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ウルトラ5番目の使い魔、第二部-27



 第二十七話
 魅惑の妖精亭は今日も繁盛!

 知略宇宙人 ミジー星人
 合体侵略兵器獣 ワンゼット
 潜入宇宙人 ベリル星人 登場!!


 月も替わって、トリステインもめっきり冷え込む日が多くなってきた。
「うー、さぶさぶ」
 トリスタニアでも、店の窓ガラスにつゆがつきはじめる中で、夏服のまま外に出た店主が鳥肌を立てている。
 ハルケギニアは北方のアルビオンをのぞいて全体的に温暖で、雪が積もるほど冷え込むことは滅多に
ないけれど、そろそろ厚着をするのが必要そうである。
 しかし、街の雰囲気は冷え込む気温とは裏腹に、日を追うごとに熱気を増していっていた。
「家の飾り付けや、紙吹雪の用意はしたかい? 窓から掲げるトリステインとアルビオンの国旗、これも
必需品だ。急いで買った買った」
「さあさ、アルビオン名物の麦酒が出る店はこちらだよ。この味に慣れとかないと、乾杯のとき恥かくよ!」
「うちのホテルの窓からは、パレードの様子が一目ですぞ。予約はお早めにお願いします」
 間近に控えたトリステインのアンリエッタ王女と、アルビオンのウェールズ新国王の婚礼の祝いに
備えるために、王都は近来なかったにぎわいを見せている。
 家を飾り立て、祭りのために酒を買い込む市民。かき入れ時に声を張り上げる店店の店主。パレードを
一目見ようと早くもやってきている観光客。さらには、街の衛士や日ごろ蔑まれる裏町のごろつきたちも、
期待に胸を膨らませて口々に噂話に花を咲かす。
「あと少しで婚礼式典の始まりね。アルビオンからの国王陛下座上のお召し艦を迎えるラ・ロシュールでも、
今頃はさぞ忙しいでしょう」
「しかし、今回のご婚礼は今までの歴史になかったものだなあ。本来なら、姫さまがアルビオンに嫁いで
いくのに式典はトリステインで。しかも、国政については両国とも大きな変更はほとんどないとは」
「うむ、それについては大臣や役人たちの間でも、前例がないとか、非常識だとか相当にもめたそうだ」
「それも、今の暗い世相を吹き飛ばすための特例らしいわね。それに、レコン・キスタみたいなはた迷惑な
連中が出てこないためにも、慣例を捨ててでも両国が緊密な関係を作り上げねばなるまいよ」
「それにしても、ウェディングドレス姿の姫様は美しいだろうなあ。おれ、一目見たらもう瞬きできないかも
しれないぜ」
「大げさなんだよお前は。ああ、そういえば魔法アカデミーが式典を盛り上げるために、なにかすげえ
催し物を用意して、前夜祭で盛大に披露するっていってたな」
 老若男女問わずに、人々は一様にトリスタニアの焼失以来ろくなことがなかった空気を吹き飛ばそうと、
始まる前から盛大にお祭り騒ぎを楽しんでいた。

 今日も、昨日は見なかった出店や立ち商売が増えていてトリスタニアはにぎやかさを増している。
以前にベロクロンの襲撃や、その後のメカギラスから先日のアブドラールスによって破壊された街並みも
今ではすっかり復興し、新しくやってきた人々が家財道具を運び込んでいる。
 そんなにぎわっている商店街の中を、メイド服を着た黒髪の少女が一人、大荷物を抱えて歩いていた。
「ふー、はー、うーん、さすがにちょっと重いかしら。おじさまったら、いくらいいお酒がいっぱい入荷したから
メイド仲間にもおすそ分けしてあげなさいって、もたせすぎよ。これから、学院のみんなのためにお買い物も
しなきゃいけないのに、もう」
 シエスタは、今日タルブ村でとれた秋野菜を、酒場をいとなむ叔父のスカロンのところに届けた帰りだった。
背中に背負った見上げるほどの荷物の中には、スカロンの好意でもらってきた銘酒のケースがぎっしり
詰められて、がしゃがしゃとガラスの触れ合う音を立てている。なのに、彼女は荷物の重さを感じさせない
軽やかな足取りで、人波をくぐって商店街を行き来する。か弱そうに見えても、さすがこの世界のメイドは
地球のハウスキーパーなどとは格が違った。
「ふー……けっこう出費しちゃったわね。クリスに頼まれてた香水はあきらめるしかないかなー。でも、
偶然ですけど途中の本屋で、念願だった『バタフライ伯爵夫人の優雅な一日』シリーズの最新刊を
購入できたからよしとしましょう。でもジェシカったら、こんな本幼稚ねなんてひどいわよね。そりゃあ
あなたに比べたらだけど、私たち普通の女の子にとっては聖書なのよ。うふふ、帰ったらさっそくお勉強して、
そしてそして……うふふふ」
 と、シエスタは今トリスタニアの婦女子のあいだで流行ってる本を抱きしめて、一人できゃあきゃあ
言いながら歩いていった。乗り合い馬車に乗った彼女が学院についたのは、その夕方のことである。

