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ソーサリー・ゼロ第四部-12

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九四

 君が武器を取ると同時に、向こうも剣や拳銃を構え、にらみあいとなる。
 双方とも動けずにいるなか、だしぬけにキュルケが口を開く。
「あなたたち、ロサイスに向かっているんでしょう?」と、
何気ない調子で言う。
「あ、ああ。それがどうした?」
 隊長格の男が、君から目を離さずに応じる。
「それなら、町に入る前にその馬を処分しなきゃいけないわよね。あたしたちはちょうどいい取引相手だと思うんだけど」
「なぜ馬を処分する必要があるんだ?」
 男は顔をしかめる。
「今ロサイスにいる連合軍は、誰もが先を争って、引き揚げの船に乗り込もうとしているわ。将校の物ならともかく、
兵隊の乗った馬まで連れて行く余裕なんてないでしょうね」
「それなら、市内で売り払えばいい。ロサイスの住人たちまで一緒に逃げ出すわけじゃないだろう」
「あの港町じゃ、まだ規律が生きてるわよ。その立派な馬に乗っているところを将校に見つかったら、ちょっと厄介なことになるかもね」
 キュルケが意味ありげな微笑を浮かべる。
「ロサイスまでしばらく歩くことになるけど、今ここで売らなかったら、せっかくの馬をただで手放すことになるんじゃないかしら?」
 男は黙って考え込む。

 君たち三人はそれぞれ馬にまたがり、北に向かって進んでいる。
 取引は成立し、傭兵たちは安値で馬を手放したのだ。
「あんたもとんだ悪党よね、キュルケ」
 ルイズが呆れたように言う。
「なにが?」
「引き揚げの船もなにも、今のロサイスは港に近づくこともできない状態じゃない。それに、将校に捕まるですって? よくまあ、
あれだけでまかせがぺらぺらと出てくるわね」
「多少の嘘は、始祖だってきっと許してくださるわ。なんたって、あたしたちは世界の命運が懸かった、大事な任務を果たそうとしているんだから」
 キュルケはにやりと笑う。
「あそこで馬を手に入れそこねてたら、今もとぼとぼと歩き続けているところよ? いいじゃない、あの人たちに損をさせたってわけでもないんだし」
「ときどき、あんたって子が恐ろしくなるわ……」
 ルイズはかぶりを振る。四二一へ。

四二一

 君たちは小高い丘の上にいる。
 眼下には緑の草原が広がっており、その穏やかな眺めを前にしていると、ここが戦乱の地であることをともすれば忘れそうになる。
「もう、五十リーグは進んだわよね」
 ルイズは鞄から折りたたんだ地図を取り出し、周囲の地形と見比べる。
 懐中時計を持つルイズによれば、今は正午を少し過ぎた頃合らしいが、厚く垂れ込めた雲に陽が隠されているため実感はない。
 ここまでの道のりですれ違った相手といえば、早馬を駈る伝令らしき兵士と、家財を満載した馬車に乗った避難民たちだけだ。
 君たちは馬を木につなぎ、休憩と食事をとることにする。
 体力点二を加えよ。

 食事を終えた君たちは、ふたたび馬にまたがる。
 しばらくの間は何事もなく進み続けるが、やがて、草原と森が接する所で何かが動いているのに気づき、身を乗り出す。
 森から伸びた小道を通って小さな人影が現れ、よろめく足取りで街道に向かっているのだ。
 君たちに気づいている様子はない。
 隠れて通り過ぎるのを待つか(四八一へ)、それとも進み出て姿を見せるか(一六四へ)?

一六四

 馬首をめぐらせ人影のほうに近づくと、相手が十歳ほどの少年だとわかる。
 足を引きずるようにして歩いており、着ている服は泥まみれだ。
 少年は、涙を湛えた目で君たちを仰ぎ見る。
 君たちが口を開くより先に、
「助けて!」と哀れっぽい声を上げる。
「お姉ちゃんが、みんなが、危ないんだ! お願い、村へ来て! 助けて!」
 この少年の話を聞くか(二三三へ)、それとも厄介ごとは避けて立ち去るか(六一へ)?

