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Adventure-seeker Killy in the magian world quest-05


LOG-5 第一種臨界不測兵器

…霧亥は壁の上に乗って歩いたり、塔に登るなどして学院外周の探索を終えると、病室の崩れた壁から出て、本塔の外壁に腰掛けながらその夜を過ごした。
決闘を終えた後、強制的に生徒が解散させられたことと、何かに気づいたように霧亥を気遣っていた教師二人も消えたため、朝日が昇るまで誰も彼の所在を知らなかったので、
今まさに霧亥捜索を再開しようと準備していたルイズは、メイドに案内されて彼を見つけた瞬間泣き崩れかけた。
この反応を受けて、円滑な協力体制を維持するためには、いちいちルイズを同伴して外を見に行かねばならぬのかと考えながら、霧亥はまた学院の観察を行っていた。
出来ることなら、もう学院の外に出たいところだが、授業に聞き耳を立てることも、まあ悪くは無い。
一般常識や風習についても、人々の行動の統計をとることで情報を集められた。
いずれにせよ、この閉鎖的で限定的な環境での観察では、情報の広さや正確さに欠けるが、解決策が見えたのはその意味の無い観察によるものだった。
「どちらへ行かれるのですか?」
いつに無く怒りの形相を浮かべ、拳を握り締めている姿に、オスマンの秘書は二歩三歩下がって冷や汗を流す。
霧亥の視覚情報履歴を正確に1399秒遡ると、ちょうど学院のある部屋の前で「使い魔は入れない」と押し戻されようとしているところに行き着く。
そこに奇妙なものが大量に収納されていることに前々から感づいていたので、内部に入り手にとって観察しようとしていたのだ。
植物由来の繊維や動物の皮膚組織の固まりに、炭化した有機物などの混合物を塗りつけた何かの山は、全体の形だけで言えば古い時代のハードコピーの一形態に似ている。
制止しようとしたということは、中のものには重要性があるのだろうと霧亥は判断し、半ば押し入ろうとする。
そこで教師が到着し、オスマンからの許可をもってして霧亥に入室を認めさせた。
ここで問題が発覚し、文字を読めない霧亥を助けるために、「学院長が仕事をしていないので」暇を持て余している女性が一人随伴する運びとなった。
一時間も経たずに、いざ語学の講義が始まろうということになったのだが、霧亥は急ぎ足でどこかへと去っていった・・・

…霧亥の決闘以降、異常なほどそわそわしていたオスマンとコルベールは、いつもならすぐに飛んでいくところを、言伝をほかの教師に託しただけで、どこかへと走っていった。
向かった場所は、変わり者のコルベールが、学院内に一般的に置かれている設備では扱えない類の学問や実験を行う掘っ立て小屋である。
そこで何かを準備した二人は、また急いで、今度は学院の外へと向かった。
そして外では、興味深そうにする番兵や時折通りかかる教師の目を気にしながら、二人は何やらごそごそと作業をした。
しばらくして、息を切らせながら小屋に戻った二人は、大事そうに小脇に抱えた皮袋を机において一息つく。
「壊れとるのか?」
第一声はオスマンの愚痴である。
「いえ、きっと何か、安全装置か、使用者を限定する鍵のようなものが」
コルベールは皮袋に手を突っ込みながら答える。
「散々調べたが、系統魔法の痕跡は無し……わしが苦労して、異端とされる精霊魔法などなどについての蔵書を王都から仕入れても、それらしい痕跡を見つけられなんだ」
「では、極めて複雑かつ高度に機械的なものであるか、いずれでもない未知の魔法ですな」
取り出したものを、二人は銃であると見当をつけていた。
この二人以外が見ても、大まかなシルエットは短銃の類と判断するだろう。
「銃ではないのかも知れんな、杖の類であれば、その未知の魔法とやらの使い手にしか反応すまい」
「振動し始めたときは、もしやと思ったのですが……」
黒光りする、両手のひらにすっぽり収まるサイズの黒光りする角張った短銃のようなものは、かすかに震えていた。
コルベールは、楽器などがよくするような共鳴振動に似ているように感じたが、何がそうさせるのかは見当も付かない。
「程よく冷えた紅茶がありますが」
「一杯もらおうかの」
ぬるい紅茶にミルクを注いで更にぬるくしたものを、オスマンは勢い良く流し込もうとするも、のどを下らせる前に口が止まった。
金属が砕ける音がして、立て付けの悪い扉の金具と鍵が引き千切れ、ぬっと黒い影が視界に入る
「ぼわっは!」
ミルク入りの濃い紅茶を盛大に吐き出したオスマンの顔は青ざめ、コルベールはひっくり返りかけた。
「ちょっと待ちなさい!!」
止めに入った自分の秘書が、首根っこを掴まれて外に放り出されたのを見て、オスマンの顔色は更に悪くなった。
銃の振動はひときわ強くなる。
「ミスタ・キリイ…!」
コルベールは、「そうか!」と思う余裕も無いといった様子で、壁に背中を打つまで後退。
オスマンは咳き込み、椅子を倒しながら机から離れる。
真っ黒い奇妙な鎧を着た男は、同じく真っ黒い奇妙な銃を手に持った。
オスマンは必死に考える。
この状況を如何にして切り抜けるか、ということを、である。
「待つんじゃ!!」
「な、なにをッ!?」
「わしは何もしとらん! 全てコルベール君が好奇心からしたことじゃ!!」
答えは、コルベールの後ろに回りこみ、責任転嫁をすることだった。
二人とも、銃を顔の前に持ってきて状態を確かめている男の姿を見て、彼が殺しにかかってきた場合、切り抜けることができる確率が極端に低いことがすぐに分かった。
オスマンなど土のスクウェアであるし、コルベールも火のトライアングルという実力者であり、大抵の敵は数に入らない。
では目の前の男はどうか?