 さて、そんな平和な風景に混じって、ある特定の侵略者たちは今日も明日のためにがんばっていた。
 チクトンネ街に面した『魅惑の妖精亭』で、屋根裏部屋に響くいびき声が三つある。

 元・在日宇宙人、現・在トリステイン宇宙人のミジー星人たちの朝は遅い。
 街の時報の鐘が十時を鳴らす頃、屋根裏部屋でぐっすり眠っている彼らのところにジェシカが上ってくる。
「ほらー! ドルちゃん、ウドちゃん、カマちゃん。昼だぞ起きろ!」
 ジェシカが鍋をおたまでガンガンと叩くけたたましい音に呼び起こされ、寝ぼすけな三人組は飛び起きた。
「うーん、ジェシカちゃんおはよう……」
 一番はじめに目が覚めたカマチェンコが、ふらふらしながらベッドから降りてきた。その顔はメイクが
崩れて、ただでさえキモいオカマ顔がホラー調になっているけど、さすがジェシカは気にも留めない。
「おはよう。食事できてるけど降りてくる? それともここで食べる?」
「はい、じゃあ今日は下で食べさせてもらいますね」
 寝ぼけ眼をこすりながら、ドルチェンコは年齢では(変身した人間の見た目上)ずっと下だけど、この店の
身分ではずっと上のジェシカにぺこぺこしながらあいさつした。
「わかったわ。じゃあスープ用意しておくから、冷めないうちに降りてきなさいね」
 言い終わると、女の子たち全員の世話係を任されているジェシカは、次の子を起こさねばと降りていった。
 ドルチェンコは、くっそーなんであんな小娘に頭を下げなきゃいけないんだと内心で悔しがるものの、
食わせてもらってるんだから文句は言えない。世の中郷に入れば郷に従え、よその星に行けばその星の
ルールに従うのが筋というのを言ったのは、かのウルトラマンことハヤタである。
 昨晩まで大勢のお客さんでにぎわっていた店内で、店長のスカロン以下、ジェシカたち店の妖精たちと
いっしょに、三人組はテーブルについた。
「それでは、今日もこうしてみんな揃って一日を始められることを、始祖ブリミルと女王陛下に感謝しましょう」
 スカロンが音頭をとって、一同はハルケギニアでは一般的な食事前のお祈りをささげた。
 メニューは、パンとバターと牛乳と、スープにソーセージが三本ついたささやかなものだが、鍛えられた
店のコックたちの作った料理は、できたての湯気をはなって食欲を多いに沸き立たせる。
 三人組は、宇宙人なのでもちろん心から感謝したりはしないけれど、代わりに「征服がうまくいきますように」
「お給料があがりますように」とかは祈った。現金なものである。とはいえ、スカロンたちに読心術があるわけはなく、
各人それぞれお祈りをすませると、あとは実質は朝食になる昼食のはじまりだ。

 やがて正午を過ぎると、店員の女の子たちはそれぞれの当番に応じて仕事をはじめる。
 魅惑の妖精亭は夜から明け方までが営業時間なので、夜の妖精たちも昼間は粗末な衣装で下働きだ。
店の清掃にはじまり、酔っ払いが壊した椅子の修繕や、店の収支の計算、銀行への払い込みや役所に
税金の支払いとやることは普通の店となんら変わることはない。もちろんそこで働いている三人は、
ほかの店員たちと同じように朝になったら眠って、昼近くになったら起きて食事をとり、働かねばならない。

 まぁ、とはいうものの彼らもこの魅惑の妖精亭に住み込みで働いている以上、行動パターンはこの店の
スケジュールに従うことになる。
 今日の三人組のお仕事を、てきぱきと指示を出していたスカロンが発表した。
「それじゃ、今日の買出しの当番はドルちゃんたち三人ね。場所はこのあいだジャンヌと行ったとき
覚えたわね。頼んだわよ」
 毎日消費される食料の量が膨大なので、荷車を引いて三人組は市場に向かう。そこで、肉や野菜、
何百本ものお酒を買い込む。そしてすごい重さになった荷車を、彼らはひいこら言いながら店まで引いて
帰って、厨房に運び込むと、もう三人とも汗だくだ。
「終わりましたー」
「ご苦労様。しばらく休憩してていいわよ」
 店の清掃をしているスカロンたちに迎えられて、三人組はへとへとになった体をやっと休ませた。
 けれど、ハルケギニア征服を企む彼らミジー星人にとっては、このわずかな自由時間こそが本番である。
鉄くずが山積みされて、床が抜けそうな屋根裏部屋で、彼らは侵略兵器の開発にいそしむのだ。
『絶対侵略!』『打倒ダイナ!』『日本一』『脱、借金生活』『目標、チップ五〇〇エキュー』
 などと、よくわからない標語や侵略と全然関係ないスローガンが掲げられた垂れ幕や、鉢巻を締めて、
ミジー星人たちは少ない給料をやりくりして集めた侵略資金を元に集めた鉄くずを加工していく。
「先日の特殊戦闘用メカニックモンスター・コガラオン28号は残念ながら失敗した。しかし、その残骸は
ぽちガラオンのコントローラーとして、生まれ変わるのだ」
 製作に失敗して大破したロボットのパーツを使い、ノミやトンカチをふるって屋根裏の『ピコポン製作所Ⅳ』に
にぎやかな喧騒がこだまする。作っているのは、秘密兵器ぽちガラオンのコントロール装置である。
なにせ、これは全長七センチメートルしかない、史上最小のロボット怪獣であるために乗り込んで
操縦するわけにはいかないのだ。
 このコントロール装置さえ完成すればと、ネバーギブアップの精神を持って、ドルチェンコの努力は今日も続く。
すべてはハルケギニア侵略のため、凶悪宇宙人の面子にかけて。
 そうこうしているうちに日は傾いて、開店時間がやってくると階下からジェシカの声が響いてきた。
「三人とも、そろそろ夕食にするわよ。降りてらっしゃい」
「はーい!」
 三人そろって仲良く返事し、彼らは作業を中断して降りていった。宇宙人といえども腹は減る。
腹が減っては侵略はできない。大事をなすためには、とにかく体力が重要だ。
 昼食に比べて、エネルギー補給を重視したこってりした食事をほうばって、魅惑の妖精亭の営業時間がやってきた。

