あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

HUNTER×HUNTER×ZERO-02



「あ、キルア!見てよ!」
「何だよ、ゴン……って、何だありゃ?」

コルベールの部屋へと向かう途中、ふと夜空を見上げた二人はその有り得ない光景に驚きを隠せないでいた。

「月が……二つある?」

星の薄明かりも飲み込むような漆黒の空にぽっかりと二つの月が輝いていた。
それを見た瞬間に二人は今いるこの場所が、自分たちの知る世界とは異なることを確信する。

「ゴン……」
「うん、分かってる。尚更、コルベールさんの話を聞かなきゃ、だね」

二人は共に真剣な顔つきになって頷き合った。
そしてコルベールの後に続き、彼の部屋へと向かって進む。

コルベールの部屋へ入ると、二人は早速この世界についての説明を受けた。

二人がこの世界へ連れて来られたことについて。
ハルケギニアについて。
平民と貴族について。
魔法について。
二人がこの世界で目の当たりにしたものについて、一通りの答えを聞く。
コルベールは分かり易く、丁寧に解説し、二人の質問にも嫌な顔一つせずに答えた。

「……つまり、ここハルケギニアってとこには貴族制度があって、平民と貴族には超えられない壁がある。そんでもって、貴族はその殆どがメイジで魔法を使うことが出来る。こんなところか」

ある程度この世界について聞いたところで、キルアがまとめた。

「で、俺とゴンが連れ去られたのはそこのピンク頭の女が召喚魔法を使ったからってところでOK?オッサン」

キルアは敢えて自分たちがこことは全く異なる別世界から来た、ということは伏せた。
余計な混乱を与えたくなかったし、どうせ信じやしないだろうという読みもあった。
言葉に出さなくとも、ゴンもキルアと同様にそのことについて口を出すことは無かった。

「う、うむ。かなり簡潔だが、その通りだ」
「……ったく、改めて聞くと本当にはた迷惑な話だぜ」

そうキルアが毒づくと、先程までだんまりだったルイズがカッとなって突っかかってきた。

「何処が迷惑なのよ!?」
「ああ?マジで分かんねーのかよ?」
「貴族に召喚されることがどんなに有り難いことか、ミスタ・コルベールの話で分かったでしょ!?」
「あのなあ、逆の立場で考えろよ。アンタが同じことされた上にそんなこと言われて、素直に『はい、光栄です』って言えるか?」
「……うっ!」

キルアの反論にルイズが言葉を詰まらせる。
と、ゴンもキルアに続いた。

「……俺、コルベールさんから話を聞いて考えたんだけどさ。この召喚っていう魔法、とっても残酷な魔法じゃないかって思うんだ」
「い、言うに事欠いて、何で残酷なのよ!?」

ゴンにもルイズは突っかかる。
今まで失敗ばかりでろくに魔法を使えなかったルイズにとって、二人を召喚したこの魔法は初めて成功させた大きな魔法で特別なのだ。
それを悪く言われることには我慢ならない。
しかし、ゴンはあくまで真っ直ぐな瞳でルイズを見つめる。

「だって、全然知らない場所へ連れて来られて、家族や仲間たちとも離れ離れにさせられて、その上、元の場所へ戻る方法も無いなんて、あまりにも一方的過ぎると思う」
「……しょうがないじゃない。本来はアンタたちみたいな人間じゃなくて、動物や魔物みたいなのを呼ぶ魔法なんだから」
「うん。でも、そういう動物や魔物だって家族や仲間はきっといた筈だよね」

ゴンのこの言葉に、ルイズだけでなくコルベールまでもが口ごもる。
誰もが見て見ぬ振りをしてきた一つの可能性。
召喚は決して無から有を生み出す魔法ではない。
呼び出された使い魔も、元の生活が必ずあった筈なのだ。
使い魔にするということは、それを全て捨てさせること。
建て前として、使い魔として召喚されたものはそれを受け入れたものであるということになっているが、本当のところを知る者はいないのが現状である。
誰もが契約前に使い魔となる生物の声を聞くことが出来ないのだから。
それはコルベールとて同様であった。
だからこそ、意志疎通の容易な人間であるゴンとキルアが、先程から使い魔の契約を拒絶してることが示す意味合いは大きいのである。

「ルイズが自分たちの魔法を悪く言われて怒る気持ちはよく分かるよ。俺もジンのグリードアイランドを悪く言われた時は凄く腹が立ったし。
 その召喚の魔法っていうのも、きっと悪いことだけじゃないんだろうけど、それでもやっぱり勝手に選んだ上に何の説明もなしに連れて来ちゃうなんて一方的過ぎるよね。
 だって、そのつもりは無いのにあの鏡に間違って触っちゃうことだってあると思うし、もっと事前によく説明するべきだと思うんだ」
「……………………」