二三三

 話を聞こうと馬を降りたルイズに、少年はすがりつく。
「早く、早く来て、貴族のお姉ちゃん! 急がないと、みんなが!」と懇願する。
「ちょ、ちょっと待って……」
 身分の差もかえりみず必死に訴える少年を前に、ルイズは戸惑う。
 そこへキュルケが進み出る。
「大丈夫よ、落ち着いて」
 腰をかがめ、顔の高さを少年と合わせる。
「何があったのか、最初から話してちょうだい。お姉さんたちにわかるようにね」
「う、うん……」
 少年はうなずく。
 泣きじゃくりながら語られる話は要領を得ぬが、大筋はどうにか理解できる。

 少年は森の奥にある小さな村の住人だが、その村に突如、大勢の武装した男たちが現れた。
 襲撃は夜明け前に行われ、無法者どもは家に火を放ち、住民を生け捕りにした──難を逃れたのは、森に逃げ込んだ少年ただひとりだけだった。
 なんとか逃げきったものの方向感覚を失って、暗い森の中を何時間もさまようことになり、やっとの思いで森を脱け出したところで、君たちに出会ったのだという。

 話を聞き終えた君たちは、これからどうすべきかをひそひそ声で話し合う。
「残念だけど、今は寄り道なんてしていられないわよね」
 キュルケの言葉に、ルイズが眉を吊り上げる。
「そんな、見捨てろっていうの!? あの子は、あの子の家族は、どうなるのよ! あんたには、情けってものがないの!?」
「ルイズ」
 キュルケの表情がきっと引き締まる。
「あたしだって、こんな事は言いたくないわ。だけどね、ここは戦場なのよ。助けを必要としている人たちはいくらでもいるわ。それらをいちいち相手にしていたら、
いつまでたってもロンディニウム塔へたどり着けないわよ」
「で、でも……」
「それに」
 口ごもるルイズに、キュルケは追い討ちの言葉をかける。
「村が襲われたのは、何時間も前の事よ。今ごろ向かったって、どうにもならないわ」
 それを聞いて、ルイズの白い頬に血がのぼる。
「賊どもは村人を生け捕りにしてたって聞いたでしょ? どこへ連れ去るにしても、馬を走らせればすぐに追いつけるはずよ!」
「で、追いついてからどうするつもり? たった三人で何ができるっていうの?」
「わ、わたしの≪虚無≫を使えば、なんとかなるはずだわ」
 ルイズは弱々しく言い返すが、キュルケのほうが何枚も上手だ。
「任務に関係ないところで、精神力を浪費するつもり? それは、どうあっても認めるわけにはいかないわ……カリン殿がここにいたならきっと、
あたしと同じことを言うでしょうね」
「だけど、だけど、わたしは……!」
 煩悶するルイズを見て、君は『ロリアン』号船上での、カリンとのやりとりを思い出す。

「……しかしこの先、非情な決断を下さねばならない時が来るかもしれません。 あなたやわたくしはともかく、ルイズにそのような事ができるかどうか」
 君が、優しいルイズは非情になれないだろうと答えると、カリンはこう言った。
「それが命取りにならねばよいのですが」

 君は意見を述べることにする。
 少年を連れて村へ向かおうと言うか(三〇二へ)、任務を優先して先へ進もうと主張するか(三七二へ)?

