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mission 26 「Arutimishia」


「目処が立った!?」
 エスタ大統領執務室。
 報告に来た親友の言葉に、ラグナ・レウァール大統領はがばと立ち上がった。
「ああ。スコールくんの居る時代に、エルオーネが『接続』できる魔女が見つかったんだ」
「そうか……ならもうじき帰ってくるんだな!」
 うんうんとしきりに頷き、ラグナは少し涙ぐんだ。
「ただ……問題もあってな」
「問題?」
 キロスの言葉に、ラグナは首をかしげる。
「ああ。その時代に居た、接続出来る魔女というのが……」


 現在、ラグナロクはアルビオンへ向けて飛行中だった。
 受けている護送任務はモード大公国から。乗っているのは、元ウェストウッドの村にいた子供達だ。
「すっごーい!テファ姉ちゃんがお姫様なんて!」
「あたしたちも、お城に住むのかな?」
「俺、テファ姉ちゃんを守る騎士になるんだ!」
「ばっかでー。騎士ってのはメイジがなるもんだぜ?」
「成れるよ!今は平民でも使える魔法があるんだから!サイファーだって騎士だもの!」
 ラグナロクのキャビンは、実に喧しかった。
「一応言っておくが……状況は決して良いとは言えない」
 喧噪の中、一番年嵩の少年に、アニエスは小声で告げる。
「大公女は未だに敵は多い。今回君たちを連れてくるように依頼を受けたのも、連れてこれるぐらい情勢が安定したのではなく、目の届く範囲に置いて警護しなければ、人質に取られる可能性が出てきたからだ」
「判ってるよ。俺だってこの三ヶ月ただ孤児として暮らしてたわけじゃないんだぜ。近くの村で盗賊団が出たときなんかも、討伐団に積極的に参加して腕を磨いて……テファを守れるようになったんだ」
 気負いを想いで支えて、少年は窓の外を睨む。
 そんなキャビンの一つ上、ブリッジに居るのはスコールとジョーカーだ。
「ハルケギニアの上空を通過。海に出る」
 機外カメラで雲の狭間に見える青を確認し、スコールは確認の言葉を告げる。
「何の問題もなく着けるかな?」
「飛んでいる間はラグナロクに誰も追いつけない。敵襲があるとするなら、着陸したときだ」
 それでも、最も注意すべきは孤児院近くに停まるトリステイン側での事で、完全に出迎えの用意までしているモード大公国側では然程気にしなくて済むだろう。
「ところで、ジョーカー」
「ん?」
「お前とアニエス……いつからの仲なんだ?」
「……意外だね、委員長がそんなこと聞くなんて」
「普通なら、聞かないが……」
 軽く首を振りつつ、その点には同意する。
「最近のアニエスがメンタル的に落ち着いているのが、そこに原因があるんだとしたら……ガリアでのオルレアン派からの依頼が終わってからか?」
「……良い勘してるね、委員長も」
 苦笑いを浮かべつつ頷くジョーカー。
「意識してたのは、お互いに前からかな。委員長がお酒付き合わないから、自然に愚痴やら何やらは俺の方が引き受けてたからね。仲良くはなってたよ。
 それで……ガリア王ジョゼフとの戦いの時一回全滅しかけたんだって?あの後振る舞われたビールも入って、戦闘中の死の恐怖から来た吊り橋効果も手伝って……かな」
「成る程な……ジョーカー、言わなくても判ってると思うが、俺達は……」
「この世界にとっては行きずりの存在、だろ。判ってる、俺にだって夢はあるからな。俺達の世界に帰る。その前提で生きてる」
 スコールの言葉に、軽くジョーカーは頷いて見せた。


