あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの賢王 第05話


あの爆発からそれ程時間も掛からぬ内に、騒ぎを聞きつけて何人かの教師らしき者たちが教室内へやって来た。
彼らは暴れ出した使い魔たちを大人しくし、気絶していたシュヴルーズに治療を施す。
幸い他に怪我人は無く、生徒たちは口々にルイズに対しての不平不満を言いながら教室を後にして行った。
当のルイズは気絶から回復したシュヴルーズに罰を言い渡され、教室内の片付けをする為に残されていた。
当然、ポロンもその場に残っている。

(魔法を使わずにここを片付ける、ねえ)

ポロンはルイズがシュヴルーズに言われたことを心の中で復唱しながら教室内を見回した。
あれ程の爆発があったとは思えないくらい、教室内の大部分は無事であった。

(あの爆発。ありゃあ、イオラくらいの破壊力はあったな。よくこんだけの被害で済んだもんだ。
 これもこの世界の魔法のおかげなのかねえ?)

ポロンは改めてこの世界の魔法に感心する。
ルイズの方を見ると、何か言いたそうな感じでこちらを睨み付けていた。

(とと・・・さあて、ご主人様の癇癪玉が破裂する前にとっとと片付けますかねえ。・・・さっき賄い貰っといて良かったわ)

ポロンは教室内の片付けを始めた。

暫く2人で黙々と作業をしていると、ルイズがぽつりと呟く。

「・・・失望した?」
「ん?」

それは注意深く聞かなければ聞こえない程か細い声であった。
今度はハッキリとした声で聞いて来る。

「私に失望したんでしょ?・・・ええ、言わなくても分かるわ」
「どうした急に?」

ポロンは思わずルイズの方へ目を向けた。
ルイズは立ち止まり、目に涙を溜めている。

「貴族だのご主人様だの偉そうに言っておいてこのザマよ。私、魔法が使えないの。
 魔法を使おうとすると、いつもこうやって爆発が起こるの。魔法の成功確率ゼロ、才能ゼロ。
 ・・・それがゼロのルイズの由縁よ。笑っちゃうでしょ?」
「んなことはねえよ。お前、俺を召喚したじゃないか」
「でも、平民を召喚するなんて私聞いたこともないわ。もしかしたらそれすらも失敗なのかも知れない・・・」

それきりルイズは押し黙ってしまった。
ルイズは下を向いて床を見つめたままである。
ポロンは無言でルイズの側に近寄った。

「なあ、ルイズ」
「・・・何よ?」
「お前腹減ってないか?」
「・・・え?」
「もう昼時だもんなあ・・・。それにこんな力仕事してたら腹も減って当然だ」
「・・・何を言ってるの?」
「腹が減ってるからそんな後ろ向きなことをついつい言っちまうんだよ。だから早く片付けて飯食おうぜ?」

そして、優しい笑みを浮かべてルイズの髪をわしゃわしゃと撫でる。

「・・・!!な、何するのよ!?」
「お前らしくねえぞ、ルイズ!元気出せ!」
「ポロン・・・」
「お前には間違いなく才能があるさ!何たって他でもないこの俺様を呼んだんだからな!」

ポロンはそう言って真剣な顔で自分を指差した。
そんなポロンを見て、ルイズは呆れた様にため息を吐く。

「そうね、アンタ見てると悩んでるのが馬鹿らしくなったわ」
「だろ?悩むのは悪いことじゃないが、悩み過ぎるのは体にも心にも良くないぜ?」
「・・・考えとくわ」

ルイズはそう言って教室内の片付けを再開し出した。
先程よりは表情がいくらか明るくなった様に見える。
ポロンは取り敢えずそんなルイズを見て安心し再び作業に取り掛かった。

片付けの最中、ポロンはルイズが先程言った言葉を思い出していた。

『魔法の成功確率ゼロ、才能ゼロ。・・・それがゼロのルイズの由縁よ。笑っちゃうでしょ?』

(でも、本当にそうなのか・・・?)