三七二

「あんたもキュルケと同じ意見なのね」
 ルイズは悲しげな表情を浮かべる。
「わたしだって、理屈の上じゃそうするのが正しいって事はわかるわ。あと五日以内に≪門≫を破壊できなかったら、失われる命は村ひとつぶんじゃ済まない。
トリスタニアの都が炎に包まれて、それから、トリステインもガリアもゲルマニアも、ハルケギニアのすべてが敵の手に落ちてしまう。
ねえさまたちや、学院のみんなだって、どうなってしまうかわからない。寄り道してる暇なんかないことは、わかってる……わかってるけど、
そんなの納得できない!」
 ルイズはそう言って君の目を見つめるが、君の意志は固い。
 相手を説得できそうにないことを悟ったルイズは、目を伏せ、ぽつりとつぶやく。
「行きましょう」と。

 君たちは馬の脚を速める──追いすがる少年の、悲痛な叫びに背を向けて。
「待って! 行かないで! みんなを助けて! テファお姉ちゃんを助けて! お願い、お願いだから!」
 距離が広がるにしたがって声は小さくなり、やがて何も聞こえなくなるが、誰も振り返ろうとはしない。
 先頭を行くルイズは顔をうつむかせており、キュルケの表情も重く沈んでいる。
 判断を誤ったとは思わぬが、それでも罪悪感は消えず、君の胸は痛む(強運点一を失う)。三八八へ。

三八八

 君たちは街道に沿って、北東へと馬を進ませる。
 日の暮れが迫るにしたがい、もとより曇っていた空がなお暗くなり、周囲が見えづらくなる。
 遠くから低い雷鳴が響き、顔には水気が当たる──今夜は雨になりそうだ。
「そろそろ、眠る場所を探したほうがよさそうね。宿屋とは言わないけど、雨風のしのげる所に泊まりたいものだわ」
 キュルケの提案に、君も同意を示す。
 ルイズは会話に加わらず、ただ黙々と手綱をとっている。

 しばらく進むと遠くのほうに光を見出すが、どうやらそれは人家の灯りではなく、揺らめく炎のようだ。
 数百ヤードの距離まで近づくと、それが荷馬車や幌馬車を円形に並べた野営地だとわかる。
 街道から少し離れた空き地に火が焚かれ、周囲をいくつもの人影が歩いているのが見える。
「連合軍の輜重(しちょう)部隊かしら」
 キュルケがつぶやく。
「あの馬車の中で眠らせてもらいましょうよ。このままだと、建物が見つかる前に雨が降ってきちゃいそうだわ」
 君としては警戒心が先に立つ。
 ≪門≫を使ったカーカバード軍の奇襲を受けて、連合軍の規律は崩壊したと聞く。
 統制を失った兵士たちの一部は、山賊同然のありさまらしい。
 野営地にいる者たちも、こちらが隙を見せれば牙を剥くかもしれぬ──若い娘たちが相手とあれば、なおさらだ。
 野営地で一夜の宿を求めるか(五三五へ)、それとも迂回して他の寝床を探すか(三五三へ)?

五三五

 野営地に入ってほどなく、周りにいるのがどういう連中かわかるようになる。
 君たちを見つめているのは、手足や頭に包帯を巻いた、傷病兵たちだ。
 シティオブサウスゴータの前線から、ロサイスに向けて後送されている途中なのだろう。
 彼らのうち何人かは、キュルケを見て低く口笛を吹き、にやにやと笑う。
 また別の者たちは、ひそひそと何事かを耳打ちしあっている。
 君たちが挨拶を送り、ひと晩のあいだ厄介になりたいと申し出ると、兵たちは顔を見合わせる。
「ここには、貴族のお嬢さんがたがお泊まりになるような、立派な寝床はありやせんぜ?」
 そう言ったのは、兜をかぶり、革の上着を身にまとった中年男だ。
 肩に鉄砲をかつぎ、腰には短剣を吊るしており、背は高くないが頑強そうだ。
 刀傷の痕が目立つ額の下では、抜け目のなさそうな眼が輝いている。
 キュルケが男に向き直る。
「眠れさえすれば、細かい事は言わないわ。もちろん、お礼ははずむわよ」
 男は顎を撫でながら考える。
「まあ、天幕の数をちょいと増やせば、幌馬車の空きは作れますがね」
「それで結構よ。さっそく準備してちょうだい」
「了解でさ」
 男はそう言うと、君たちを馬車の一台へと案内する。