 先の戦乱での被害も少なく、また元々マチルダの伝も強いシティオブサウスゴーダは現在公国の首都となっている。
 無事にアルビオンへ子供達を送り届けて、マチルダと久しぶりに会う。ジョーカーは子供達と別れをしていて、スコールはかつて孤児院に送り届けたときと同じにアルビオンで留守番を決め込んでいる。
 サイファーがいればジョーカーの方に留守番を頼んだかも知れないが、現在サイファーは急激に拡大した領土の平定のため、アルビオン中をかけずり回っていた。
「それで、治安は維持できているのか?」
「それが……あたしも戸惑ってるんだが、本当に静かなもんさ。テファのことについて、もちろんあれこれ言う連中もいる。直接的に攻撃してくる奴もいるが……はっきり言って村にいた頃に迷い込んできた山賊やらの方が余程多いくらいなんだよ」
 困惑顔でそう言いつつ、マチルダはティーカップを口に運ぶ。
 この辺りの事情は建国に遡る。
 前に述べたとおり、アルビオンの人々は元々地上国家のトリステインやゲルマニア、ガリアに分割統治されていた状況を快く思っては居なかった。ティファニアを簡単に受け入れた一つめの理由は、元々のアルビオン王家の流れを組んでいたからだ。
 第二に、その滅亡した旧アルビオン王家の扱いにある。
 ティファニアが玉座に着く際に公に改めて大きく宣伝したのは、ティファニアの家であるモード大公が廃せられるに至った経緯である。
 勿論、アルビオンの人々はモード大公がエルフと関わっていたことを知っているのだが、ここで二つの事実を加える。則ち、モード家を廃した王家は滅び、そしてモード家の忘れ形見に虚無がいたことだ。
 これを踏まえて、旧王家が滅びたのは虚無を蔑ろに扱ったために始祖の怒りを買ったのであるとし、ハーフエルフのティファニアの統治の正当性を虚無であるという一点で強調する。トリステインの新女王の存在もその理論を後押しすることとなる。
 こうしてお膳立てを整えた上で現ゲルマニアからの資金援助を受け、まず第一に唱えるのが民達の暮らしの改善だ。地上で数少ない、殆ど戦場になっていない土地から食料を買い貯めていたゲルマニアは、大量の麦をアルビオンへ輸送。その統治の手助けとしていた。
 露骨な人気取りと揶揄する者もいるが、少なくとも現実として餓えずに暮らさせてくれる王の登場にアルビオンの民達はそうそう表立った非難を口にはしなくなった。
 統治の最後のツメでゲルマニアの名が出てきたが、これらのことを計画したのは全てオットーである。ついでに、ティファニアの母親であるエルフが熱心なブリミル教徒であることも流布しようとしていたのだが、こちらは上手く噂に乗らず、失敗している。
 噂流布の意図としては、対ロマリアにおいての味方の増加を計ることがあった。
 現在のアニエスがブリミル教徒を自認しながらも、教皇庁に対しては不服従の心を固めつつあるのと同じように、エルフへの敵対心を煽るこれまでの教えとハーフエルフの虚無という矛盾を認識させ、現在の教皇庁への疑心を芽生えさせようとしたのだ。
 一応この意識改革は、エルフを血に加えているという事実を抱えるモード朝にとって、支配を盤石にするために非常に重要な一点であった。
 この思想転換はティファニアの息子がその玉座に着く際に、国教会の設立を宣言すると共に成されることとなるのだが、やはりスコール達には関係のない話だ。
「まぁ、そんなわけで、まだしも目の届く範囲にって事になったんだけどね」
「判るさ。教皇庁の影響力の強いトリステインに置いておくのは、確かに得策とは言えない」
「……何か、あったのかい?」
「いや……実害はないが、私の幼なじみによると、あの子達の素性を探ろうとしていた連中が居たらしい。そのせいか、孤児院の中でも若干存在が浮き始めていたようでもある」
 そのウェストウッドの子供達を探っていたのは、現トリステイン王朝の間者達だ。
 現トリステイン女王が即位したのは教皇庁の肝煎りが有ってのことだが、前のガリアでの偽女王騒動を受けて、現王朝の実質的政治主導を握っているラ・ヴァリエール公爵は危惧を抱いた。
 娘も同じく偽物にすり替えられるのではないかという直接的な危険もさることながら、ガリア、ゲルマニア、アルビオンの三国が同盟を結び、ロマリアとの冷戦状態に入っているのだ。
 ハルケギニア全体の流れが、ロマリアから離れつつある。これ以上ロマリアという船と一緒にいてはトリステインまでが沈没しかねない。そしてそうなればやはり、彼の娘はトリステインの元首である以上タダでは済むまい。
 同盟とは行かないまでも最低限、ゲルマニアとの和平は締結しなければと、元々隣領地で、表面上は親交のあったツェルプストー家の娘を通じてガリアへ仲介の当たりをとっていた。
 その途中――公爵としては驚くべき事だったのだが――何と同じく教皇庁と手を切る方法を画策していた“鶏の骨”マザリーニ枢機卿から、より近い道を見つけたかも知れないと連絡が入った。
 その枢機卿が見つけた道というのが、ウェストウッドの子供達であった。
 元々スコール達を監視し続けていた枢機卿は、トリステインの誰よりも早く、孤児院に入れられた子供達の存在に気づき、また教皇庁の情報網を通じてその素性や縁者などにも精通していた。
 それが事ここにいたり、自らの祖国のために枢機卿の身分もかなぐり捨ててどうにか当たりを付けようとしていたのだ。
 その際に居たのがアニエスの言う、素性を『探ろうとしていた』者たちだったのだが、結局彼ら自身がアルビオンへと行ったためにその道は閉ざされることとなった。
「ふぅ……間一髪だったのかもねぇ」
 マチルダが深くため息をつくが、一応取り越し苦労であることはここに明記しておく。もし一月以上移動が遅れていても、国を救うためのパイプ役として、子供達はむしろ下にも置かぬ扱いを受けていただけだろう。
 尚、『近道』を失ったトリステインだが再度改めて、今度は公爵と枢機卿が連携してツェルプストー家を通じガリアへの仲介を依頼。二月後には無事、ゲルマニアとの和平を締結するに至り、国体は長く保持されることになる。


