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ゼロのペルソナ 第13章 死神 後編


ルイズたちが魔法学院からトリスタニアへ向かう間に日は落ちてしまった。当然、視界は悪くなるが一行は馬の速度を落とさない。
その強行軍の中で突然、タバサが馬を止めた。それを見て陽介とキュルケも馬を止める。
「どした?いきなり止まって」
タバサは道の外れの茂みを見つめている。
3人が止まったことで最後尾の完二も止まらざるえなくなり、先頭を駆けていたルイズも取って返してきた。
「ちょっと、何してるのよ!早くしないと姫さまが!」
「血の匂いがする」
タバサの返答は短かったが、聞いた者を緊張させるには十分だった。
タバサは馬の首を道から60度ほどずらして森の中へと入っていった。他もそれに続いた。
その先は死屍累々の光景が広がっていた。焼け焦げたり、体の一部分がなくなっているような人間の死体や、血を吐くヒッポグリフたち。
「王家のヒッポグリフ隊だわ……!」
ヒッポグリフ隊はトリステイン王家に忠誠を誓う近衛部隊である。それが今、目の前で倒れ伏している。
ルイズは自身の最悪の予感が的中しそうにあると感じた。
「生きている人がいるわ!」
キュルケの声で一行は馬を下りて駆けつける。
腕に深い怪我を負っていたが、なんとか生きながらえているようだ。
「なにがあったの?」
「姫さまが……」
「さらわれたのね?犯人はどっちに」
その兵は怪我を負っていないほうの手をぷるぷると震わせながら指差した。
その指先は森の中で比較的道なりをなしている方向に向いている。伝えることを伝えたので安心したのかその兵は気絶してしまった。
「おい、クマ。お前はここで出来る限り助けてやってくれ。キュルケもここに残ってやってくれ」
陽介の指示にクマとキュルケは力強く頷いた。
その場を彼らに任せてルイズ、完二、タバサ、陽介は再び乗馬し、先ほど傷付いた兵が教えてくれた方向へと駆ける。
突然、横合いから魔法攻撃が飛んで来た。タバサが瞬時に反応して空気の壁を作り、火球、氷槍、風刃を防ぐ。
だが全てを防ぎきるとまではいかず、馬が攻撃を受け、また受けなくても驚いたために4人は馬から振り落とされてしまった。
それでも4人は危険を肌身に感じ、すぐさま立ち上がって攻撃に備える。
しかし攻撃は飛んでこない。代わりに襲撃者たちが姿を現した。その中にはやはりというべきかウェールズがいた。
そしてその傍らに立つ姿は……
「ウェールズ皇太子!姫さま!」
ウェールズとその隣のアンリエッタ姫の姿を認め、ルイズは叫んだ。

だがアンリエッタは臣下に応えず、代わりにウェールズが静かに喋り始める。
「君はルイズだね。それにカンジ。あとはヨースケとタバサだったけかな。まあいいか。
ルイズ、その指に嵌めている水のルビーを返してくれないか?」
突然の申し出にルイズは声を荒げて返す。
「なぜあなたに渡さなければいけないのですか!」
「ぼくじゃないさ。それはもともとアンリエッタのものだ。だから彼女に返してあげてくれ」
「わっけわかんねえことをベラベラと……!」
イライラとする完二に陽介は緊張した趣で言った。
「言ってわかる様子じゃねえぜ、ありゃ……。ペルソナ!」
頭を焔とする陽介のペルソナ、スサノオが現れ、マハガルを発動する。
アンリエッタをさらっているメイジたちは陽介の素早さに反応できず疾風の刃に体を刻まれる。
だが襲撃者はそのまま地面に倒れこむことはなかった。なんとスサノオのつけた傷がふさがっていくではないか。
そしてメイジたちが攻撃を受けた痕跡は服にだけ刻まれ、その肌にはかすり傷一つ消えてなくなった。
その非現実的光景にたじろぐなかでタバサは素早く氷の槍をウェールズに放った。
わき腹に細い氷が突き刺さるが、その穴もすぐにふさがってしまう。他のメイジたちと同じだ。
その光景を見て、アンリエッタの表情が変わる。
「見たでしょう!それは王子じゃないわ!別の何かなのよ!姫さま!」
アンリエッタはそれでも信じたくないというふうに頭を振る。そして苦しそうに言った。
「お願いよ、ルイズ。わたしたちを行かせてちょうだい」
「姫さま?なにをおっしゃるの!それはウェールズ皇太子じゃないのですよ!姫さまは騙されているんだわ!」
アンリエッタは笑った。鬼気迫る笑みだった。
「そんなことは知っているわ。唇を合わせたときからそんなことは。それでも構わないわ。嘘かもしれなくても信じざるを得ないものよ。
わたしは誓ったのよルイズ。水の精霊の前で、誓約の言葉を口にしたの。『ウェールズさまに変わらぬ愛を誓います』と。
世の全てに嘘をついても、自分の気持ちだけにはうそはつけないわ。だから行かせてルイズ」
「姫さま!」
「これは命令よ、ルイズ・フランソワーズ。わたしのあなたに対する最後の命令よ。道を空けてちょうだい」
姫の言葉に宿る固い決意を感じ、ルイズは言葉を失ってしまう。しかし使い魔たちはちがった。
「んなのなんの言い訳にもなってねえ。テメーの好きなヤツの顔に泥塗るつもりかよ」
「そうだ!皇太子さんもそんなことは望んでなかったはずだ!」
アンリエッタの顔が羞恥で赤くなる。