 降りだした雨を避け、君たちは幌馬車の中で食事をとる。
 キュルケは馬車の清潔さに問題があるとぼやき、ルイズに同意を求めるが、相手にされずにいる。
「調子狂うわね。タバサみたいに無口になっちゃって……」
 そう言った後、君に向かってささやく。
「まあ、無理もないわよね。今日はいろいろあったから」と。

 食事を終えて(体力点一を加えよ)馬車の外を眺めていると、雨の中、さっきの男が手招きしているのに気づく。
 君が近づくと、男は小声で
「あんたに訊きたいことがあるんだが」と切り出す。
「あんたたち、本当は四人連れじゃないのか? あのお嬢さんたち以外に、騎士がひとりいなかったか?」
 君は、肩を震わせそうになるほど驚く。
 なぜこの男が、君たちの旅にカリンが同行していた事を知っているのだろう?
 疑念が浮かぶが、君は何気ないふりを装う。
 どう答える?
 その通りだと答え、なぜそれを知っているのかと問いただすか?・四八九へ
 しらを切り、自分たちは最初から三人だったと言うか?・四三六へ

四八九

「やっぱりあんたたちだったか!」
 男はにっと笑う。
「若い女のふたり連れが、あんたたちのことを探してたぜ。どういう関係だい?」
 君は戸惑う。
 『若い女』とは誰のことだろう? 
 気になった君は、ルイズとキュルケにも話を聞かせようと、男を馬車に連れていく。

「自分はニコラ軍曹といいます。この輸送団列の、護衛小隊長を務めとります」
 男は兜を脱ぎ、一礼する。
「あなたがたの事を尋ねられたのは、四時間ほど前のことでした」
 ニコラは語りだす。
「うちらの車列は、南から来たふたり連れ──それぞれ馬に乗っておりました──とすれ違おうとしたんですが、ふたりのうち片方が、こう言ってきたんです。
『鉄の仮面を着けた騎士、貴族の娘がふたり、そして平民の男がひとりの、四人連れを見なかったか?』ってね」
「そのふたり連れは、どんな姿だったの?」
 キュルケが尋ねる。
「どっちも若い女……失礼、娘さんでしたが、話しかけてきたのは、背が高くて年上のほうでさ。金髪を短く切りそろえてて、瞳の色は青。
鎖帷子を着込んで剣を差してましたから、おそらくうちらの同業者──つまり傭兵でしょうな」
 キュルケは首を傾げる。
「心当たりないわね。あなたは?」
 そう問いかけられた君も、知らぬと答える。
「もうひとりは?」
「年のころは二十歳前、たいそうな別嬪さんでさ」
 ニコラは笑みを浮かべる。
「黒い長衣を着て頭巾を目深に被ってましたが、それでも、ちらちらと顔や髪が見えましてね。白い肌に青い瞳、髪は栗色でした。ああ、そうそう。
えらく育ちが良さそうに見えましたね。それも、並外れた気品があるとでもいいやしょうか……とにかく、普通の貴族様とはどこか違った雰囲気でさ」
「ねえ、それってまさか……」
 キュルケの言わんとする事に気づいた君は、無言でうなずく。
「白い肌……青い瞳……栗色の髪」
 話しの間ずっと押し黙っていたルイズが、うわごとのようにつぶやく。
「普通の貴族とは違った気品……もしかして」
 ルイズの目が見開かれる。
「姫さ、わぷっ!?」
 ルイズの口を塞いだのは、電光の勢いで伸ばされたキュルケの掌だ。
「どうかなさいやしたか?」
 怪訝な顔をするニコラに、キュルケは
「なんでもないわ。そうね、その貴族の子は、確かにあたしたちの友達よ。ロサイスではぐれちゃって、心配してたの。
一緒にいた騎士様は、まだロサイスに残って、あの子を探しているはずだわ」とごまかす。
「それで、そのふたりはどうしたの?」
「へえ、うちらが誰もあなたがたの事を知らないとわかると、すぐに街道を北へ進んで行きました。この先は危険だぞ、と声をかけたんですが、
お構いなしに走り去っちまったんでさ」
「なるほどね」
 キュルケが呆れたような表情を見せる。
「あの子ったら、あたしたちに置いていかれちゃったと思って、先を急いでいるのね。明日は急いで出発して、追いつかなくちゃ」
「それがよろしいかと」
 ニコラは相槌を打つ。
「ところで、この先に何のご用で? シティオブサウスゴータに向かうつもりなら、危険ですからおやめになったほうが……」
「それは、あなたには関係のない事ね」
 キュルケが冷たい口調で言い放つと、ニコラは
「これはとんだご無礼を」と頭を下げる。
 話を終えたニコラは、雨の中へと出て行く。
「おかげで心配の種が減ったわ。ありがとう!」
 遠ざかるニコラの背中にキュルケが声をかけるが、実際のところ、心配事は増えている! 二七へ。