 公城を出て、ジョーカーと共にラグナロクへ戻りハンガーへ上がったところ、驚愕に目を見開いたままの体勢で、スコールがこちらへ僅かに腕を伸ばしたまま制止していた。
「!?……どうした?」
 一瞬異様な光景に言葉を失ったが、スコールの尋常でない表情にとりあえず問うてみる。
「あ……アニエス……」
 腕を下ろしつつも、驚愕の表情だけは変わらぬままでスコールは視線も下ろす。
「酷い顔だね。幽霊でも居たのかい?」
「!……そんなものだ」
 ジョーカーとしては軽口を叩いたつもりだったが、スコールには笑えない冗談だった。
「魔女が来ていた」


 アニエスとジョーカーは子供達と下りて、艇内で留守番中のスコールには特にやることもなく、暇を見てはやっているガンブレードの解体整備に精を出していた。
 何せ、使いを荒くせざるを得ない割にデリケートな武器だ。手入れはしておいてし過ぎることはない。
 ガン部分の本体のグリス塗りまで終えて、マガジン内部の清掃をしていたときだ。
「……eeD……SeeD、SeeD!」
 一瞬、幻聴かと思った。
 良く聞き慣れた声が自分の耳を突いたのに、反射的に立ち上がって身構える。
「あ……アルティミシア!?」
 真っ赤なドレスに真っ黒い魔女の翼。妖しげな美しさを湛えた魔女が、僅かに至近。ラグナロク内に、居た。
「このような異世界に来て尚、お前は居るのか……」
「何故、お前がここに……」
 そう問うだけで精一杯だった。
「フフフ……時をも操れる魔女の力ならば……物理的な距離や障害など何の意味も持たない……忘れたの?イデアを操っているとき、私はそうしてお前達の前から消えたこともある」
 違う。そうではない。
 自分が聞きたいのはそういうことではないのだ。
 だが、驚愕と焦燥とで作られる思考停止という名の精神的監獄から、スコールが立ち直るよりも先にアルティミシアが動く。
「!?」
 掲げられた左腕から射出されたカーディナルが、避け損ねたスコールの右頬を掠めてハンガー内を飛び、アルティミシアの腕に戻る。
「私は今はロマリアにいる。来なさい、SeeD……あの時の続きを、今度こそは決着を付けてあげる」
 それだけ言い残して、空気に溶けるようにアルティミシアの姿はかき消え、次の瞬間アニエス達が帰ってきたわけだ。


