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ハルケギニアの伊達直人

ハルケギニアの伊達直人


寒さも強まり、一年が終わろうとしている時期に、ハルケギニアは平和な活気にあふれていた。
始祖の降臨祭……始祖ブリミルがこの地に降臨したことを祝い、一切の戦争も争いごともやめて祭りを楽しむのだ。
貴族も平民も、一年の無事を感謝し、新たな一年を祈って遊び、飲み、騒ぐ。
ここ、トリステインの首都トリスタニアでも年越しに向けてお祭り騒ぎが続いている。

しかし、中にはそうした俗世間のにぎわいとはうらはらな場所もあった。
トリスタニアのとある修道院。アルビオンのウェストウッド村でティファニアと住んでいた子供たちは、ティファニアが魔法学院にあがるときに彼女と別れてここに引き取られていた。
だが、修道院とは禁欲的な場所であるから子供たちの生活は決して楽しいものばかりではなかった。長いお祈りに、広い聖堂の掃除、それに勉強と、遊びたいさかりの子供たちにとっては退屈でつらい日々だった。
けれど、この日子供たちは喜びに包まれていた。朝、修道院の前に積まれていた大きな箱。そこからは多くの夢が飛び出してきたからである。
「わあっ、おもちゃだ!」
「こっちは絵本だよ」
「きれいな服、すごーい」
子供たちは、箱から出てきたたくさんの贈り物に目を輝かせている。しかし、誰がこれほどたくさんの贈り物をしてくれたのだろうか?
と、そのとき一人の子が箱に添えられていた一枚のメッセージカードに気がついた。
文字の読めない子供たちに代わって、神父さんがカードをとりあげて読み上げる。それにはこう書かれていた。
「君たちが立派な大人に育てるよう、気持ちを届けさせていただきました、ナオト・ダテ」
聞いたとたん、子供たちからわっと歓声が上がった。ナオト・ダテ、ハルケギニアではあまり聞かない妙な名前の人物からの、これはプレゼントだったのだ。喜びに湧く子供たちは、手に手に贈り物を持って遊んでいる。ふだん厳しい神父さんも、今日は止めることはない。

その光景を、陰から見ていた目が四つあった。
そのうち二つは平賀才人、もう二つはルイズである。
「わー、みんな喜んでくれてるな。ルイズ、これでいいのか」
「ええ、上出来よ。あれで喜んでくれるか心配だったけど、テファの子供たちだから素直でよかったわ。さ、次へ行くわよ」
「お、おい待てよルイズ! うーん、それにしても足長おじさんかサンタクロースか、ハルケギニアにもこんな風習はあるもんなんだな」
早足に立ち去っていくルイズを追いながら、才人は自分たちの贈り物で喜んでくれている子供たちをもう一度振り返ると、その楽しそうな笑い声にニコリとして、ハルケギニアもなかなか捨てたものではないなと思った。

実は、これはテファの子供たちだけの特別なことではないのだ。ハルケギニアには、毎年降臨祭の時期になると善意の人たちが「ナオト・ダテ」と名乗って、貧しい人や恵まれない人に寄付をする習慣があるのだという。
その起源は、ルイズの言うには、数百年前にヴァリエール領のとある孤児院で「ナオト・ダテ」という奇妙な名前で、服やおもちゃが毎年寄付されていたのが国内に次第に共感を呼び、いつしかハルケギニア中に広がっていったのだそうだ。
今では、身分も関係なく施しをできる行事として、大勢の人が「ナオト・ダテ」を名乗っている。

でも、それに参加するには二つだけルールがある。
「絶対に名乗り出たりしないこと」「ナオト・ダテを探したりしないこと」だ。
どんな大金を寄付しても、見るものの目が歪んでいたら売名行為と受け取られてしまうものだ。
しかし、ナオト・ダテという匿名の誰かなら、他人の目を気にする必要はない。
だから、受け取るほうも周りの人たちも、あえてナオト・ダテを探したりはしないのだ。

