あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのペルソナ-30

     リコード
虚無魔法“記録”から目覚めたとき、誰も喋ることができなかった。
時はジョゼフがトリステインに火石を落とし、それがルイズのディスペルによって打ち消された後。
場所はトリステインの王城のある一室。
そこに集まっていたのは王女アンリエッタ、枢機卿マザリーニ、ガリア新王を称するタバサ、ルイズとキュルケ、彼女らの使い魔陽介、完二、クマ、そしてイザベラもいた。
9人はリコードにより、トリスタニアを襲撃したヴァリヤーグの槍の記憶を見た。
人間が恐れたやまないエルフたちを次々と餌食にしていく嘘のような、そして凄惨な光景。
エルフたちを襲う光景の中にはルイズをさらおうとした巨大な火竜と、王都を襲った巨大な金属ゴーレムの姿もあった。
しかもそれらは1体ではない。数十、もしかしたら数百かそれ以上の数がいたのだ。
それから銀色の鏡のようなものを通りジョゼフの使い魔となったことも知る。
「おめーらが今、リコードで見たバケモノどもがブリミルの力なのさ。ブルミルはむかしその力で人間の住む世界を統一した」
部屋の中にいる9人のどの人間のものでもない声が響く。
それは完二の背中にある剣から発せられている。
デルフリンガーは前回、王女たちとの話し合いの場に武器は持ち込めないために参加できなかったが、本人たっての希望で参加している。
自分はブリミルに作られた剣だと言って。
「ゴーレムみたいなのはヨルムンガンド、亜人をヴァリヤーグ、それに巨大種の火竜。それぞれをブリミルはガンダールヴ、ミョズニトニルン、ヴィンダールヴと呼んだもんさ。つってもブリミルにみんなまとめてエルフたちの住む土地の東に行かされたけどな」
話を聞いていた中で、比較的落ち着きを取り戻していたタバサは尋ねる。
「どうしてそんなことを?」
「そりゃ、オメエ、ブリミルが死んでコントロールを失った使い魔たちが人間を襲わねえようにするためさ。だから使い魔たちの住む場所を、人間の住む国より東にあるエルフの土地の更に東に置いた。そうしとけばエルフたちが壁になってくれっだろ」
それはこの世界で生きてきた人間にとっては衝撃的なことであった。今の今まで恐るべき、そして憎むべき敵とも思い、実際に何度も戦火を交えてきたエルフたちは人間を怪物から守ってくれていたのであった。エルフたちは自衛のために戦ってきただけだとしても。
「つってもエルフたちも限界なんだろうな。ジョゼフがエルフと繋がってるみてえだが、エルフが虚無の担い手と接触するって言うならまず使い魔たちをどこか別の場所にやってもらおうっていう魂胆なんだろうよ」
今までの話からジョゼフが虚無の担い手であると推察はできたものの、初めて明言されたアンリエッタとマザリーニも戸惑う。もっともそれ以外の、ルイズを除く全員はそのことについてちゃんと話を聞いていなかったのだが。
「ジョゼフ王は虚無の継承者なのですか……?」
「ま、たぶんまちがいねーだろ。それより俺はどこか別の場所にやってもらおうって部分に驚いて欲しかったんだけどな」
「どこか別の場所……。まさか我々の国々にですか!?」
思案したのちに思いついたアンリエッタの言葉が響くとともに緊張が走る。
もしあれだけの怪物が人間たちの世界に放たれればどのような惨事になるか想像もできない。
何せ一人で人間10人以上の戦力になるといわれるエルフたちが一方的な虐殺を受けるほどのバケモノだ。
たとえ全ての国の軍事力が結集しても勝てるかどうかわからない。
「そうだろうな」
「ですが使い魔を呼び出せるのは一人一体のはずでは?」
マザリーニの質問は魔法使いにとっての常識中の常識である。たとえ命令することが出来ても呼び出せないならば意味はない。
「正当な虚無の使い手なら特別に3体、一種につき一体呼べんだけどな……。
 ま、それでも足りねーよな。
 しっかしそこはさすがブリミルというか、自身の力を引き継ぐ者が現れたときにちゃんと使い魔を呼び出せるように大規模な召喚のゲートを開ける場所を用意してんのさ」
「ど、どこなのよ?」
イザベラは焦りから身を乗り出す。先に抑えることが出来れば使い魔の軍団を呼び出すことはできないはず。
