あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔は四代目-07


一般的に言って、老人の朝は早い。老人の姿を取るリュオにしてもそれは同様だった。
ベッドから起き上がり、カーテンを開けると、眩い朝日が差し込んできた。
枝から枝へと飛び回る小鳥達が素晴らしいコーラスを奏でている。外の程よく冷えた空気が心地よい、清々しい朝であった。
ふとベッドに眼をやれば、ルイズは熟睡していた。夢の中のルイズを起こす事も考えたが、まだ朝も早い。
時間つぶしに外の空気を吸ってくる事にして、彼は外へと歩き出した。実に良い朝だ。戻ってくる頃にはルイズの眼も覚めているだろう。

…そう思っていた時期がリュオにもありました。

部屋に戻ってきたリュオが見た物は、相も変わらず幸せそうに熟睡するルイズであった。

「何じゃぁ?まだ寝ておるのか…さて、どうしたものかのぉ」

ルイズの生活リズムがまだ分からない為、これが普段通りなのか、それとも寝過ごしているのかが今一はっきりせず、起こすべきかどうかリュオは迷っていた。彼をその迷いから解き放ってくれたのは、ドアをノックする音だった。

「おはようございます、ミス・ヴァリエール、リュオ様、シエスタですが」
「おお、もう来たのか。入るが良いぞ」

リュオの言葉を受けて、メイド服で身を包んだシエスタがドアを開き入ってきた。
そして、リュオに向かい深々とお辞儀をし、快活な声で挨拶をするのであった。

「おはようございます、リュオ様。…ミス・ヴァリエールは?」
「うむ、おはようシエスタ。ルイズならほれ、ごらんの有様じゃよ」
「…寝ておられますわね」
「うむ、見事に寝ておる。というわけで済まぬが起こしてはくれぬか?」
「わかりました」

 ルイズはねむっている!
 シエスタはルイズをおこしてみた!
 ミス!ルイズにダメージをあたえられない!
 リュオはようすをみている。
 ルイズはねむっている!

「…起きぬなぁ…」
「はい…申し訳ありません。あの、もう一度やってみますね」

 ルイズはねむっている!
 シエスタはルイズをおこしてみた!
 ミス!ルイズにダメージをあたえられない!
 リュオはようすをみている。
 ルイズはねがえりをうった!
 つうこんのいちげき!シエスタは15のダメージをうけた!
 シエスタはもんぜつしている!

「あ、あう…」
「だ…大丈夫か?」

運悪くルイズの寝返りでキツイ一発を貰ってしまったシエスタが声も出せず涙目で悶絶する姿を見ては流石にリュオは気の毒になった。

「…すまぬ。シエスタにやらせたわしが悪かった。こんなにルイズの目覚めが悪いとは知らなんだ」
「い、いええ、大丈夫ですぅ」

年端も行かぬ兄弟の世話をしてきたシエスタにとって、寝ているルイズを起こす事など本来はなんら問題ない作業ではあるのだが、
ルイズは貴族であり、ただの平民であるシエスタは迂闊な起こし方は出来ない。
相手次第ではうっかり触れただけでも難癖をつけられて痛い目に合わされる可能性すらあるからだ。
そういうわけで腰の引けたシエスタの起こし方ではルイズを起こすにはガッツが足りないようであった。

「…むぅ、仕方ない。朝食はここで取る事にして…先に朝食の用意をしてくれぬか。その間に起きてくれる事を期待しよう。それで駄目なら…わしが無理にでも起こす」
「はい。申し訳ありません。それでは、食堂に行ってきますね」
シエスタを見送りながらリュオはまさかこんな事でザメハを使う事になるかもしれぬとはなぁ…何という呪文の無駄遣い…いや、有効活用か?と、少し現実逃避していた。

とはいえ、朝食の準備ともなれば、色々と音も出るだろうし、食欲を刺激する匂いも漂うだろう。そうなれば支度を終える頃にはルイズの眼も覚めているだろう。

…そう思っていた時期がリュオにもありました。


「…リュオ様、朝食の準備が終わりましたが」
「…終わってしまったなぁ…朝食や着替えの事を考えれば時間的にもそんなに余裕が無いんじゃろうし…仕方ない、わしが起こすしかないか」

