あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのチェリーな使い魔-15



早朝。

朝靄がかかっていて風はない。しんみりとした風景に溶け込むようにルイズとフリオニールは
馬に荷物をくくりつけて出発準備をしていた。
もうここへ戻ることはないのかもしれない、とフリオニールは万感の思いを込めて学院の
空気を深く吸う。すると、爽やかな風が二人の間を吹き抜けた。

「僕も君達に同行することになった」

二人は後方を振り返ると、先日アンリエッタの護衛を勤めていた口ひげの青年がグリフォンに
跨り微笑を浮かべて近づいてきた。
「ワ、ワルド様!」
「久しぶりだね、ルイズ」
ルイズは顔を赤くし両手を頬にあてると、ぼんやりした眼差しでワルドを見つめた。
ルイズとワルドが知り合いであることが判明した為、フリオニールは自身が昨日想定した
「ルイズ一目惚れ説」を覆された。
「えっ?お二人は知り合いなんですか?」
「そうだ。僕はルイズの婚約者だ」
「こ、婚約者!?」
ワルドの発言に目を丸くするフリオニール。じゃじゃ馬で高飛車な娘を婚約者にするのか、
多分尻に敷かれるな、とワルドに同情の視線を向ける。
ルイズは「婚約者」の言葉を聞きさらに頬を赤く染めている。確かにワルドは美男子だ。
照れてしまうのも無理はない。

「あ~、なるほど。そうですよね。かわいい婚約者が危険な任務に向かうんですから心配ですよね」
「それもあるが、これは王女の命令なのだ。君達二人だけでは心許ないのだろう。しかし、
極秘の任務であるゆえ一部隊をつけるわけにもいかない。そこで、僕が名乗りを上げ
晴れて任命されたってわけだ」
「そうだったんですか・・・それはそうと挨拶が遅れました。俺はルイズさんの使い魔を
させてもらってますフリオニールといいます(無理やり召還されたんだけど)」
「女王陛下直属の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルドだ」
「よろしく、ワルドさん!」
「よろしく。しかし、人間の使い魔とは珍しいな」

ワルドは珍獣でも見物するような目つきでフリオニールをガン見した。その視線にどう対応
すればいいのか困惑するフリオニール。ルイズは助け舟を出すようにフリオニールをフォローした。
「これでも中々の実力を持っていますわ、ワルド様」
「ああ、ルイズと一緒にあの「土くれのフーケ」を捕らえたのだろう?大いに期待しているよ!
ところでルイズ。君は僕と一緒にこのグリフォンに乗っていこう」
ワルドはグリフォンの頭を撫でながら提案した。口調は穏やかであるが有無を言わせぬ
押しの強さを感じる。
一方、ルイズは躊躇いがちに
「えっ!?・・・でも彼は?」
「俺?そんなこと気にしないで下さいよ。せっかくの再会なんだから!」
「気を使わせてすまないな、フリオ君」
「いいですって」
使い魔の処遇を伺ったが、当の本人は至って無頓着であった為ワルドの案はすんなりと可決した。
そして、ワルドはグリフォンから降りルイズをお姫様抱っこすると
「ははは!ルイズ、君は相変わらず体が軽いな!まるで羽のようだ!」
「お恥ずかしいですわ、ワルド様」
「いいではないか。この早朝、誰も見てはいまい」
「朝から見せ付けてくれますね、おふたりさん!」

こうしてルイズとワルドがグリフォンに、フリオニールが馬に跨ると、一行はアルビオンを
目指し魔法学院を後にするのであった。
しかし、ワルドの「誰も見ていない」の言葉とは裏腹にこの光景を見ていた者が二人存在
していたのだが。

ルイズ達の出発を見ていたものは依頼主であるアンリエッタだった。院長室の窓から
不安げな表情で一行を見守る。
「始祖ブリミルよ。彼女達にご加護を」
アンリエッタは手を組み目を閉じると祈りを捧げた。
椅子に座り茶を啜りながらアンリエッタを穏やかな目で見つめるオスマン院長。
「姫様、ご安心なされ。あの3人は絶対無事に帰ってきますとも」
「そうであるといいのですが・・・」
院長が言うのだから何か確証があるに違いない。それにワルドも同行させた。
アンリエッタは組む手の力を一段と強めて小さくなっていく3人を見届けた。

ルイズ出発を目撃したもう一人の人物はキュルケであった。目端が利くのか目ざといのか
不明だが事件を嗅ぎつける嗅覚は人一倍だ。
例によって親友のタバサの元へ向かう。ドアを叩くが返事がないのでやむなく『アンロック』の
魔法を使った。謝罪はあとでしっかりやれば良い。事後承諾だ。
タバサはぐっすりと眠っていた。キュルケは起こすのを一瞬ためらったが、緊急事態なので
なり振りかまってはいられない。タバサの体をゆすって叩き起こした。
「・・・なに?」
「おはようタバサ。無理やり起こしてごめんなさいね」
「・・・また彼のこと?」
「そうなの!今度は王女の護衛をしていたハンサムな彼も一緒よ!その彼とダーリン、ルイズの
3人が人目を忍ぶように学院を出て行ったの。これは何かあるに違いないわ!」
「・・・わかった」
タバサは頷き使い魔の風竜を呼ぶため口笛を吹いた。止めたところでどうせ万難を排して
後を追うに違いない。タバサはパジャマ姿のまま最低限の支度を済ませた。
馬を走らせて半日が経過した。

