あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

糸色望の使い魔-2


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思い出すだけで頭が痛くなるのだけど
私の使い魔イトシキを呼び出したときは大変だった。
何しろ召喚された時点で仮死状態だったのである。
人間を呼び出したのもさることながら、瀕死で現れたのだから
揶揄するものや、何かの冗談だと思うものも沢山居た。
幸いコルベール先生の冷静な判断で水の魔法を使う生徒を集めて
イトシキを蘇生させた。
その時の私の頭の中は真っ白だったと言ってもいい。
考えていたことと言えば、これではクラスメートたちを見返せないとか
今度こそ家族から縁を切られるんじゃないかという恐怖とか
そんな事ばかりであった。
そのあたり、少し引け目はあるかもしれない
表に出さないようにしてるけど。

目が覚める。
今日はイトシキに起こされる前に目が覚めたようだ。
そもそもイトシキが来る前には自分で起きてたのだから時間になったら自然に
起きる癖が付いている。
窓の外を見ると今日はよく晴れていた。
気持ちいい朝だ、こういう天気は状況に関係なく心を綺麗にしてくれる。
「今日も、頑張ろう」
そう呟いて起き上がった。そしていつものように着替えを……出そうとしたのだが。
何かが揺れている。
部屋の中央でミノムシのような何かが揺れていた。
それは、ちょうど衣装棚と同じぐらいの高さがあった。
ギシギシと音を立てながら左右に揺れている。
「ぇ……」
それは一昨日に契約したばかりの使い魔だった。
首にはロープが掛けられ、そのロープは天井の明かりの金具に結ばれていた。
「き、きゃぁあああああああ!!」
叫んだ、それはもう寮中に響くぐらい。


「ふぅ、死ぬかと思いました」
「……」
あの後、ルイズの叫び声に驚いた寮生や常駐している先生がやってきて
ルイズの部屋は一時騒然となった。
しかし、事の発端の使い魔はロープから下ろされるとあっけなく自力で蘇生したのである
朝から疲れるやら恥ずかしいやら、もう何といって言いか分からない目にあった。
そして厳重に先生に叱られ部屋に再び二人っきりになった。
「どうして首なんか括ったの?」
「聞いてくれますか」
「聞きたくないけど、聞かないといけないから聞くわ。どうして?」
「ぇえ、実は……昨日、使い魔には給料が無いことを聞いたじゃないですか」
「まさか、それが原因?」
「いくらなんでも、それだけで自殺はしません」
どうやら深刻な理由が給金が無いことにより生じたらしい。
「実は」
目つきがキツクなり真剣な顔になる。
それを見れば彼にとってかなり深刻な自体であることが分かる。
「服の代えがありません」
「は?」
「ですから、服がこの一着しかありません。そして給金が無い。
 他の使い魔を見れば服なんて必要はなさそうだから支給は無いと予測できる。
 そうすると私は段々体臭と汗で臭くなっていくこの服を着続けなければならない。
 それを考えてると、唐突に死にたくなったんです」
「アンタ、馬鹿でしょ?」
「しかし、論理的に考えれば当然の帰結でした。
 これでは体臭を理由に使い魔すら解雇されて路頭に迷う事は間違いないんです!」
「いや、そんな事しないわよ。というか服とか必要なものは買ってあげるわ」
「本当ですか?」
「ぇえ」
「後になって服の代金を請求する変わりに無茶な要求はしませんか?」
なぜ、この男はここまで悪い方向へと物事を考えるのか。
あらためてため息が出た。

その後、食堂に行く。
イトシキは食堂でご飯を取る様にさせた。
他の使い魔と一緒にさせると何故か演説をはじめてしまうからである。
「アンタは床で食べなさ……あれ?」
席につこうとして後ろを振り返るとイトシキが居なくなっていた。
どこへ行ったのかと思うとクラスメートのギーシュに話しかけていた。
手に香水瓶を持っている。それを渡そうとするのだがギーシュはそれを受け取らない。
何をやってるのかと席を離れて二人の元へと歩いた。

