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デュープリズムゼロ-12

第十二話『~幕間~人形と主』

___ガリア王国首都リュティス

トリステインには正統なる始祖ブリミルの血を祖とする三つの王家が存在する。
『トリステイン』『アルビオン』そして『ガリア』
現在ガリアの首都リュティスにある王の住まう宮殿グラントロワの一室にて、とある重大な話し合いが行われようとしていた。

国にとって?…………いえいえ。
貴族にとって?…………そんなまさか?

そう…それは隣接する異世界にとっても無関係とは言い切れぬ程この世界を揺るがす大事な大事なお話…




今その玉座の間に一人の人物が通された…

「ミョズニトニルン、ジョゼフ様の忠実なる僕シェフィールド参りました。」
恭しく言って名乗りを上げた女、シェフィールドは上質な絨毯の敷かれた床に膝を突くと顔を覆う様に被っていたフードを外す。
燭台の明かりに照らされて現れたのは妖艶でありながら何処か退廃的な…そう、どこか人間味の薄い独特の雰囲気を持つ黒がよく似合う美女。

「待っておったぞ俺のミューズ。アルビオンに出向いて貰って居る最中にわざわざすまぬな。しかしどうしてもお前の力が必要そうなのだ許せ。」
玉座にゆったりと腰を落とした青い髪の美丈夫がさも上機嫌な様子で豪快に笑い、薄暗い王の間へと出頭してきた全身に怪しげで黒いタイトな法衣を纏った女性シェフィールドを歓迎する。
「ジョゼフ様がお呼びであるならば私は例え地の果て、地獄の底であろうと駆けつけます。
それこそが我が使命、我が喜びでございます。」
「所でアルビオンはどうだ?あの男少しは上手くやっているのか?…あぁやはりそれはどうでも良い、早く本題へと移るとしよう。おい、ビダーシャル!」
逸る気持ちを隠しきれない様にジョゼフがそう言うとジョゼフが腰掛ける玉座の影から一人の長身の男が姿を現した。
それはまるで物語に登場する英雄譚を詠う吟遊詩人の様な出で立ちでジョゼフの様な男性らしさというよりは中性的な印象を与える美丈夫…

「ビダーシャル…」
シェフィールドがその姿を認めて嫌悪する様に小さく呟く。

「待ったぞ、ミョズニトニルン。」
男は被っていた羽根付き帽子を取ると流麗な動きでシェフィールドに会釈して見せた。
男の流れる様な金の長髪の隙間からは長く尖った耳が覗いている。

それはハルケギニアの全ての人間が畏怖し、忌み嫌う最悪の亜人族『エルフ』の証
「実は貴様の能力でこれを鑑定して貰いたいのだ。」

ビダーシャルは懐から慎重に小さな虹色に輝く宝石を取り出しシェフィールドに手渡す。
ジョゼフはその光景を実に満足そうに眺めている。
「これは…」
宝石を手にした瞬間、シェフィールドの額に熱が走り使い魔のルーン『ミョズニトニルン』が淡い光を放ちながら浮かび上がる。

「それは聖地の最奥、シャイターンの門から呪いの様に溢れ出てくる魔力を我等エルフが総力を挙げ凝固させ作り上げたマジックアイテムだ。
最早二度と作れぬであろうそれを我等は『運命の滴』と名付けた。シャイターンの門から溢れる魔力を制御する鍵としてな…が、一つ問題があってな…尋常ならざる強大な魔力を有するそれを我等エルフには扱えぬのだそれが…」
ビダーシャルがそんな説明をしている間にシェフィールドは使い魔のルーンの力によってその運命の滴の力を理解し驚愕した。

それはまさに力の結晶。
時の流れる力、光が照らす力、命が鳴動する力、闇が蠢く力、そして滴が零れる力…
純粋なる力の結晶、その至高の魔宝の残滓から生まれた一欠片の力の結晶。

かつての在りし時の力から比べればその手に納められた結晶などまさに絞りかす同然ではあるが…


「シャイターンの門はかつてブリミルが目指した地…俺ならばあるいはともエルフ共も思った様だがどうやら俺にはそれを御する事は出来んらしい。
そういった訳でな、ミューズよそなたならばと思って呼んだわけだ。」
どうだ?と言外に付け加える視線でジョゼフはシェフィールドを見つめる。
シェフィールドはチラリとビダーシャルへと視線を向けると言いよどむ様な少し難しげな表情をジョゼフに向け直した。ジョゼフはそれだけでシェフィールドの真意を読み取る。
シェフィールドはその運命の滴の力を理解したため出来ればその力は主であるジョゼフのみに伝えたかった。現在は協力関係にあるとはいえ自分達とビダーシャルは本質的には対立しているのだから。