二七

 君たちは蝋燭の灯りを囲んで、アンリエッタ王女の身に何が起きたのかと話し合う。
「『ロリアン』号は出港できなかったのね。敵の攻撃を受けて」
 ルイズは眉根を寄せる。
「船を降りてロサイスから脱出したお姫様は、逃げ出した市民や兵隊たちと一緒にいようとはせず、あたしたちと合流しようと考えた。
あたしたちが、カリン殿を探して町の外に残っているとも知らずに」
 キュルケも真剣な表情を見せる。
「そして、どうやってか知り合った女剣士と一緒に、わたしたちに追いつこうと馬を走らせたのね。こうしている今も、
このアルビオンで心細い思いをしておられるだなんて……」
 おそらく、ルイズたちの考えているとおりなのだろう。
 君はロサイスの西門で聞いた噂話を思い出す。
 ──ふたり連れの若い女が町を離れ、シティオブサウスゴータへと向かう街道を北上していった。
 あれは、アンリエッタとその護衛のことだったのだ。
「恋人会いたさに密航するわ、戦乱の地をたったふたりでうろつくわ……あのお姫様って、大胆すぎるわよね。あたし、負けちゃいそう」
 キュルケが苦笑いを浮かべる。
「とにかく、早く休みましょう。明日は日の出の前に出発して、姫さまに追いつくわよ!」
 ルイズはそう言い放つと、蝋燭を吹き消す。

 君はふと眼を覚ます。
 浅い眠りを破ったのは、雨粒が幌に当たる音でも、遠くで響く雷鳴でもない。
 別の何かだ。
 やがてそれの正体がわかる──ルイズの寝ている方から聞こえてくる、低いうめき声だ。
 悪い夢でも見て、うなされているのだろうか?
 寝ぼけまなこをこする君の耳に、今度は意味をなす声が飛び込んでくる。
「母さま、だめ……行かないで……魔法が効かないのに……」
 ルイズは眠りながら、混乱の中ではぐれてしまった母親の身を案じているのだ。
 横になったまま、どうしたものかと思案していると、もぞもぞと毛布が動く音とともに、別の声が聞こえてくる。
「大丈夫よ、ルイズ。ほら、あたしがここにいるから」
 声の主はキュルケだ。
 どうやら彼女も、ルイズのうめきで眼を覚ましてしまったようだ。
「母さま……」
 キュルケが何をしたのかはわからぬが、ルイズの寝言はおさまり、静かに寝息を立てるようになる。