 街は街灯に火がつき始め、仕事帰りの男たちがちらほらと目につきはじめる。
 店のテーブルをきちんと並べ、料理の下ごしらえが済んだら、看板娘たちの登場だ。
 昼間は普通の街娘だったジェシカたちは、色っぽさと可愛らしさを併せ持つ衣装に身を包み、夜の妖精に変身する。
「さあ! 開店よ」
 スカロンがぽんと手を叩き、入り口の羽扉のプレートの「close」を「open」に変えて、夢の世界の入り口が開く。
「いらっしゃいませ! ようこそ、魅惑の妖精亭に」
 一番に入ってきたお客さんに、店中からの笑顔の雨が降り注ぐ。今日もまた、一時の安らぎと、明日への
活力を与える妖精の国が花開いた。

 きわどい姿の女の子たちが勺をし、ニコニコと微笑みを向ける。
 ジェシカは先頭に立ってお客からチップを集め、負けじとほかの女の子たちも若さを駆使して色仕掛けをかける。
 たまには悪酔いして暴れ出す迷惑な客もおるものの、そういうのはもれなくスカロンとウドチェンコが外の
ゴミ捨て場にテイクアウトした。

 そしてその日の夜、この地域の徴税官を勤めているチュレンヌが客として姿を見せていた。
「ふーむ、この酒はいいものだ。ゴーニュの三十年ものかね?」
「惜しい。二十五年ものですわ。ですがさすがチュレンヌさま、一口でこの名酒の銘柄をお当てになるとは」
「いやいやまぐれだよ。私はそんな上等な舌は持っておらん。昔もまあ、人が嫌がるものばかり好物に
なって、まわりの顰蹙をかってたものだ」
 スカロンと並んで、最近の景気について話しながら、和気藹々とチュレンヌは酒を酌み交わしていた。
 以前は法外な税金を取り立て、逆らえば魔法を振りかざすチュレンヌがやってきたら店の客たちは
逃げ出していたものだが、いまでは誰も気にする客はいない。
 ジェシカたち店の女の子も、前はたかるだけたかってチップの一つも置いていかなかったチュレンヌを
毛嫌いしていたけど今は違う。話の合間を見て、酒やつまみを自分から差し入れに行く子が何人もいる。
それは、前はあった好色な目つきやいやらしい手つきがなくなったことと、もうひとつ。
「国に残してきた娘に似ているから」
 そういって、チップをはずんでくるからである。とはいえ、店の娘たちは誰一人として、チュレンヌの
故郷がどこかとか、どんな家族がいたのかとかを知りはしない。でも、そのときの彼の顔は、本当に
娘を見る父親のような温かさがあって、疑う娘は誰もいなかった。

 だが、そんなチュレンヌにも一つだけ、人には言えない秘密があった。それは、ある日彼がカマチェンコと
飲んでいるときに、ふと語った昔話。酒も進み、それまで何気ない世間話をしていたチュレンヌは、
突然驚くべきことを言った。
「君たち、実は人間ではあるまい」
「えっ!? なななな、なな、何を言われるのですか!」
「はは、そう驚かせてすまなかったな。だが、同類ゆえかな、私には君たちの正体がわかるのだよ」
「は? と、言われますと、あなたさまも?」
 驚くカマチェンコに、チュレンヌはうなずいてみせた。
「この星の人間の体を借りているが、私は元はベリル星という星に住んでいてね……」
 とつとつと、チュレンヌ……いや、チュレンヌに乗り移ったベリル星人は自分の身の上を語った。

”昔、私はベリル星の諜報員として、ある星を侵略するために潜入工作員としてもぐりこんでいた。
 その星の人間に憑依し、本隊がやってくるときまでに準備を整えておくためにね。
 そのため、目立たないように、憑依する人間もどこにでもいるような普通の男にしました。
妻一人、娘一人のしがないサラリーマンで、仕事はけっこう大変でした。でも正体がバレないように
気をつけながら、がんばりました。
 でもね、人間になりきって生活しているうちに、私は大変な過ちを犯してしまいました。
 ……愛してしまったんですよ、偽りのはずの家族をね。
 私たちベリル星人には、家族という概念がありません。家族というものは、私にとってとても新鮮で、
とても幸せな場でした”