ポロンはルイズの言葉に疑問を持つ。
ポロンの世界の呪文にはあの様な爆発をもたらすものがある。
イオ系と呼ばれるその呪文はポロンの世界ではポピュラーな呪文である。
だが、ルイズの発言からすればあの爆発はそもそも魔法としては認められていない様に聞こえる。
仮にこの世界の魔法に爆発を起こすものが無いとしても、あれだけの魔力が放たれたのだから
失敗であったとしても、彼女に才能が無いなどとはとても思えない。
ポロンも賢王として目覚める前は、自分の意志で魔力を放つことさえ出来なかったのだから。

(何か切っ掛けでもあったら吹っ切れるのかも知れねえが・・・。生憎こちらの魔法には詳しくないからなあ)

それは自身の呪文についても同様であった。
魔力もあるし、呪文も覚えている。
だが、一部の呪文しか使用出来ない。
この不可解な現象にポロンは戸惑っていた。

(俺も・・・何か切っ掛けがあれば、また前みたいに呪文を使うことが出来る様になるのだろうか?)

そう思いながらも、出て来たその考えを一笑する。

(俺らの世界は『失われし日』でもう呪文が使えねーんだぞ?前みたいに呪文が使えても、それはこの世界だけだ。
 根本的な問題の解決にはなってねえ。なってはねえが・・・)

ポロンは再びルイズの顔を見る。

(それでもこの世界にいる間はそれでいいじゃねえか!アイツを守る為には今のままじゃきっと足りねえ・・・)

ポロンは次に自分の右手を見た。
船の上で見た時の右手は既に賢王ではなく船大工の手であった。
しかし、今は賢王の手になりつつあるのだ。

(切っ掛け・・・か)


「こ・・・これは!?信じられん!!まさか・・・彼は・・・」

その頃、図書室ではコルベールがポロンの左手のルーンに関して調べていた。

「これは大変だ・・・!早くオールド・オスマンに報告しなくては!!」

そこが図書室であることも忘れてコルベールは大きな声を上げる。
周囲の生徒の冷たい視線にも気付かぬまま、コルベールは1冊の本を持って図書室を出て行った。
コルベールが学院長室に辿り着くと、入れ違いで緑色の髪をした妙齢の女性が部屋から出て来た。

「あ、ミス・ロングビル!オールド・オスマンは中にいますか?」
「ええ、いますけど・・・何か御用ですか?」
「有難うございます!」

そう言ってコルベールは転がる様に学院長室の中へと入って行った。
ロングビルは首を傾げながら、その場を後にした。

「失礼します!オールド・オスマン!!」

学院長室の扉を慌しく開けたコルベールにオスマンは何事かと驚いた。

「一体どうしたのかね?ミスタ・コルベール。いつになく興奮しているようだが・・・」
「は、はい。話すと長くなりますので取り敢えずはこの本を見て下さい!」

コルベールは先程図書室から持って来た1冊の本を開いて、オスマンに見せた。
そして、胸元から1枚の紙を取り出してその本のとあるページと見比べさせる。
その2つを交互に見比べたオスマンはすぐに目を見開いた。

「こ、これは!?」
「これが本当だとしたら、これはとてつもないことですぞオールド・オスマン!!」



片付けを終えた2人は昼食の為に食堂へ来ていた。
相変わらずポロンの食事はささやかなものだったが、何も文句言わずに平らげる。

(しかし、力仕事の後だってのにこれじゃあやっぱ足りんわな。仕方ない、また厨房にお世話になるとするか)

「ルイズ、ちょっと席離れていいか?すぐに戻るから」
「何?またトイレ?」
「まあ、そんなところだ」
「すぐに戻りなさいね?」
「ああ」

ポロンも今回は早く食事を済ませて戻るつもりであったので頷く。
食堂を出てから、先程シエスタに案内された通りに歩くと、無事に厨房へと辿り着いた。
中へ入ると、マルトー以下厨房で働く人々は皆ポロンを歓迎した。
同じ平民としてのよしみじゃねえかと、今度はワインまで注ごうとしてくれている。
ポロンも流石にそれは断り、パンを半分に切ってドレッシングを和えた野菜を挟んだもの(いわゆるサンドイッチ)だけを貰って頬張った。
そうしていると、シエスタがワイングラスに水を注いで持って来てくれた。
ポロンはそれを一気に飲み干す。

