あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

サイボーグ 0009-03



3話

結局のところ、完治までには3日の時を必要とした。
むしろ重体ともいえるあれ程の怪我から、たった3日で完治したのは、
この世界の魔法の力を、高いものと認識させられざるを得なかった。

この3日、ルイズ・フランソワーズは日を空ける事無く看病に訪れた。
ツンとした態度は相変わらずだが、その態度の節々に自分を心配する部分が垣間見え、
元いた世界のフランソワーズとは違った意味での可愛らしさを感じた。

可愛らしいといえば、彼女の名をどう呼ぶか、という事で揉めた経緯だ。
彼女は自分の事を「ルイズ様」と呼ばせたかったようだが、
彼は年下の女の子を様付けするような高尚な生き方をしてこなかったので、それを拒んだ。
すると彼女はむきになって「ルイズ様と呼びなさい!」と喚いたが、
その様があまりにも可笑しかったので、ニコリと笑って「ルイズは可愛いね」と言うと、
「うぅ・・・」と唸って肩を落とし、「もうルイズでいいわよ・・・」と折れた。
その時彼女は、彼のキラリと光る歯を武器としたスマイルにやられ、頬を赤くしたのだが、
天然の女たらしである彼がそれに一切気づかなかったのは、天然の成せる技であろう。
逆に彼の呼称は、かつてのナンバー009ではなく、ジョーと呼んでもらう事にした。
もう戦う相手であるブラックゴーストは存在しないからだ。

コルベールもルイズと同じように彼の元を訪れた。
理由はルイズとは違い、彼の存在に興味を示したからなのだが、
彼自身がコルベールに好意をもっていたため、いつも話は盛り上がり、華が咲いた。

話によると、コルベールは機械科学の研究をしているらしい。
機械文明自体が無いに等しいこの世界では、ギルモア博士のいない今、彼のような科学者はありがたい存在だった。
ギルモア博士と比べれば赤子に等しい存在ではあったが、人工脳によって機械化学に明るくなった自分の知識と合わせれば、
いつかはある程度のメンテナンスも出来るのではないか、という希望を持てた。
コルベールの計らいによって、ジョーはルイズの使い魔でありながら、トリステイン魔法学院の賓客という立場を与えられた。
それはジョーの特異な性質と左手に生じたルーンによるものだが、それについては後日談とする。
ともあれ、この3日をもって完治した彼は、ルイズの使い魔としての一歩を踏み出したのである。
使い魔の仕事はルイズによると、「主人の目となり耳となりうんぬん、そして主人を守る事」らしいが、
前者は何か障害でもあるのか、本来出来うるはずの感覚の共有は出来ないようであった。
後者は、今まで間接的ながら人類を守ってきた彼にとっては、造作も無い事に思えたが、
「あなたって強いの?」と聞かれた時は「多分君よりは強いよ」とはぐらかした。
自分がサイボーグであるという事は、必要に迫られない限り話さなくても良いだろうと思ったからだ。

彼女は、もし呼び出した相手がただの平民なら、身の回りの世話を頼む所であるが、
学院長であるオスマンから直々に、賓客として扱うようにと命じられれば、軽い世話はともかく、
下着を含む選択など命じられるわけもなかった。
かといって使い魔としての強さを聞けばはぐらかされ、結局のところ彼女は彼に命じられるものは何一つなかったのであった。
実際のところ、あの甘いマスクでにこやかに下着を洗われては、恥ずかしい事この上なく、
むしろこの件に関しては、この賓客としての扱いには胸を撫で下ろした。

だが、貴族として使い魔に何も命ずる事が無いというのは、彼女のプライドに関わる問題である。
ただでさえ魔法の使えぬ彼女である。立場だけは使い魔の上に立っていなければならない。
かくして彼女が彼に命じた最初の命令は、
「私の事を敬うように!」であった。
この漠然とした命令に彼は苦笑し、尚のこと妹のように可愛い存在と思ったのだが、
彼女はそんな事には一切気づかず満足げな様子であった。

結局のところ彼にはする事が無かった。
何しろ平和なのである。
勝ち取った平和は向こうに置いてきてしまったが、このような暖かな平和も良いものだ。
向こうと連絡も取れず、こちらでもやる事が無い。となれば、ぶらりと学園内をふらつくしかなかった。
一応、女子寮に入って騒ぎを起こすのは避けたかったので、その場所だけは事前に聞いておいた。
中庭で暖かな日を浴びて歩いていると、洗濯をする少女を見つけた。
それまでにも何人もの生徒とすれ違ったのだが、この少女に目を引かれたのは理由がある。
生徒達は、ルイズを含め、まるでおとぎ話に出てくるようなカラフルな髪色をしているたのに対し、
少女は自分と同じく黒髪をしていたのである。
そんな理由で、声をかけた。

「こんにちは、いい天気だね」
「えっ!?こ、こんにちは!」
とあわててこちらに振り返ると、少女は不思議な顔をして彼を見つめた。
「ええと、見かけない方ですね?」
「ああ、僕は先日ルイズに召還された島村ジョーって言うんだ。初めまして。」
そう名乗ると彼女は驚き、ぺこりと頭を下げ、
「これは失礼しました、お客様!私この学院のメイドをさせて頂いております、シエスタと申します!」
と大げさに名乗った。

どうやら話を聞いてみると、彼がこの学院の賓客としての待遇を受ける事は、
事前に学院長直々に御触れがあったらしい。
なんとも痒い思いをしながらも、コルベールには感謝の念を抱いた。

「それはそうと、さっきは何であんなに驚いたんだい?」
と声を掛けた時の事を尋ねると、
「私は平民ですので、貴族様からお声を掛けていただく事など滅多にございません。
 なのでびっくりしてしまったのです。」
と笑った。

「そう。それじゃ、僕は貴族様じゃないから、そんなに礼儀正しくする事もないし、
 そうだね、僕の事はジョーって呼んでくれて構わないよ。」
「は、はい!分かりましたジョーさん!」
「お仕事の邪魔をしてごめんね、それじゃ、またね。」

そうしてキラリと歯を光らせて去っていく彼の姿を、彼女はぼうっとしたまま見つめていた。
頬が紅潮しているのに気づくと同時に、洗い物の手が止まっているのに気づくと、慌てて彼女は仕事を再開した。
ここでもやはり、彼はモテた。



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