 顔を押さえ、呻くようにスコールは呟く。
「正直……あれが何かの幻か白昼夢だったと思わないでもない……」
「けど、その傷だけは本物だ。そうだろ?」
「ああ……あのアルティミシアも、本物だということになる」
 ジョーカーの問いに、切れた頬をなぞりながら頷き返す。
「何故生きているのかも、何故ハルケギニアに居るのかも判らないが……」
「その……魔女アルティミシア、か?死んだふりをしていただけではないのか?」
「いや、あいつはただ死んだ訳じゃない。おそらく、寿命はとうに尽きていたのが、魔女の力だけで生きながらえていて、ママ先生が魔女の力を継承したことで生きるための根源となっていた力を失い、消滅したんだ……。
 力も失って、そんな死んだふりが出来たとも思えない」
 アニエスの推測に、首を振って否定する。
「俺はあの戦いで魔女に会わなかったし、何で死んだものが生きているのかも判らないけど……何でここにいるのかは判ると思うぜ」
「アルティミシアがハルケギニアに居る理由がか?」
 割とあっけらかんと言ってのけるジョーカーにスコールは目を向ける。
「ああ、こないだの教皇庁からの女王奪還作戦の時、教皇サマが言ってたからな。俺を殺して、その代わりに新しい使い魔を喚ぶって……俺は生きてるけど、あの時の戦いでルーンは消えた……それで、もう喚べることになってるって事じゃない?」
「なら、あのアルティミシアは……」
「教皇が喚んだ、って俺は考えるね」
 頷いて、ジョーカーは続ける。
「委員長と魔女アルティミシアの関係は俺は知らない。けど、わざわざこんな所に挑発に来るって事は道でばったりあっただけでも只じゃ済まない相手だろう。
 そんな相手が前からハルケギニアにいたのなら、とっくの昔に委員長の前に現れてる。
 今日になってようやく現れたのは、最近召喚されたから。教皇が新しい使い魔を喚べるようになってから結構経つ時期なのは……一度委員長は彼女に勝ってるんだろ。その時の傷を癒すため、とか?」
 理屈は、通る。
「……あいつは、今は教皇の使い魔か」
「世知辛いもんだね。俺達の世界の未来をほぼ手中に収めて、過去にまで手を伸ばそうかっていう魔女様が、今や他人の使いっ走りとは」
 軽く肩をすくめるジョーカーにアニエスは口を尖らせる。
「だが、何故アルティミシアという魔女はレオンハートの後背を突かなかったんだ?ライオンハートも整備中で、得物もないレオンならば絶好の機会だっただろうに」
「それこそ、魔女が教皇に喚ばれている理由の本丸さ。委員長に一度負けている魔女だ。二の轍は踏みたくないだろう。
 罠なり、伏兵なりを潜ませることで必勝を誓ってリターンマッチに臨もうとするはずで、その為の場所がロマリアなら……」
「……聖堂騎士団と虚無の教皇の力が味方に換算できる立場、という訳か」
 ジョーカーの推理にアニエスは渋い顔をした。
「けど拙いかもな……下手をするとロマリア教皇庁周辺一帯は、全部あいつの制御下に置かれてたりしないか?何しろ、魔女だし」
「暗示や、催眠ということか?」
「ん」
 アニエスの問いにジョーカーが短く頷き返すが、今度は明確にスコールが首を振った。
「いや……第二次魔女戦争中、あいつは他の誰を操ったことはなかった。おそらくアルティミシアは誰かを操る術を持たない」
 ガルバディアのビンザー・デリング前大統領は元々その力を利用するためにイデアに入ったアルティミシアを利用していたが、彼女が自分の手の内から出ようとしたところで制止をかけ、逆に殺された。
 サイファーは元々『ロマンティックな夢』を追いかけていたのでアルティミシアには協力的だった。
 スコール達は一度その行動を停止させられていたが、あれはどちらかというと擬似魔法でいうストップに類する時間制御系の術と見るべきだろう。
 魔女のイベントの時デリングシティに居た人々は、あれは単なる集団心理だ。一時の狂乱、興奮状態に過ぎず、操られていたと言えるものではない。
 唯一の例外はリノアで、デリングシティ潜入任務中半ば操り人形となって危うく生け贄にされそうになった。
 だが後々のことを考えれば魔女の継承者である彼女はそれこそ例外とカウントするべきだろう。ガルバディア・ガーデン、エスタの宇宙ステーションなどでは直接操られてもいる。
「それに、操られていないからといって、教皇が手を貸さないとも限らない。むしろ教皇、アルティミシア双方がお互いの経緯を理解すれば、俺を排除するために結託しても不思議じゃない」
(俺を倒した後は、判らないが……)