「ぷはー、いやーわざわざ有難うなシエスタ」
「いえ、私が好きでやっていることなので、ポロン様はお気になさらないで下さい」
「いや、何かシエスタには面倒掛けっぱなしだからな。今朝の礼もしてねえし」
「本当に大丈夫ですから」
「そうだ。シエスタに何か困ったことがあった時、このポロン様が必ず助けに行ってやるよ!」
「ポロン様・・・」

そう言うと、シエスタの頬は紅潮して瞳が潤み始めた。

「有難うございます」

シエスタは深々と頭を下げた。
その後、何かを思い出したかの様に手を叩く。

「あ、私はこれからデザートの配膳がありますのでこれで失礼させて頂きますね」
「おお、頑張れよシエスタ!」

ポロンはシエスタを手伝おうかとも思ったが、これは彼女たちに与えられた仕事なのである。
それを好意とは言え、少しでも奪ってしまうのは野暮な気がした。
それにすぐに戻るとルイズに伝えてあるのであまりゆっくりも出来ない。

(早く戻らないとご主人様のへそが曲がっちまうな)

ポロンはマルトーにお礼を言った後、厨房を後にした。

ルイズの席に戻ってくると早速ルイズは不機嫌を隠さない表情でポロンを見つめる。

「遅かったわね?」
「いやー、すまねえ。歳食うと長くなっちまって仕方ねえ」
「私はまだ食事中よ?汚い話は止めて頂戴」
「おっと、こいつぁ失礼」

そう言うと、ポロンは床に座った。
その後、ポロンはルイズと特に何か会話をした訳ではなかったが、
側にいるだけで、ルイズの寂しげだった表情は少し和らいでいる様な気がする。
ふと食堂内を見ると、シエスタがデザートのケーキを配っていた。
テキパキと働くシエスタを見て、ポロンは妻サクヤの姿を重ねる。

(サクヤは元気でやってるかね?チビどもも)

この世界へやって来てまだ1日しか経っていないが、やはり次元の違う世界へ来てしまったと思うと望郷の念が強くなる。
果たして自分は元の世界へ、そしてサクヤと子供たちが待つ家へと帰れるんだろうか。
ポロンはそんな思いに駆られていた。

「どうしてくれるんだ!?」

その時、食堂内に怒号が響き渡った。
ポロンが声のした方を見ると、キザっぽい少年が1人のメイドを怒鳴りつけているのが目に入った。
その少年に向けて必死に頭を下げて謝っているのはシエスタだった。

(何があったんだ?)

ポロンは思わず立ち上がる。
ルイズはそんなポロンを横目に言った。

「どうせあの平民が何か粗相でもしたんでしょ?止めなさい。野次馬なんてみっともないから」
「いや、アイツがそんなヘマするわけがねえし、仮にしたところであんなに怒鳴りつけられる様なことなんて・・・」
「ちょ、待ちなさい!」

ルイズが止めるのも聞かずにポロンはシエスタの方へと向かった。

「まったく!これだから平民は」

少年はそう言い捨てると高慢な態度を振りかざしながらシエスタを見下している。
思わずポロンは声を掛けた。

「おい、これは一体どういうことだ?何があった?」
「ポ、ポロン様?」

シエスタは突然のポロンの闖入に目を見開いた。
その目には涙が浮かんでいる。
少年はポロンの顔も見ずに答えた。

「どうしたもこうしたもない。この平民の愚かな行為で2人のレディの名誉が傷付けられたんだ!」
「だから何がどうなってそんなことになったんだよ?まずはそれから聞かせろよ!」

ポロンがそう言うと、近くにいた気の弱そうな少年がこれまでの経緯を教えてくれた。
ポロンのことを教師と勘違いしたのか、その少年は終始敬語であった。

「ハァ?それは全部ひっくるめてお前が悪いんじゃねえか!」

全てを聞き終えたポロンの口から真っ先に出て来たのはその言葉だった。
ことの経緯を簡単にまとめると、シエスタが彼の落とした小瓶を拾ったことで二股がばれ、2人の少女にひっぱたかられたという。
それで、その原因をシエスタが小瓶を拾ったこととして八つ当たりしていたのであった。

