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Adventure-seeker Killy in the magian world quest-01


MAYBE ON EARTH.
MAYBE IN THE FUTURE...


広大な重金属の迷宮―――階層都市を探索する男は、その最上層で力尽きた。
無数の超構造体を抜けた、探索の折り返し目前でのことである。
男の足は千切れ、腕は曲がらない方向へ向き、折れた骨は皮膚を破って突き出ている。
さらに頭部は大きく抉られ、大量の血液と脳髄が周囲に飛び散っていた。
いずれも普通の人間にとっては致命傷であるが、男は反撃の末、これらの手傷を負わせた敵を排除した。
男は通常の人間ではなかった。

不老不死の肉体と、苦痛も感情も捨てた精神を持ち、都市の基幹システムによって支援される“密使”

携えるのは、“最強の銃”

その男が力尽きるのは珍しいことではない。
男は都市のシステムの密使である。
都市はその正常な機能を失って久しいが、太陽系を埋め尽くす巨大なハードウェアと、そこに備わった無限の処理速度と記憶容量に宿るソフトフェア。
完璧ではないが、これらが男の機能と行動を支援している以上、殺しきるには都市そのものの機能を破壊しなくてはならない。
男にとっては、基底現実の一点に存在する肉体の損傷と、それによる一時的な行動不能状態など、時間のロス以外は問題にならない。
己を消耗品のように扱い、頻繁に肉体の死と再生を繰り返していたのだ。
敵の消滅を見届けると男は何の抵抗もなく、死んだように崩れ落ちた。
修復と再起動に向けて、体中の機能と動作を可能な限り落とすためだ。
“災厄”以降、男の復活が即座に行われるような環境は、この迷宮に存在しない。
動きが完全に消えてから、長い時間がたち、周囲の状況も変化していった。
乾いた血が、溶けて流れ出す。
男が死体のように横たわる場所を、外で止むことなく降り続ける雨が満たしていた。
都市の重力に惹かれて集まってきた様々な元素が交じり合ったこの海水は、溜まるのに合わせて定期的に都市の表面に向けて排出される。
男の体も、この流れに巻き込まれた。
排水口をこじ開け、よじ登る手間が省けたようなもので、続々と合流する排水に紛れ、巨大な管を高速で吸い上げられていく。
開けた空間。
男は意識を失いかけながら、最後の超構造体を抜けた先にある場所へと達した。
あまりに大量の海水が積もってできた海であるために、周囲は漆黒の闇に変わったが、比重の重い海水の中で、流れに乗った男の体は少しずつ浅瀬へ漂っていった。
男の古い記憶の中にある景色が、ゆっくりと広がり始める。
ぼんやりと光の差し込む海の中で、都市の設備が巨大な海藻類のように揺らめき、いまだに解体されていない星が見える場所。
“災厄”後に都市とネットを埋め尽くした“感染”の存在しない、都市とネットの最果て。

球体が起動した。

男はそれを見ながら、修復と再起動が開始される時間が来たことを感じ取る。
しかし、そこで眠るわけにはいかなかった。
奇妙な現象を男は知覚したのだ。
ある種の空間歪曲とも思ったが、時空制御による虫食い穴にしては、平面状に形成されるのはおかしい。
見たことのない技術・現象。
いずれにせよ、世界線の改変を何者かが不正に行っていることは疑いようもない。
都市の外に出たことが、ネットに巣食う犯罪者たちのこのような干渉を可能にしてしまったのだろうと、男は推察した。
抵抗の余力はない。
都市が正常でないために、修復の開始が自由にならないだけでなく、その中止すら困難である。
男の体と意識は、海水の流れによって捩れた世界線にゆっくり運ばれていく。
手順に従い大電力が状況も気にせず肉体に転送され、生理的な機能にも、元素変成にもよらず、直に質量に変わり始めた。

全質量中19,04%消失 修復開始

離れた位置にある球体が無事であるのを確認できないほどに、男の意識が遠のいていく。
欠けた頭部から湧き出した繭に視界を遮られながら、男は考える。

何者が待ち構えているにせよ、回復後であれば対応できる。

モニターの電源を切るようにして、その意識が完全に喪失する。
男の銃は、微かに帯電していた・・・

Adventure-seeker Killy in the magian world quest… START.