霧亥の拳を視認することすらできなかったことを思えば、人一人を殺害できる魔法を一瞬で唱える必要がある
間合いさえ取れれば不可能なことではなく、こちらは二人がかりである
霧亥は、ゴーレムの打撃をもろに受けてかすり傷一つ負わない頑丈さと、普通の人間であれば即死する状態から復活する体力がある
これだけを彼の最大の防御力と見れば、それを上回る魔法の発動は可能である

しかし

時間を稼ぐには距離は極めて近く
霧亥の体を十分に破壊できる保証は実際には無いも同然で
なんと彼は装備を取り戻した

撃ち殺される前に、殴り殺されてしまうのではないかというほど、状況は酷い。
オスマンは救いを請うために、この人生最後の瞬間に、始祖に祈るべきか、霧亥に祈るべきかということで悩んだ。
それにしても一瞬が長い。
「おお……」
目を開けると、霧亥は銃をホルスターに接着していた。
助かった。
無様にもそう思った自分に、嫌気が差しかけたところで、コルベールが図々しくも霧亥に声をかけた。
「待ってください! それは、いったいなんなのですか!?」
霧亥は、価値の無いものを見るような目を二人に向けて、すでに外へ歩き出していた。
「一切の分析が意味をなさず、どのような知識も通じなかったのです。何より、あなた自身! いったい、なんなのですか!?」
自分が何者であるか、そんなことも忘れていた時期がとても長い間続いていたような気がする。

―――銃のことは知らない

こんなことを言ったのは、一体どれだけの昔だろう。
もはや都市において、時間と空間が意味を失って久しい時代。
何度となく危機的状況におかれるうちに失った記憶と機能。
それを回復し、まともな頭で自身の行為の記録を参照して業を煮やし、腕が脱落するまでこの銃の引き金を引いたのも、大昔のことだ。
探索の折り返し地点に至るまでの過程を、まだ半ばまで進んでいない時期だった。
そんな回想が、彼にこんな気まぐれな行動をとらせたのだろう。
霧亥は、ゆっくり口を開いた。

「第一種臨界不測兵器―――重力子放射線射出装置」

所謂OSにあたる基本システム、脳の言語基体が遥かに低級な者たちに、この意味を大気の振動だけで理解させることは不可能だったが、とにかくそう呟いた。
彼の世界においても、個人携行火器において“最強”に区分される銃。
世界の理を捻じ曲げることによって、階層都市の人類が生み出した兵器。
素粒子と相互作用と場、その急激な変化の流れの放射装置。
それら宇宙の構造を越えて伝播・作用する力を用い、都市の主要構造体と、次元的に折り畳まれた超構造体をすら、唯一この兵器は穿つ。
重力により空間、副次的に時間を制御することで完璧な世界を実現した階層都市の“場の臨界”を崩壊させ、“不測”な状況を生み出す。
霧亥の本体を最強の盾とすれば、この霧亥の一部、ないし器官である銃は最強の矛だ。
彼は装備を取り戻した・・・

…オスマンの秘書こと、ロングビルが介抱の末、意識を取り戻した頃には、霧亥の姿はどこかへ消えていた。
騒ぎにならないように細心の注意を払い、医務室へも運ばなかったオスマンは、一頻り釈明した後、またあせりながらどこかへと消えた。
唖然とするロングビルは、近くで壊れた扉を誤魔化そうとしているコルベールを捕まえ、「宝物庫に確保した空きはどうする」などと抗議。
これに対して「もう不要です」と告げて、コルベールはオスマンを追って走り去った。
残されたロングビルは、何やら想像以上に大きなことが運んでいるような気がして、同じく走り去った。

