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使い魔は四代目-10


コルベールに先導される形で、リュオ達三人は食堂の教員達の区画…一階の上のロフトの中階のテーブルについていた。
リュオが昨日シエスタと共に厨房に駆け込んだ時は、じっくりと食堂の中を見る余裕は無かったが、改めて見てみれば実に贅を凝らした造りとなっていた。
複数の蝋燭を灯している燭台は華麗な装飾を施した金、若しくは銀細工であった。テーブルには色鮮やかな花々が飾り付けられ、様々なフルーツが盛られた籠が等間隔で並べてある。
そして、壁には無数の精巧な小人の人形が並んでいた。
それは、食堂の名にもなっているアルヴィーズといい、あまつさえ魔法によって夜には動くのだ、とコルベールに聞かされたリュオは感心するよりむしろ呆れた。
リュオは別に質素なのが好きというわけではないし、派手なのは嫌いでもない、というかむしろ派手好きである。
貴族の子弟達の学び舎であるからそれなりの物でないと体裁がつかない、という事情も推測できる。
しかしそれでも王宮と言っても通用しそうなこの造りにはやりすぎを感じたのでそれをコルベールにぶつけた。 

「とことん贅沢な作りじゃな…しかしケチをつけるわけではないが、ここまでする必要があるのかな?
食堂なんぞ、味が良くて清潔ならばそれで充分じゃろうに。味が良いのはもうわかっておるがな」
「はっはっは、リュオ様、確かにそれはその通りなのですが、トリステイン魔法学院のモットーとして、
『貴族は魔法をもってしてその精神となす』
というものがありましてな。魔法と共に、貴族たるべき教育も行っておるのです。ですから、食堂も貴族に相応しい作りになっているわけですな」
「ふむ?まぁ、教育方針はわしが口を挟む問題ではないが…。貴族としての方はともかくも、メイジとしてはまだまだ精進が必要じゃな。
相手の力量を測れないのはともかく、動揺したまま立ち直れないようではいかんな。ま、あの子らはメイジになったばかりなんじゃろうから無理もないが」
「現場に居た教師としては耳が痛いですな。しかし敢えて言わせていただくならば、あの場合は普通のメイジとしての経験はさほど役に立ちますまい。
むしろ必要なのは戦闘の…それも相当な修羅場を潜って来た経験でしょうな。」

コルベールのその言葉には僅かな苦渋の響きがあるのにリュオは気付いたが、敢えて無視した。

「修羅場か。…まぁ、そうじゃな。こればっかりは平和な学院では経験できるものでなし、致し方ない所か。
修羅場なぞ潜らずに済む方がええんじゃろうから、それで良いのじゃろうな。お主達も、生徒達にそのような経験をさせたくも無いのじゃろうし」

納得し、うむうむと頷くリュオに思うところでもあるのか、どこか遠い目をしながらコルベールが同意する。

「全くその通りです。そのような強さを必要とするような寒い時代にはならないで欲しいところですが…
アルビオンの情勢も不穏ですし、難しいかもしれませんなぁ…はぁ…」



溜息交じりのコルベールの言葉によって、重くなった空気を和らげるかのように、ロングビルが口を挟んできた。

「ミスタ・コルベール。それは私達が心配してもどうにもならない事ですわ。
生徒達の実力に関しては長い目で見て下さい、としか言えませんわね。ですが、そもそもリュオ様の目に適うメイジなどいるのですか?」
「うん?故郷の話ではあるが勿論何人も居るぞ。…まぁ、随分生意気な奴も混じっておるがな。
大体、わしを買いかぶりすぎじゃて。魔法なんぞ使い方が間違っておっては何もならん。
いくら強力な呪文、珍しい呪文を知っておっても、それだけで優秀な魔法使いとはいえないじゃろ」
「正論ですわね。…ですが、結局こちらにはお目に適うメイジが居ないという点に変わりはありませんのね」

若干皮肉っぽく言うロングビルに対し、

「いやいやいや、そうではないぞ。お主らを侮っておるように聞こえたかな?なら詫びるが。
先程のシュヴルーズの授業を見ていて思ったが、少なくとも錬金術に関してはわしの故郷、アレフガルドより数歩先を行っているのではないかな。
知っている限りではあれ程の術者はそうそう居ないはずじゃ。まぁ、場所が変われば魔法に求められるものも違う。
じゃから魔法の発展する分野も違うのじゃろうな。それにわしはまだこちらの魔法を良く知らん。
案外、お主等が何気なく使っている魔法にわしが驚くような物が無いとも限らんぞ」

