祐巳は迷っていた。相談すべきかせざるべきか。文化祭の出し物は紅薔薇家の専任事項。去年は祐巳自身が主役で「とりかえばや」をやった。
一昨年は姉である小笠原祥子様が主役で「シンデレラ」を演じた。
「西洋古典、東洋古典と来たから今年はまた西洋古典かな?」
しかし、妹の瞳子は演劇部のエース。どんな役でも簡単に演じられてしまうだろう。
「私やお姉さまが苦労した分位は瞳子に困って貰いたいし・・・」
この様に考えると何をやれば瞳子が困るか、お姉さまに相談したくなる。ロサキネンシスとして一人前ではないと怒られるかな? などと考えている
内に小笠原家に到着した。今日はお姉様である小笠原祥子様の誕生日。小笠原家で盛大にパーティーが行われるらしい。
「本当に制服で良かったのかしら?・・・」
お姉さまは制服で来なさいと昨日電話で注文を付けてきた。
黄薔薇家・白薔薇家はパーティーには呼ばれていない。でも祥子様のお姉様である水野蓉子様は間違いなく呼ばれているだろう。
祥子様と蓉子様に相談する良い機会である。
インターホンを鳴らしてしばらく待つと、蓉子様が出て勝手口に回るように指示された。何で勝手口なの?と思いながら勝手口に回ると、蓉子様と
瞳子が出迎えてくれた。2人ともパーティドレスだ。
「お久しぶり、祐巳ちゃん。」と蓉子様。
「御機嫌よう、お姉さま。」と瞳子。
「じゃ、祐巳ちゃん。こっちへいらっしゃい。瞳子ちゃんと私がドレスを選んであげるから」
「あの? 祥子様は?」
「祥子は主役なんだからお客様のお相手に決まってるじゃない。今日は祥子の社交界デビュー兼、婿探しみたいな物よ。祐巳ちゃんも間違いなく
ダンスを申し込まれるから覚悟して置きなさい。」
「何で私がダンスを申し込まれるんですか? 今日は祥子様のパーティーじゃないんですか?」
「祐巳ちゃんは祥子の妹なんだから、小笠原グループに渡りを付けたい殿方からダンスの申し込みがあるのは間違いないわ。要は合コンよ。」
「私帰ります。」
「もう遅いの。諦めなさい。」
「瞳子、何で前以って言ってくれなかったのよ。」
「祥子様から口止めされてました。」
パーティドレスに着替えた祐巳は、会場に案内された。50人程は居るだろうか。祥子様は中央に居た。紅色のパーティードレスに身を包んで。
「皆様、私の妹の福沢祐巳をご紹介いたします。私共々、宜しくお願い致します。」
「御機嫌よう。福沢祐巳と申します。宜しくお願い致します。」
祐巳は漸く悟った。男嫌いの祥子様は自分を弾除けに呼んだのだと・・・。来るんじゃなかった・・・と思ったがもう遅い。後で数人の男性とダンスを
踊る羽目になるだろう。もう祥子様ったら・・・。
一昨年は姉である小笠原祥子様が主役で「シンデレラ」を演じた。
「西洋古典、東洋古典と来たから今年はまた西洋古典かな?」
しかし、妹の瞳子は演劇部のエース。どんな役でも簡単に演じられてしまうだろう。
「私やお姉さまが苦労した分位は瞳子に困って貰いたいし・・・」
この様に考えると何をやれば瞳子が困るか、お姉さまに相談したくなる。ロサキネンシスとして一人前ではないと怒られるかな? などと考えている
内に小笠原家に到着した。今日はお姉様である小笠原祥子様の誕生日。小笠原家で盛大にパーティーが行われるらしい。
「本当に制服で良かったのかしら?・・・」
お姉さまは制服で来なさいと昨日電話で注文を付けてきた。
黄薔薇家・白薔薇家はパーティーには呼ばれていない。でも祥子様のお姉様である水野蓉子様は間違いなく呼ばれているだろう。
祥子様と蓉子様に相談する良い機会である。
インターホンを鳴らしてしばらく待つと、蓉子様が出て勝手口に回るように指示された。何で勝手口なの?と思いながら勝手口に回ると、蓉子様と
瞳子が出迎えてくれた。2人ともパーティドレスだ。
「お久しぶり、祐巳ちゃん。」と蓉子様。