なにか言い返そうとするアンリエッタを制止したのはウェールズ、いや操られたウェールズの死体だった。
「ならば交渉の余地はないということだね」
「たりめーだ」
瞬間ルイズたちを挟み込むようにしていたメイジたちから魔法が飛ぶ。
完二はデルフリンガーで弾き攻撃をかわしながら自分の主をまもった。
陽介は自分に傷をつけられない風攻撃は意に介さずそれ以外の攻撃を避け、タバサは風を操って攻撃を逸らす。
敵の攻撃の波が弱くなった瞬間、完二はデルフリンガーを地面に突き立てた。
相手が死体ならば遠慮はいらない。
「砕け!ロクテンマオウ!」
完二ももつ最高の電撃魔法マハジオダインが放たれた
。耳を塞ぎたくなるような激しい雷鳴とともに超高圧の電撃がメイジたちを襲う。
電撃に体を焼かれたために回復することもできず、動く死体は動かぬ死体に変わってしまった。
最後に残ったのはウェールズの姿をした誘拐犯だけであった。
「さあ、姫さんを返してもらうぜ」
「来ないで!」
完二がウェールズに近寄ろうとするとそれを遮ったのはアンリエッタだった。
「来たらわたしは自害します!」
アンリエッタの魔法の杖を両の手でぎゅうと強く握り締めて、そう言った。
彼女の言葉が嘘ではないのはその表情が教えている。
「カンジ!動かないで!」
「クソッ!」
アンリエッタの目は狂気をはらみながら真剣そのものであり、近づけば実行することは確実だった。
ウェールズだけを攻撃しようとしても、二人はほとんど抱きあうような距離で、攻撃をすれば姫まで巻き込んでしまう。
ルイズたちは動けなくなってしまった。
「さあ、アンリエッタ。ぼくらの幸せを邪魔するものをここで叩きのめそう」
「はい」
アンリエッタはもうウェールズの姿をしたそれ以外、何ものも信用していない。
『水』、『水』、『水』、そして『風』、『風』、『風』。
水と風の六乗。王家のみに許されたヘキサゴン・スペル。
風と水がまざり合い、水の嵐が生まれる。
詠唱が重なり、それはさらに巨大に膨れ上がる。
津波のような竜巻だ。城でさえ吹き飛ぶだろう。
その天災のような光景を呆然とルイズたちは見ていた。

しかしルイズはすぐに顔を鋭いものにした。その竜巻を、いやその向こうにいる人をきっと見る。
「カンジ、ちょっと時間を稼いで」
「ハア?オマ、アレをどうやって?つか時間稼いでなんとかなんのかよ?」
疑問符が多く付けられた言葉にルイズは確信を持って答えた。
「なんとかするわ。主君の悪夢を晴らすのも家臣の仕事で、友としての義務よ。それに……」
「あん?」
怪訝そうな顔をする使い魔にご主人様は挑発するように言った。
「守ってくれるんでしょう?」
ルイズのことを守る。それは完二が、アルビオンへ向かう旅の中で、そしてニューカッスル城でした約束だ。
ルイズは挑発するような笑みに完二も気楽に返す。
「へっ、たりめーだろ!」
使い魔の言葉を聞くとルイズは始祖の祈祷書を開き、一心に呪文を紡ぎ始めた。
台風は目の前に迫りつつある。
「んじゃ、腹くくるか」
「おう。それが使い魔ってもんだろ?」
完二の手にした剣が語りかける。
その肩に手が置かれる
「ま、先輩も手伝ってやっからさ」
「センパイ……!」
「おい、タバサ。危ないからお前だけでも離れてろ」
タバサは首肯せずに首を振ると「ここにいる」と呟いた。
おいおい。と陽介は苦笑した。退けない理由が増えてしまった、という風に。
主の前に壁のように立ちふさがった完二と陽介を氷の嵐が襲う。
完二はデルフリンガーで魔法を吸収するが、すべて防ぎきれるはずもなく体中に切り傷が出来ていく。
陽介は風属性の攻撃を一切受けないが、嵐は鋭い水を含みそれが陽介の体に傷を作っていく。
だが、二人とも負ける気はしなかった。彼らの背後で唱えられるルイズの呪文が彼らに勇気を与えていた。
嵐の渦中にあり、聞こえるはずもないだが、感じるのだ。自分たちを鼓舞する魔法を。
二人の胸にあるルーンが強く輝く。

