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デュープリズムゼロ-17

第十七話『囚われの王女様』

宿を飛び出したミント達は桟橋を目指してラ・ロシェールの街を走る。
「見えたわ!あそこよ。」

世界樹と呼ばれる巨大木の麓に作られた階段を前にしてルイズが指さしたのはカンテラの明かりに照らされた壁面に掛けられた看板。その看板には確かに『アルビオン行き船着き場』と書かれていた。

その先に伸びる狭く古ぼけた階段を船着き場を目指してワルドを先頭にミントが最後尾を警戒しながら三人は駆け上がる。
と、先頭を進んでいたワルドが突然その足を止め、杖を抜いて臨戦態勢をとる。

「何者だ!?」
険しい表情を浮かべるワルドの目の前にはその行く手を阻む様に怪しげな黒いローブを纏った仮面のメイジが杖を構えて立っていた。

「ここから先には行かせん。」

抑制無くそう言って問答無用とばかりにワルドの問いには答えず男は杖を振りエアカッターの呪文を放ち、ワルドもまた閃光の二つ名に恥じぬ高速の詠唱で同じくエアカッターを放った。

『くっ…』

二つの風の刃は激しくぶつかり合い相殺すると一瞬の内に指向性を持たない暴風となってワルドと仮面のメイジのそれぞれのマントをたなびかせる。

そしてワルドが作り出したその僅かな隙を見逃さず、デルフリンガーを抜いたミントが一気に仮面のメイジに肉薄するも横薙ぎに振るわれたその鋭い一閃の切っ先が仮面のメイジを捉えるよりも僅かに早く仮面のメイジは風の様に宙を舞い、
ワルドとミントを飛び越え、余りに目まぐるしい戦いにすっかり気圧されていたルイズの眼前に降り立った。
仮面のメイジが咄嗟の反応に遅れたルイズにその手を伸ばそうとする。

だがそこまでだった…

「ウィンドブレイク!!」
猛々しくワルドの声が夜空に響く。

ワルドの作った隙を見逃さず一瞬で切り込んだミント。その回避行動の隙を使って既にワルドは次の魔法の詠唱を完成させていたのだ。

質量を持つ突風の激鎚、エアハンマーの上位互換に当たるその呪文の直撃を受けてルイズに手を伸ばしていた仮面のメイジの身体が衝撃と共に勢いよく中空に投げ出される。

だが仮面のメイジもまた手練れ、その様な状況でまだ意識も杖も手放してはおらず自由落下の最中に身を翻すとその杖からは今まさに風属性最強の攻撃魔法ライトニングクラウドが放たれようとしていた…

「ったく…往生際が悪いのよ!!」

差し違えるつもりなのかとそれを見て思わず毒づくミント…そして桟橋に一筋の雷光が走り、空気を振るわせる轟音が響き渡った。


「ふぅ…まさかライトニングクラウドを使えるとは思わなっかたよ…」

杖を鞘に収め、雷光に眩んだ視力も回復したワルドは階段の縁から顔を覗かせ眼下の様子を確認する。そこにはもはや街の明かりと夜の闇以外は何も見当たらなかった。

「『ボルト』よ。あれがあんたの見たがってたあたしの魔法よワルド。手紙とか無事、ルイズ?あいつ明らかにあんたの事狙ってた感じだったわよ。」

ミントの言葉にルイズは慌てて懐を確認し、手紙の無事を確認し安堵の息を漏らす。
「え?あ、うん大丈夫よ。」

「やはり油断は出来ないな。ここからは僕が殿を引き受けよう、先に行きたまえ。」

「わかったわ。」

あの瞬間、仮面のメイジの詠唱が完成するよりも一瞬早く、剣閃の直後に魔法の発射態勢に移っていたミントの放ったボルトの魔法が仮面のメイジを閃光で切り裂いた…
仮面のメイジが消し炭になったのか純粋に地面に墜落したのかは定かでは無いが取り敢えずの危機はさった。

何度も繰り返される刺客の襲撃にこれからの旅路の一抹の不安を抱きながらもミントはルイズの持つ手紙などの安否を確認すると再び勢いよく階段を駆け上がっていった。


しんがりとなったワルドはミントとルイズを見送りつつ内心驚きを隠すのに必死だった。
(まさか異国の魔法があれ程の威力とはな…)
ワルドの立てた計画ではさっきのどさくさ紛れでミントにはここで退場して貰う予定だったがワルドが想像していた以上にミントは強かった。