「だから、それは……ケ、ケティ?!」
ギーシュの傍に下級生のリボンをした生徒が寄ってくる。
「その香水……やはりモンモランシー様と付き合ってらっしゃったんですね!」
「そ、そんな誤解だよケティ」
だが、そんなギーシュの声も彼女にはもう届かず、平手をお見舞いして去っていく。
「ギーシュ、今のはどういう事かしら?」
さらにモンモランシーが登場し、文章にして4行程度の会話をし
同じくギーシュに平手を打ち付けて去っていった。
ついでにイトシキの手から香水も奪っていく。
「モ、モンモランシー、誤解だ……」
そんな声も届かず彼女は食堂から出て行ってしまった。
ギーシュは最初、悲しそうな表情をし。周りの嘲笑に気づいて怒りの表情に変わった。
そしてその標的はそのきっかけを作ったイトシキへと向けられる。
「君、どうしてくれるんだね。おかげで二人の女性が傷ついてしまった」
「な……私のせいになるんですか?」
それは無いだろう。
どう考えてもギーシュがウサ晴らしで平民であるイトシキに当たってるだけだ。
「そうだ、君が香水を拾っても気を利かせてくれればこんな事にはならなかった。
 謝りたまえ!」
どう考えてもそれは無理がある。あまりのギーシュの横暴に口を挟もうと口を開きかけた時
「そうか、私を嵌めようとしてるんですね!!」
イトシキが叫んだ。
「そもそも香水を私の傍で落としたのもわざと、私を嵌めるための罠だったのですね!」
「は?」
ギーシュがポカンと口を開けている。周りで見物していた生徒たちも同様だ。
「と言うことは先ほどの二人の女生徒もグルですか。まんまと嵌められるところでした。
 しかし、マルチ商法やカツアゲ、宗教詐欺に何度もあった私には分かります。
 謝ったら次に何をさせる気だったんですか?
 謝らせて罪悪感を植えつけるのは常套手段ですからね」
いや、それは違うでしょ。大体イトシキをこんな難しい方法でハメる理由がギーシュに無い。
「……ふ、何を言うかと思えば。
 何故ボクがそんなまわりくどい事をして平民を屈服させる必要があるんだい」
「それについては心あたりがあります。私の主人であるルイズさんが目的だったのでしょう!」
「ぇ?」
いきなり自分の名前を出されてあっけに取られた。
ギーシュが自分を? それは絶対ありえない。
「彼女を篭絡させるタメに私をまず屈服させて交渉材料にする気だったんですね」
「おいおい、ギーシュってルイズの事が好きだったのか?」
「まさか」
「でもそう言われると、そんな気もするわね」
「それじゃあ、あの二人はギーシュの恋のために手伝ったってこと?」
「それは無いんじゃない、モンモランシーは本気だったでしょ?」
ザワザワと周りが騒ぐ。どんどんおかしな展開に持っていかれている。
「ぇえい! 訳の分からない事を言って誤魔化すつもりだな。いいからすぐに謝りたまえ!」
とギーシュが彼の杖である薔薇を取り出した。
「謝らないのであればこの場で制裁を加える、それでも構わないのかね?」
「待ちなさいギーシュ、そいつは私の使い魔よ。手を出すなら私に傷をつけたも同様よ!」
ここでやっと会話に割り込む。二人の間に割り込みギーシュを睨む。
途中の話は置いておいて、イトシキに悪気は無い。
「なるほど、君が変わりに謝ってくれるのかい?」
「謝るわけないじゃない、貴女が二股をかけたのが悪いんでしょ」
にらみ合う、譲歩する気はさらさら無かった。
「なるほど、だったら決闘で白黒つけようじゃないか」
「……決闘は規則で禁じられてるわ」
「おや、貴族でありながら決闘を避けるのかい?」
「貴族であるなら学園の規則は遵守するべきでしょ」
規則は遵守し、守るもの。それは曲がらない。
「ふ、なら良いよ。ヴェストリ広場で待つ。君が来なければ棄権で僕の勝ちだ」
そう言ってギーシュは食堂を出て行った。
つまり、勝負に行かなければギーシュの勝ち。
もし勝負に赴いても負けるつもりは無いのだろう。
どうしても自分の醜態を他の事に転化したいみたいだ。
「ねぇ、あいつどうしたの?」
そこへモンモランシーが戻ってきた。
そう言えば騒ぎで食事を取っていなかったから戻ってきたのだろうか。
「いけません、彼は死ぬつもりです!!」
そこにまたイトシキがややこしい事を言い始めた。
「よくある話です、彼女に振られた程度で自暴自棄になって自殺。
 思春期にはよくある話ですが止めなくては!」
ならば服が無い程度で自殺したお前はなんなんだ。
「その話、本当ですか?!」
そこにさっきのケティとか言う一年が食堂の扉の影から出てきた。
「ぇえ、彼のさきほどの血走った目。あれは間違いありません死ぬつもりでしょう。
 決闘をわざと仕掛けて死ぬつもりに違いありません」
「そ、そんな……」
ケティという子が倒れそうになる。
「ギーシュ、そこまで思いつめて……」
モンモランシーは何やら感動していた。
ちなみにココでイトシキが言ってる彼女とは私の事なのだろうが
一時的に食堂を離れていた二人には分からないようだ。
「ルイズ! ギーシュは何処にいったの?!」
「……ヴェストリ広場だけど、そもそもその自殺というのは」
「分かった、ありがと」
「わ、私も行きます!」
説明をする間もなくモンモランシーとケティは食堂を出て行ってしまった。

その後、決闘の話がうやむやになってしまった。
そもそもの原因であるギーシュとモンモランシーとケティの仲が良好になったせいである。
なんでも、モンモランシーが恋人、ケティが二号になることで丸く収まったらしい。
全然収まってないようにも思えるが、ギーシュが死ぬほど愛してるなら、と納得しているらしい。
そのせいか、モンモランシーとケティは最近よく一緒にいる。
二人の間にどんな密約が交わされたかは分からないが、とても仲のいい友達には見える。
周りの事情を知る生徒は二人に何もいえない、言った瞬間なにが爆発するかが分からない。
ギーシュ自身は自分の魅力が二人を引き戻したのだと信じて疑わない。
「人騒がせな三人ね」
「若い人にはよくある事です」
「無いわよ」
イトシキの妄言をバッサリと切り捨て、ギーシュを中心に並ぶ三人を眺めた。



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