LOG.1 召喚 サモン


―――夢を見た

懐かしい光景が広がる

ネットに接続しなければ、思い出すことなどできないような過去

銃とともに生まれ変わる前の記憶

正常な世界での記憶

崩壊の記憶―――



調整終了

覚醒は一瞬だった。
感覚が回復し、おぼろげな記憶の反芻ではない情報が収集される。
異常な状態であることを、すべての器官が警告している。
続いて、体を覆う保護用の繭が剥がれ落ちる。
素肌が露出し、目は直に大気越しの映像を提供した。
繭越しに、有機物の繊維を折りたたんだ布状の物や、それらと硫化塩鉱物を凝固させたものが体を拘束している。

男は、状況をできる限り悪い方向へ解釈した。

何者かによって転送され、行動不能状態なのをいいことに、拘束され収監されたという解釈である。
事実、奇妙な構造の小部屋の中で、台の上に固定されるように寝かされている。
男の敵であったものたちの、懐古主義を連想させる、暴走した建設者でも創り出さないような簡易構造を見るに、この部屋は拘束のためだけに生成された領域だろう。
跳ね起きると、それが傷を保護するための包帯であるとも知らずに、折り畳まれた炭素ベースの繊維を引き千切り、
骨折部位を固定するためのギプスとも知らずに、石膏泥を流し込んだ木枠を粉砕する。
覆いかぶさっていたシートを放り投げ、床に勢いよく足をつけると、男の体重によって、薄っぺらで軟弱な床は激しくきしんだ。
金属でもセラミックでもない、恐ろしく簡易な構造に、思わず行動も慎重になる。
少しばかり勢いを落とし、扉の向こうと部屋中を走査し、監視や防御装置の類が存在しないことを確認すると、窓に歩み寄る。
拘束室と直結した構造物の一部と、数十万km先まで都市構造のない広大な大気のみの空間が見える。
あまりに逃亡には不利な区域に運び込まれたらしい。
上空を見ても同様で、地下にいたっては、不規則で一切の機能的構造が存在しない酸化珪素などの堆積層が広がっている。
慌ててスキンスーツのホルスターに収めた銃に手を伸ばそうとして、完全に起動しきっていない体の感覚が、今までで最も悪い知らせを告げる。

火器喪失警告

まったく表情も感情も示さなかった男に、僅かに焦りが生じた。
ここは最後の超構造体を抜けた先であることは、ネットからの一切のチャンネルが受信不可能であり、超構造体に内包されたシステムの恩恵を、欠片も受けられないことから明白。
となれば、究極のスタンド・アローンとして行動せざるを得ない。
この状況での、体の一部として設計された標準装備の喪失は重大だ。
施設の中をうごめく思考の臭いを持った有機物の陰が、漸くこちらに注意を向け始めたのも確認できる。
余裕の無くなった男は、スーツごと修復された右腕で窓枠の周囲の壁を叩く。
部屋全体が大きく震え、機材が転がり、建材が剥離する。
窓枠は粉砕され、壁は男が悠々通り抜けられるほどに崩れた。
だが、男は飛び出そうとして、出来なかった。

―――あの夢の続きだろうか

機能は回復しておらず、白昼夢を見始めたのかもしれない―――

広がるのは、堆積した有機物の山

それは、ひどく湾曲した地平線を形作り、重力場とともにこの区域が球状であることを主張する。

広がるのは、乱雑な大気と、星星の浮かぶ宇宙

そこには、巨大な核融合炉のような恒星が鎮座し、電磁波を降り注がせ、ここが恒星系であることを主張する。

男は驚愕した。
さらにいえば、吹き込んできた大気には、ナノマシンではなく、無数の微細な生物が紛れていた。
思わず息を止めてしまう。
先ほどから近づいてくる足音にも、興味を向ける余裕はなかった。
誰かが何かを叫んだが、それが何なのかを理解する気にもなれなかった。

