あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

るろうに使い魔-17



 風を切る音で唸らせながら、ゴーレムは腕を振り上げる。様子見のあの時とは違い、本気で殺す気でいるフーケは、遠慮容赦一切なしにその拳を剣心達目掛け放った。
 タバサも少し気後れするぐらいの圧倒的な、柱のような腕による一撃は、容易にその地面を陥没させた。
 巻き上がる土砂に気を付けながら、タバサは無意識に剣心の方を向いて…彼の姿がないことに気付いた。



     第十七幕 『戦闘』



 フーケもそれを視認し、恐らく反応すらできずに吹き飛ばされたのだろう――と思い、高らかに笑った。
「あっはっは!! もう終わりかい、意外とあっけないものだねぇ―――」
「確かに、滑稽な人形劇はもう見飽きたでござるよ」
 あれぇ…とフーケから笑みが消える。代わりに顔が真っ青になり、冷や汗が溢れ出す。
 フーケは、恐る恐る後ろを振り向いた。先程の声は、聞き違いでなければ背後から聞こえてきたのだから。
 できれば、幻聴であって欲しい…そんなフーケの願いは、しかし届かない。
 そこには、吹き飛んだと思っていた…剣心が刀を向けてじっとこっちを睨んでいた。
「…い、いつの間に……」
「あんなに沢山攻撃を見てきたんだ。速さが変わろうと、見切るのは容易いさ」
 憮然とした態度で剣心が答える。そんなバカな! とフーケは心で叫んだ。
 今自分がいるのは、ゴーレムの肩の上だ。その後ろにいるということは、腕をつたって登ってきたと考えるのが妥当だろう…いや、その時点で既にどこかおかしいのだが…。
 だけど、自分にも気づかれずに平然と後ろを取られたのにだけは、納得がいかなかった。
 曲がりなりにも盗賊をやってたフーケは、背後から襲われる怖さもよく知っている。
 そうならないよう、第六感の感覚だけは鋭敏に磨いてきたにも関わらず、この男には話しかけられるまで全然気付けなかったのだ。
 (……やはり、侮ってはいけない)
 そう思い、フーケはこの場をどう打破するかを急いで模索し始めた。
 一か八か、杖で応戦することも考えたが、コイツに速さ勝負は御法度だ。多分この距離なら握り締めただけで叩き落とされる自信がある。しかも何されたかさっぱり分からないというオマケ付きで。
 なら、抵抗は無意味。ここは素直に―――。
「……じゃあねー!!」
 フーケは思い切り、その場から飛び降りた。
 しかし下には、待ってましたとばかりにタバサが杖を振るう。瞬時に周囲が冷気で満たされ、氷の槍を形成した。
 だがそれに対してもフーケは動じない。元々下を降りれば魔法を喰らう位分かりきったことだ。
 これは賭けに等しかったが、フーケは氷の槍に当たる瞬間、杖を振ってゴーレムの腕を盾がわりに動かした。
 攻撃を防ぐと共に、落下の支えにもこれを利用したフーケは、どうにか無傷で地に降り立つことができた。
 後は肩に乗っている奴を振り下ろすだけ、そう考えさっきまでいた肩の上を見上げて、―――あの男がいない。
「へ……っ?」
 次に視界に飛び込んできたのは、煌めく白刃と赤い閃光の如き髪。
 本能的な危機を感じたフーケは、慌てて躱そうとして、足につまずきよろけて転んだ。その上空を、剣が掠めた。杖を叩き落とそうと狙った一撃は、奇跡的な結果により回避することができたが、 今のがそうそう続くわけもない。

 もう嫌だこの男…フーケは心の中で泣きそうになりながら、剣心を見上げた。
(何が悲しくて、こんな化物ともう一戦しなきゃなんないのよ……)
 そう思っているうち、今度はタバサがこちらに杖を向ける。チェックメイト…詰みだ。どう考えを巡らしても、この状況を打破できる策が思い浮かばない。
 また監獄行きか…そう観念したように、フーケは顔を俯かせて、ふと剣心の逆刃刀に目が行った。
そして、頭に電球が灯った。もしかしたら、まだ逆転の芽はあるかもしれないと。
「ふふ、参った。降参よ」
 そう言って、フーケは両手を上げた。一瞬、剣心とタバサはキョトンとして、顔を見合わせた。もっと抵抗するものかと思っていたからだ。
 その二人を見て、フーケは心の中で嗤う。どうやら自分の意図には気付いていないようだ。これなら上手くいく、と。
「それにしても凄いわね。この『土くれ』と恐れられたわたしが、二回も、それに同じ奴に捕まるなんてねぇ。是非名前を教えて下さる?」
 そう言って、剣心に近づいて…ここでフーケが何か企んでいる事に気付いたタバサが、ハッとした。
「緋村、剣心でござるが」
「そう…ケンシンっていうのね…覚えておくわ、その名前!!」
 ここで、フーケが勢い良く杖を向けて、唱えた。剣心も、フーケの殺気を感じて後ずさる。すると杖から、光の様なものが飛び出した。
 しかし、それが何を意味するのか分からない剣心は、刀を盾変わりに構えて―――。
「ダメ、避けて!!」
 珍しいタバサの焦りの声が、剣心の危機本能を動かし、咄嗟に刀を引っ込めた。かなり辛い体勢だったが、何とか仰け反って光の魔法を回避することができた。
 そして飛んだ光は、そのまま大きな岩に衝突し―――ボロボロの土屑に変えた。
「ちっ…外したか」
 忌々しげにタバサを睨みつけながら、フーケは二人に距離を置く。タバサが反撃しようとするが、例によってゴーレムにそれを阻まれた。
 すかさず剣心が動くが、フーケは再び『錬金』の魔法を放つ。それを見て、剣心は泡を食ったように大げさに回避した。
 これでフーケは確信した。アイツの持つ刀は、何の変哲もない、本当にただの『刀』だ。
 だったら、『土』系統の自分にとっては絶好のカモ。刀をボロ屑に変えてしまえば、奴の戦闘力は半減する。
 まだ自分にも勝機はある。その考えが、フーケの笑みを強くした。
「あんたのその剣、あたしが文字通り『土くれ』にしてやるわ!!!」