ゴンが話す、見たまま聞いたまま、そして感じたままのこと。
そこに悪意は無いのだということはルイズにも分かった。
だからこそ突き刺さる。
何か言い返したい。
でも、自分たちを正当化させるような言葉が出て来ない。
せめぎ合う理性と感情の中で、ルイズはとうとう爆発した。

「なん……でよ!!どうし……て、私だけこんな……。私だけ……私だけ!!」

ルイズはボロボロと涙を零し、思いを吐露する。
それは理路整然としてはおらず、ただ感情に任せるままの言葉であった。

「私は……私はただ、魔法を成功させたいだけだったのに……普通の使い魔で良かったのに!!何でアンタたちみたいなのが呼ばれるのよ!?」

ルイズはそのまま手で顔を覆ってうずくまった。

「……ひくっ、勉強だって人より多くしてるし、努力だって怠ったことないのに、何で魔法が使えないのよ!」

突然、ルイズに目の前で泣かれてゴンとキルアは思わず口をつぐんだ。
特にキルアは憮然とした表情でルイズを見つめている。

「ミス・ヴァリエールはね、努力家ではあったが魔法を失敗してばかりいてねえ、今回の召喚が初めての成功だったんだよ」

と、そんな二人へコルベールが説明した。

「此度の召喚はミス・ヴァリエールにとって、我々が考えている以上に大きな意味を持っているんだ。
 だから、どうか彼女の為にも今一つ考え直して、少しの間でいいから彼女と使い魔の契約をしてやっては貰えないだろうか?
 無論、こちらとしても最大限の手助けはするつもりだ。君たちを帰す方法も全力で探そう」

コルベールがそう告げると、ゴンとキルアは二人して黙り込んだ。
部屋の中にはルイズの啜り泣く声だけが聞こえている。
と、キルアが徐に口を開いた。

「……話になんねー」
「……え?」

キルアの返答にその場の空気が凍り付く。
ルイズも思わず泣くのを止め、二人を唖然と見つめていた。
コルベールは思わずキルアに聞き返した。

「は、話にならないとは?」
「オッサン、アンタら前提からしてまず間違ってるよ」

キルアはコルベールを睨み付けた。

「まず俺たちが帰る方法を探すのは交換条件にはならない。寧ろ、アンタらの義務だよそれは。
 いくら俺たちが不用心にあの鏡に近付いたとは言っても、仕掛けてきたのはそっちなんだから当たり前だろ?
 悪気があって、本当に元の場所まで帰すつもりがあるなら尚更だよ。そこを交換条件にしてる時点で既にアンタらとの交渉の余地は無いね。
 ま、泣き落としが入ってた時点で交渉としては下の下ってところだけど」
「そんな……!?彼女が、ミス・ヴァリエールが可哀想だとは思わないのかね?」
「全然。要するにピンク頭の努力が足んねーだけの話だろ?同情の余地なし」

キルアのハッキリとした物言い。

「~~~~~~~!!」

遂にルイズがキレる。
咄嗟に杖を二人に向け、何やら呟いた。
その瞬間、二人は強い殺気を感じ、すぐにその場から飛び退いた。
すると、その直後に二人のいた場所が爆発する。
小規模の爆発ではあったが、普通の人間なら十分に致命傷を与えられる威力であった。
その爆発に、威力こそ違えど、ゴンは先日戦った爆弾魔ことゲンスルーを連想する。

「てめえ……」

今度はキルアがキレる。
キルアは冷静に見えるが、プライドも高く、意外と頭に血が上りやすい。
普段は理性で抑えているが、時と場合によってはゴンよりも感情的に行動することさえある。
先程のルイズの攻撃で二人が深刻なダメージを受けることは無かったであろうが、攻撃してきたという事実がキルアの逆鱗に触れた。
いつもであったら軽く受け流すことも出来たかも知れないが、勝手に連れて来られた上に身勝手な要求、更に実力行使までされては流石のキルアも我慢出来なかった。
キルアは一瞬でルイズの目の前まで来ると、彼女の細い首をその手で掴んだ。

「ぐっ……!?」
「次、変な真似しやがったらその首へし折るぞ、このアマ……」

静かに、そして強く殺意を込めた口調でキルアはそう言うと、ルイズを睨み付けた。
ルイズはこの時、生まれて初めて死の恐怖を味あわされた。
それも自分より年下であろう相手に。
二人に対して抱いていた怒りや敵意も完全に失せてしまっていた。