「御機嫌よう、お姉さま。」と瞳子。
「じゃ、祐巳ちゃん。こっちへいらっしゃい。瞳子ちゃんと私がドレスを選んであげるから」
「あの? 祥子様は?」
「祥子は主役なんだからお客様のお相手に決まってるじゃない。今日は祥子の社交界デビュー兼、婿探しみたいな物よ。祐巳ちゃんも間違いなく
ダンスを申し込まれるから覚悟して置きなさい。」
「何で私がダンスを申し込まれるんですか? 今日は祥子様のパーティーじゃないんですか?」
「祐巳ちゃんは祥子の妹なんだから、小笠原グループに渡りを付けたい殿方からダンスの申し込みがあるのは間違いないわ。要は合コンよ。」
「私帰ります。」
「もう遅いの。諦めなさい。」
「瞳子、何で前以って言ってくれなかったのよ。」
「祥子様から口止めされてました。」
パーティドレスに着替えた祐巳は、会場に案内された。50人程は居るだろうか。祥子様は中央に居た。紅色のパーティードレスに身を包んで。
「皆様、私の妹の福沢祐巳をご紹介いたします。私共々、宜しくお願い致します。」
「御機嫌よう。福沢祐巳と申します。宜しくお願い致します。」
祐巳は漸く悟った。男嫌いの祥子様は自分を弾除けに呼んだのだと・・・。来るんじゃなかった・・・と思ったがもう遅い。後で数人の男性とダンスを
踊る羽目になるだろう。もう祥子様ったら・・・。
「蓉子様は弾除けになるのを承知でいらっしゃったのですか?」 祐巳は疑問をぶつけてみた。
「弾除け? 私が祥子の? まさか・・・。 あんなふうに皆に紹介されたのは祐巳ちゃんだけよ。」
「私だけ?」
「そうよ。」
「お姉さまは親しみやすくていらっしゃるから、きっと大勢からダンスの申し込みがあるでしょうね。」
「ふええ。」
「祐巳ちゃんの百面相を見るのも久しぶりね。」
「もう、笑い事じゃありませんって。絶対。」
しばらくして祐巳は蓉子様に相談する事にした。
「蓉子様。お聞きしたい事があるんですけど。」
「何かしら?」
「リリアン文化祭の出し物なんですが、どうして「シンデレラ」をやったんですか?」
「文化祭ね。あの時は祥子の男嫌いを何とか治そうとして、男と芝居させるのが良いと思ってね。でも大勢出るんじゃ逆効果だし。」
「それで王子様が一人居れば済む「シンデレラ」をやったんですか・・・。」
「そう言う事ね。今年は何をやるの?」
「実はそれで困ってるんですよ。良い出し物が思いつかなくて・・・。」
「あら、瞳子ちゃんが居るんだから、舞台は成功したも同然じゃないの。」
「いえ、瞳子が困るような芝居をしたいと思うんです。」
「瞳子ちゃんが困るような芝居? 何でまたそんな芝居を?」
「瞳子が簡単に演じられないようなお話。何か知りませんか?」
「あのお姉様、何か方向性が違ってませんか?」
「あら、私がした分の苦労を瞳子にもしてもらおうと考えているだけよ。簡単に演じられたんじゃ面白くないもの。「シンデレラ・とりかえばや」西洋古典
「弾除け? 私が祥子の? まさか・・・。 あんなふうに皆に紹介されたのは祐巳ちゃんだけよ。」
「私だけ?」
「そうよ。」
「お姉さまは親しみやすくていらっしゃるから、きっと大勢からダンスの申し込みがあるでしょうね。」
「ふええ。」
「祐巳ちゃんの百面相を見るのも久しぶりね。」
「もう、笑い事じゃありませんって。絶対。」
しばらくして祐巳は蓉子様に相談する事にした。
「蓉子様。お聞きしたい事があるんですけど。」
「何かしら?」
「リリアン文化祭の出し物なんですが、どうして「シンデレラ」をやったんですか?」
「文化祭ね。あの時は祥子の男嫌いを何とか治そうとして、男と芝居させるのが良いと思ってね。でも大勢出るんじゃ逆効果だし。」
「それで王子様が一人居れば済む「シンデレラ」をやったんですか・・・。」
「そう言う事ね。今年は何をやるの?」
「実はそれで困ってるんですよ。良い出し物が思いつかなくて・・・。」