 ロマリア教皇庁。白亜の大理石で出来た建物を臨める街の入り口に、スコール、アニエス、ジョーカーの三人が立つ。
「ラグナロク……空にして良かったのか?」
 そこら中に浮浪者が踞り、決して衛生的とは言えない大通りを歩き出して、アニエスが尋ねる。
「良い訳じゃないが……手が足りていない。虚無相手にはジャンクション人員が二人は必要なのはジョゼフとの戦いで証明済みだが、同時に今回は魔女も相手にしなければならない可能性が高い」
 渋い顔でスコールは呟く。
「二対三か」
「いや、アルティミシアは俺一人で相手をしてみせる」
 首を振り、きっぱりとスコールは言い切る。
「大丈夫なのか?前の時はお前の仲間も一緒で倒したんだろう」
「問題ない……時間圧縮を使ったあいつの策略で、最終的に一対一にまで持ち込まれたが、それでも俺は勝った。今度も不覚をとらなければ、負けはしない」
「それなら、虚無相手に私とジョーカーの二人がかりで挑めるか……」
「いいや」
 脳内で戦略を組み立てようとするアニエスを、ジョーカーが遮る。
「悪いんだけど、俺も因縁があるんでね。もしあの教皇がやる気なら、こっちのオーダーだ。タイマン張らせてもらうよ」
「馬鹿な!幾ら何でも虚無相手に一人では無理だ!ガリア王相手でも私とレオンハートでギリギリの勝利だったというのに……」
「何とかなるんじゃない?」
 心配そうに顔を曇らせるアニエスにジョーカーはあっけらかんと言ってのける。
「委員長とアニーがガリア王相手に苦戦したのは、ガリア王がジャンクションを使っていたっていう要素も大きかったんじゃないか?
 元々同時に二つの魔法は使えないのがメイジの系統魔法だし、話に聞いた『加速』の虚無も、普通の人間の膂力だと大した驚異になるとは思えない。
 何より教皇サマにとっちゃジャンクションなんてのは異教徒の使う異端中の異端だろう?その異教徒を排除するのに系統魔法以外の力に頼るのは本末転倒ってものだ」
「しかし……」
「それに、俺と委員長がそれぞれとタイマン張ってる間だって、他にも教会の騎士サマ達も居るからね。『後々』のこと考えると、余計な被害は出さない方が良いだろうし、アニーにはそっちの足止めに専念して欲しいんだ」
 きっちりと戦略を踏まえてのジョーカーの言葉に、アニエスは頷かざるをえなかった。
「さて……」
 白亜の城の城門が見えてきて、ジョーカーは軽く笑みを浮かべる。
「蛇が出るか何が出るか」
「蛇は出ない。居るのは魔女と虚無だ」
 城門の前に立った聖堂騎士三名。その目の前でスコール達は足を止める。
「傭兵、シードだな」
「そうだ」
 シャッと杖がそれぞれ一人に一本ずつが向けられる。
「教皇猊下がお待ちだ。入れ」
 半ば以上、脅しとして杖を突きつけているらしいが、彼らは果たしてそれが全く意味を成さない行為だと判っているのだろうか。
(ガリアに間者が紛れていた点から言っても、情報収集を怠っているとは思えない。俺達はいくつもの戦場で系統魔法を無効化してきている。先のガリア女王奪還作戦の時のジョーカーも見たはずだ。それに気づいてない事はない。
 それではこれは……対応しきれていないのか?)
 スコールの予想は半ば当たっていたが、正確にはこれは対応「しきれていない」のではなく、対応「する気がない」のだ。
 自分たちはブリミル教徒の中でも特に教えを信望する者たちであり、その自分たちがメイジではない平民に負ける筈がないのだ、と思う。
 言ってみればそれこそが宗教であるとも言える。
 一つの教えに縋り、信じ、思考を硬直化させ、その範疇に入らないものを異端者であると断じ、排除しようとする。宗教の持つ影の面。そこを肥大化させた者たちの総本山に、スコール達はゆっくりと入っていった。


(SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger

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