「聖地だ」
聖地とはブリミル教にとってもっとも重要な土地とされる場所である。それは果たして使い魔の召喚の場所であったのだ。
この世界で育った人間たちには常識が壊れていくような音が聞こえた。
「つっても場所は、人間とエルフの住む国境近くにあるって以外俺も知らねーんだけどな。
 エルフたちはシャイターンの門って呼んでるらしいが、門って言ってるだけあっちの方が正確かもしれねー。
 あれは使い魔を呼び出すための門みてーなもんだし」
聖地はエルフたちが現在領有していると言われている。
言われているというのはブリミル教が聖地はどこにあるかを知らないためだ。どこにあるかわからないがエルフたちの所有している土地を奪い返すことなど不可能である。
6000年も続く戦いの中でエルフたちと戦って得た土地など微々たるもの。それどころか反攻で、奪われた土地のほうが多いだろう。
そして人間たちが攻撃しても、エルフたちが人間を追い出す程度に止めていたのは正反対の場所に使い魔たちがおり、それらが後患の憂いとなっていたからなのかもしれない。
「勝算は?」
マザリーニがデルフリンガーに真摯な瞳で尋ねる。
実質的宰相とも言われる枢機卿が真剣に頼みごとをする姿は滑稽といえるかも知れないが、彼もそしてこの場にいる全員が固唾を飲んで始祖の作った剣の言葉を待つ。
「ルイズだ。ルイズはもともとそのために虚無の力に目覚めたんだからな」
言われた当の本人は、覚悟していたようにその言葉を受け止める。
「ブリミルもな、虚無の力がとんでもねえ悪人に渡ったら、って心配したんだよ。
 虚無の魔法を使うために1つの秘宝と1つの指輪。
 使い魔たちを呼び出すのに、一種の使い魔につき一個、つまり3つの指輪が必要にと厳重な制限をかけてもまだ心配だった。
 だから虚無の力を分けた。つまりルイズ、お前さんはカウンターなのさ」
場の視線はルイズに注がれる。
「わかってた……っていうとちょっと違うけどその話を聞いて納得したわ。わたしはあいつを敵だと感じたわ」
「だろーな。だが、問題は使い魔だった。
 たとえ同じ虚無の力を持っても使い魔の軍団がいる以上、その対抗する担い手に勝ち目はねえからな。
 なにせあいつらはこの世界で最強の存在だ。だからこの世界の他のどんな幻獣を呼び出しても勝てるはずがねえ。
 だからブリミルは自分も知らねえ、虚無の4種めの使い魔を作った」
不思議なことを言うとみな眉をひそめた。
「デルフ、それってどういうこと?ブリミルは4体の使い魔を率いたって言われてるはずよ」
「じゃあキュルケ、その4番目の使い魔の名前わかるか?」
キュルケは首を振った。尋ねるように視線を向けてもみな同じようだ。
始祖が4体の使い魔を引き連れたというのはよく知られた話であり、少し書物を引けばガンダールヴ、ミョズニトニルン、ヴィンダールヴの名はすぐに知れる。
だが4番目の使い魔の名を知っている者はこの場には、それどころかこの世界にいない。
「そりゃそーだ。ブリミルが率いたのは4番目の使い魔なんていねーんだからな。
 ブリミルは正当な虚無の担い手に対抗するために生まれる担い手の召喚の扉に細工をしたのさ。
 扉が異世界で開くようにな。それで呼び出されたのが4種めの使い魔だ。」
今まで少し話についていけなくなっていた陽介、完二、クマが話に注意を引かれる。自分たちが呼び出された原因というのは始祖という人物だったのだ。
「な、なんでそんなことを?」
「虚無の使い魔はこの世界最強だ。だからこの世界でどんな使い魔を呼び出しても対抗すらできない。
 なら、異世界から強いヤツを呼び出してソイツに戦ってもらえばいいとブリミルは考えたのさ」
全員が押し黙った。
沈黙の中、答えを返された陽介は言った。
「ブリミルさんテキトー過ぎじゃね?」
ルイズは伝説の始祖をないがしろにしたことを言う陽介を睨んだが、それだけで何も言わない。ルイズも意識したにしろ無意識にしろ陽介の言ったことを思ったからだ。他の全員も同様だ。
デルフリンガーは笑っている。
「確かにそのとおりでえ。しかもどーいうわけか、娘っこの使い魔だけじゃなく、そこのねーちゃんとちびっこの使い魔までそうしちまったってわけだ。
