あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ハヤめにネ!

「……はぁ……」
ぽつりと、悲しげなため息が聞こえた。
そのため息の主、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、肩を落とし、眉根を下げ、とぼとぼと広大な草
原を歩いていた。
「……これから、どうしよう……」
ルイズは途方に暮れていた。
先ほど行われていた、春の使い魔召喚の儀式に失敗し、何の成果もなく一人学園に向かって歩いていたからだ。
級友達はみな各々使い魔召喚に成功して、飛べないルイズを置いて帰ってしまっていた。
「……わたし、どうなっちゃうんだろう……」
さすがに落ち込んでしまう。置いていかれたりするのは、魔法が使えない自分にはそう珍しい事でもない。それより、使い魔すら喚
びだせなかったことに暗澹とした気分になる。
「……なんだか、もういやだわ……。……ちい姉さまの声、聞きたいな……」
ふと、ルイズに望郷の念が沸いてきた。
この一年、ルイズは必死に頑張った。必死に一年、砂を噛むような思いで学んだ。幼い頃からダメだった自分に決別するために、あ
らゆる努力をした。
劣っていた自分。両親を、厳しい姉を、使用人たちを見返して、優しかった次女の姉を、みんなを喜ばせたかった。それが自分なり
の恩返しだった。
認められたかった。ほめてもらいたかった。よくやった、頑張った。お前は頑張れば出来る子だ。そういって頭をなでて欲しかった。
それ以外何もいらなかった。
でも、全ては徒労だった。夜中まで教科書と格闘したり、原っぱで爆発に転がされて泥まみれになったり、周囲の侮蔑に必死に虚勢
を張ったのも無意味だった。
魔法使いたる貴族の基本とも言える、使い魔召喚すらできなかったのだ。いくらルイズが強い信念の持ち主であっても、心が折れて
しまった。
「……帰りたい……ぐすっ……」
故郷を思い出すと、自然とルイズの目に涙が溢れてきた。今まで我慢してきた感情が、急激に膨れ上がってくる。
「……ぐすっ……ひっく……もう、やだ……やだぁ……」
悲しくなって、その場に立ち尽くしてしまった。
もう、我慢ができなかった。ずっとずっと、耐えてきたのだ。いつか、きっと努力は報われると信じて。
それでも、現実は残酷にルイズの敗北を突きつけた。どうしようもないほどに、明確に魔法は使えないという事実を。もはや、覆し
がたいほどに。
ルイズとて、女の子である。とうとう、膝が折れ、腰が砕けるように座り込んで、ぼろぼろと泣き出してしまった。
「う……うう……う……」
つらい、悲しい。苦しい、耐えられない。
がんばったのに、努力したのに、してきたのに、どうして。わたし、どうしてこうなるの。どうして。
もうだめ。もう苦しい。もう耐えられない。もう、もう……前が、見えない。
誰も見ていない草原の真ん中で、ついにルイズは、恥も外聞も忘れて、大声で泣き出してしまおうとして―――

「っはくちゅっ!」

そのために息を吸い込んだところで、可愛らしいくしゃみをした。
……。
「……あれ? は、はくちゅ! くちゅん! くちゅん!」
立て続けにくしゃみが出る。
「え、あ……? ずず、うう……な、なに?」
鼻をすすって、不思議そうな顔をした。
急に鼻水が溢れてきている。ルイズには、何事かわからない。
「あ、は、は、くちゅん! くちゅん! はくちゅん!」



世の中、悪いことは重なる物と言われている。
ルイズも、まさにそれであった。
新たな悲劇はルイズの小さく可愛らしい形のいい鼻、その鼻腔の中で、決して人目には触れず、だが確実に―――進行していた。



『彼ら』が動いていた。
長年、このルイズという少女は、『彼ら』にとって攻略すべき目標だった。
見えないことをいいことに、季節が来るたびに波状攻撃を仕掛け、ゆっくりと、しかし確実に『彼ら』は彼女の体を蝕んでいた。
そして、ついに、ついに―――積年の努力が身を結んでしまったのである。
『彼ら』、そう、『彼ら』とは。

「―――ぼくったちっ花粉っくん今年もがんばるぞー♪」

花粉である。
季節は春、彼らの季節である。
これより、ルイズの体内に侵入した精強なる『花粉くん一個小隊』はその猛威を振るおうとしていた。
もはや防衛能力を完全に喪失したルイズの免疫機構は、彼らに対する対抗手段をまったく持たず、哀れルイズの鼻腔は荒らし回られ
ようとしていた。
つまりルイズは今年から、花粉症になってしまうのであった。

だが。
『彼』がいた。
異世界より召喚され、強大な力を持つ救世主が。
立派な髭を生やした、初老に差し掛かろうとしている中年男性だった。ピシッと糊の聞いた品のいい上等なスーツを着て、赤と黒の
横縞のネクタイをしていた。
銀で作られた印が前につけられたつば付きの帽子を被り、さらにその上に象徴たる不思議なモニュメントが載せられていた。
そして、『彼』は油断しきっていた花粉たちの前に、颯爽とその姿を現した。獰猛なる二匹のドーベルマンを従えて。


【スカイナーさん】


花粉は―――花粉は、恐れた。驚愕し、目を見開き、思わず悲鳴染みたうめき声を上げ、彼を仰ぎ見るしかなかった。
『―――コラーッ』
スカイナーさんの少しかすれた怒声が響き渡った。
さらにすかさず、スカイナーさん得意の堅固なる防御がルイズの鼻腔を覆い尽くす。
―――【出始めガード】―――
それだけで、花粉は戦う意欲を完全に失った。肩を落とし、降参した。
「アイム、ソーリーーーーっ!!!」
ルイズの鼻腔は、守られた。



「くちゅん! くちゅ……。……。……あ、あれ? 止まった……」
いきなり出てきたくしゃみが、今度は急に止まったルイズは不思議そうに首をひねった。
ルイズは気づいていなかった。
圧倒的な力を持ち、主をあらゆる敵から守りきる偉大なる無敵の盾―――ガンダールヴを自分の鼻腔の中に召喚していたことに。




ヒューマンヘルスケア エーザイ『スカイナーAL錠』のCMより スカイナーさんを召喚


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