「てめえは二股をかけて、バレたら責任転嫁ってそっちの方がその子たちの名誉を傷付けてるだろ?」

周りの男子もポロンの言葉に同調して「そうだ!そうだ!」と囃し立てた。
やはりそこは思春期の男子で二股をかけた少年の行動に対し、嫉妬心からかあまりいい感情を抱いていない様であった。
当の少年は顔を真っ赤にしてポロンを睨み付ける。
暫くポロンの顔を見ていた少年は、目の前の男が何者なのかを思い出すと見下す様な笑みを浮かべた。

「誰かと思えば君はゼロのルイズが呼び出した平民の使い魔じゃないか。ただの平民風情が貴族に楯突くなんて許されると思っているのかね?」
「てめーのケツをてめーで拭けねえで、挙げ句の果てに弱い奴に八つ当たりするのが立派な貴族たあ、こりゃあ初耳だね」

ポロンがそう言うと、少年は舌打ちし、憎悪に満ちた目でポロンを睨み付けた。
しかし、すぐにやれやれといった感じで肩をすくめた。

「ふう、流石はゼロのルイズの使い魔だ。主人が無能なら使い魔も愚かだということかな?」
「何だとてめえ?」
「フン、君みたいな出自も分からない平民は知らないと思うが『使い魔を見ればそのメイジが分かる』と言ってね。なるほど、確かにその通りだよ」

少年は再び見下した様な笑みを浮かべた。
今度はポロンが少年を睨み付ける。

「何だい?事実を言われたことがそんなに悔しいのかい?」
「俺のことは別にいい。だが、ルイズのことを言うのは許せねえな。大体てめーみたいなゲス野郎にルイズを詰る資格はねえよ」
「・・・言ってくれるじゃないか。今の言葉、すぐに訂正するなら許してやる。僕は寛大だからねえ」
「けっ、シエスタに当たり散らしてた奴の何処が寛大だって言うんだ?全く、親の顔が見てみたいね。
 まあその親もきっとろくでも無いゲス野郎なんだろうな。『子供を見れば、その親が分かる』って言うからなあ」

ポロンが先程少年から言われたことをそのまま返してやると、少年は怒りに身を震わせている。

「こんな屈辱は初めてだ。よりによって我が両親まで愚弄するとは・・・。決闘だ!貴族の誇りをかけて貴様と決闘する!」
「ハァ?言うに事欠いて決闘?」
「ヴェストリ広場へ来たまえ!そこで待っている!!」

言うだけ言うと、少年はさっさとその場から去っていった。ポロンはぽかんとした表情でその背中を見つめていた。
ふとシエスタの顔を見ると、その顔はまるで死んだ人間を見たみたいに青ざめていた。

「ポロン様、殺されちゃう・・・。貴族を本気で怒らせたら・・・」
「シエスタ・・・?」
「ぽ、ポロン様!わ、私のことはいいんです!で、ですからあの御方に謝って下さい!そ、そうすれば命までは・・・」
「・・・・・・・・・・・・」

ポロンはシエスタの脅える顔を見て、決心を固めた。
そしてシエスタの震える肩を抱きしめる。

「ぽ、ポロン様!?」

突然のことにシエスタは驚く。しかし、ポロンは意に介さずシエスタの耳元で呟いた。

「大丈夫だ。俺は死なねえ」
「ポロン様・・・」
「それに言ったろ?何か困ったことがあった時はこのポロン様が必ず助けに行ってやるってさ」
「・・・はい」

すっかり震えが治まったシエスタを確認するとポロンは体を離す。
ルイズはその様子を唖然としながら見つめていた。傍から見れば、とても間抜けな表情をしていただろう。

「ルイズ!」

ポロンの声で、ルイズはハッと気が付く。

「な、何よ?」
「ヴェストリ広場って何処だ?」
「え?アンタ本当に行くの?」
「当たり前だ」

そう言ったポロンの表情はいつになく真面目で真剣そのものであった。


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