 翌朝早くに目覚める。
 睡眠をとったので、体力点に三点を加えてよい。
 あいかわらず空は暗いが、旅を続けるのに支障はないし、雨も上がっている。
 ふたりを起こそうと振り向いた君は、思いがけぬものを目にする。
 キュルケが昨夜、うなされるルイズに何をしていたのかが明らかになり、君は思わず笑みを漏らす。
 互いの手を握り、寄り添って眠るふたりの姿は、まるで母と子のようだ。八へ。


 ニコラたちに別れを告げ、野営地をあとにする。
 昨夜の雨で道がところどころぬかるんでいるが、君たちを乗せた馬は、何の問題もなく駆けていく。
 シティオブサウスゴータに近づくにしたがい、道をすれ違う人の数が増えていくことに気づく。
 人々は、騎馬で、馬車で、徒歩(かち)で、南へ向かっているのだ。
 多くは市民や農民だが、兵士の姿もちらほらと見かけられる。
 武器を持つ者も持たぬ者も、同じように憔悴した顔つきをしており、君たちに声をかける者もいない。
 彼らの多くが目指しているであろうロサイスもまた、安全とはほど遠いありさまだが、それを教えてやったところで無意味だろう、と君は考える。
 陰鬱な雰囲気に影響を受けてか、ルイズとキュルケも口を開かない。
 ただ黙々と馬を走らせる。

 君たちは街道沿いの草原で休憩し、食事をする。
 体力点二を加えよ。
「この調子なら、夕方にはシティオブサウスゴータに着きそうね」
 地図を手にしてルイズが言う。
「それまでに姫さまを見つけられればいいんだけど。町の中に入られたら、探すのも一苦労よ」
「町が持ちこたえていればの話だけどね」
 キュルケの言葉に、ルイズは怪訝な顔つきをする。
「どういう意味よ?」
「≪門≫を使った攻撃をもう一度受けたら、きっと総崩れの大敗走になるわよ──ロサイスみたいにね。そうなったら街道が敗軍で埋め尽くされて、
人捜しどころじゃなくなるわ」
 ルイズの表情がこわばる。
「フォン・ツェルプストーにしては、ずいぶん悲観的な物言いじゃない」
「誰だってこうなるわよ……この『黒の国』を目の当たりにすればね」
 キュルケは小さく溜息をつく。

 君たちは旅を続ける。
 しばらく進むと、街道から五十ヤードほど離れた草地に、誰かが倒れているのを見つける。
 近づいてみると、兜をかぶり胴着をまとった兵士だとわかる。
 顔を地面に突っ伏し、微動だにしない。
 胸から背中に矢が突き抜けている──物盗りの仕業だろうか?
 ルイズは恐怖と嫌悪に眉をひそめ、
「わたしたちにしてあげられる事は何もないわ。早く行きましょう」と、
君を促す。
 君は死体を調べてみてもよいし(三二五へ)、構わず先を急いでもよい(五六八へ)。

三二五

 死体の頭を持ち上げて、泥に汚れた顔を覗き込む。 それは若い男だが、君たちの見知った人物ではない。
 拍車の付いた長靴を履いているので、馬に乗っているところを襲われたようだ。
 見たところ、何ひとつ所持品がない──彼に矢を放った襲撃者が、乗騎を含めてすべて持ち去ってしまったのだろう。
 もう少し調べてみようと死体の懐を探った君は、指先にべっとりと血が付いたので、思わず毒づく。
「ちょっと、もういいでしょ」
 ルイズが抗議の声を上げる。
「これ以上は死者への冒涜になるわ。持ち物をあさるだなんて浅ましい事はやめて、先に進みましょうよ」
「あたしも賛成ね」
 そう言ったキュルケの視線は、ちらちらと街道のほうに向けられている。
「こんな所を誰かに見られたら、あたしたちが犯人だって思われちゃうわ。長居は無用よ」
 ふたりの言う通りにしてこの場を立ち去るか(五六八へ)、それとも、あくまで死体から何かを見つけ出そうとするか(一〇四へ)?