やはり今朝ミントの力を上手く計る事が出来なかったのは実は思う以上に痛かったのかも知れないなとワルドは改めて考えると船着き場へと再び走り出した。
(何、チャンスなどまだまだ幾らでもある…)


当然ながらその後は刺客の襲撃は特になく船着き場で貨物船舶マリーガラント号を徴用する為ワルドが船長を説得し、道中の風石の不足分をワルドが風の魔法で補うという条件でルイズ達一行はアルビオンを出発する事となった。



___マリーガラント 甲板


「ファ…本当に船が空を飛ぶなんてね……」

現在ラ・ロシェールを船が発ち一夜が過ぎた。普段よりも幾分か近い朝日を背に受けて一路船はアルビオンへの進路をとっている。
倉庫を改築した質の低い客室での仮眠から目覚めたミントは寝ぼけ眼を擦りながら甲板へとノタノタとした足取りで上がる。
雲を抜け空を飛ぶ船の手すりに静かに身体を預けて眠たげに欠伸をして、眼下に広がる光景を眺め、改めて一つ感嘆の吐息を漏らした。
甲板を吹き抜ける風が寝起きのミントの髪を優しく揺らし頬をくすぐる。

「ミントの世界には空を飛ぶ船は無かったの?」
余り眠れなかったのか幾分かミントよりも早く起床したルイズが残してきたキュルケ達が心配らしくラ・ロシェールの街があった方を心配そうに見下ろしながらミントに問う。
「…無い事は無いけど少なくとも一般的じゃ無いわね。」
そう言ってミントは以前ロッドの愛機『スカーレットタイフーンエクセレントガンマ』(略してスカタン号)でヴァレンの聖域へと向かった事を思い出しながらふと口元を緩めた。
あの時は今と違って空から見下ろす光景をゆっくり楽しむ暇など無かったのだ。

「あいつ等無事かな…?」

「さぁね…そればっかりは信じるしか無いわ。」
ルイズの不安そうな言葉にミントはあっけらかんに答える。ルイズはその返答に些か不満がある様子だったが所詮物事など成るようにしか成らないのだ。
そうドライに割り切るとミントは改めて瞳を閉じて再び風を感じる。

思い返せばカローナの街を離れた時以来の船旅だ…あの時は東天王国の統治方針の話で結局マヤとの大げんか、その前は考え事の最中の不意打ちの衝撃で(犯人はロッド)船から海へと放り出されエライ目に遭った。

(……………………………)
よくよく考えれば考える程ミントは自分が船旅に余り恵まれていないのでは無いかと思考をネガティブな物にしていた。


そして…


「空賊だぁーーー!!!」

見張りをしていた船員のその声にミントはガックリと盛大に肩を落とした…




「参ったね…」
心底困ったという様子でワルドがぼやく。
結論から言えばミント達は突如マリーガラントを襲撃した空賊達に対し大した抵抗も出来ぬまま捕まり、武器と杖を取り上げられて身代金の為の人質として空賊船の牢屋の中に放り込まれていた。
無論空賊船が大砲を撃ち込んで来た時ミントは徹底抗戦の構えをとったが武装を一切搭載していない輸送船でそれがいかに無謀かをワルドとルイズに説かれ、
反撃の機をうかがう為渋々空賊達に従った。流石に自分達の乗る船を落とされてはミントもどうしようも無いのは分かる。

三人が牢に閉じ込められてしばらくの時間が経つと一人の空賊が三人の捕らえられた牢へとやって来た。その手には粗末なスープの入った器が携えられている。
「おーい、貴族様メシだぜヘヘヘ…。」
イヤらしく笑いながらスープの器を差し出した空賊に対して臆する事も無くミントはその器に手を伸ばす。見れば分かるが味付けの薄そうなそのスープには豆しか入っておらずミントは明らかに不満そうな表情を浮かべる。
「ショッボイスープね…って何すんのよ!!」
「おっと…メシの前に質問に答えて貰うぜ。アルビオンは今戦争やってる訳だがあんた等何しにアルビオンにやって来てたんだい?」
スープの器を引っ込めて空賊が問い掛ける。

「……………旅行よ。」
ルイズが空賊を敵意の籠もった目で睨みながら短く告げる。
その言葉を空賊は見え透いた嘘だと内心苦笑いを浮かべた。

「そうか旅行とは奇特な話だな。俺達はてっきり貴族派へのお客様だと思ったぜ。」

空賊の言葉に三人の眉がピクリと動く。
「あんた達が貴族派の人間だったら直ぐにここから出してスカボロー港に連れて行ってやれたんだがな。俺達にとっては貴族派の方達は大事なお客様だからなヘヘヘ…。」