いったい、どれほどの距離を跳ばされたのか。

逃走も帰還も容易ではないだろうと踏んだ男は、飛び出さずにそこで立ちすくんだ。
走りよってくる者たちは、どうやら人間である。
それも酷く原始的で、いくつかの特徴的変異が見られるが、身体改良の痕跡のない個体ばかり。
強力な武器の類は帯びておらず、無防備なこちらに先制攻撃を仕掛ける気配もない。

交渉を行うべきだ。
極限状況において、無用な戦闘は避けなければならない。

男は表情をかすかに歪める。
明らかな拉致監禁行動も、ここにいる者たちが、敵意を持って行った確証はないとはいえ、乗り気ではない。
扉が勢いよく開けられた。

「先生、患者が!」

未知の言語だったが、発声器官の構造と言語基体は自身とそう違いないため、理解できた。
まず三人が入り込み、男の姿と、部屋の惨状を見て動きを止める。
「なんだこれは……」
「と、とにかく診療を…こいつ、包帯も取ってるぞ……」
治療者であることを匂わせる発言と、体を無意味に拘束していたものが包帯であることから、少なくとも殺意を抱いてはいないことが分かる。
「君、ベッドに戻ったほうが……」
発言の節々と、部屋の設備、彼らの装備品から、その科学技術水準がその身体特徴に見合った酷く原始的なものであることが推察できた。
医療行為が、ただの拘束としか取れない悲惨なものであったのも頷けた。
「なんだこれは、回復しているのか?」
棒状のものを取り出して接近していた一人の治療者が、やっとそのことを把握した。
振り向かなければ分からないが、手に持っているのは、医療器具が外付けの感覚器官だろうと、男は考えた。
治療者たちは冷や汗を流しながら、目の前の患者と同じように、壊れた壁を向いて立ち尽くした。
呆然としている間に、部屋にはまた二人の人物が駆け込んできた。
「意識を回復したとか聞いたが? これはいったい何が―――」
「それどころではありません、これは異常です」
老化した声帯から聞こえてくる声に、治療者は低姿勢に応える。
調子はそのままに汗を垂らして、男が完全に回復していること、ありとあらゆる医療行為は意味を成さず、ほとんど個人の回復力によること、などを大急ぎで話した。
「信じられんわい……ああ、君、事情の説明もしたい、こちらを向いてはくれんかな」
ゆっくりと振り返る男の顔を見て、部屋の中の全員がたじろぎそうになる。
真っ当な人間の表情とは思えない、青白く無表情、それでいて鷹が睨むような鋭さがある顔だった。
「頭部にも傷跡ひとつない……これは異常なことですぞ」
「足など生えてきているのです。義足代わりに金属棒を刺し込んでいたほどなのに……」
男は目の前にいる五人の人間をじっくりと観察した結果、漸く声を上げる。
「感染していない……この植民地は“災厄”の影響を受けていないのか?」
網膜スキャンの結果、彼らの遺伝子構造を把握した男は、その遺伝的な異常性よりも、そこに“感染”の痕跡が存在しないことに驚いた。
ネット端末遺伝子も持ってはいなかったが・・・。
「どういうことじゃ? ここはトリステインの領地で、どこの植民地でも―――」
「ネット接続企業統合以前の植民地だな、端末インプラントを受けている正規の植民者はどこかに生き残っているのか?」
まくし立てるように、男は次の質問をした。
「いったい何を言っておる、君はこのハルケギニアに誇るトリステイン魔法学院に―――」
「ネットスフィアに接続できる人間はいないのか?」
「ネット球―――?」
まったく理解を示さず、質問を質問で返すことしか出来ない人間たちを見て、ここがどのような場所であるのかに男は気づいた。