五六八

 数時間にわたり進み続けるうちに、陽が翳(かげ)ってくる。
 丘を登り頂に立つと、背の高い城壁に囲まれた立派な都が、数マイル先に姿を現す。
「あれがシティオブサウスゴータよ」
 ルイズが君に説明する。
「始祖ブリミル降臨の地との言い伝えがある、アルビオンでもっとも伝統のある古都。ロンディニウム塔までは、あと六十リーグくらいかしら」
「でも、その六十リーグが長くなるんでしょうね」
 キュルケが肩をすくめる。
「あそこから先は、馬から降りて徒歩で進まなくっちゃいけないんでしょ? それも森の中、敵の眼を避けながら」
 それを聞いたルイズの顔に、いたずらっぽい笑みが浮かぶ。
「なによキュルケ、泣き言? 嫌だったら、都に残って待っててもいいのよ」
「冗談おっしゃい」
 キュルケは鼻を鳴らす。
「あなたこそ、柔らかいベッドが恋しくなってきたんじゃなくって?」
「大事な任務の最中に、そんなこと考えるわけないでしょ!」
 食ってかかるルイズから顔を逸らし、キュルケは君のほうを見つめる。 
「そう? あたしは恋しくなってきたわ……素敵の殿方のぬくもりが、耳元で囁かれる睦言(むつごと)が。ああ、我慢は体に毒だわ」
「はぁ?」
 あっけに取られたルイズに、キュルケは言う。
「ねえルイズ。あなたの使い魔さん、一晩だけ貸してくださらない?」と。
「ふ、ふ、ふざけんじゃないわよぉ!」
 ルイズの叫びが、アルビオンの空に響きわたる。

 日没の迫る刻限のため、もはや難民たちとすれ違うことはない。
 都の門まであと二百ヤードほどの所で、君たちは呼び止められる。
 相手は、それぞれが腰に剣を差した四人組の傭兵だ。
 彼らが興奮した様子で手招きするので、君たちは馬を寄せる。
「夜になる前に会えてよかった。貴族のお嬢さんと女剣士が、あんたらの事を探していたぞ!」
 傭兵のひとりが、君たちに告げる。
「ほんと!?」
 ルイズが身を乗り出す。
「ああ、ほんの二十分ほど前のことだ。俺たちが知らないと答えると、ふたりは都に入ろうとはせず、森の中へ行っちまった」
 傭兵が指し示した小道は、暗い森の奥深くへと分け入っている。
「どうしてそんな所に……」
「森で野宿するつもりなんだろう。今のシティオブサウスゴータは物騒だからな。外のほうがまだ安全だ」
 傭兵は、君たちを値踏みするような目つきで見る。
「俺たちはこの森の中を何度も通っているから、野宿に向いた場所も知っている。案内してやるよ。もちろんただじゃあないがな。
案内料は九エキューだ」
 申し出を受けるか(二三一へ)、無視して森の中へと進むか(一三一へ)、それとも彼らの言うことを信用せず、都の門へ向かうか(二八二へ)?

一三一

 君たちの乗った馬は、暗い森の小道を駆け抜ける。
 道は曲がりくねっているが、一本道なので迷うことはない。
 半マイルほど進むと空地にさしかかる。
 そこで見たものは、意外な光景だ。
 空地の中央ではふたりの若い女が、後ろ手に縛られた姿で引き据えられており、その周りを十数人の武装した男たちが取り囲んでいる。
 確かに、アンリエッタ王女とその同伴者は、この森に居た──盗賊どもの捕虜として!
 何人かの盗賊が死体となって地面に転がっているところを見ると、ふたりは激しく抵抗したようだ。
 君たちの出現は予期せぬものだったらしく、彼らは驚きの表情でこちらを振り向く。
 状況を一瞬で理解したルイズは、
「姫さま!」と叫ぶと、
大胆にも盗賊たちの作る輪の中に馬を突っ込ませ、彼らを蹴散らす。
「まったく、無茶するんだから!」
 言葉とはうらはらに、楽しげな口調でそう言うと、キュルケは落ち着き払った態度で呪文を唱える。
 混乱から立ち直った盗賊たちはルイズに武器を向けようとするが、キュルケの放った炎で手足を焼かれ、悲鳴を上げて転げ回る。
 君は、首領格らしき背の高い男に迫る。
 相手は
「くそったれめ!」と毒づくと、
懐から短い杖を取り出す。
 この男は魔法使いだ!
 どの系統の術を使うかはわからぬが、素早く対処せねばならない。
 君は武器で斬りかかるか(九〇へ)?
 それとも魔法を使うか?