「それで、仲間を裏切ったと」
「ええ、迷いに迷いました。でも、家族の愛が私に勇気をくれたんです。しかし、母星からしてみたら
私は許しがたい裏切り者。必ず命を狙ってくるはずだと、私は妻や娘を巻き込まないようにするため、
元の人に家族を返して長い旅に出ました」
 それで、長い長い旅の末にたどりついたのが、このハルケギニアだったというわけだった。
「このチュレンヌという人の体に乗り移ったのは偶然でした。この星にやってきて、人に見られたら
いけないと思い、人里からはなれた場所に降り立った私の目の前で、この人の乗った馬車が
事故にあったのです」
 それは二月ほど前の嵐の日だった。そのときチュレンヌは、重税に耐えかねて夜逃げをした店の
店主を追っていったらしい。しかし、その日はちょうどひどい嵐の日だった。でも店主に逃げられるのを
嫌がっていた奴は、危険だと部下が止めるのも聞かずに無理に馬車を出した結果、途中の丘で
がけ崩れに会い、馬車ごと五十メイルはある崖下に転落したのだった。
「驚いて馬車に近づいてみたら、彼は頭を強く打ったらしくすでに虫の息でした。私はとっさに、
彼を助けなければいけないと思い、彼の体に同化したのです」
「そうか、それで周りからは急に人が変わったように見えたわけなのね」
 謎はすべて解けた。操られていたのでも成り代わられていたのでもなく、乗り移られていたのなら
いくら魔法で調べてもわかるわけがない。まして、宇宙人に憑依された人間を見極めるなど、
やれというほうが無茶だ。
「それで、元のチュレンヌさんは助けられたんですの?」
「いや、一命はとりとめられたものの、脳へのダメージが大きかったらしく、彼の意識はほとんど植物
状態といってもいい状態でした」
 それでベリル星人は、仕方なくチュレンヌに代わって彼の仕事をこなしてきたのだと語った。幸い、
前の星で人間に憑依していたときも売り込みみたいなことはしていた経験が役に立った。でも、
彼としては普通におこなったつもりの仕事が想像以上に人々から歓迎されてしまい、元の人間が
よほど悪辣なことをしてきたのだと知ったときは、やや憂鬱になった。
「私としては、一時の宿代代わりと思ってした仕事だったのですが、こうも信頼を得られるとは思いませんでした」
「それだけ、あなたが立派な仕事をしたってことなんでしょ。もうその体、ずっと借りちゃってたらどう?」
 元のチュレンヌが帰ってきたところで、誰一人喜ばないんだからとカマチェンコはそう勧めた。しかし、
ベリル星人はきっぱりと首をふった。
「元の人間がいかに悪人であっても、私のやっていることは卑怯な行為に違いはないです。いつか、
彼の意識が目覚めるときが来たら、私はこの体を返すつもりです。これから彼の意識が目覚めるかは、
未知数としかいえませんが、可能性はあると思います」
 地球でも、ほとんど脳死にいたった人が目を覚ましたり、植物状態の人間が回復した例はある。
チュレンヌの意識が回復する可能性もゼロではない。しかしそのとき、チュレンヌの周りの人たちや
チュレンヌ本人が直面するであろう違和感はどうなるのか……
「つらい選択をしたわね、あなた」
「仕方ありませんよ。私は元々、よそ者なんですから。あ、お酒おかわりお願いします」
 ぐっと酒を飲み干したチュレンヌを見て、カマチェンコはお人よしな侵略者もいたものだと思った。
 自分たちなんか、秘密工作員として地球に潜入したときは輝いていた。それが、ふとしたことから計画が
漏れてアジトを破壊され、ミジー星に帰れなくなって後は潜伏生活……不屈の闘志で残存戦力で
リベンジマッチを挑んでもやっぱり負け続けて、あげくの果てに異世界に迷い込んでしまった。
「人生、なかなか思ったようにはいかないものですわね」
「そうですね。ここでこうしていることなど、数年前は考えもしなかった」
「それはだいたいの人がそうでしょうよ。思ったとおりの人生生きられる人なんて、そうはいませんわ。
でも、あたしだってこの星を侵略しに来た凶悪宇宙人かもしれないのに、なんで秘密をばらしてくれましたの?」
「さてね……しかし、同じく人の目を忍んで生きている身の上だ。少しくらい愚痴をこぼしてもいいではないか」
 それから二人は、孤独な宇宙人どおし、じっくりと飲みながら語り明かした。
 そして、二人はこのことは二人だけの秘密にしようと思った。もしもベリル星からの追っ手がかかったら、
ここにいるほかの皆を危険に巻き込むことになる。
「母星を裏切った業は、この先も背負っていきます。でも、この街には私やあなた方のほかにも、何人かの
お仲間もおるようなので、できるだけ前向きに生きていきますよ」
 人懐っこい笑みをチュレンヌの顔に浮かべたベリル星人は、酒の追加を注文した。
 トリスタニアだけではなく、この星には自分の星にいられなくなって、彼のように、この星を第二の故郷と
決めて住んでいる宇宙人がまだまだいる。かつて、ウルトラマンレオがそうであったように……ミステラー星人や、
サーリン星人が地球人となることを選んだように。そんな宇宙のさすらい人が、平和に過ごしていければいいなと、
宇宙人二人は語り合い続けた。