 ジョゼフが一回で3体の使い魔を呼ぶように娘っこも3体呼んじまったんだろうな。それも不完全で、他の魔法使いの召喚に割り込む形で」
ルイズが驚いたように目を少し見開き、それからうつむいたのをキュルケは見逃さなかった。
「今、ジョゼフは姿を消してるそうじゃねえか」
「確定した情報ではないが、ガリアは現在混乱状態にあります。おそらく王が姿を消したように推測されますが……」
「あいつは門に行って使い魔を呼ぼうとしてるんだろうよ。あいつはもう3つのルビーがあるしな」
「ロマリアを攻めたのも、始祖の時代から伝わる指輪を手に入れるためなのですか……?」
「それ以外ないと思うぜ」
重い沈黙が流れる。
イザベラは目を伏せてスカートを強く握る。タバサは手をイザベラの手にそっと重ねる。
沈黙を切り裂いたのはアンリエッタの力強い声だった。
「次にジョゼフ王……いえ、もう王ではないですね。
 ジョゼフが攻めてくるときは恐ろしい使い魔を連れてくるでしょう。
 わたしたちは戦わなければいけません。どれほど絶望的であろうとも」
それから三人の使い魔に姿勢を向ける。
「あなたたちは別の世界から来たといいます。きっとそうなのでしょう。
 この世界はあなたたちの世界ではありませんが、始祖ブリミルのご導きで出会えました。ぜひともお力添えをお願いします」
アンリエッタは深々と頭を下げる。
「ちょっ、頭さげるとかやめてください!」
彼女の行動に陽介は慌てた。
アンリエッタは顔を上げた。
「協力してくださるのですか?」
異世界から呼び出された3人は顔を見合わせる。
「実を言うとこのために呼び出されたとか言われてもよくわんないし、たぶんそれじゃあ命かけて戦おうなんて思わないっす」
それは言うまでもなく、彼らと同じ立場に立たされた者なら誰もがそういうだろう。しかし陽介の言葉はそこで終わらない。
「でもこの世界に来て一ヶ月程度だけど、仲間が出来た。大切な仲間が。そいつらをほっとくなんてできることじゃねえ」
陽介はタバサの肩に手を置いた。彼女は彼の顔を見上げた。じっと見つめてくる少女に笑うことで答える。
「オレもだ。世話になったやつもいる。ダチがアブねえってのに知らん顔なんて男じゃねえ」
「クマもこの世界の人を守りたい。クマはみんな大好きだから」
それぞれの主は使い魔の言葉に感銘を受けたようだ。
アンリエッタは全員の顔を見回してから言った。
「戦いは苛烈なものになるかもしれません。それでもこの世界を守りましょう」
全員が強く頷く。
ハルケギニアの権力者たちがグラン・トロワの一室に集まっているとき、その宮殿の庭にある噴水の外円に腰かけている二つの姿があった。
その一つは丸みをおびていて大きい。
「最近ちょっと暑くなってるけど、夜は涼しいわね」
時刻はすでに深夜であり、噴水の水面には美しい双月が映し出されている。
「そうクマね……」
キュルケは隣に腰かけているきぐるみ姿のクマを見る。
球型の体で細い噴水の縁に腰かける様子は危うい。前から押したら抵抗することもなく水面に後頭部からダイブだろう。
だがそれよりも気になるのはクマの様子だ。
「何か悩みごとがあるの、クマ?」
クマの様子は眼に見えて混乱を見せた。あたふたと動き、バランスをくずして水辺に落ちそうなのが心配だ。
「べ、別になんでもないクマよ!」
「あら、わたしに隠しごと?」
「むっ……」
しばらく黙って後、クマは観念した。
「この間、デルフが言ってたことを考えていたクマ」
「不安になったの?」
「そーなんだけど、たぶんキュルケチャンとは別のことクマ」
「どういうことよ?」
「デルフは強い人を呼び出すって言ってたクマ」
「あなた人なの?未だによくわからんないんだけど」
「ガク」
クマはおおげさに前のめりに倒れるフリをする。
「もう、キュルケチャン!イジワルはやめて欲しいクマ!今クマ真剣な話してるクマよ!?」
「ごめんなさい」
イジワルだけってわけじゃないんだけど。それは口に出さず謝る。もっともクマのどこかコミカルな動きに少し笑いながらだが。
「だから、クマは強いから呼びだされただけなんじゃないかって……。
 クマはきっと何か理由があってキュルケちゃんに呼び出されたんだと思ってた。でもクマじゃなくたって強ければ誰でもいいんじゃないかって……」