 その頃、ルイズ達はというと―――。
 丁度桟橋へと到着し、今ワルドが船長と思しき男と交渉している最中だった。
「アルビオンへ、今すぐ出港してもらいたい」
「無茶言うでありませんよ!! 『風石』が足りませんて、途中墜落してしまいますよ!」
「ならその分は僕が補おう。僕は『風』のスクウェアだ」
 そんな風に会話しているワルドを背に、ルイズは玄関口の方を今か今かと待っていた。それに気付いたキュルケが、可笑しそうに手に肩を置いた。
「大丈夫よ。ダーリン達の強さは今に知ったことじゃないでしょう?」
「………」
 ルイズは何も答えない。確かに、フーケ達相手に剣心の心配もあるにはある。でもそれ以上に、タバサと一緒にいるというのが納得いかなかった。
 やっぱり自分も残れば良かった。そんな後悔が今ルイズを襲っているのだ。
 だけど何で、剣心がいないだけで、こんなモヤモヤした気持ちになるんだろう……アイツとは主人と使い魔、それ以上でも以下でないというのに。
 剣心が来ないのは、実はタバサといちゃついているから……。そう考えると、怒りと悲しみが同時に込み上げてくるのは何でだろう。
「何で…こんな気持ちに…」
「あら、気付いてなかったの?」
 まるで心の内を読んでいたかの様な口ぶりで、キュルケが茶化した。
「それが『恋』ってものなんじゃないかしら」
「なっ……」
 ルイズは絶句した。恋? 私が、アイツに?
 しかし、その考えとは裏腹に、体の中は熱くなってくる。ルイズは気づいてはいないが、顔も真っ赤だった。
 それを見て、今度は呆れた様子でキュルケは口を開いた。

「そんな悩むんなら、子爵との結婚考えればいいのに。ホントあんたは優柔不断ね」
「あんたは、結婚なんて分かんないからそんな事言えるのよ!!」
 ルイズは怒鳴った。今の自分の立場なんて、このゲルマニアで宿敵であるツェルプストー家の女に分かって欲しくないと。
 ここで、キュルケから茶化すような笑みが消えた。そして真面目な表情で、ルイズをじっと見据えた。
「…そうね、少なくとも今のあたしは本気で婚約したことないから分からないけど、一つだけあんたに言えることがあるわ」
 そして、ずいっとルイズの顔を見てこう言った。


「結婚は自分のためにするものよ。他の誰でもない、自分自身が決めることでしょう?」


 どこか諭すような口調で、キュルケはそう言うと、顔を離して再び茶化すような表情をした。
「これ以上迷っているようなら、本気でダーリンを取り上げるからね。精々気を付けなさい」
「なっ…そんなの絶対ダメよ!! 誰があんたなんかに!!」
「ふーん、じゃ好きって認めるのね?」
「っ…うぅ~~~とにかくあんたにはケンシンは渡さないんだから!!!」
 顔を真っ赤にして反論するルイズを、面白そうにキュルケがからかう。そうしているうちに、ギーシュがワルドを連れてやって来た。
「直ぐに出港する。追っ手が来ないうちにな、彼等は間に合わなかったようだが…致し方あるまい」
 そう言って、大きな玄関口の方を見やる。しかし、相変わらず人が来る気配は感じられなかった。これ以上待っても意味がないだろう。
 それを聞いて、ルイズは心配そうに顔を俯かせた。それを見かねたキュルケが、ワルドにそっと言いつける。
「婚約者なのでしょう、慰めの一つでもかけてあげたら?」
 ワルドは、それもそうだな、といった様子でルイズを宥めかせる。それを遠目で見て、どこか不満げな表情をするキュルケに、ギーシュは気付いた。
「…どうかしたのかい?」
「いや……」
 何だろう、優しく言葉を掛けるワルドの眼は、ずっと冷めているようだった。まるで情熱を感じない。あれでは普通の女を口説くのも無理そうだ。
(まぁ…あたしには関係ないか)
 そう思いながら、キュルケは最後に後ろを振り向いた。だがやはり剣心達はやってこない。
 どこか諦めたように、キュルケは小さくため息をついた。
(大丈夫かしらね…ダーリン達)