 ところで、魅惑の妖精亭には最近新しくできた名物があった。
 それは、可愛い女の子の接客が売りのこの店にはまったく異質な二人のオカマによる、あるサービスである。
 スカロンとカマチェンコのテーブルに、一人の疲れた表情をした中年男性がやってくる。
「あらん、誰かと思えばブルドンネ街のゴーダさんじゃないの。どうしたの、うかない顔しちゃって」
「うっうっ、聞いてくれよスカロンさん。女房が、ロゼのやろうがよ。俺のことをよ、学もない役立たずだって、
おれぁ一生懸命働いてるのに稼ぎが少ないって、今月の儲けが悪かったら離婚だって言うんだよ。
あいつはもう、俺のこと嫌いなのかいよ!?」
 男は半泣きになりながら、酒の味もわからないという風にグラスの中身をこぼしてスカロンにすがり付いていた。
 どうやら話を聞くところ、彼は妻と最近うまくいっていないらしい。それでとうとう離婚話まで持ち出される
ようになってしまったという。スカロンは、彼が話したいだけ話すまで聞くと、つとめて優しい声で話しかけた。
「それは大変ね。あなたたち、もう十年も連れ添ってるってのにねえ。でも、絶望するにはまだ早いわ。
奥さんが本当にあなたのこと嫌いなら、だんなをほっておいて別の男を見つければいいだけだもの。
奥さんは、あなたのことを思っていればこそ厳しくするのよ。私も、ずいぶん前に逝ってしまった妻のことを、
昨日のように思い出せるわ。あのころはこのお店もたいしたことなかったけど、私が弱気になろうものなら、
彼女が尻を蹴っ飛ばしてくれたものよ」
 しみじみと語るスカロンの言葉に、男はいつしかじっと聞き入ってしまっていた。
「ね、だからあきらめないで。愛は決して冷めてなんかないわ。女ってのは、強い男にあこがれるから、
弱い男には腹が立ってしまうものなの。だからあなたも男を見せて応えてあげて、あなたならきっと
できるはずよ」
「でも、あいつ俺がどんなにがんばっても、そんなのできて当たり前って相手にしてくれねえんだ。
おれはどうすりゃあいつを満足させられるんだ? あいつは俺より金のほうが大事なのかよ」
「そんなことないわよ。ああいうタイプはね、正面から褒めるのが恥ずかしいだけなの。だからね、例えば
『あんたにしてはよくやってわね。で、でも勘違いしないでよ。この程度で満足しないで、次はもっと
稼いでこないと許さないんだからね!』、なーんて言ったりしたことない?」
「う、そ、そういえば……」
 心当たりがあるという男に、スカロンは間髪入れずに弾丸のように言葉を発して男を勇気付けていった。
野太い声ではげまされ、たくましい腕で背中を叩かれているうちに男は少しずつ元気が湧いてくるように
思えてきた。それは、彼がすっかり忘れていた、子供の頃に父親から受けた愛情の思い出が蘇って
きたからだろうか。
 次第に気力を取り戻していく男に、同席していたカマチェンコも別の方向から応援した。
「そそ、私の国じゃね。そういうのを、始めツンツン後からデレデレ、略してツンデレっていって人気あるのよ。
すごいじゃない、あなたの奥さん流行の最先端なのよ。照れてるだけ照れてるだけ、そうね……そうだわ、
部屋を真っ暗くして、お互いに顔が見えないところで話してみなさい。きっと素直になってくれるわ」
「そ、そうなのか? そういえば、若い頃もあいつは最初はなんでも馬鹿にしてたなあ。でも、俺はあいつの
そんな気の強いところに引かれて……わかったよ。俺もう一度、あいつとぶつかってみるよ!」
 男は涙を拭くと、酒をぐっと飲み干した。そして、両手で顔をはたくと「ありがとよ!」と、言い残して、
勘定を置いて店を飛び出ていった。スカロンとカマチェンコは、がんばってねと手を振って見送った。

 これが、今静かなブームを呼んでいる『スカロンとカマチェンコのお悩み相談室』なのである。

 もちろん、そんな名前のサービスが正式に魅惑の妖精亭にあるわけではない。ただの人生相談や
愚痴の相手ならば店の女の子も勤めるし、相手をしてもらってうれしいなら若い女の子のほうがいいと
大多数の客は言うだろう。
 けれど、中には酒や女で紛らわせないほど重い悩みを抱えた人間もいる。さらに、そういう人間は
往々にして悩みを相談する相手がいなかったり、身内に話すのは気恥ずかしかったりするものだ。
 男手一本でこの店を守ってきたスカロンの言葉には重みがあり、人生に迷う者たちが一杯の酒ともに
人目を忍んでやってくる。一方カマチェンコのほうも、一応潜入工作員だったので、現地の住民と
コミュニケーションをとる手段は熟知している。地球にいたころにオカマバーで働いていた経験も役立った。
 なお、新入りのカマチェンコもスカロンと肩を並べていることが、多少妙に思えるかもしれない。しかし、
実は意外にも、店員たちの中でも人気のベストⅢにいるのはカマチェンコなのだ。これには当初女の子たちも
驚いたのだけれど、カマチェンコが聞き上手に徹しているため、若い女の子相手にはなかなか言えないような
愚痴も言えるからだった。
 才人はキモがっていたが、女の包容力と男の頼もしさを合わせて持つ、それがオカマなのである。
むろん、そばで見ると慣れるまでにかかるが、それはそれ。

