだった。
「まあ、でも大体こんなものでござるよ」
 勿論剣心は、そんな簡単に財宝が見つかるわけないと分かっていた。まず地図からして胡散臭いものばっかりだ。
 それに、これは最近塞ぎ込んでいたルイズの気晴らしにと始めた企画だったので、別に見つからないなら無いで、特に期待もなければ失望もなかった。
 その内に、作っていた夕食が出来上がったのか、シエスタが元気な声でルイズ達に呼び掛けた。
「はい皆さん、お待たせしました!!」
 そう言って持ってきたのは、大きな鍋。中身はシチューの様な感じではあるが、ルイズ達が普段食べているものとはちょっと違っていた。
「故郷名物の『ヨシェナベ』です。たくさんありますからどうぞ!」
 シエスタは満面の笑みで、皆にシチューの入れた皿を手渡していく。
 怪訝に見つめていたルイズ達だったが、口にしてみると、なるほど美味しい。今までルイズ達が食べたことのないような、さっぱりとして独特の味わいだった。
「へえ、美味しいじゃない」
「ありがとうございます。私も作ったかいがあります」
 と、シエスタはここで、おずおずと剣心の方を見た。
 美味しく食べてくれるルイズ達とは裏腹に、剣心はさっきから不思議そうな顔をしていたのだ。
「あの…ケンシンさんはどうです…か?」
 何か粗相があったのだろうか、少し不安な表情で、剣心に聞いてみた。
 剣心は、その言葉で我に帰ったようだった。
「え、ああ。ちょっと懐かしい味だなって、思っただけでござるよ」
「懐かしい、ですか?」
「う~ん、そうでござるなあ……」
 説明しづらそうに、剣心は空を見上げた。夜空は相変わらず綺麗で、二つの月が美しく
光っていた。
 懐かしい…確かにそうだ。
 何ていうか、シエスタの雰囲気は、このハルケギニアとはどこか違う感じがする。
 仕草や容姿。作る料理も、どこか自分の故郷を思い出してしまうのだ。
 剣心は、改めてシエスタをまじまじと見つめる。シエスタの方は、逆に見られている視線に耐えられず、思わず顔を赤面した。


 それを見かねたルイズが、おっほんと咳を一つして、これみよがしに懐から、『始祖の祈祷書』を取り出した。
「突然ですが、ここで私が考えた詔を発表するわ。皆聞きなさい。拒否権はナシよ。そこのメイドとバカ犬も」
 あくまで、剣心達の気を引きたいがために『始祖の祈祷書』を出したのだが、正直何も浮かんでない。だが、ここで引っ込むわけにはいかない。
「え、と。この麗しき日に、始祖の調べの降臨を願いつつ…えーと」
 多少しどろもどろになりながらも、何とか前置きを語ったルイズは、さあこれからどうしようかと本格的に悩んだ。
「それで? 続けなさいよ」
「その次は何だい?」
 キュルケやギーシュにせがまれると、もうどうにでもなれ、とルイズは逆に開き直った。
 どうせ試作段階だ。これを発表するわけじゃない。

「…これから、四大系統に対する感謝を、詩的な言葉で韻を踏ませつつ読むんだけど…」
 これを聞いて、俄然キュルケ達は興味がわいたようだった。燃えるような真っ赤な髪を掻き上げて、ルイズを見つめる。
「へえ、面白いじゃない。この私の『火』を、貴方はどういう風に解釈するのかしら?」
「…炎は、熱いので気をつけること」
 瞬間、キュルケはガクっとした。まさかここまで酷いとは思わなかったようだ。
「…それ詩じゃないし…てか、燃え上がるのが本領の『火』を、気を付けてどうするのよ?」
「うるさいわねえ…次は、風が吹いたら、樽屋が儲かる」
「それ諺」
 今度はタバサが、目線を本から上げてルイズに突っ込んだ。
 ここまで来ると、ルイズは頬を紅くして、ぷいっとそっぽを向いた。
「もういいわよ!! もう終わり。はいおしまい」
 自分で始めたにも拘らず、ルイズはそう言って一方的に打ち切った。
「ちょ…僕の土は? モンモランシーの水は?」
 特に期待はしてなかったが、いざシカトされると悲しくなったギーシュの声が、森に響きわたって溶けていった。