トリスタニアの別の孤児院でも、顔を隠した一団によって贈り物が届けられている。
「なあ、私はどうもこういう慈善事業というものは肌に合わない気がするんだが」
「そんなことないですよ隊長、よく似合ってます。それに私たちも、身寄りがなかったところをどこかのナオト・ダテのおかげでできた孤児院に拾われて助かったんです。今度は、私たちがナオト・ダテにならなくちゃいけませんよ」
フードで顔を隠した金髪と青髪の女性は、孤児だった過去を思いつつ、この孤児院の子供たちも立派に育ってほしいなと願うのだった。

ナオト・ダテはほかにもいる。

ブルドンネ街では、今年の不作で大赤字を出した八百屋に「あたくの野菜は新鮮でおいしいからがんばってね、ナオト・ダテ」と、ごつい男のキスマークつきの手紙が添えられて、数百エキューはする高級ワインが贈られている。

ヴァリエール領では、マンティコアに乗った何者かによって領内の病人や老人を抱えた家々に贈り物が届けられる。
また、ヴァリエール家の次女宛てに「はやくよくなるように祈ってますだ、お友達と食べてくだせえ、ナオト・ダテ」とつたない字の手紙とともに野菜が贈られてきた。

同じようなことは、国境をへだてたツェルプストー領でもおきている。

クルデンホルフ領では、調子に乗った家の娘が名乗り出ようとして慌てて取り巻きに止められる珍事も起きた。
その娘は、しばらく私が贈り物をしてあげたのよと言い出したがっていたが、寄付を受けた子供たちが無邪気に喜んでいる姿を見ているうちに、でしゃばろうとしたことがみっともないと悟ったのか、「帰りましょうか」と、苦笑しながら立ち去っていった。

魔法学院の近くの小さな村の、ある家には蛙苺のたっぷり詰まった籠が届けられていた。
ただし、この場合は文字が書けなかったのかカードは残されていなかったけれど、その家の子は「竜さんからだー!」と、とても喜んでいた。

まったく匿名のものから、うっすら差出人がわかるものまで「ナオト・ダテ」の贈り物は、トリステインを駆け巡っていく。

ナオト・ダテはガリアにもいる。
とある寒村では錬金で作ったうまそうな肉が贈られていた。
翼人との交流でにぎわうエギンハイム村の周辺の小村では、なんと空から来るナオト・ダテが現れた。

一方、とある青髪の少女とその従姉妹は。
「ねえシャルロット、私はどうもこういうことは背中がかゆくなるんだけど」
「我慢、あの戦争で生まれてしまった孤児たちや、因習の犠牲になった人たちへの、これはせめてもの償い」
セント・マルガリタ修道院に届けられた、たくさんのお菓子にも『皆さんの幸せをお祈りします。ナオト・ダテ』とカードがつけられていた。

こうして、たくさんの寄付や贈り物がハルケギニアのあちこちで小さな幸せを振りまいていった。
純粋な善意から、複雑な理由を持った人までいろいろいるけど、贈られた恵まれない人たちはとても喜んでいる。
ルイズと才人も、いろんな場所をめぐってようやく学院に帰って来た。二人とも、すっかり財布は空だけれど、どこかやりとげたようなすがすがしさをただよわせていた。
「ふー……これで今月のおこずかいはパーね。調子に乗って贈りすぎちゃったから、しばらくは服も買えないわ……でも、まいいか」
「六百エキューも使ってよく言うぜ。けど見直したよ。目立ちたがり屋のお前が、本当に最後まで名乗り出ずに寄付するなんてな。すごいよ、お前」
「あまり貴族を馬鹿にするものじゃないわよサイト。それに、ナオト・ダテは本当にかっこいいんだから! 名乗るなんてそんなこと、彼に失礼だわ。でもサイト、あんたはシュヴァリエの年金まではたいて付き合わなくてもよかったのに」
「気にするなよ。ギーシュたちと飲んだくれて消えるよりはいいさ。ところでルイズ、気になってたんだが伊達直人って誰だ? 俺の前に誰かハルケギニアに来てたのか?」
「ん? あんたの世界の話なのに知らないの。私たちの先祖は、これを読んで本当の人助けとは何かを知ったんだから。ほら、あなたも読んでみなさい!」
ルイズの手には、ヴァリエール家に代々伝わる召喚されし書物「タイガーマスク」があった。



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