なぜ自分が魔法を使えるようになったのか自分ではわからない。
どうして自分が虚無の魔法を使えるようになったのかはわからない。
ただ自分には主君を、友を救う力があるとわかったのだ。ならばその力を使うことに逡巡はいらない。
自分のことを信頼して完二と陽介、それにデルフリンガーも自然災害に等しい巨大な台風を防いでいる。タバサが隣にいるのだって自分を信頼しているからだろう。
だったらその信頼に応えるしかない。
ゼロと言われた自分を信じてくれる人たちを裏切れない。
ルイズの中で生まれ、そして発露を求める力が杖先から放たれる。
ルイズはあらゆる魔法を打ち消す虚無の魔法『ディスペル・マジック』を唱えた。それは王家のヘキサゴン・スペルも、水の精霊の力さえも打ち消す。

嵐は去って、悪夢は終わりを告げた。

精神力を使い果たして気を失っていたアンリエッタが目を覚ますと彼女の周りには多くの人がいた。
ルイズとその使い魔そしてその友人、またヒッポグリフ隊の隊員たち。
アンリエッタは、ヒッポグリフ隊は自分の前で殺されたものと思っていたので驚愕し、そして安堵した。
クマがいなければ、本当に全員が死んでいたかもしれない。
クマはメディアラハン、サマリカームといった使える最高の回復魔法を駆使して死の世界へと膝まで浸かっていた人たちを助けたのだ。
それでも数人手遅れで助けられなかった者もいたが、今回の最大の功労者はクマと言ってもいい。
アンリエッタは身を起こした。傍らにはウェールズの冷たいなきがらが横たわっていた。
ウェールズから視線を離し、自分を囲んでいる人たちを見る。誰も怒ってはいなかった。
その目に同情をたたえている者すらいたぐらいだ。そのことがかえってアンリエッタのしでかしたことの重大さに気付かされる。
どうしようもなく生者から視線を逸らし、傍らの死者を見た。自分の隣に横たわっていたのはウェールズの死体だ。
ついさっきまで動いていたものが、今は目を閉じ静かに横たわっている。
その姿はまるで死体のよう、いや事実としてやはり死体であるのだろう。
「ウェールズさま……」
アンリエッタはそっとウェールズの頬に手を当てた。
その時信じられないことが起こった。ウェールズの目が開いたのだ。
「……アンリエッタ?きみか?」
弱々しい声だったが、恋人は聞き違えるはずもないウェールズの声だった。
「ウェールズさま……」
間違えようもない。偽りの生命を与えられた操り人形ではない。本物のウェールズだった。
「なんということでしょう。おお、どれだけこの時を待ち望んだことか……」
ウェールズはニューカッスル城で戦死し、アンドバリの指輪で偽りの生命を与えられた。
そしてそれをディスペル・マジックで消滅させられたのだから、彼はただ物言わぬ死体になるしかないはずであった。
だが、死者は甦らないという法則は反転し、ウェールズは息を吹き返した。
息を吹き返すと同時にウェールズの服がところどころ赤くなっていった。血が流れ生きている証拠であり、そしてそれが長く続かないという証拠だ。
「く、クマが治すクマ」

