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ゼロのペルソナ 第11章 正義


正義 意味…誠意・一方通行

極楽鳥の卵を手に入れてプチ・トロワを訪れた後、タバサは表情にこそ出さなかったが、戸惑ってばかりであった。
あの今まで嫌がらせしかしてこなかった従姉が高級食材である極楽鳥の卵を食べることを許したり、
それが不味かったからと口直しに宮廷料理を出してくれたり、宮廷の浴場に入るように勧めたり、
次の日のための休息のために寝室を貸してくれたり、実家に帰るように勧め馬車を出すと約束したりしてくれた。
そう、いつものイザベラとはまるで対応が違う。
タバサの経験から言って最もおかしいのはイザベラがその間イタズラをしてこないことであった。
料理を手を使わずに口だけで食べろとか、風呂で息継ぎせず5分間潜水しろとか、ベッドの上に虫の死骸がつまれていたりとかそういったことが何もなかったのだった。
これから考えられる客観的事実はイザベラが親切をしているということだ。にわかには信じがたいことだが。
戦士であるタバサはどのような状況下でも必要とあれば眠ることのできるのだが、その夜は寝つきが悪かった。
違和感がまとわり付いて仕方がなかったからだ。
そして妙に冴えた頭でタバサはイザベラの変心の理由を考えた。そしてり陽介以外に考えられないと結論付ける。
陽介が彼女と一人で会って、次に来たときにイザベラの態度は激変していたのだ。
彼はイザベラの何かを変えたのだろう。
もしかしたら彼は自分の運命すらも変えてくれるかもしれない。そのような考えも思いついてしまう。
突拍子もない考えだろうか。しかし、ともすれば頼りなさそうに見える彼は三度も自分の命を救ってくれた。
一度目は吸血鬼から、二度目は大軍勢に囲まれた城からの脱出の際、三度目は火竜から。
どれも並みの魔法使い、いやスクエアのメイジであろうとそう出来るモノではない。
そうしてタバサは自分の使い魔のことを考えているうちに眠りに就いてしまった。

次の日の朝、タバサと陽介は朝食を済ませて出立の準備をしていた。
イザベラが陽介に会いに来たのはそんなときだった。
彼はすでに彼の主人が先に行っているであろう馬車が用意された所へ向かおうとしていた。
「なんだ、イザベラさん?タバサならもういないぜ?」
そう言われるとイザベラはつんとそっぽを向いた。
「わかってるよ、昨日のあんなことしたあとじゃ会いづらいだろ」
「照れてんのか?」
もしかして……という口調で陽介は尋ねる。
「そんなんじゃないけどさ……」
口ごもるようにイザベラは言った。
陽介が見るに的は射ているのだろうが、どうも複雑な感情もあるようだ。
「で、なんのようだ?」
陽介は話の舵を別の方向へと切ると、イザベラはこの部屋に来て話そうした本題を語る気になったらしい。
「あんたにはあの子のことを良く知っていて欲しいの」
イザベラは打って変わって真剣な表情になる。
「あの子にとって一番大切な人は実家にいるの……。それを知らないとあの子のことはわかんないのさ。
ヨースケ、あんたにあの子の力になって欲しいんだ。あたしには、やっぱり、その……難しいからさ」
イザベラが喋り終わったあとに二人はじっと見合った。それから陽介は言った。
「ああ、任せとけ。俺はなんつってもタバサの……」
「使い魔なんでしょ」
途中でイザベラが言葉を奪い取った。陽介はよくわかったなと笑った。

目的地には王都リュティスから出発して半日ほどで着いた。
それは大きな湖の近くにある立派な造りの大名邸だった。しかしどこかうらぶれた印象を陽介は持った。
その豪邸内に入ると陽介は客間に待たされ、タバサはさっさとどこか別の部屋に行ってしまう。
陽介は部屋を見回した。豪奢な造りで手入れも行き届いていたが、生気が感じられない。
高そうな絵も、きらびやかなシャンデリアも荒涼さを増やすだけだ。まるで人が住んでいないようだった。
もっともさきほど、ペルスランという老いた使用人に出会ったので本当にそうだというわけではないが。
部屋を見回しているとその老僕が盆を持って部屋に入ってきた。そして陽介の前のテーブルにワインと菓子を置く。
菓子に目もくれず、陽介は尋ねた。
「なあ、ペルスランさん、この家ってタバサの両親は住んでないのか?」
尋ねられた方は、じっと質問者の顔を見た。
「タバサとはシャルロットお嬢さまのことですか」
ペルスランはどこか苦々しげに言った。その苦々しさは陽介ではなく別の何かに向けられていると陽介は感じたがそれでも少し居心地が悪く感じた。
ペルスランはその様子に気付いたのか、はっとして言った。
「すいません。あなたが悪いというわけではありません。どうかご気分を悪くしないように」
「いや、別にいいっすよ」
それにしてもタバサというのは本名ではなかったのか。イザベラとの会話でおそらくはそうではないかと思っていたが。
シャルロットという名前もイザベラの口から聞いたような覚えもある。
「どうして、偽名なんて使ってるんですか、タバサは……いやシャルロットは?」
陽介をじっと見ながらペルスランは言った。
「よろしければお名前をお聞かせ願いますか?」
「花村陽介です」
「わかりました、ヨースケさま。お嬢さまがこの家に連れてきた方、また使い魔であるなら構いますまい」
それからペルスランは深く一礼すると語り始めた。