道中馬を休ませながらグリフォンの二人を追うフリオニールだったが、幻獣であるグリフォンと
家畜の馬では性能差は歴然で次第に距離を引き離されていた。
いくら自身が平民の使い魔とはいえ、馬で移動しているのだから多少スピードを落とすくらいの
思いやりがあってもいいだろう。どうせ俺はお邪魔虫ですよ、と拗ねながら馬にムチを振るうフリオ。
ルイズは遅れをとっているフリオニールか気がかりのようで
「ちょっとスピードが早いんじゃないかしら?」
「ラ・ロシェールまで止まらずに行きたいんだ。ついて来られないなら置いていけばいい」
ワルドに減速を求めるが即座に却下された。

「メイジとして使い魔を置いていくなんてできないわ」
「まさか、君の恋人ってわけじゃないよね?」
「こ、恋人?ま、まさか!」
「ならいいんだ。婚約者に恋人がいるなんてことになったらショックで死んでしまうよ。それに、彼にした今朝の挨拶が間抜けになってしまうからね」

ワルドは振り返って遥か後方で必死に馬を走らせるフリオニールを一瞥し不敵に笑った。
そして、さらに数時間グリフォンと馬はスピードを競ったが、ついにフリオニールは
ルイズとワルドを見失ってしまった。

日が傾きかけ空を赤く染める頃

懸命に馬を走らせていたものの結局追いつけなかった為、フリオニールは馬を止めて降りると
がっくりと肩を落とした。
(ここでドロップアウトか。でも、これって戦力外通告ってこと?)
フリオニールは途方にくれて辺りを見回す。すると、渓谷の両側にそびえる断崖絶壁の
所々に空洞があるのを見つけた。
(まさかあの中に人が住んでいたりして)
そんなわけないか、と思い直した次の瞬間、空洞の中から大量の火矢がフリオニールを
的と捉えるかのように一斉に飛び出してきた。
(どういうことだ!)
フリオニールは背中に携えたデルフリンガーを素早く抜刀し、目にも留まらぬ早業で次々と
火矢を打ち落としていった。見事なクリティカルヒットだった。
「中々の剣さばきだぜ、相棒!」
デルフリンガーはようやく出番が回ってきて嬉しそうにはしゃぐ。
「ここはアルビオンなのかっ!?」
不意打ちを喰らい敵はアルビオン兵であると推測するフリオニール。
考える暇も与えぬうちに再び火矢の群れがフリオニールに襲い掛かる。今度はアイスシールドも
装備し辛うじて火矢を防ぐことに成功した。
(フィンの武器屋で売っている『ほのおのゆみ』程威力のある弓じゃないな)
フリオニールは地面に落ちた火矢をチラ見して呟いた。とはいえ大量の矢だ。
反撃を試みようにも相手は断崖絶壁の空洞の中。自身はこの世界のメイジのように
空を飛べるわけではないし魔法は白魔法をいくつか使えるだけで黒魔法を習得していない。
1対1の接近戦であれば自信のあるフリオニールでも、このように大群でしかも間合いを
取られて対峙されてしまっては手も足も出せない。

(だから俺は戦場が苦手なんだよ!)

いくら異世界へ召還されその世界でのルールに従って行動しなければならないとはいえ、
命を落としてしまっては元も子もない。このハルケギニアという世界は平和そのものと
思っていたが、トリステインの隣国は戦火に塗れており危険とは常に隣り合わせなのだと
気付かされる。いつ火の粉がこちらに降りかかるかわからない。
歯ぎしりをして空洞を睨みつけるフリオニールの上空に見覚えのあるドラゴンが飛んできた。

「ダーリン!」
「キュルケ!タバサ!」

「丁度いいところに!手を貸してくれ!」
フリオニールは頼もしい助っ人が登場し狂喜乱舞した。
「会いたかったわ、ダーリン」
笑顔でフリオニールを見つめるキュルケ。
「乗って」
タバサは無表情で一言風竜に乗るよう促した。
「ありがとう!恩にきるよ」
フリオニールは軽やかな身のこなしで風竜に飛び乗る。
降り注ぐ火矢の嵐をキュルケの『ファイアーボール』とタバサの『ウィンドブレイク』で
打ち払いながら風竜は猛スピードで矢の届かない距離まで高度を上げた。

敵の攻撃が届かないのを確認するとキュルケは不思議そうに
「ところでダーリン。ルイズとハンサムなお兄さんは?」
「あの二人は俺を置いて先に行っちゃったんだよ」
「どこへ向かうつもりなの?」
「アルビオンっていうところ・・・ってここはもうアルビオンなの?」
「ここはトリステインよ」
「じゃあ、あいつらは盗賊団か何かか?」
「そんなところだと思うわ。ダーリンはメイジじゃないから狙われたのね、きっと。
ところで、アルビオンへ行くならきっとラ・ロシェールに立ち寄るはずよ」
「案内してくれないかな?お二人さん」
「元からそのつもりよ。ねっ、タバサ」
フリオニールに行き先を聞き出しタバサに同意を求めた。無言でコクッと頷くタバサ。
馬にくくりつけた荷物が気になるフリオニールであったが、下へ降りればまた火矢が
襲ってくる。どうせ着替えしか入ってはいない。必要なものは町に着いたら揃えよう。
えっ?お金はって?もちろんこの二人のレディから借りるつもりである。返済する気は
あるので決してヒモではない。お世話になった馬の無事を祈りつつフリオニール、キュルケ、
タバサの3人はルイズとワルドが向かったであろうラ・ロシェールを目指すのであった。



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