クマが急いで治療しようとするが、それをウェールズは制した。
「無駄だよ、クマくん……。一度死んだ肉体は、二度と甦りはしない。ぼくはちょっと、ほんのちょっと帰ってきただけなんだろう。
もしかすると水の精霊が気まぐれを起こしてくれたのかもしれないね」
恋人以外にかけられた言葉は最初だけで、後は全て恋人に向けたものだった。
「ウェールズさま……」
「二人で、全てを捨てられたら。もしきみと二人、小さな家で過ごすことが出来たら……ずっとそう思ってきた……。アンリエッタ、誓ってくれ」
「なんなりと誓いますわ。なにを誓えばいいのですか?」
アンリエッタは必死だった。死へと還る恋人の願いをかなえるために。
「ぼくを忘れると。忘れて、他の男を愛すると誓ってくれ。その言葉が聞きたい。水の精霊ではなく、ぼくに誓って欲しい」
「無理を言わないで。そんなこと誓えないわ。嘘を誓えるわけがないじゃない」
アンリエッタの肩は震える。
「お願いだアンリエッタ。じゃないと、ぼくの魂は永劫にさまようだろう」
アンリエッタは子供のように嫌だと首を振る。
「時間がないんだ。もう、もう時間がない。ぼくはもう……、だからお願いだ……」
「だったら、誓ってくださいまし、わたくしを愛すると誓ってくださいまし。わたくしに誓ってください。
それを誓ってくだされば、わたくしも誓いますわ」
「誓うよ」
アンリエッタは悲しいげな顔で誓いの言葉を口にした。
「……誓います。ウェールズさまを忘れることを。そして他の誰かを愛することを」
ウェールズは満足そうに頷いた。
「次はウェールズさまの番です。誓ってください。……ウェールズさま?」
ウェールズはすでに事切れていた。目をつぶったその顔はたしかに微笑んでいる。
アンリエッタは過去の記憶を思い出す。14歳の短い間、ウェールズと過ごした記憶。
双月を映す美しいラグドリアン湖での思い出を。
瞳に月明かりに照らされた湖が、二人過ごした記憶が焼きついているようだ。
「意地悪な人」
今、開かれたその瞳はただ一人を映しこんでいる。
「最後まで、誓いの言葉を口にしないんだから」
目を閉じると、瞳の中から横たわったウェールズの姿は消える。
一筋の涙がアンリエッタの頬を流れた。

アルビオン大陸の端にある港町ロサイスにはレコン・キスタの、いや、もはやアルビオンの正当な政府の指導者たちと軍事力が結集していた。
アルビオン新政府は現在、トリステイン・ゲルマニアと一触即発の状態にある。トリステインとゲルマニアは軍事同盟を組み、アルビオンに対抗しようとしている。
戦力がロサイスに結集しているのは先制攻撃をしかけるためである。しかし、軍事的目的とは別に隠された目的がある。
アルビオンは外交的に孤立している。それは他国だけでなくアルビオン国内でもそう思っているものがほとんどであろう。
ハルケギニアの3つの大国のうち二つはアルビオンへの敵意を隠さず軍事同盟を結び、最後の一つガリアは同盟側寄りの中立を保っている。
それが現在、ハルケギニアでの一般的な認識だ。
だが事実はそうではない。ガリアはアルビオンと手を結ぶため水面下の交渉を進めていたのだ。
そしてロサイスに軍事力だけでなく指導者たちも勢ぞろいしたのはこの日をもってガリア、アルビオン間で同盟を結ぶためである。
空中戦力で圧倒的優位にあるアルビオン、そしてハルケギニア一の国力を持つガリアが同盟を結べばハルケギニア最大の勢力となる。
国内勢力がつばぜり合いを広げ意思統一に欠けるゲルマニア、そして小国トリステインの同盟など問題にならない。
そういうわけでその指導者たちは楽観的な気分になっていたが、一人だけ険しい顔をしているものがいた。
最高指導者であるアルビオン皇帝クロムウェルだ。
今朝、彼はウェールズ皇太子が水のルビーを奪還するのを失敗したのを知ったのだ。しかもアンリエッタ姫をさらうことさえ失敗したという。
王家に伝わるルビーはガリアと同盟するのに必要なものだ。ガリア王ジョゼフがそれを強く求めているからだ。
もしアンリエッタ姫だけでも誘拐できていればルビーとの交換をトリステイン政府と交渉できたであろう。
結果としては何も得ず、いくらでも使い道のあったウェールズ皇太子というカードを失ってしまっただけであった。
「ガリア艦隊がやってきました」
兵がクロムウェルに伝える。結局どうやって、ガリア王に取り繕うか考えぬまま、時間はやって来た。
しょうがない。と彼は腹をくくり発令所に登った。そこには他の有力な人物たちが並んでいた。
彼らは全員その壮観をなす艦隊が自らの力になると喜んでいるようだった。しかしやってくる艦隊を見て彼らは一つ共通してある感想を持った。
艦隊の数が多すぎではないか。
それが明確な疑念となる前に艦隊の砲撃は赤レンガの発令所を襲った。歓声は悲鳴に変わり、そして崩壊の音が響き渡る。

ガリア軍は電撃的奇襲をかけ、アルビオン反乱軍主力を粉砕。反乱軍を鎮圧した。
それが翌日のガリア政府の発表であった。




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