朝食の支度が整ったにも関わらず未だにルイズは夢の中であった。流石に先程の事があったので、シエスタに頼むのは気が引けて、リュオは自分で起こす事にした。
しかし、その手をシエスタの声が止めた。

「あの、リュオ様?も、もう一度、もう一度だけやらせてください!」
「その意気や良し!と言いたいところじゃが…大丈夫か?余り無理せんでも良かろうに」
「い、いえ。これからずっとお世話する事になるんですし、最初からこれ位で挫けていられません!もう一度挑戦させてください」
「う~む…では、これが最後じゃぞ。もし駄目だったらわしにまかせるんじゃ。なに、ここまで目覚めが悪いとなると起こせなくてもシエスタのせいではないわい」

 ルイズはねむっている!
シエスタはルイズをおこしてみた!
リュオはようすをみている。
 おや?ルイズのようすが…!?

幸いな事に、今度は反応があった。この分なら起こすことが出来そうである。
その時、リュオはある事を思いつき、早速実行に移した。

「おお?今回は上手くいきそうじゃぞ。それでじゃな、この分だと起きてもどうせ寝ぼけとるわい。じゃからな…」

「おきなさい、おきなさい、わたしのかわいいルイズや……」
優しい声が聞こえる…あぁ、ちい姉様の声だ。
「おはようルイズ。もうあさですよ。きょうはとてもたいせつなひ。ルイズがはじめておしろにいくひだったでしょ。
このひのためにおまえをゆうしゅうなメイジとしてそだてたつもりです」
「…姉様、なんで王様に謁見するのに何で…その、竹やりと布の服なんですか?」
「何を言っているのちびルイズ。勇者の旅立ちの作法でしょ」
「エ、エレオノール姉様…でも、その、こんな装備で大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ、問題ない」


「…さい、起きてください、朝ですよ、ミス・ヴァリエール」
「う~ん、い、一番良い装備を…」
「起きてください、ミス・ヴァリエール、起きてください」
「…は、はえ?…だ、誰?」
「お目覚めですか、ミス・ヴァリエール。おはようございます」
「え?…ああ、シエスタ…だったわね。おはよう。…そうか、今朝から来る事になっていたんだったわ」
「はい、おはようございます。それでですね…えぇと、ゆうべはおたのしみでしたね」
「?シエスタ…貴女一体何の事を」

そこまで言ってから、ルイズは昨夜リュオと一緒のベッドで寝た事を思い出した。そして、「おたのしみ」が意味する事に思い当たった。

「ちち、違うのよシエスタ。これは、その、そういうんじゃなくて、ただベッドが一つしかなかったから…ってかリュオ、アンタも何か言いなさい!って、あれ、リュオ?」

真っ赤になりつつそこまで弁解した所で、ルイズは同じベッドで寝ていたはずのリュオがいない事に気付いた。

「ミス・ヴァリエール、リュオ様ならあちらに」

シエスタに示された方向を見ると、なるほどリュオが壁に背を預け立っていた。

「やっと起きたかいルイズや。全く、寝覚めの悪い娘じゃのう。シエスタが起こすのに相当苦労しておったぞ」
「ああ、おはよう、リュオ…じゃなくて!あ、あんたも何か言いなさいよ。シエスタが何か、…その、誤解しているみたいだし」
「うむ?そうじゃな…私見じゃが、顔を赤くしながらそんな事を言っても余計状況を悪化させるだけだと思うが」
「え?え?そ、そうなの?」
そう言われてルイズがシエスタを見てみれば、こちらもルイズの慌てふためく様子を見て「おたのしみ」が何を指すのか理解したようでみるみる真っ赤な顔になっていった。

「誤解?…何がですか…って、ええ!?そ、そういう事だったんですか!あ、あの!誰にも言いませんから!使い魔と主人は一心同体とか聞きますし!」
「シエスタ!だから違うんだってば!そんなんじゃないから!ああもう、どうしてこんな事に…」

わあわあ騒ぐ二人が面白く、リュオはしばらく見守りたかったが時間がそろそろ危ないので助け舟を出す事にした。

「あー、落ち着くんじゃ二人とも。ルイズよ、そろそろ着替えて朝食を取らんと、時間の余裕が無いのではないか?」
「そそそそ、そうね!シエスタ!着替えさせて頂戴」
「うむ、では陰ながら見守って…冗談じゃ、廊下で待っておるぞ」