…だが

「フム…ミューズよ構わん、それがどの様な物であろうと包み隠さずこの場で言ってみろ。」
ジョゼフはそれでも一向に構わぬとェフィールドの言葉を促す。

「では申し上げます…これはビダーシャルの申した通り魔力の結晶体の様です。あらゆる力の流れに干渉する事すら可能な万能の秘宝…
私の力ならばこれを我が内に取り込む事で完全にとはいかずとも一応は制御し扱えるかと…」
「そうか…ならば運命の滴はお前に預けるとしよう。構わんなビダーシャル?」

「…致し方あるまい。」
しばし悩んだビダーシャルの返答にジョゼフは玉座に肘を突いたまま満足げに薄く微笑みを浮かべる。まるで端からそうなると予測していた様に。

「では…」

言ってシェフィールドが運命の滴を両手で包む様にして祈りを捧げると運命の滴はあっという間に宝石状のその形を光へと溶かし、紫電を走らせながらシェフィールドの身体へと溶け込んでいく。

「(これは何だ?記憶…?神になろうとした男の?)ぐっ…ぁぁぁあぁぁっ!!」

運命の滴と同化したシェフィールドの額に再び強烈な痛みと熱が走り、膨大な魔力と共にかつて新世界の神になろうとしたとある一人の偉大な魔法使いの記憶の一部が流れ込む…
そのあまりの苦痛にシェフィールドは額に玉の様な汗を浮かべながら呻き声を必死に堪えた。

「ヴァ…レン…」

しばらくの間続いた苦痛もようやくも安定し、乱れた心拍が落ち着きを取り戻すとシェフィールドは朦朧とする頭で無意識にその名を呼んだ…

「ほぅ…どうやら上手くいった様だな?」
ジョゼフの問いに正気に戻ったシェフィールドは慌てて乱れた髪を整えて膝を突く。
「はっ、この力素晴らしいの一言でございますジョゼフ様。そして我が力は全てジョゼフ様の為にあります、今後とも何とぞ私をお役立て下さい。」
「あれ程の魔力をその身に取り込むとは…随分と無茶をするなミョズニトニルン。
運命の滴を飲んだのであれば近くシャイターンの門にもご足労願うであろう。アレを封ぜよと精霊達も訴え求めているのでな。」
恭しく跪くシェフィールドにそう言ったビダーシャルをシェフィールドは敵意を孕んだ視線で睨み付ける。

「私に命令できるのは我が主ジョゼフ様のみ。貴様の命令などでは動くつもりは無いわ。
…………そして私はたった今知った、我が身に宿った新たなる力は運命の滴でもシャイターン等という名でも無い…」



究極の至宝の模造品〈レプリカ〉にして代替品〈オルタ〉



「これぞ彼の地に眠る最大最強のエイオンの遺産『デュープリズム』。」
まるで己の役割に縛られた人形の様に無感情な声でシェフィールドはその名を口にした。









___同時刻アルビオン大陸ウエストウッドの森

ここでは現在沢山の子供達に見守られながら今一人の少女が使い魔の召喚の儀式を行っていた。
少女の名はティファニア…複雑な生い立ちを持ち孤児達と共に森の奥で隠れて暮らすハーフエルフの少女。
その少女が長く留守にしている姉の代わりの心の支えと狩りなどの助けとして今使い魔を召喚する事を決意していたのだ。

「この世の何処かに居る私の使い魔さん。お願いしますどうか私の声に応えて下さい。」

まるで歌う様な呪文の声に子供達から期待の視線が集まる。
何処かの公爵令嬢とは正反対な控えめな呪文を唱えてティファニアは杖を振るう。
まともに使える魔法は一つだけ、系統魔法が使えない自分の使い魔に無茶は求めない。
目の前に現れた銀の鏡から出てくるとすればテファニアは小鳥やリス等の小動物だろうと思っていた。贅沢を言えば狐の様な狩りが上手な使い魔だと実益もあって嬉しい。