「あら、瞳子ちゃんが居るんだから、舞台は成功したも同然じゃないの。」
「いえ、瞳子が困るような芝居をしたいと思うんです。」
「瞳子ちゃんが困るような芝居? 何でまたそんな芝居を?」
「瞳子が簡単に演じられないようなお話。何か知りませんか?」
「あのお姉様、何か方向性が違ってませんか?」
「あら、私がした分の苦労を瞳子にもしてもらおうと考えているだけよ。簡単に演じられたんじゃ面白くないもの。「シンデレラ・とりかえばや」西洋古典
- 東洋古典と来たんだから、やっぱり西洋古典がいいのかな?」
「うーん・・・・。そうねぇ・・・・。現代劇なんてどう?」
「現代劇・・・ですか? 何か良い案があるんですか?」
「祐巳ちゃんが祥子のスールになった時の話を芝居にする何てどう? 現役ロサキネンシスがプチスールになった時の話なんて話題になるでしょ
うし、瞳子ちゃんも自分のお姉様である祐巳ちゃんを演じるんだから、やりにくいと思うけど。」
「それじゃ私が祥子様を演じるんですか? 考えて見ると確かにやりにくいですね。」
「そう。瞳子ちゃんは祐巳ちゃんの百面相を演じないとね。」
「お姉さまの百面相ですか・・・・・うー・・・・。」
「現代劇・・・ですか? 何か良い案があるんですか?」
「祐巳ちゃんが祥子のスールになった時の話を芝居にする何てどう? 現役ロサキネンシスがプチスールになった時の話なんて話題になるでしょ
うし、瞳子ちゃんも自分のお姉様である祐巳ちゃんを演じるんだから、やりにくいと思うけど。」
「それじゃ私が祥子様を演じるんですか? 考えて見ると確かにやりにくいですね。」
「そう。瞳子ちゃんは祐巳ちゃんの百面相を演じないとね。」
「お姉さまの百面相ですか・・・・・うー・・・・。」
「何を芝居にするんですって?」と、後ろから声が掛かった。
「祐巳、私達のプライベートを芝居にするなんて冗談じゃ有りません。」
「お姉様、聞いてらしたんですか。」
「あら祥子。聞いてたの。」
「お姉様、私と祐巳の馴れ初めを芝居にするなんて妙なアイデアを出さないで下さい。」
「あら、良いじゃないの。充分にドラマティックだったじゃない。それに昨今、スールの成立が減って来てるって話だし。」
確かにスールの成立数は減少している。蓉子様は意外にリリアンの事を気にしてらっしゃるのかしら・・・・と祐巳は考えた。
「聞けば祐巳ちゃんと瞳子ちゃんも祥子の卒業寸前までスールにならなかったって云うじゃない。文化祭の題材としては丁度良いんじゃない?」
蓉子様の考えは確かに正しい。私と祥子様の馴れ初め話でスールが増えるのなら、文化祭の出し物の題材として取り上げるのも悪くない。
けど、祥子様の目が絶対に拒否しろと言っている。瞳子もそれなりに困る題材だろうし、申し分無いと言えば無いけど、祥子様と私の2人だけの
秘密を公開する事に抵抗が無い訳ではない。それに現在リリアン女子大に通われている祥子様が文化祭に来る事は間違いない。知られずに
上演する事など不可能だ。確かに良い題材では有るけど、お姉様を説得しなくちゃいけないな・・・・・と、祐巳は考えた。瞳子の反応は・・・・と
みると、既に役作りの事を考えているのか、蓉子様と祥子様の間で考え込んでいる。
音楽が始まった。
「お嬢様方、談笑もよろしいけど、そろそろダンスタイムですよ。」と、柏木さんがいつもの微笑を浮かべて近づいてきた。
今日の祥子様のダンスのトップバッターは柏木さんらしい。
「あら? これ・・・・何かしら?」
「ん? どうしたんだい、さっちゃん」
「これよこれ、キラキラ光って・・・・」
「どうしたんですか? お姉様」
「みんな、これが見えないの?」
祥子様が手を伸ばしたと思った途端、中空に祥子様が消えた・・・・・。
音楽は止まり、パーティーは終わった。