そう宣言すると、後ろ手に扉を閉め、リュオは廊下に出た。

「ふむ。流石は今でも語り草になる台詞じゃ。破壊力抜群じゃわい」

ドア越しに聞こえてくる部屋の中の騒動を聞きながら、楽しそうに独り言ちるリュオであった。

「リュオ様、着替えが終わりました」
「うむ、では入るぞ」

シエスタの声で部屋に戻るなり、リュオは、ルイズに刺々しい声で話しかけられた。

「シエスタから聞いたわよ、アンタが起こす際に『ゆうべはおたのしみでしたね』と付け加えるよう言ったんだって?」
「うんむ。おかげでばっちり眼が覚めたじゃろ」
「朝からどっと疲れたけどね!本当、誤解を解くのにどれだけ苦労したと思ってるのよ!」
「何を言っておるんじゃ。ゆうべはおたのしみだったのは事実じゃろうに」
「あああアンタの話が興味深かったからつい聞き入っちゃったじゃっただけじゃない。妙な言い
方をしないで!」

「ああ、おたのしみ、ってそういう…いやですわ、私ったら…」

真っ赤になってリュオを攻めるルイズとは対照的に、腑に落ちたように頷くシエスタであった。

「ふふ。そんなに朝から怒るでないわ。大体、さっさと起きないルイズが悪い。シエスタが来てからどれだけ時間がたったと思っておるんじゃ」
「そ…それは…確かにちょっと寝過ごしたかもしれないけど…」
「見てみい。余りに起きないのでシエスタが既に朝食の用意を整え終わっとるんじゃぞ。今まで良くこれで授業に出れておったな…実は遅刻魔だったりはせんのか?」
「あ、あの、お二人ともどうか落ち着いてください…」
「わしはもとから落ちついておるわい。さぁ、冷めないうちに食べようではないか、時間もそう余裕は無いんじゃろ?」
「そ、そんな事で誤魔化されないんだからね!…とはいえ、時間が余りないのは事実なのよね
…むぅ、癪だけど…いいわ、食べちゃいましょ」
「そうこなくてはな。わしも腹が減った。では、食事じゃ」

ルイズは昨日と同様に始祖ブリミルと女王への祈りを捧げると食事に取り掛かった。
一方リュオはそのどちらにも祈る義理も筋も無いので祈らずに食事に入る。

「…そういえばシエスタの朝食はどうなっとるんじゃ?」
「ご心配には及びませんリュオ様。この後厨房で賄いを頂きますので」
「ふむ。しかし、呼びつけておいてなんじゃが、今は一番忙しい時間ではないのか?良くあの戦場から抜けさせてもらえたのぉ」
「はぁ…確かに何人いても足りない時間ではあるんですが、マルトーさんがむしろ乗り気でして。事情を話したら『我らの杖』にしっかりご奉公して来い、と笑顔で送り出されてきました」
「『我らの杖』…?それは一体何よ?」
「昨日のドラゴンの件で…な、それで何故かマルトーに気に入られて…まぁ細かい事は良いじゃないか、気にしないでくれい」
「…ああ、そうなの」

気まずそうなリュオを見て、触れられたくないのだな、と(ルイズにしては珍しく)察した。
が、リュオが初日から二つ名、しかも自分のより遥かに良さそうな物を得た事実は微妙にルイズを切なくさせたのであった。

食事が終わると、シエスタは手際良くルイズの支度を済ませた後に、他に用事が無い事を確認すると、
「また夜に伺います。それでは失礼します」
と、二人に一礼すると、朝食に使用した食器、ルイズから渡された洗濯物を載せた台車を押しながら退室して行った。
シエスタを見送った二人は、戸締りを確認すると、いざ授業に向かうべく部屋を出た。
すると廊下にはキュルケが待ち構えていた。その隣には使い魔であるサラマンダーのフレイムが控えている。
ルイズはキュルケを見て露骨に眉を顰めたが、キュルケの方は一向に気にした素振りも無かった。そして、ルイズに続いて出てきたリュオの姿を認めると、優雅に一礼した。