“災厄”による直接的な影響こそ受けていないが、ここはすでに文明を失ってしまった辺境なのだろう。
あるいは極一部の都市から逃れた者たちが、一から文明を作り上げた結果かもしれない。
彼らは遥か太古に遺伝的に分岐し、変異した原人たちであることは間違いないのだから、このいずれかだ。
当然、技術文化水準など、階層都市で逃げ惑う小規模な集団とすら比べ物にならない。
口腔や消化器系には例外なく幾億の微生物が巣食い、もっと大きなものが寄生しているものもいる。
身にまとう衣類が有機物ばかりであるのを不審に思ってみれば、すべて“生き物の死骸”が、ほぼそのまま使用されている。
服だけでなく、この建造物にもそういったものが使用されていた・・・そのように原子単位で製造したとも考えられるが、まずありえない。

男は失望のあまり、倒れている頑丈そうな植物製の収納箱に腰掛けた。
治療者たちは顔を見合わせている。
騒ぎを聞きつけて、また幾つかの人影が接近してきているが、それを静止することも忘れて、目の前の人物が異常者か、そうでないか推し量っているらしい。
しいて言えば、後から来た、老化による身体の劣化が顕著な二人は、何か含むところがあるように冷や汗をかいていた。
足音が、開きっぱなしの扉の前で止まる。
「私の使い魔は!?」
「み、ミス・ヴァリエール……」
使い魔という語が何を意味しているのかはさて置き、自らの所有物であるかのような言動に、男は少しだけ反応した。
「無事じゃよ、信じられんことに、まったくもって無事じゃ」
老人が髭を撫でながら、力のない声を出す。
「あの重症が……ち、治療費を惜しまなかっただけのことは―――」
少女が他の五人と同じような表情で、目の前の信じがたい光景に説明をつけようとした。
「い、いえ、ミス・ヴァリエール。これは我々の魔法や秘薬によるものではありませんよ。多分、信じられないことですが、その、自力で…」
治療者たちは面子が潰れたことにも気づかず、ミス・ヴァリエールと呼ばれた少女に教えた。
ここではあの程度の傷が治ることすら有り得ないらしい。
修復の途中で行われた転送―――おそらく、文明の度合いを見るに、それを行ったのは、目の前の集団とは別組織だろう―――によって、身体再生は代謝機能によって行うことになった。
無菌状態でないという大きな問題こそあれ、都市の住人たちにとって珍しいことではない。
もっとも、補助脳すら持たない彼らにとって、脳に傷を負ったというだけで死を意味するだろうが。
「とにかく名乗らせてもらうわ、私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。貴方を…き、聞いてるの?」
腰掛けたまま、服のポケットを弄っている男を見て、不振そうに声をかける。
「とにかく、そちらも名乗られては……」
男は、装備の一部である小さなアンプルを取り出し、そのキャップをはずす。
「そ、そうよ…貴方、名前は?」
アンプルの先は注射針になっており、少し前までは抉れていた場所に近い、左こめかみより上辺りに刺し、指でつぶして内容物を注入した。

「霧亥だ」

男は、目を合わせることもせずに無感動にそう名乗った。
奇妙な名前と、アンプルに意識を向け、質問しようとするも、すぐにそれは不可能になった。
霧亥は、そのまま脱力し、薄目のまま眠りに入った。
損傷の回復具合の確認と調整や、幾つかのソフトを状況へ最適化させるための措置だったが、ルイズたちは、まだ重症から完全に立ち直っていないのだと理解した。
また、あまりに無愛想なのは、こちらに警戒心と敵意を抱いているのではと疑った。
「とんだ拾い物ねぇ」
続々と進入してきた人々の中にいる、巨大な爬虫類を連れた女が、ルイズと霧亥をかわるがわる眺める。
その後しばらくは、誰も口を開かなかった・・・

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