衆人環視の中、小笠原祥子様が一瞬にして消えたのだ。パーティーの主役が神隠しに遭った。後にはどよめきだけが残った。
祐巳は祥子様が消えた空間を呆然と眺め続けた。
「祐巳、私達のプライベートを芝居にするなんて冗談じゃ有りません。」
「お姉様、聞いてらしたんですか。」
「あら祥子。聞いてたの。」
「お姉様、私と祐巳の馴れ初めを芝居にするなんて妙なアイデアを出さないで下さい。」
「あら、良いじゃないの。充分にドラマティックだったじゃない。それに昨今、スールの成立が減って来てるって話だし。」
確かにスールの成立数は減少している。蓉子様は意外にリリアンの事を気にしてらっしゃるのかしら・・・・と祐巳は考えた。
「聞けば祐巳ちゃんと瞳子ちゃんも祥子の卒業寸前までスールにならなかったって云うじゃない。文化祭の題材としては丁度良いんじゃない?」
蓉子様の考えは確かに正しい。私と祥子様の馴れ初め話でスールが増えるのなら、文化祭の出し物の題材として取り上げるのも悪くない。
けど、祥子様の目が絶対に拒否しろと言っている。瞳子もそれなりに困る題材だろうし、申し分無いと言えば無いけど、祥子様と私の2人だけの
秘密を公開する事に抵抗が無い訳ではない。それに現在リリアン女子大に通われている祥子様が文化祭に来る事は間違いない。知られずに
上演する事など不可能だ。確かに良い題材では有るけど、お姉様を説得しなくちゃいけないな・・・・・と、祐巳は考えた。瞳子の反応は・・・・と
みると、既に役作りの事を考えているのか、蓉子様と祥子様の間で考え込んでいる。
音楽が始まった。
「お嬢様方、談笑もよろしいけど、そろそろダンスタイムですよ。」と、柏木さんがいつもの微笑を浮かべて近づいてきた。
今日の祥子様のダンスのトップバッターは柏木さんらしい。
「あら? これ・・・・何かしら?」
「ん? どうしたんだい、さっちゃん」
「これよこれ、キラキラ光って・・・・」
「どうしたんですか? お姉様」
「みんな、これが見えないの?」
祥子様が手を伸ばしたと思った途端、中空に祥子様が消えた・・・・・。
音楽は止まり、パーティーは終わった。
衆人環視の中、小笠原祥子様が一瞬にして消えたのだ。パーティーの主役が神隠しに遭った。後にはどよめきだけが残った。
祐巳は祥子様が消えた空間を呆然と眺め続けた。
ルイズは召還された人物を見て蒼くなった。その人物は紅色のドレスに身を包み、黒い髪をした年長の女性だった。そのドレスはその人物が
舞踏会に出席していた事を物語っていた。
「ルイズが貴族を召還したぞ!」
コルベールは慌ててその女性に近寄り、調べた。
「大丈夫、気を失っているだけみたいですぞ。すぐに救護室へ運びなさい。」
ルイズは自分のサモンサーヴァントが起こした結果を考え、恐ろしくなった。
「どこかの国から貴族を召還してしまうなんて・・・。今度こそ退学に成ってしまうわ。何で私ばっかり・・・。」
運命を呪いながらルイズは救護室に向かった。救護室ではコルベールが召還された女性を気付け薬を使って起こそうとしているところだった。
「ミス・ヴァリエール。そこに座りなさい。今この方を起こすから、君もちゃんと見届けなさい。」
「はい。」
舞踏会に出席していた事を物語っていた。
「ルイズが貴族を召還したぞ!」
コルベールは慌ててその女性に近寄り、調べた。
「大丈夫、気を失っているだけみたいですぞ。すぐに救護室へ運びなさい。」
ルイズは自分のサモンサーヴァントが起こした結果を考え、恐ろしくなった。
「どこかの国から貴族を召還してしまうなんて・・・。今度こそ退学に成ってしまうわ。何で私ばっかり・・・。」
運命を呪いながらルイズは救護室に向かった。救護室ではコルベールが召還された女性を気付け薬を使って起こそうとしているところだった。
「ミス・ヴァリエール。そこに座りなさい。今この方を起こすから、君もちゃんと見届けなさい。」
「はい。」