「おはようございます。お目通りかなって光栄に存じますわ。竜王のひ孫様。私はキュルケ・フォン・ツェルプストー。二つ名は『微熱』。キュルケで結構ですわ。…ついでにおはよう、ルイズ」
「ちょっと!何よついでって!」
「ふぉっふぉっふぉっ、これくらいで怒るでないわ。あー、キュルケ。昨日の事は忘れてくれい。ちと冗談が過ぎたわ。わしの名はリュオ。遠方から来たただのメイジじゃよ。」
「…と、言う事になさるのですね?何か込み入った事情でも?」
「ふむ。どうしてそう思うのかな?」
「シルフィードが言っていましたわ。『王様』と。ドラゴンは嘘を付かないでしょう?」
「なるほどな…いや参った。降参じゃ。大した事情ではない。厄介事を避けるためじゃ。
王宮の連中や、マジックアカデミーなどうるさいやつらが多いらしいし、な。
しかし聡明な娘じゃな。確かに昨日わしが正体を現す前から警戒していたし、お主は中々見所がありそうじゃな」
「あらやだ。覚えていらしたのですか?恥ずかしながら何も出来ませんでしたけど」
「いやいや、取り乱さなかっただけでも立派なもんじゃ。大口叩いていた連中は総じて無様な姿を晒しておったからのぉ。
それはさておき、そういうわけじゃから、協力してくれると有り難いのじゃが?」
「納得いく理由ですわね。そういうことなら、喜んで。では、リュオ様、でよろしいのですか?」
「ふぉっふぉっふぉ、協力感謝するぞ。呼び方は好きにしてくれ。あまり堅苦しいのは好みじゃないのでな。何なら呼び捨てでも構わんぞ。実際、ルイズはそうしとるわい」
「あら、リュオ様、格式ばったのがお嫌でしたら是非ゲルマニアにおいで下さいな。
お高く止まったトリステインとは違って自由闊達の気風に溢れた過ごしやすい土地ですわ。全力を挙げて歓待いたしますわよ。
それにしても…さすがはルイズね。いくら使い魔だからって、王様を呼び捨てにとはねぇ?」

突然話を振られたルイズは、憮然として答えた。

「…いいのよ、本人がそれで良いって言っているんだし。それより、人の使い魔に誘いを掛けないでよ。
アンタのサラマンダーだってなかなかのものじゃないの。本当、ゲルマニアの人間は欲張りで困るわ」
「ああ、フレイムね。勿論満足してるわよ。でも私は使い魔としてで無くて、客人として招待しようと思っただけなんだけど?それに、本人が良いと言えば問題ないんでしょう。いかがかしら、リュオ様?」
「はっはっは、どうやら分が悪いようじゃぞ、ルイズや」
「ちょっとリュオ!どっちにつく気よ!」
「おいおい、この程度の他愛も無い話でそんな血相を変えるんでないわ。それに、あくまで対等、と言う条件を忘れたわけでは有るまい。ただ持ち上げて欲しいだけなら太鼓持ちでも雇うんじゃな」
「むー.…それは、そうだけど…」

頬を膨らませ、見るからに不機嫌そうな表情を表に出したルイズを見て、リュオは、一つ溜息をつくと、ぽんぽん、とルイズの頭を軽く叩き、眼を合わせながら安心させるように話しかけた。

「やれやれ…今の所使い魔を止める気は無いから安心せんか。キュルケや、ご主人様がご立腹じゃからこの辺にしておいてくれぬか」
「あら残念、それでは大人しく引き下がる事にしますわ。ではまた後で。ごきげんよう、リュオ様、それにルイズ」

そう言うと、炎のような赤髪をかき上げ、颯爽とキュルケは去っていく。その後をちょこちょこと可愛い動きでフレイムがついていった。

「やれやれ、ルイズよ。お主はもう少し余裕を持った方が良いな」
「…余裕なんか持てないわよ。私は『ゼロの』ルイズだもの。そんな物持つ暇なんか無いわ、ただでさえ遅れて…」

ルイズの言葉は、どんどん小さくなっていった。

「あのなルイズ。危機感を持つのは良い事じゃ。じゃが、お主は一杯一杯になりすぎる。
もう少し大らかに構えたほうが良い。そうでないと見えてこない大事な物もあるのじゃ。
さて、これ以上は廊下でする話でもあるまい。気持ちを切り替えて教室へ行こうではないか。ああ、その前に顔を洗った方が良いかな?」
「…大丈夫よ、問題ないわ」
「うむ、その調子じゃ」

そして、今度こそ二人は教室へ向かい歩き出したのであった。


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