「今を去ること五年前、先王が崩御なさった時、二人の王子がいました。
現在、王位にあらせられるジョゼフさま、そしてシャルロットお嬢さまのお父上であられたオルレアン公のお二人です」
「やっぱりタバサは王族だったのか……」
陽介は自分で事実確認をするために口にした。
王女であるイザベラが従姉であるなら、タバサが王族なのは当然であろう。
「しかしご長男のジョゼフさまはお世辞にも王の器とは言いにくい暗愚なおかたであられました。
オルレアン公は王家の次男としてはご不幸なことに才能と人望にあふれていた。
そのため宮廷では、ジョゼフさまを王としようとする派閥とオルレアン公を、という派閥が生まれてぶつかりました。
結果を申しますとオルレアン公は謀殺されました」
「謀殺……って殺されたってことか!?タバサの父親が!?」
ペルスランは頷き、肯定する。
「狩猟会の最中、毒矢で胸を射抜かれたのでございます。
この国の誰よりも高潔なおかたが魔法ではなく下船な毒矢によってお命を奪われたのです。
その無念たるや、私などには想像もつきかねます」
なんと言っていいかわからず陽介は黙り込んでしまう。
「しかし、ご不幸はそれだけにはとどまらなかったのです」
ペルスランの話は続く。
「ジョゼフさまを王座につけた連中は、次にお嬢さまを狙いました。
将来の禍根を断とうと考えたのでありましょう。連
中はお嬢さまと奥さまを宮廷に呼びつけ、酒肴の最中に毒の杯をあおるように命じたのです。
そして奥さまはシャルロットさまをかばい、代わりにそれをお飲みになられました。
それはお心を狂わせる水魔法の毒でございました。以来、奥さまは心を病まれたままでございます」
陽介はペルスランの話を黙然として聞いている。
「お嬢さまは……、その日より、言葉と表情を失われました。
快活で明るかったシャルロットさまはまるで別人のようになってしまわれた。
父を失い、目の前で母が狂えば当然のことでしょう。そんなお嬢さまは素寸で王家の命に従いました。
困難な……、生存不能と思われた任務に志願し、これを見事果たして王家への忠誠を示したのです」
半ば言葉を失いかけていた陽介ははっとした。
タバサの受けた任務とはイザベラを仲介して命じられる任務のことであろうか。
ペルスランは陽介の様子がすでに見えなくなっているのか、感情に任せるままに言葉を紡いでいく。
「そして!未だに宮廷で解決困難な汚れ仕事が持ち上がると、解決を命じる!
父を殺され、母を狂わされた娘が自分の仇にまるで牛馬のようにこきつかわれる!
私はこれほどの悲劇を知りませぬ。どこまで人は人に残酷になれるのでしょうか」
そこまで言い切るとペルスランの激情も落ち着いたようで、一息ついた。
陽介は、無口で無愛想なタバサのことを考えた。親の仇にこき使われているという。
そしてイザベラのことを考えた。従妹に非情な命令を与えている張本人。
恨むべき敵であろうか。イザベラがいなくても彼女の父親であるという王が命令を与えるかもしれないが、事実として彼女はタバサに困難な任務を与えていた。
親のやったことに対して娘に責任はないはずだと陽介は考える。
彼女がタバサの親に何かをしたわけではないが、彼女は実際にタバサに命令を下していたのだ。
イザベラが変わろうとするならタバサがそれを許すならば構わないはずだ。
しかし考えてみれば陽介はタバサとイザベラの間に何があったかは、実を言うとロクに知らない。
腹の中がジリジリと焦れてくる感じがする。陽介は勢い良くソファから立ち上がってペルスランに尋ねた。
「タバサはどこにいるんすか?」

タバサの母の部屋の前で待っていると、タバサが部屋から出てきた。その顔は驚いているように陽介は見えた。
この世界に来てからタバサに付き従っている間に彼女の表情変化を読むことが出来るようになったのかもしれないし、
もしかしするとタバサが自分に気を許して感情を表に出すようにしてくれているのかもしれない。
あるいは表情の変化など気のせいかもしれないが、それは考えないことにする。
タバサは出てきてからしばし陽介を見つめたのち、歩き出した。陽介も横に並ぶ。
「ペルスランさんから話聞いちまった」
「そう」
短くタバサが答えた。
「そっか……」
その様子から最近タバサの表情を読むことに長けてきた陽介(そう思うようにした)は自分が知っても構わないとタバサが考えていると判断した。
それから陽介は何を言っていいか分からなくなってしまった。
いてもたってもいられなくなってタバサの母親が居る部屋でタバサの対面が終わるのを待っていたのだが何を言おうとは考えていなかった。
陽介は足を止めて振り返る。そしてタバサが先ほど出てきた扉を見た。
あの扉の先に心狂わされたタバサの母親がいるという。
イザベラの言ったタバサの一番大切な人、そして守りたい人なのであろう。その人があの部屋の中にいる。
彼女に関して一つ陽介に考えがあった。タバサが母親の部屋から出てくるまで待っていたときに浮かんだものだ。
彼女の心を狂わせたのは魔法の薬だという。ならばクマによって治せるのではないか。
クマはアムリタという毒・混乱など全ての状態異常を直す魔法を使えるからだ。
しかしそれを陽介はタバサに伝えられない。ペルソナ能力でこの世界の魔法を直せるとは限らないからだ。
もし効かなかった場合を考えると下手に伝えることは出来ない。
タバサは落胆の表情を見せようとしないだろうが、それがなおさらつらい。
考えをひと段落させて再び歩き出そうと視線を戻すとタバサと視線が合った。
陽介はビクっと体を震わして驚く。どうやらじっと陽介が歩き出すのを待ってくれていたようだ。
「うおっ……待っててくれてたのか?」
タバサは答えずに背を向けて歩き出した。
陽介は2,3歩ほど跳ぶようにして彼女の横に並んだ。
「ありがとな」
「いい」
つれない返事だったが陽介には、いや二人にはこれで十分であった。
二人は並んで歩いた。


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