 それから暫くして、ルイズはため息をつきながらキュルケに言った。
「もうやめない? 収穫無いし…」
「あと一件、これで最後にしましょ!!」
 そう言って、キュルケはまだたくさんある地図の中から、これはと思う物を取り上げた。
「これよ! 『竜の羽衣』。これにしましょう!」
 その瞬間ぶほっ! とシエスタは食べていたシチューを、盛大に吹き出した。
「え、『竜の羽衣』ですか!?」
「? 知ってるの?」
「知ってるも何も、それは私の村に今も祀ってあります」
 その言葉に、今度は全員が目を丸くした。
 それからシエスタは、その『竜の羽衣』について語り始めた。
 何でも、シエスタの曽祖父は、それに乗ってタルブへ来たらしいとのことだった。
 しかし、飛んでいる姿を見たものは、村の中にも無く、その曽祖父も、わけあって飛ばすことは出来ないと言っていたので、半ば語り草のような形になったとのことだった。
 その後、曽祖父はタルブに住み着き、一生懸命資金を稼いで、『固定化』までかけて大事にとっていたようだった。
 しかし、ついぞその『竜の羽衣』が飛ぶ姿を、見る者はいなかった様だ。


「ふーん、そうなの…」
 話を聞き終わった一同は、それぞれ何とも言えなさそうな反応をした。実物を見てない以上、どう対応していいか分からなかったのだ。
 だがそれ故に、皆はどこか興味を示した様だった。
「でもまあ、どんなものなのか、見てみるのもいいわね」
「そうでござるな。それにこれでシエスタ殿の村へ行くのと、目的が一致した訳でござるしな」
 剣心のその言葉に、シエスタは嬉しそうに微笑んだ。
「わ、本当に来てくれるんですか? どうしよう…皆に何て言ったら…」
 少し体をクネクネさせながら、剣心を見るシエスタだった。勿論、ルイズにとっては面白くないことこの上ない。
 しかし、タルブへ行くのは最初から決まっていたことだし、ここで反対するのも変だ。
 仕方なく、といった感じで、だが鋭く目を光らせながら、ルイズは剣心達を見つめた。



 一行が、タルブへと到着したのは、その次の日の朝早くだった。シルフィードで一気に飛ばしてきた、というのもあったが。
 早速剣心達は、シエスタの家へとお邪魔して、軽い挨拶を交した。そして次に、おずおずしくシエスタはルイズ達を紹介する。
「貴族の皆様方と、その…私の…だんなさ―――」
 そこまで来たとき、言わせないよと言わんばかりにルイズのハイキックが飛んできた。
 しかしシエスタは、まるで飛天御剣流を会得したかのような的確な読みと動作で、これを避けた。
 空を切った蹴りの先には、ギーシュの顔面があった。
「何で僕が…」そう呟きながら、ギーシュは身体も意識も同時に飛んでいった。

「えと、ヒムラ・ケンシンさんです」
 シエスタは、そこから何事も無かったかのように、剣心を紹介した。
 その後、シエスタの家族に『竜の羽衣』のことを話し、剣心達はそこへと向かった。
 やがて目に写ったのは、神社の社のような場所。
 そこから中に入ると、そこには無骨な格好をした、ルイズ達にしてみれば変な物体が置かれていた。
「これが、『竜の羽衣』?」
 シエスタの言ったとおりだ。とルイズ達も思った。どう見ても、こんなモノが空を飛ぶ訳がない。
 無駄足だったかな…そんなことを考えながら、ルイズはふと剣心の方を見た。

「どう? ケンシン」
 剣心も、この物体を不思議そうに眺めていたが、やがてその物体に貼られているマークを見て、驚きに目を見張った。
 それは紛れもない、祖国『日の丸』の模様。しかし、剣心もこんな物体は見たことがない。
 その時、突然に左手のルーンが光り始め、同時に剣心の頭の中に、この物体に関する情報が流れ込んでいく。これの名前、使い方、そして用途などが……。
「あの…大丈夫ですか?」
 シエスタが、心配そうに剣心の顔を、覗き込んだ。端から見れば、具合でも悪くしたように見えたのだろう。
 剣心は、何も言わずにもう一度、よく『竜の羽衣』を見渡した。そして、昨夜シエスタが言ってた事をもう一度照らし合わせてみた。
 確かに…これなら合点がいく。どうやって空を飛んだか、今は何故動かないのか。

「ねえ、どうしたのよ。ケンシン!」
 今度はルイズが、そう言って詰め寄った。ここで剣心は、気付いたように我に帰ると、改めてルイズ達の方へ向き直った。
「これ、知ってるの? ケンシン」
「ああ…そうでござるな…」
 驚く面々を尻目に、剣心は視線を『竜の羽衣』へと戻す。
 剣心は分かったのだ。これをどう使うのか、何のために作られたのか。それを知ったその顔は、どこか寂しく、そして切なそうだった。
「『ゼロ戦』…拙者の国で、そう呼ばれて作られたモノでござるよ」


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