 それに、やってくるのはなにも男ばかりではない。今度二人が指名されてやってくると、テーブルには
緑色の髪をした歳若い女性が待っていた。
「あらアメリーちゃんじゃないの。今日は銃士隊の仕事は非番?」
「ああ、本当の副長が帰ってきたから、代理もお役御免でね。とりあえず、水割りを軽くもらおうか」
 実は今では銃士隊の面々も、この店の常連が多くなっていた。アメリーは、二言三言世間話を
交わした後で、カマチェンコに相談を持ちかけた。
「実は、うちの隊のある者が今恋をしているんだ」
「あら、それは素敵ね。女の人生は恋をするためにあるもの。私も、初恋のあのドキドキは忘れられないわ」
 カマチェンコは、地球のオカマバーで働いていたころのお客の一人の顔を思い出した。思えばあのころは
真面目に働いて生活するという喜びを知ったばかりで輝いていた。懐かしい思い出を蘇らせたカマチェンコは、
「それでそれで?」と、続きを尋ねる。
「うむ。けれど、その子は引っ込み思案で見ていてはがゆくてな。せっかく元がいいというのにもったいないのだ」
「あらまあ、それでみんなでその子の恋路を応援してあげようっていうのね?」
「話が早くて助かる。しかし問題があってな。その男にはすでに思い人がいて、しかも大貴族の令嬢ときている。
我々としては、仲間の恋心をなんとか実らせてやりたいのだが、名案はないだろうか?」
「あれま、他人の恋人を横取りできないかっていうの? アメリーちゃんたちもけっこう悪ねえ」
 と、言いながらもカマチェンコはうーんと考え込むそぶりを見せると、店の奥に向かって叫んだ。
「ジェシカちゃーん! ちょっといいかしら」
「はーい、どうしたの?」
 客の陰からよく目立つ黒髪が飛び出して、店内を飛び石を踏むように駆けて来た。彼女は別の男たちの
相手をしていたと見えて衣装が少々乱れているが、走りながら器用に直すとアメリーとカマチェンコをはさんで座った。
そしてカマチェンコからアメリーの同僚の恋についての相談を聞いた。このシエスタの従姉妹は、男女の
恋愛に関しては、そんじょそこらの娘など及びもつかない百戦錬磨の達人なのである。
 ジェシカは興味深そうにうなずくと、アメリーの耳元でひそひそととんでもないことをささやいた。
「そういうときはねえ。とにかく既成事実を作っちゃうに限るのよ。お酒飲ませて酔いつぶれさせて、
ベッドに誘い込んだら、あとはもうわかるでしょ?」
「うーむ。やはりその手しかないか。しかし、強引すぎはしないか?」
「いいのよ! こういうのは先にやっちゃったもの勝ちなんだから。その人だって、彼のことを愛してる
んでしょう? だったら絶対幸せになれるって! ともかく、子供作っちゃえば、もうこっちのものよ!」
 ジェシカは拳でテーブルを強く叩いた。その勢いでグラスの中のワインがこぼれて赤い水溜りを作り、
ナプキンにも赤いしみを作った。アメリーは、その水溜りとしみをしばらくじっと見つめていたが、やがて
決意したように顔を上げた。
「なるほど……なら、しびれ薬も用意したほうがいいかな。よし、皆と検討してみよう。感謝する」
「がんばってね。恋は攻めて攻めまくるのがコツよ」
 なにやらぶっそうな気配がひしひしとするが、アメリーは満足げにうなずくと店を出て行った。
 見送ると、カマチェンコは尊敬と疑問を半々でジェシカに話しかけた。
「さっすがジェシカちゃん。でも、あれでほんとによかったの?」
「いいのよ。一度しかない人生、思う様に生きればね。年をとってから後悔したって遅いし、恋を押し殺して
生きるなんて、女の幸せ放棄してるも同然じゃない」
「じゃ、ジェシカちゃんはいつ恋するの?」
「んー……あたしを惚れさせる男が現れたらするわ。でも、早売りと安売りはしないつもりだからね。
さっ、お仕事お仕事」
 どうやら、妖精を人間界に連れ出す勇者はまだ現れないようである。