 再び場面は、『女神の杵』前で戦う剣心達に戻る。
(ああ言ったけど……どうしよう…)
 先程の威勢もどこへやら、フーケは苦い顔で杖を振るっていた。
 対抗手段は分かったのだ。『錬金』を使えば剣心は踏み込んで来れない。タバサも、ゴーレムを押し当てることでカバーできている。
 では、何故こんなにもフーケが焦っているのか。
 答えは単純明快だった。――当たらないのだ。『錬金』が。
 一度見た技を、二度食らうのは、三流のすること。まるでそう教え込むかのように。
 剣心に向けて杖を振るっても、それを見てからあっさり回避されてしまう。しかも三回四回と連続で唱える度に効果は薄くなっている。
 しまいには呪文の口上を覚えられたのか、唱えるだけで避ける動作を取られてしまう始末。しかもそれを剣心本体にではなく、持っている刀に当てなければいけないのだから事態は困難を極めた。
 そんなわけで今はもう、剣心を寄せ付けないためのただの壁としてしか、機能してなかったのだ。
 なおのこと、先程の奇襲で当てられなかった事が悔やまれる。
(こうなったら…アイツを人質にとって…)
 そうも考えて、タバサの方を見たが、彼女も彼女で、かなり戦い慣れしている。
 ゴーレムの巨腕を上手く潜り抜けて、的確にフーケを狙い氷の槍や風の槌を放ってくるのだ。
 それを何とか防いではいるものの、その間に剣心が攻め込んでくる。当たらない『錬金』で追い払うと、それを狙ったかのようにまた『風』の魔法が飛んでくる。
 気付けば、追い詰めているはずが逆に、追い詰められていた。このまま魔法を唱え続ければ、先に精神力が切れるのは自分だろう。剣心は相変わらず体力知らずだし、タバサも小技で攻めているため疲弊は少ない。
(……結局最初と何にも変わってないじゃないか!!)
 と内心叫びながら、フーケは再び突っ込んでくる剣心を視野にいれた。
「しつっこいな!!」
 そう言って、『錬金』の呪文を飛ばす。しかし、回避するかと思われた剣心は、何とそのまま走ってきた。
 何だ? と呆気にとられるフーケをよそに、剣心は『錬金』の魔法を前にして、刀を上に構えて、そして思い切り地面に振り下ろした。

「飛天御剣流 ―土龍閃―!!!」

 抉られた地面から飛び出す土の塊が、『錬金』の魔法に当たって相殺した。
 しまった! と思ったときはもう遅い。神速の動きでフーケの間合いに入った剣心は、呪文を唱える隙すら作らずに、その手に持っている杖を叩いて飛ばした。
 慌てて杖の後を追うフーケだったが、その杖は重力の法則を無視して、タバサの手にそのまま収まった。
 今度こそ、本当の詰みだった。
「おっ…覚えてなさいよ!!」
 在り来たりの捨て台詞を吐いて、フーケはそのまま逃げ出してしまった。それを見て、剣心は鞘に刀を納める。
「いいの? 追わなくて」
「捕まえても何も白状しないだろうし、今はそうしている時間も無いでござる」
 そう言って、剣心は『桟橋』の方を見た。今ならまだ間に合うかもしれない。
「拙者達も、直ぐに後を追うでござるよ」
 その言葉に、タバサもコクリと頷いた。



 急いで『桟橋』まで走る間、剣心はタバサから船の事やアルビオンはどういった所なのかを聞いた。
 何でも、アルビオンは宙を浮く大陸―――別名『白の国』と呼ばれ、こちらも空を飛ぶ船で行く必要があり、その港があの桟橋にあるとのことだった。
 どれもこれも剣心にとっては信じられない話だったが、今更魔法というものを経験した今となっては、そんなに驚くことはなかった。
 階段を登り、玄関口を通って、船員らしき男に事情を話したが、どうやら少し遅かったようだ。
「ああ、そんな奴等ならさっき出港したばかりさ。全く迷惑な話だぜ」
 それを聞いて、すぐ様外を出て夜空を見渡すと、成程夜の中を泳ぐ船の一隻が確かに見えた。あの距離なら、タバサの使い魔でまだ届くはずだ。
「シルフィードを呼ぶ。少し待って」
 そう言って、タバサが口笛を吹こうとした時、それを遮るように剣心が逆刃刀を取り出した。
「フーケも使えなかったか…碌に時間稼ぎすらできないとは」
 そこには、何時の間にいたのか、仮面をかぶった男が一人、杖を構えてこちらを睨んでいた。
「お前たちには、ここで死んでもらおう」


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