「……ミス・ヴァリエールから手を離すんだ」

キルアの後ろでコルベールが先程のルイズと同様に杖を向けていた。

「あぁ?変な真似したらこいつの首へし折るって言ったよな?」

キルアは振り向かずに言った。
言葉は乱暴だが、その口調は驚くほど静かで不気味であった。
それを目の当たりにしただけで、コルベールは目の前の少年がこういうことに慣れており、その言葉が偽りではないことを悟る。
どんな境遇にいれば、こんな年端もいかぬ少年にそんなことが出来るのだろうとコルベールは思わずにいられなかった。

「わ、分かった。だが、彼女から手を離してくれ」

コルベールは杖を下ろすと、そうキルアに懇願する。
今、この場でルイズの生殺与奪を握っているのは間違いなくキルアであった。
緊張感がその場を支配する。

「キルア、離してあげなよ」

その中で、そう口を開いたのは、ゴンであった。
キルアはチラッとゴンの方へ視線を向ける。

「何でだよ、ゴン。こいつら……」
「俺だっていきなり攻撃されてムカついたけど、でも殺しちゃダメだよ」
「……………………」

キルアはすぐにルイズから手を離した。
強い力で首を掴まれていたルイズはその場に尻餅をついた後、思わず咳き込む。
コルベールは一先ずホッと胸を撫で下ろし、そしてゴンに礼を告げた。

「彼を止めてくれて有難う。えーと、ゴンくん……だったかな?」
「うん。……ねえ、コルベールさん」
「何かな?」
「先に手を出してきたのはそっちだから、そのお詫びにこっちのお願い聞いてくれてもいいよね?」
「へ?」
「だって、さっきの爆発でもしかしたら俺たち死んじゃってたかも知れないし、それだけのことをしたんだから、まず謝るべきだよね」
「えっ?ええっ!?」
「それともコルベールさんたち貴族って、俺たちみたいなのの命って取るに足らないものなの?」

ゴンの口から放たれた言葉をコルベールは瞬時に理解出来なかった。
そして、理解した時には目の前の少年に身震いしていた。

(た、たった今起きたばかりの不測の事態をすぐに交渉の材料にするなんて……この少年、何者なんだ?)

「ゴン、お前随分えげつないこと言うなあ」

キルアはヒューと口笛を吹いた。
ゴンはキルアに笑顔で返事をすると、真面目な顔でコルベールへと向き直った。

「取り敢えず、そのツカイマっていうのは無し。それと俺たちも元の場所へ帰る方法を探したいから、ここを捜索したいんだけど、いいよね?」

ゴンは邪気の無い顔で言った。
ゴンはキルアとは異なり、打算や理屈で会話しているわけではなく、その時その時の状況を見たまま感じたまま話しているだけなのであろう。
だが、だからこそコルベールはゴンを畏れた。
ゴンの言葉には裏も何も無いのだから。

「……分かった。だが、学院内の捜索の許可は私一人の一存では決められない。学院長に相談せねばならないから、少々時間が掛かるだろうが、いいかね?」
「うん。コルベールさんたちにも色々都合があると思うし、俺たちは大人しく待つよ。ね、キルア」
「ったく、しょうがねーなー」

キルアは渋々、といった感じでゴンに賛成した。
それに納得するとゴンは、今度はルイズへと向き直った。

「ねえ、ルイズもそれでいいよね?」
「……………………」

ルイズは何も答えなかった。
年下の、それも平民の少年に貴族である自分が呼び捨てにされていることさえ指摘する余裕は無かった。
彼女はつい先程殺されかかったという事実、そして彼らが自分の使い魔にはならないという現実に打ちのめされていた。
自身の努力を彼らに、世界に否定され、全ての気力を失っていたのである。
彼女の瞳には涙すらも浮かんでいなかった。
そんなルイズにゴンはそれ以上何も言うことは無かった。
下手な慰めは相手を深く傷つけるだけだと、彼なりに感じた部分もあったのであろう。
ただ、ゴンはゴンでジンを探すという目的があり、それが今の彼の大部分を占めるものであることは変わらない。
故に、彼女の使い魔になるわけにはいかないのである。

「……ごめんね」

ゴンはルイズに聞こえないようにそう呟いた。
それが自己満足の謝罪だったとしても、ゴンはそう言わずにはいられなかった。




ルイズはうな垂れたままとぼとぼとコルベールの部屋を去って行った。
その背中は力無く、まるで幽霊のようである。
ゴンとキルアはこのままコルベールの部屋へ泊まることとなった。
夜が明け、学院長という人の許可が下りれば、二人は取り敢えずこの学院で元の世界へ帰る手掛かりを探すつもりである。
これだけ大きい建物なのだから、きっと有用な情報が得られるであろう。
そう願って二人は眠りについた。
夜空に浮かぶ二つの月を睨み付けながら。


こうして、二人がこの世界へ来て最初の一日が終わりを告げた。



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