 FOG・七三九へ
 NAP・六五七へ
 POP・六九九へ
 BOM・五八八へ
 ROK・六二七へ

六九九

 体力点一を失う。
 小石は持っているか?
 なければ、この術は使うだけ時間の無駄だ。
 君がもたついている間に、盗賊の首領は呪文を唱える。一一〇へ。

 持っているなら、術をかけて投げつけてよい。
 長身の男は小石を払い落とそうとするが、当たると同時に小石は破裂し、傷を負わせる。
 敵がひるんだ隙をのがさず、君は決着をつけようと、武器を構えて進み出る。

 盗賊の首領
 技術点・七
 体力点・九

 相手の体力点を三まで引き下げることができたら、情けをかけてもよい。
 助けてやりたいなら、三四〇へ。
 そのまま闘い続けるなら、倒したあとで、三一三へ。

三四〇

 武器と杖を捨てねば、とどめを刺すぞと君は脅す。
 男は言われたとおりにし、慈悲を乞う。
「命だけは助けてくれ! 俺は盗賊じゃない、まっとうな傭兵だ。あんたらの仲間には何もしていない。全部、他の奴らが勝手にしたことで、
俺は見ていただけなんだ!」と訴える。
 他の盗賊どもより身なりのいいこの男が盗賊の首領であり、部下たちを動かして、アンリエッタとその同伴者を捕らえたことは間違いない。
 君は、嘘をつくなと怒鳴りつける。
 君の剣幕にすくみ上がった男は、
「そ、そうだ。いい物をやろう」と言って、
一枚の羊皮紙を取り出す。
「これは連合軍の秘密文書だ。≪レコン・キスタ≫に変装したアルビオン王党派を、見破る方法が書かれている。
ウィンプフェン参謀長の署名つきの、まぎれもない本物だぞ。こいつを≪レコン・キスタ≫に渡せば、たっぷり褒美が貰えるはずだ」と言って、
へつらいの笑みを見せる。
 男は、そのような重要な物を、どこで手に入れたのだろう?
 奇襲を受けて混乱した司令部から盗んだのか、あるいは使者を殺して奪ったのか。
 なんにせよ、元は傭兵とおぼしきこの男は、秘密文書を手土産にして敵に寝返るつもりだったのだろう。
 君は羊皮紙を奪うと、卑劣な男を剣の柄で殴って気絶させ、手近な木に縛りつける。

 他の盗賊どもはキュルケの炎を受けて逃げ散ったので、君は武器を納める。
「相棒、ちょいとそいつを見せてみな」
 デルフリンガーが君の代わりに文書を読み上げる。
「ほうほう、『ロンディニウム近郊に潜伏する王党派の一部は、倒した蛮族から奪った甲冑を身に着け、敵の斥候(せっこう)に擬装しているが、
首に青いスカーフを巻いているので、識別は容易である』だとさ。
カーカバードの兵隊に出会っても、あわてて襲いかかっちゃいけねえってこったな。ふむ、合言葉も書いてあるな。≪ロイヤル・ソヴリン≫か」
 この先、カーカバード兵に変装したアルビオン王党派と思える相手に出会ったなら、その時の参照項目の番号から四〇を引き、新たな参照項目へ進め。
 君はルイズたちのもとへと向かう。一三五へ。

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