空賊はそう言って笑うとスープの器をようやく牢の中へと置いた。

そしてここで二人の少女が全く同じタイミングでそれぞれ全く異なる言葉を発した。

「あ、さっきはあぁ言っちゃったけど実はあたし達貴族派なのよ!!」
「誰が貴族派なものですか。私達はトリステインからの正式な王党派への大使よ!分かったのなら私達を大使として扱いなさい!この下郎!!」

『…………………………』

ルイズとミントが互いの顔を見合わせて固まるとその場の時間も停止する。


「何で馬鹿正直に本当の事言うのよ!!馬っ鹿じゃ無いのっ!!?」
「何で私達が恥知らずの貴族派だなんて名乗らないといけないのよ!!あんたにはプライドって物が無い訳!?」

二人の少女が同時に吠える。
その様子は東方の例えならばまさに龍と虎の闘い。ハブとマングースの闘い。

「あー…結局あんた達は王党派へのトリステインからの大使…って事でいいのかい?」

「あぁ、そういう事だよ。…全く…」
二人のやりとりに気圧されて遠慮がちに問い掛けてきた空賊に対し、ガックリと肩を落としながらワルドは最早隠しても無駄だと悟り半ばやけくそに答えた。




___空賊船 船長室

そんなこんなで一悶着があった後、ルイズ達三人は空賊の頭に呼び出され空賊に引き連れられて船長の部屋へと案内されていた。
「お頭、連れてきましたぜ。」

空賊の声に応える様に部屋の奥にあるテーブルの椅子の座が音を立てクルリと回転し、ひげ面の如何にも空賊と言った逞しい風体の男がルイズ達を出迎える。その手にはメイジの証とも言うべき杖が収まっている。
そして船長室は豪華とは言えぬが一介の空賊の物とは思えぬ程上品に設えられていた。が、ルイズにとって船長室にだらしなく整列する空賊の部下達はどうにも粗野で野蛮な印象しか無い。
それらを束ねる部屋の主は特に嫌悪感を表しているルイズに対して椅子に座ったまま良く磨かれた自分の杖を突きつけニヤリと笑った。

「よぉ…お嬢さんがトリステインの大使様かい?」

「えぇ、そうよ。」

「一体何しに行くんだ?あいつ等は明日明後日にはこの世から消えちまうっていうのによ。」
「あんた達に言う事じゃないわ。あんた達は黙って私達を解放してアルビオンへ運べばいいの。」
「その様子じゃ大事なんだろ?そいつを手土産にしてやれば貴族派は喜ぶと思うがね?」

「そんな恥知らずな真似をする位なら死んだ方がマシよ!」

ルイズは恐怖を確固たる意思で押し殺し、小さな胸を張ったまま船長から一切視線を逸らさず堂々とした態度で淡々と船長の挑発的な問い掛けに答えていく。

(ルイズ…)
その勇ましい姿を黙って間近で見ているミントも正直ルイズという少女を今まで見くびっていたと素直に思う。無論世間知らずの馬鹿だとも思うが…

「やれやれ、全く威勢の良いお嬢さんだ…トリステインの貴族ってのはどうも頑固でいけねぇ。」
平行線のやり取りに空賊の頭は疲れたのか呆れた様に溜息を漏らすと頭に被っていた帽子を外した…長い黒髪の癖毛が違和感を孕んで揺れる。

「だが!!貴族派の連中の様な恥知らずとは比べるまでも無い!!…そうは思わないかお前達?」
『サー、イエッサー!!』
一喝と共に突然頭の纏う雰囲気が変わる…それにあわせて部屋の壁に背を預けて成り行きをニヤニヤと見守っていた部下達が一瞬で佇まいを正し、良く訓練された兵士の様に…否、兵士そのものの掛け声で敬礼を頭へと向けた。
何が起きているのか理解が追いつかず、ミントとルイズが目を点にして呆気にとられていると頭は無造作に自分の髪の毛と口ひげを引っ張り、むしり取る。
ワルドだけはここに来て事態を理解した。
現れたのは凛々しい金髪の青年、唯の美形の金髪ならばギーシュと代わりはしないがその姿は真の気品と勇猛さを感じさせる物だった。


「大使殿、先程までの我々の無礼を謝罪する。私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官……アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ。」

粗野な空賊の頭だった男はそう言って未だ驚きによって硬直したままのルイズ達に爽やかにかつとっておきのいたずらに成功した少年の様に微笑んだ。









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