このうち、早々に姿を消した霧亥の事を探して授業の合間にうろうろしていたルイズは、どうにか合流。
なぜここの文字を教われる機会なのに、どこかへ言ってしまったのかと問い詰めかけて、霧亥が奇妙なものを持っていることに気づく。
「それも、あなたの武器なの?」
壁にもたれて座りながら、足に引っ掛けた手でぶら下げていた銃を、脇のホルスターにきっちり収めるのが回答だった。
今までどこにあったのかと聞こうとも思ったが、どうせ教師が取り上げたのだろうと、ここしばらくの記憶から判断する。
「なるほど、貴族にあるまじき行為ね」
貴族の行いも、存在も、到底評価できるものではないが、他者の所有物を強奪することが褒められたことでないのは確かだ。
せいぜい最低限の社会を構築する為の規則など、貴族などと限定された集団が守るべきものでもあるまい、ということは思ったが、いまさら驚くまでも無かった。
「でも、そんな目立つのじゃぁ、これから面倒もあるわよ。もっと役に立つものがいるでしょう?…あ、日常的にってことよ」
ルイズは、先日の決闘で見せた霧亥の銃の脅威の威力を目の当たりにした。
銃というよりは、変わった杖で聞いたことも無い系統の魔法を使った、という方が納得できる光景だ。
光が人の腕を丸々消し飛ばした。
切り落とすのでも、引き千切るのでもない。
酷い火傷を負っていたことから考えて、それは熱によるものだ。
火の系統だとすると、半秒も無い間に骨はおろか灰も残さず人を燃し、周囲には余熱をほとんど残さないほどの強力で精巧な一撃は、スクウェアでもそうそう出せまい。
あの小ささでこれだ。
今霧亥が手にしている本命らしい大きな銃、あるいは魔法触媒をしようして攻撃すればどうなるか。
人一人を蒸発させる攻撃を、顔色一つ変えずに連発できるだろう。
実際の威力は、最低のものであってもこれを幾何学的に倍加させたものであるが、ルイズはそこまで想像できない。
「銃……そうだ、それって、弾丸や火薬はどうするの?」
もし、弾薬が必要なのであれば、それを手に入れられなければ、一発撃てば終わりだ。
といっても、決闘の際、一発撃った後もずっと構え続けていたので、普通に考えれば装弾は一発ではないことになる。
となると、魔法の一種ということになるのだろうか?
「必要無い」
「え?」
ルイズは、では魔法なのか、と思ったが、そういう意味で言ったのなら、まず銃であることを否定したはずだとすぐに気づく。
それにしても、火薬が要らないというのなら分かるが、撃ち出す弾丸が無いというのは、どういうことだろうか?
「そ、そうなの……」
どうにも会話が続かず、何か言いたげに、霧亥の表情を伺ってはそばでうろうろし始めるルイズ。
霧亥は顔にかかった前髪を風に揺らしながら、何もせずに俯いている。
視線は学院の外だ。
「どっちにしても、もっと目立たなくて手加減できる武器にしないと…あなたの服もね」
ルイズは正門近くを指差す。
「う、馬も用意しておいたの! これから買い物にでも、どうかなって…」
「………………」
指の先にいる生物。
あれで一体、どうしろというのかと霧亥は思った。
移動手段として不安定なハードウェアを使用する危険性以前に、ルイズの要求するであろう行為は構造的に不可能だ。
「すみません、馬に乗れる重さではないと思うのですが」
霧亥の考えを代弁することになったのは、先ほどから霧亥の近くに座り、衣服を水中でかき回していたシエスタだった。
「あ、ミスタ・キリイの看護を手伝わせていただきました。シエスタです」
唐突に話題に入り込んできたメイドの発言に、ルイズが目を丸くする。
「えっと……キリイが重たいってこと?」
鎧のせいだとしたら、脱げばいいのだが…それをする気はないらしい。
それにしても、大の男二人を乗せるくらいのことは出来る馬が根を上げるほどの重量となると、霧亥の鎧の重量はどれほどだろう。
よくよく見てみれば、隙間無く埋め尽くされた合板鎧と革鎧の類で、体にぴったりと合ったオーダーメイドらしい作りであるのに、驚くほど分厚い。
単純に厚さが倍なら重量も倍。
決闘ではゴーレムの突進を拳一つで押しとどめていたので、よほど拳が速いということもあるが、普通に考えれば等身大青銅像よりも重くなければならない。
「まあ、そういうことなら、車を牽かせれば良いんだし……い、行ってみない?」
理想を言えば、個人で出歩きたいところだが、悪い提案ということでもない。
霧亥は立ち上がると、馬のほうへと歩き出す。
「じゃあ、馬車を用意するわ」
なぜこうも下手に出ているのだろうと自分で思いながらも、少し嬉しそうにルイズは駆けていった。
シエスタの話すところによると、なぜか今日は一部の授業が休みになっていたため、ルイズたちは午前放課らしい・・・


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