じっと真面目に話を聞いていたキュルケが口を開いた。
「あなたって本当にバカね」
「ななななんですと!?」
立ち上がってキュルケはクマを正面に回って、見据える
「バカって言ったのよ。えい」
つんと軽くクマの体を押す。
「あ、あわわわわ」
腕を振りながらなんとかクマは噴水への落下を防いだ。
「な、ナニするクマ」
「だってあなたがあんまりにもバカだから」
「だからクマのどこがバカだっていーんですか!?」
「今からたっぷり教えてあげるわ」
「なんだかカンビなヒビキ…」
「みんなも来たしね」
「えっ?」
キュルケはクマの向こう側、噴水の向こう側へと片手を高く上げて振っている。
クマも噴水の縁から降りて振り返るとたしかにそこには4人の人物がいた。
ルイズと完二、タバサと陽介だ。
「あんたたちこんな夜中に何してるのよ?」
「あら、ずいぶんな言い方ねルイズ。お話が終わるのを待ってたのよ。
 ずいぶん長い時間かかってたみたいだけどどうだった?」
「協力を取り付けられた」
「そう良かったじゃない」
ルイズはそんなことはないという風にオーバーリアクションで首を振る。
「みんな質問が多すぎるのよ。虚無の魔法使いだからって何でもわかるわけじゃないのよ!?」
よほど質問詰めにされたのであろう。おそらく喋らせたら朝まで愚痴をこぼすかもしれない。
「そんなことより聞いてよ、クマったらさっき何て言ったと思う?」
「そんなこと!?」「キュルケチャン!?」という二つの制止の声は無視する。
「この子ったら、強い使い魔が呼び出されるなら別に自分じゃなくてもよかったんじゃないのかって、偶然呼び出されたんじゃないかって悩んでたのよ?」
「はあ?んだソリャ、イミわかんねえ」
言葉の通り、完二はなぜそれが悩みの種になるのか理解できない様子だ。
「い、イミわからんて……」
「お前はよくどーでもいいことで悩むよな」
「どーでもいい!?」
クマは陽介の切捨てる言葉に驚愕の声を上げる
「どーでもいいだろーが。別に俺らが呼び出された理由なんて。
 どんな理由で俺たちがこの世界に来てもこの世界での体験したことが嘘になるわけでもねー」
「それはそークマ……」
「よーするにお前がこの世界に来てよかったかどうかだろ?」
陽介はクマを片目をつぶってみて来る。
「俺はよかったと思うぜ。タバサに召喚されて」
タバサが自分の使い魔に顔を向ける。
「ヨースケ……」
呼ばれた使い魔はへへっと照れくさそうする。
しかしタバサは親友キュルケを指差し、言った。
「でも、サビエラ村では彼女に呼ばれたかったと言ってた」
「えっ、アレ、そんなこと言ってたっけ?つーかよく覚えてましたね、タバサさん?」
突然、吸血鬼退治を行った村のことを言われてあわてる。
たしかに油断しきった魔法使いのフリをするためにお酒を飲んでいたときにポロっと何か言った記憶が……
「しょーじきなトコロ、おんなじご主人様にするならクマみたいにボンッキュ……」
一字一句違わぬ言葉をタバサは淡々と紡ぐ。
まぎれもなく自分が言った言葉に記憶が想起されて陽介も焦る。
「わーっ!!ちょっ、マジやめて!つーかもしかして怒ってる?根に持っちゃってる系?」
陽介は自身より小さな少女に必死に言い訳を考え、刺激された記憶中枢からそれより昔のことを思い出す。
たしか召喚されて次の日の朝にタバサに召喚されて良かったと言ったはず。
「あっ、でもホラ。それより前にルイズよりタバサのほうがいいって言ったぜ?」
「それは床で食べさせようとしなかったというだけ」
ルイズも慌てた。なにせこの二人の主従が言っているのはまさに自分のことだからだ。
「む、昔の話じゃない!今はさすがにそんなことしようとしないわよ!」
完二が来た次の日、ルイズは彼を床で食べさせようとした。
その結果として完二が怒ってどこかへ行ってしまったりしたが、あとで自分と一緒に食べようと言ったはずだ。
もっともその後の完二の失言のためにその言葉は撤回されて、なんだかんだで彼は厨房で平民たちと共に食事をとるのを日課にしている。
慌てる二人と、落ちついて言葉数少なく反論するタバサたちを脇にクマが言う。
「クマは…ヨースケやカンジみたいな活躍してないクマ」
「何人もあなたの魔法で助けたじゃない」