 次にやって来たのは、フードを目深にかぶった街娘風の女性だった。
「あらん、これはこれはアンリエ……」
 カマチェンコが彼女の名前を呼ぼうとしたとき、脇腹にコートの下に隠し持っていた杖が突きつけられていた。
「だめですよ。ここでは街娘のアンさんで通してるんですから」
「あらん、これはまたデンジャラス&バイオレーンス」
 笑顔の殺気ほど怖いものはない。異世界の宇宙で星となって輝くのはごめんのカマチェンコは、両手を
あげて無条件降伏の姿勢をとった。でも、ただの街娘は絶対に他人に杖を突きつけて相談に来たりしない。
この娘の正体は何者なのであろうか? フードからは、紫色のなめらかな髪と、薄くルージュの塗られた
上品そうな唇がのぞいている。
 ついでに、離れた席には少しも笑っていない怖い顔をした女性が数人、こっちを睨んでいる。なんとなく、
前に銃士隊が戦勝パーティをしたときに似た子がいたような気がするけれど、とりあえず他人ということに
しておいたほうがよさそうだ。
「こほん、それで今日はわざわざ何用ですの? あなたさまも、今は結婚式の準備で忙しいんではなくって?」
「ですから、スケジュール前倒しにして一気に片付けてきましたの。ですからご心配はまったく無用ですのよ、ほほほ」
 上品な微笑みを浮かべるアンさんを愛想笑いで見て、オカマ二人は背筋に寒いものを感じていた。
この人が今こなさなければいけない仕事の量は、平民である自分たちから考えても寸暇を入れぬものだろう。
それを、たった一晩だとはいえ暇を作れるとは、やはりこの人は並ではない。
 謎の街娘こと、アンはこほんと可愛らしく咳払いをすると用件を話し始めた。
「実は、わたしの親友に恋人ができたんですの。幼い頃からよく遊んだ仲のよい子でして、私も自分の
ことのようにうれしく思ってるんですの」
「あら、それは素敵なことね。わたしたちからもお祝い申し上げますわ」
「ありがとうございます。でも、その子は頑固といいますか、少々真面目すぎまして。彼を狙ってる子は
他にもいるというのに、どうも進まないようですの。まあ傍から見てたらおもしろ……いえいえ、じれったい
ものですから。それで、なかなか直接会える立場ではありませんけど、親友として何かしてあげたいなと
思いまして。いてもたってもいられずに、こうして評判のお二人に相談に来たのですわ」
 なにか、今日は同じような相談がよく来る気がする。でもまあ、のんびりと恋にうつつを抜かしていられるのも
平和な証拠だ。そのうち侵略するにも都合がいいし、第一……自慢じゃないけど弱い、自分たちミジー星人が
隠れ住むにも平和なほうがいい。
 カマチェンコは、うーんと考えるとさっきのジェシカの言葉を、ほとんどそのまま伝えた。
「なるほど……既成事実ですか。それは効果絶大ですことね。よろしい、これはおもしろそ……いいえ、
ためになるお話を聞かせていただきました。きっと、お友達も喜んでくださると思いますわ」
 ぱあっと、花のような笑顔を浮かべたアンさんは、カマチェンコの手をとって何度もお礼を述べてくれた。
でも、あるところでふと考え込むと、数秒思案して問題点を提示してきた。
「でも、あの子は本番に弱いから、いざとなったら怖気づいてしまうかも。私がずっとついていてあげるわけにも
いきませんし、なにかいい手はありませんか?」
 すると、スカロンはふと手をぽんと叩くとジェシカを呼んで言った。
「ジェシカちゃん、あれ、あれまだ持ってる? こないだ不埒な貴族の客から没収したやつ……うん、
じゃあそれ、お客さんにプレゼントしちゃいましょ」
 アンさんの手に、紫色の液体が入った小瓶が渡された。瓶の形はハート型で、見るからになんとも
いかがわしい雰囲気が漂っている。スカロンは、その瓶の中身についての効能と使用方法を耳打ちし、
それを聞いたアンさんは、最高級のワインで乾杯いたしましょうとオーダーを出してくれた。
「ありがとうございました。さすが評判のお二方ですわ、わたくしの銃し……いえ、お友達のお話を
たまたま立ち聞きできて幸いでした」
「うーん、口コミは営業の基本ですからんね。でも、できれば次は杖は置いてきてくださりませ」
「おほほ、考えておきますわ」
 街娘のアンさんとやらは、とても平民とは思えない優雅な会釈をして帰っていった。
 だがしかし、何か……すさまじく嫌な予感がするけれど、それは多分深酒のせいなのだろう……

 月は天頂に昇りつめ、やがて沈んで見えなくなってもやってくる客足は途切れず、妖精の宴は続く。

 そして空が白み始めたころに最後のお客が帰り、夢の世界は朝日の中に溶けて終わった。
「みんなお疲れ様!」
 スカロンが店内に集合した全員をねぎらい、妖精たちは一仕事を終えた疲れに身を任せる。
 彼女たちの顔は、たくさんチップを稼げてほくほくしているのから、ちょっとしか集まらなくて反省して
いるのまで千差万別だ。
 むろん、チップの獲得数トップがジェシカなのは言うまでもない。彼女は、集めたチップの少なかった子に、
明日はこうしたらいいよと軽くアドバイスをしたりしている。仲間でも商売上では敵同士だけれど、あくまで
それは公平かつ対等に、競争は大いに結構だがつぶしあいはいけない。
 ミジー星人の三人組も、ずっと皿洗いと雑用だけさせられていたドルチェンコをのぞいて気持ちのいい
疲れ方をした、さわやかな顔をしている。まったくものすごい適応力のある宇宙人だ。


 本当に、このまま魅惑の妖精亭の店員として定住してくれたらみんな助かるだろう。
 それなのに、性懲りも無くろくでもないことを企む、あきらめの悪さをもっているから困ったものである。