そんな風に思っていたティファニアであったからこそ召喚ゲートをくぐって現れた己の使い魔を見た時には心底驚いた…


それはどう見ても人間の男だったからだ。


「ここはどこだ?…私は死んだ筈では?」
黒と茶の毒蛾を連想させる様な毒々しい色合いの甲冑と法衣を纏う仮面の男。男はまず空を見上げた後周囲を見渡しそう呟いた。
男の纏う独特の強張った雰囲気と底知れぬ威圧感にティファニアを含め、周囲の子供達は思わず本能的に恐怖し固まってしまっている。中には泣いている子供も居た。

「あの…」
戸惑いながらもティファニアは勇気を振り絞り何かを思案している男へと声を掛け様とする…すると。
「そこの小娘、解るならば答えろ。ここはどこだ?私はどうしてこの様な所に居る?」
男はティファニアに問い掛けながら害意を見せぬ様注意しながら軽く手を差し出す。
「あ…あの、私が使い魔を召喚しようとして、そうしたらあなたが…」

「何、使い魔だと…?」

ティファニアのその一言に男の纏っていた空気に緊張が走った。

「まさかこの私を下等な使い魔等にする為に呼び寄せたとでも言うのか!?…ふざけるなっ!!私は私達は最早誰の人形でも道具でも無い!!」
使い魔と言う言葉が男の逆鱗に触れたのか男がその腕を振るうと唯それだけで熱風の様な力の波動が足下の草を激しく揺さぶる。
「ひっ…ごめんなさい。本当はペットになってくれる動物さんを呼び出したかったんですっ。それにまだコントラクトサーヴァントはまだ…」
そのせいでますます少女は男に怯えながらも自分の後ろに居た孤児達を男から守る為に抱く様にして震える声で答えた…


そこで男はようやく状況を冷静に理解する。
成る程、確かに己の自我ははっきりと確立している。何か魔術的な干渉を受けた形跡も無い。自分が目の前の少女の使い魔になっているかと問われれば確かにそれは否だ。


先程まで確かに自分はヴァレンの聖域の最深部にいた。
そこで自分に人形としてではなく一人の意思を持つ人としての生き方を示してくれた弟を救う為に力を振り絞り自らにとっての神とも言える創造主へと反逆し処刑、否処分された…
そこまでは間違いない…
そして今男は生前の状態で見た事も無い場所で少女の前に立っている。そして少女は男を召喚したと言っていた…

「ククク……ハハハハ……」
現状を認めて男はある考えへと至ると思わず笑いを堪えきれず高らかに笑った。
「成る程な…原理は解らんがどうやら私はお前に救われたらしい。気が付けば見ず知らずの女に救われていたか…ククク、まるでルウではないか。」
「あの…?」
思わずティファニアは訝しげに首を捻る。男が急に怒り出したと思えば突然考え込み今度は突然笑い出したのだ。
そうしていると男はティファニアへと向き直りその瞳を真っ直ぐに見つめた。
「ふん…良い機会だ小娘よ、私は私という存在を確立する為にも貴様の使い魔にはなれん。だが行く宛も無い身だ。故に望むならば共に居てやる事は出来るだろう、どうする?」

男のその仮面に隠れた表情が何故かとても晴れやかで、自分を見つめる視線がどこまでも真っ直ぐながら寂しげででティファニアは何故か男の提案を拒もうとは一切思わなかった。

「私の名前はティファニアです。ようこそウエストウッド村へ。」
少女ティファニアはそう言って若干おずおずとした様子で男へお辞儀する。

「私の名はドー………」

ティファニアに対し自分も名前を名乗ろうとした途中で男は思う所があり瞳を閉じてかぶりを振るとゆっくりと自らの顔を隠す仮面を外した。

(キリエル…ナーシアス…カーウィン…私も再び名乗ろう。私が私の意思で歩く為に。)

男は瞼の裏に焼き付いた己の忠臣達を思い浮かべて瞳を開いた。
最早男には自らを道具としての使命に縛り付ける為の偽りの名など不要なのだ。



「私の名はルシアンだ。さっきは怖がらせてすまなかったティファニア。」
「はい、よろしくお願いしますルシアンさん。」

ティファニアがルシアンと名乗った男に微笑むとルシアンもまたぎこちなく微笑みを返す。
それはかつて捨て去った男の本当の名前…
ヴァレンの人形としての使命を果たす為非道を行い、道具であり続けようとしその果てにルウとミントに破れた男の名前。


果たして目の前の少女がルウに生きる意味と強い意志を与えたクレアの様に自分を変えてくれるかは解らないがルシアンはこの数奇な巡り合わせに今はただ感謝する事にした。



そしてルシアンの額では輝きを失った筈のデュープリズムの欠片が静かに淡く輝いた…





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