「そうですの?でも、リュオ様が驚くような魔法といっても想像がつきませんわね。ミスタ・コルベールには何か心当たりがありまして?」
「え?…いや、残念ですが…披露できるような魔法はありませんね。ここで『こんな事もあろうかと、実は取って置きの魔法が…』と言えれば良いのですがね」

そこで、会話が途切れ一同に沈黙が訪れた。リュオが、本日のメインであるヒラメの香草包みをナイフで切り分けつつ、ロフトから何気なく見下ろせば、食堂内を慌しく動き回る見知った顔がいた。
シエスタである。その姿を見た時、リュオに一つのアイデアが閃いた。早速、それを実行に移すべく、二人に断りを入れるとリュオは席を離れた。

目も回るような忙しさの中、シエスタは誰かに呼ばれたような気がした。辺りを見渡してみるが、声を掛けたと思われるような者は誰もいなかった。
気のせいだったか、と厨房に引き返そうとした時、ふと思い当たって、ロフトへと目を向ける。
そこで、リュオと視線が合った。すると、リュオは頷く。やはり気のせいではなかったようだ。
シエスタはロフトへと向かおうとしたが、リュオは軽く手を上げるジェスチャーでそれを阻止し、シエスタの元へ歩み寄ってきた。

「ううむ、呼んでは見たがあそこから聞こえるとは思わなんだ。優秀じゃな、シエスタ」
「そんな事ありません。よくメイド長に叱られてますし。ところでリュオ様、何の御用でしょうか」

シエスタは謙遜したものの、ここまでの規模の食堂の喧騒は相当なものである。すぐ隣では男子生徒の一団が

「それでお前は誰と付き合っているんだ、ギーシュ!」

等と大声で他愛も無い話に興じている。注意していないと自分を呼ぶ声など聞き逃してしまうだろう。

「うむ。今は忙しいじゃろうから、ここが落ち着いてからで構わんのじゃが…ルイズに昼食を届けて貰いたいのじゃ」
「あれ、ミス・ヴァリエールは昼食はまだだったのですか?…そういえば、見かけなかったかも知れませんね。
はい。畏まりました。…ですが、食堂に来られないとなるとお怪我やご病気でしょうか?今朝は普段とお変わりないように見えましたが」

後は、月の障り、とかかなぁ、だったら、さすがのリュオ様も辛さは解らないだろうなぁ。等と思いながらシエスタが尋ねた。

「いや、そうではない。授業でちょいと…あれはちょっととは言えんか。まぁええわい。失敗してな、教室で後始末中じゃよ。
まぁ、普通に考えれば空腹になれば自分から来るはずなんじゃが、どうもあやつは一つの事に気を取られると周りの事がまるで見えんようになるようでな。
おまけにむきになって意地を張る癖もあるから尚更じゃ。終わるまで動いたら負け、のように考えておるかもしれんでな」
「わかりました。それでは手が開き次第至急届けるようにします」
「焦る必要はないぞ。では頼むぞよ。ああ、それともう一つ、ルイズに言伝を頼みたい」
「言伝、ですか?」
「うむ。それはな…」


「…確かに承りました。それでは、失礼します」

そう言うと、シエスタは一礼し立ち去ろうとしたのだが、すぐに立ち止まった。
反対側から通路一杯に広がって数人の生徒達が談笑しながら歩いて来た為である。
シエスタは若干緊張しつつ、その場に留まって相手が通り過ぎるのを待つ。迂闊に接触してしまい機嫌を損ねようものなら相手次第では何をされるか解らないからだ。
勿論、教職員も利用する衆目のある食堂とあってはそのような行為に出る者はそうそう居るものではない。
事実、シエスタは幸いにもそのような経験はなかった。
しかし、真偽不明ではあるとはいえ、先輩のメイドに

「わざとぶつかって来てその上でネチネチといびり倒す事に倒錯した喜びを感じる変た…性格の余り良くない人も居るから気をつけなさいよ、あんたドジなんだから特に」

と忠告されてはすれ違いの際に緊張するのも無理はないだろう。
幸いにも何事もなく生徒達が通り過ぎたので、シエスタはほっとした様子で急ぎ足でそこから立ち去っていった。
リュオはシエスタの背中を見送っていたが、突然、床に小瓶のようなものがころころと転がってきたのを見た。
怪訝に思い転がってきた方向を見ると、どうも先程シエスタの近くで他愛もない話に興じていた、派手な服を着て足を組んでいたギーシュと呼ばれていた少年達のいる辺りだった。

しかし、誰も拾いに来ようともしない。誰が落としたかはわからないが、どうやら話に夢中で誰も気付いていないようである。

「…ふむ?」

興味を持ったので、それを回収してみると、やはり小瓶であった。その中には、紫色の液体が入っていた。
どう見ても、飲料の類では無さそうな色である。となれば、薬品の類であろうか。