 さて、この宇宙で、もっともしつこい宇宙人とは誰だろうか?
 ウルトラの戦士たちを苦しめた怪獣や宇宙人は数多い、だがここに長年に渡ってと言葉を付け加えるとどうだろう。
 大抵の宇宙人は、一度地球侵略に失敗したら諦めて、二度と地球に姿を見せることはない。
 しかし、中にはしぶとく複数回に渡って攻撃を仕掛けてくる宇宙人も存在する。
 メフィラス星人やメトロン星人、連合を組んでやってきたザラブ、ガッツ、ナックル、テンペラー星人などがそれだ。
 そして、もし才人のいた世界でこの質問をしたとしたら、ほとんどの人は宇宙忍者バルタン星人と答えるだろう。
 ウルトラマンの滞在時に総計三回も人々を恐怖に陥らせ、都合二回ウルトラマンと対戦している。
 このときまでに彼らは地球人とウルトラ戦士に恨みを固め、ウルトラマンジャックが地球を守っていたころも、
かつて倒されたバルタン星人の息子と名乗るバルタン星人jrがロボット怪獣ビルガモを率いて現れている。
 これだけでも計四回、四回も地球攻撃を仕掛けてきた宇宙人は他に存在しない。しかも、これでなお
諦めないバルタン星人はさらに地球の研究を重ね、ウルトラマン80に対して二回も挑戦してきている。
 まさに、不屈の闘魂とはバルタン星人のためにある言葉だといっていいだろう。
 だが、はるかに時空を超えた世界では、バルタン星人に負けずにしつっこい宇宙人も存在する。
 それが、ウルトラマンダイナと戦った知略宇宙人ミジー星人の一派なのである。

 トリスタニアを少し離れること数リーグ。
 街道から外れて、普段は誰も訪れることのない森の中に、巨大な鉄の巨人が倒れていた。
 全高はおおよそ六十メイル、頑強そうな体を持ち、腕には五本の指ではなく、鋭く太い三本の鍵爪がついている。
 しかし、その目に光はなく、ぴくりとも動く気配はない。
 壊れているのだろうか? いや、それよりもこれは明らかにハルケギニアの産物ではない。そんなものが、
どうして人家からさして離れていないこんな場所に無造作に置かれているのか? その答えは、こいつの
頭のかたすみで、一人気勢をあげているオヤジにあった。
「ふっふふふ! もうすぐだ。もうすぐ、この宇宙最強のロボット怪獣ワンゼットが復活すれば、この星は
我々ミジー星人のものとなるのだ!」
 凶悪な侵略宇宙人……といっても考えるまでもないことだが、それはミジー・ドルチェンコだった。
 彼は横たわる巨大ロボット、ワンゼットを見上げて高らかに笑っていた。
 ワンゼット……それはかつて、ミジー星人たちのいた世界の地球を侵略しようとしたデハドー星人が
ウルトラマンダイナを抹殺するために送り込んできたロボット怪獣である。しかし、ダイナの必殺技
レボリュームウェーブで時空のかなたに飛ばされて、ミジー星人たち同様ハルケギニアに漂着していた。
以前ミジー星人たちが企んでいた計画とは、このワンゼットを利用しての侵略攻撃だったのだ。
 だが、今のミジー星人たちにはこの巨大なワンゼットを動かす手段がない。しかし、優れた科学力だけは
ある彼らは、地道な努力によってワンゼットを復活させようとしていた。驚くべき、その方法とは?
「我が念願の傑作、超小型メカニックモンスター・ぽちガラオンが完成したら、ワンゼットの制御装置として
使用することができる。見ておれよ、おろかな人間どもめ」
 なんと、驚いたことに手のひらサイズの超小型ロボットで、ミジー星人はこの巨大ロボットを動かそうとしていた。
そんな無茶な、と言いたくなるところだがさにあらず。実は、これまた何がどうなっているのか、ワンゼットは
頭脳部分にある穴にぽちガラオンを放り込めば、ぽちガラオンのコントローラーで動かせるのである。
 もはや科学理論がどうとか考えるだけおかしくなりそうな理不尽さ。でも、動くものは仕方ない。 
 もしも、ミジー星人たちがワンゼットの起動に成功したとしたら大変だ。こいつは対ウルトラマン用の
ロボットであるために、一度はダイナをやっつけたことがあるほどの強さを誇る。ミジー星人の自信も
それゆえだ。

 危うし、ハルケギニア!
 ところが……

 三人組の留守中に、彼らの寝床兼アジトの屋根裏部屋に、口元を引きつらせて立つ黒髪の少女と、
十数人の割ぽう着姿の少女たち。
「ほんとにもう、ドルちゃんたちったら散らかすだけ散らかして、このままじゃ天井が抜けちゃうじゃない。
あれだけ言ってもわからないなら実力行使よ! みんな、徹底的にお掃除しちゃいなさい!」
「おおーっ!」
 こうして、悪の宇宙人の秘密研究所は壊滅した。
 魅惑の妖精亭の看板娘ジェシカ、若干十六歳にてハルケギニアを救う。

 トリスタニアは、今日も平和であった。


 続く




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