「そーだぜクマ。ルイズがボヤっとして惚れ薬なんて飲みやがって、あの時は……」
「ちょっとあの時の話はやめなさいよ!あーもう、なんなのよ今日は!」
タバサや陽介に昔の話をしないように釘を刺しながらしっかりと自分の話は聞いていた。
完二はしまったと頭をかき、ルイズはぎゃいぎゃいと文句を言っている。
タバサと陽介、完二とルイズがそれぞれ白熱しているなか、クマは傍らに立つ自分の主を見る。彼女の目は優しい。
「キュルケチャンはクマが使い魔でよかったクマか?」
「当たり前じゃない。わたしにとって最高の使い魔よ」
その言葉を聞き、クマは感極まり泣き始め、抱きついた。
「おーよよよ、クマ、キュルケチャンの使い魔でよかったクマ!」
「ほらほら泣かない」
使い魔の肩というか背中らへんをぽんぽん叩いてやる。
「だからルイズも」
「今度は何よ?」
完二に文句を言っていたルイズがどうせまたろくでもないことだろうと思ってきっとキュルケをみる。
「わたしの使い魔があんたのせいで変わったからって巻き込んだとか思わなくていいのよ?」
「なっ——」
不意を打たれた、そういう顔をする。おそらくルイズも思うところがあったのであろう。
だがキュルケに言わせるなら何も気にすることではない。
それはタバサも同じようだ。
「気にしないで。ヨースケはわたしにとって最高の使い魔だから」
「タバサ…!」
気にかけていたことを二人にフォローされて、少し戸惑いながらルイズは虚勢を張った。
「ふ、ふん当たり前よ。むしろ感謝して欲しいくらいだわ!」
「いや、感謝はちげーだろ」
言い過ぎた感のある言葉に使い魔の冷静なツッコミが入る。
ルイズの顔は赤くし、キュルケや陽介、そしてクマが笑う。
「わ、笑うじゃないわよ!」
「む、ムリよ。あなたたちのコンビも息ぴったりなんだもの……」
さらに使い魔二人の笑い声が大きくなる。
「あ、今、タバサも笑ったでしょ!」
「笑ってない」
「うそ!今クスって……」
「笑っていない」
どうやら意地でも認めないということをルイズは悟る。
「もういいわよ……。そういえばタバサ、アンドバリの指輪返してもらったけどいいのよね?」
タバサはこくりと頷いた。
アンドバリの指輪はかつてウェールズを操ったレコンキスタにあったと思われていたものであり、タバサたちが入城を果たしたときにジョゼフの寝室にあったものだ。
レコンキスタにもジョゼフの影があったのであろう。
「水の精霊に返すって言ったけどとりあえず戦いが終わってからになりそう」
「みんなでラグドリアン湖に行ったことも、なんだか懐かしいわね。2、3週間くらいしか経ってないはずなのに」
「近くにいたけど俺らは別だったんだよな」
陽介とタバサはラグドリアン湖の畔にオルレアン公宅、つまりタバサの実家を訪れていたが、ルイズたちと同行したわけではなかった。
「あのときはギーシュとかモン……なんだっけか?まあいいや、モンモンも一緒にいたな」
「ん、誰だ、それ?」
「ほら、アレよ。カンジが来てすぐに食堂でつるし上げてたのと、その彼女」
「へー」
ん、何でそんなやつらと一緒に行ってたんだ?という陽介の質問は無視してルイズが言う。
「今度は6人で行けたなら、いいのに……」
ルイズは手の中にある指輪を見ながらポツリと呟いた。
「いいんじゃなくて、やればいいじゃない?」
「そーだぜ」
「クマもサンセークマ」
6人で指輪を返しにラグドリアン湖へ行く。それは誰にも魅力的な提案に見えた。
しかしこの約束が果たされる日は来ることはない。


その次の日、ヴェルサルテイル宮殿でガリア新王、シャルロット・エレーヌ・オルレアンそしてアンリエッタ・ド・トリステインの戴冠が行われた。
二人の戴冠式は同時に行われたのだった。
本来、戴冠はロマリア教皇が執り行うものである。しかし彼女たちは互いに冠を授けあった。
教皇が空位の場合や、来訪できない場合は戴冠は教皇の代理人が行うのが慣例であったが、あえて二人はこの選択肢を選んだ。
それはトリステインとガリアの強い結束を示すだけでなく、6000年前から続いてきた世界の変わりつつあることを示していたのかもしれない。
審判の日は近い。


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