「待つんじゃ。そこの…ギーシュか?こんな物が落ちておったが、お主らの誰かが落とさなかったか?」

ともあれ、教えてやろう、そう思いつつ声を掛けると、声を掛けられた一同は反射的に一斉にこっちを見た。
が、声を掛けたのがリュオだと解ると、一様に何ともいえない顔をした。
その中でも先程教室で余計な事を言って睨まれたのが余程怖かったのか、最も狼狽した表情を浮かべていたマリコルヌが、

「ギ…ギーシュ、僕は悪いが先に行っている。みんなも行こうぜ。失礼する、ミスタ・リュオ」

と言い残してギーシュの返事も聞かずに足早に去っていくと、他の面々もこれ幸いとそそくさと後に続き、ギーシュ一人が取り残された。
ギーシュは助けを求めるかのように辺りを見渡したが、既に友人達は全て去った後である。

「そんな…ひどい…」

虚ろな目で呟くと、ギーシュは再度辺りを見渡す。一瞬、一点で視線が止まった。が、そこには友人の姿は無い。
立ち止まっているリュオを不自然に思ったか、こちらを見ている野次馬がいるだけであった。
それを振り払うかのようにリュオに向き直ると、ギーシュは少し逡巡してから答えた。

「…ミスタ・リュオ…それは僕のではない。見間違いをされたのでは?
…い、いや、それより、どうして僕の名前を?名乗った覚えは無いが。もしやそれも貴方の魔法なのですか?」
「いやいや、そう驚かんでも良いわい。話は単純でな、先程の仲間達がお主をそう呼んでいるのが聞こえただけじゃ。
…さて、それでこれが誰のか知らぬのか?」
「…なるほど。驚いたがそういう事だったのか。…いや、済まないが…」
「間違いないのじゃな?…呼び止めて悪かったな」
「いや、良いんだ。失礼させてもらうよ」

それだけを言うとギーシュはそそくさと立ち去っていった。

「…ふん、嘘吐きめ」

それを見ながらリュオは小さく鼻を鳴らすと、その小瓶を懐にしまい込んだ。

 怪しい薬 を手に入れた!


直接落とす現場を見たわけではない。が、転がってきた方向や、何より今の態度からこれを落としたのはギーシュであると、リュオは確信していた。
だが、何故嘘を吐く必要があったのか。
ギーシュが一瞬視線を止めた時、その先には栗色の髪をした少女が座って怪訝そうにこちらを見ていた。
その少女から目を逸らすかのようにこちらに振り返った事から、まずその少女がらみだろう、とリュオは看破した。
ただの恋愛上での行き違いならその事自体は良くある事だが、あのような嘘を吐くという事は何かやましい事でもあるのだろう。
詳しい事情は知らないし、他人の色恋沙汰に干渉しても野暮なだけであるから放置する事にしたものの、
学生の身で不義をはたらくとは感心しませんな、近頃の若者は姑息で困る
…などと思っていると、おずおずと、その栗色の髪をした少女が話しかけてきた。

「初めましてミスタ。私はケティ・ド・ラ・ロッタと申します。ケティで結構ですわ。
それで、あの…唐突で済みませんが、さっきまで持っていた瓶を見せていただけますか?」
「む?…構わんが…ほれ、これじゃ」

受け取るまでも無く、リュオがその瓶を懐から出した途端に、ケティの表情が変わった。
青い顔で、やはりこれはミス・モンモランシーの香水…と、呟くと、冷たい声で

「…これをギーシュ様が持っていたのですね?」

と、問いかけてきた。勿論、リュオには嘘を吐く必要も、ギーシュをかばう必要も無い。

「わしにはそのように見えたがな。本人は違うと言っておったが」
「…良ぉく分かりました。ありがとうございました」
「ん?もう良いのか?これは持っていかぬのかな?」
「そのような物、必要ありません!」

ケティの唐突な大声に、周りにいた数人が驚いてこちらを見た。その視線に気付き、きつく唇をかみ締める。

「…申し訳ありません、つい取り乱してしまいました。…ですが、そんな物いりませんわ。
燃やすなり、捨てるなり、ご自由になさって下さい。失礼します」

硬い声でそれだけを言うと、ケティは早足で去って行った。その方角はギーシュの立ち去った方向と一致していた。
どうやらケティはギーシュを追いかける事にしたようである。どう転んでも、ギーシュには愉快なことにはなるまい。

「…悪い事は出来ぬな…ま、色男を気取るならこれくらいは乗り越えんとな。…しかし、どうしたものかな、これは」

大して興味ないような口調でそう呟くと、再び懐に香水をしまい込み、リュオはロフトに戻るべく歩き出したのだった。

 怪しい薬 は モンモランシーの香水 になった!


さて、リュオが階下に降り、シエスタと会話をはじめた頃の話である。
リュオが席を立ったので、残されたロングビルとコルベールの二人の間にしばし沈黙が訪れたが、リュオが下りるのを見届けると、ロングビルが口を開いた。

「一体リュオ様は何をされているんでしょうか?」
「…メイドと何やら話をされてますな。確かあのメイドは、リュオ様のお付のメイドの筈、何か用事を言いつけるのでは?」

その返事を聞き、少々黙考すると、再び彼女は声を潜めてコルベールに話しかけた。

「ミスタ・コルベール、本当に大丈夫なんですの?」
「…え?何の話ですか?」

先程までとは違うその口調に、コルベールは戸惑った。
唐突な上に抽象的な問いだったので、何について聞かれているのかまるで理解できなかったためだ。
しかし、その事を察したロングビルが

「それは勿論…あの」

と、名前を口にせず、目で対象を示した。ロングビルの視線の先には、先程までリュオが座っていた空席があった。

「…リュオ殿が、何か?」
「惚けないでください。私はあの時、遠見の鏡で一部始終を見ていましたので。あれが変化の魔法、だなどと言わないでくださいよ。
オールド・オスマンが血相を変えて飛び出していったのです。変化の魔法にしては大げさな対応ですわ。
…なるほど、あれだけのドラゴンなら凄まじい力を持っているのも道理ですわね。ですが…」
「心配ですかな?…いや、あれを見ていたのなら心配するのも当然ですな。しかしリュオ殿なら信頼できると思うのです。
私はあの姿のリュオ殿と相対して、そう感じました」
「…そうかもしれませんわね。いえ、別に私もリュオ殿が何やら良からぬ企てをしている、とかそのような事を言う気はありませんわ。
けど、さっきの様な魔法を見てしまうと…」
「宝物庫での一件ですかな?確かに、私も驚きましたが…」

宝物庫の扉が解錠された事自体は驚く事ではない。単純に施錠した者と解錠する者の力比べであり、実力が上の方の効果が発揮されるだけだからである。
だからリュオの正体を知る二人にとっては、単に宝物庫のロックが解除された、というだけなら納得できる事ではあった。
しかし、リュオの口ぶりだと、先程の呪文の効力は術者の実力に左右されるものではないらしい。
つまり、仮に、あの呪文が使えるのならば最低ランクであるドットであろうとも、施錠をしたのがスクウェアであろうと解錠できる、という事になる。
これは常識的にありえないことであった。勿論、あれ程の呪文が未熟者に使えるものではないのだろうが。

「ええ、あの分では、他にも私達が驚くような魔法を色々と知っているのでしょうね。
勿論、未知の魔法があること自体はおかしくないのですが…
ああいった魔法を見てしまうと、色々考えてしまいますの。本人にその気が無くても、周りを巻き込んだり…その、悪影響がでる、という事なども」
「はぁ…それは…状況にもよると思いますが…まぁ、ミス・ロングビルが危惧するのも分からなくはないのですが」

言葉を濁すコルベールにその後もロングビルはやんわりとリュオがここにいることは危険ではないのか、という事をほめのかした。
実際の所、ロングビルは口に出したほど生徒達の安全を気遣ったわけでもリュオの事を危険視していたわけでもない。
が、別の意味…彼女の本当の『仕事』を実行する上で危険だと…少なくとも危険になる可能性があると思っていた。
勿論、コルベールが賛同した位でリュオがどうにかなる等とはロングビルも思ってはいなかったが、上手くいって同調した教員達が多数出るようになれば、オスマンの対応も現状とはまた違った物になるかもしれない。
それこそが狙いなのだ。正直、まどろっこしいのは確かだがリュオの力量を考えれば、強硬に反発して敵として認識される事は避けたい。
となれば、それなりに説得力のある理由で不安を表明する程度にして、同調者を増やす、という搦め手を選択したのであった。
上手く行く事に余り期待はできないが、ローリスクで見返りは多い。少なくとも現状より悪化する事は考えにくい。
ならばやる価値は充分ある、というのがロングビルの結論だった・
ある程度話が通じるのは確かだから、オスマンの交渉次第ではここから去るという可能性も無いわけではないし、そうなれば、願ったり適ったりである。
無論、リュオが障害になると決まったわけではない。
が、問題無いと切り捨てられるほど彼女は能天気でもないし、生憎とそんな呑気に構えていられるような人生は送ってこられなかったのである。



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