一通り暴れた後、ルイズは着替えた。
本当は九郎にやらせようとも思っていたが、病み上がりを考えて自分で着替えた。
明日からはやらせるつもりだが。
本当は九郎にやらせようとも思っていたが、病み上がりを考えて自分で着替えた。
明日からはやらせるつもりだが。
一方、九郎も包帯の上から、部屋に用意してあった黒いローブを身に纏った。
なんとなくミスカトニック大学生時代を思い出す。
なんとなくミスカトニック大学生時代を思い出す。
朝食に行くとのことでルイズに連れられて部屋を出る。
と、そこには、扇情的な格好をしたグラマラスな少女が立っていた。
褐色の肌がやけに艶かしい。
と、そこには、扇情的な格好をしたグラマラスな少女が立っていた。
褐色の肌がやけに艶かしい。
「あら、おはよう、ルイズ」
「おはよう、キュルケ」
「おはよう、キュルケ」
片やにこやかに、片や嫌そうな表情で挨拶を交わす。
と、キュルケが九郎に気付いた。
と、キュルケが九郎に気付いた。
「貴方の使い魔、元気になったようね」
「まったく、余計な出費がかさんだわ」
「ふふふ、使い魔の管理もメイジの仕事でしょう。それにしても……」
「まったく、余計な出費がかさんだわ」
「ふふふ、使い魔の管理もメイジの仕事でしょう。それにしても……」
キュルケはじろじろと九郎の顔を見る。
「ふうん……ただの平民かと思ったけど、意外といい男ね」
「……え?」
「あたしはキュルケ。貴方の名前は?」
「……あ、九郎。大十字九郎だ、です」
「ダイジュウジクロウ? 変わった名前ね。でも似合っているわ」
「……え?」
「あたしはキュルケ。貴方の名前は?」
「……あ、九郎。大十字九郎だ、です」
「ダイジュウジクロウ? 変わった名前ね。でも似合っているわ」
一般に朴念仁と呼ばれる九郎。
それでもやはりこんな美人に褒められて嬉しくないわけがない。
「いやあ、そんな」と頬をかきながら照れる。踵に蹴りが入った。
それでもやはりこんな美人に褒められて嬉しくないわけがない。
「いやあ、そんな」と頬をかきながら照れる。踵に蹴りが入った。
「ちょっと! 人の使い魔に色目を使わないでよ!」
「あはははは、安心しても良いわよ、ルイズ。いくらあたしでも使い魔に手を出したりしないわよ。特に、『ゼロのルイズ』の使い魔にはね」
「――なっ!?」
「あはははは、安心しても良いわよ、ルイズ。いくらあたしでも使い魔に手を出したりしないわよ。特に、『ゼロのルイズ』の使い魔にはね」
「――なっ!?」
ゼロのルイズと呼ばれた途端、不機嫌な表情から、明確な怒りの表情に変わるルイズ。
何か言葉を発しようとしたが、キュルケの背後から這い出てきたものを見た瞬間、言葉を詰まらせる。
何か言葉を発しようとしたが、キュルケの背後から這い出てきたものを見た瞬間、言葉を詰まらせる。
「ああ、紹介するわね、この子があたしの使い魔のフレイムよ」
それは一見すると、真っ赤で巨大なトカゲに見える。
しかし、その尻尾は燃え盛る炎で出来ており、口からはチロチロと炎を吐き出している。
キュルケは得意げに胸を張った。
しかし、その尻尾は燃え盛る炎で出来ており、口からはチロチロと炎を吐き出している。
キュルケは得意げに胸を張った。
「この立派な尻尾、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ。好事家に見せたら値段なんてつかないわよ。あたしの属性にもピッタリ♪」
「……そりゃ良かったわね」
「ほー」
「……そりゃ良かったわね」
「ほー」
苦々しい声のルイズとは対照的に、足をトントンと叩きながら感心した声の九郎。
フレイムをジッと見る。
フレイムをジッと見る。
なんとなくクトゥグアに似ている。
炎の神性を持った邪神。
前の世界では強力な魔銃として活躍した。
炎の神性を持った邪神。
前の世界では強力な魔銃として活躍した。
「――あ」
九郎は思い出した。
というか、何で今まで忘れていたのか。
不思議そうな顔をしている二人の方を向く。
というか、何で今まで忘れていたのか。
不思議そうな顔をしている二人の方を向く。
「あのぉ……俺、あぁ、いや私が召喚されたとき、銃が二丁ほど落ちていませんでしたか?」
「銃? そんなもの落ちてなかったわよ」
「あたしも知らないわね」
「銃? そんなもの落ちてなかったわよ」
「あたしも知らないわね」
この世界に召喚されたとき、何処かに飛んでいったのかもしれない。消滅してしまったとは考えにくい。
これも今頃になって気がついたが、両手の甲に刻まれていた炎と風の紋章が消えていた。
恐らくアルと離れたことにより、一時的に契約が切れたのだろう。
今の九郎は強力なマギウスの力を持たない、半端魔術師と言うことだ。
これも今頃になって気がついたが、両手の甲に刻まれていた炎と風の紋章が消えていた。
恐らくアルと離れたことにより、一時的に契約が切れたのだろう。
今の九郎は強力なマギウスの力を持たない、半端魔術師と言うことだ。
(前途多難だなぁ……)
早くアルを見つけよう。
九郎はその想いを一層強くした。
九郎はその想いを一層強くした。
『アルヴィーズの食堂』
小人の名前を冠するこの食堂は、貴族が通う学院の食堂だけあって、やたら豪華だった。
百人は優に座れるだろう、長いテーブルが三つ並んでいる。
その上には、朝から凄まじいほどの豪華な食事がこれでもかと並んでいた。
ルイズは九郎に引かれた椅子に座ると、そのまま床を指差した。
その先には小さな皿が置いてあり、中には固そうなパンと冷めたスープが入っている。
小人の名前を冠するこの食堂は、貴族が通う学院の食堂だけあって、やたら豪華だった。
百人は優に座れるだろう、長いテーブルが三つ並んでいる。
その上には、朝から凄まじいほどの豪華な食事がこれでもかと並んでいた。
ルイズは九郎に引かれた椅子に座ると、そのまま床を指差した。
その先には小さな皿が置いてあり、中には固そうなパンと冷めたスープが入っている。
「貴方の食事はあれよ」
何処となく偉そうに言い放つ。
わざと貧しい食事を与えることによって、主従関係を骨の髄まで叩き込む。
ルイズの目論見に、果たして九郎は答えた。
わざと貧しい食事を与えることによって、主従関係を骨の髄まで叩き込む。
ルイズの目論見に、果たして九郎は答えた。
「ふぇ、ふぁんふぁっふぇ?」
ローストチキンを口一杯に頬張りながら。
「――なっ!? ち、ちょっと何を!」
驚くルイズを尻目に、九郎は頬張っていたチキンをお茶で流し込んだ。
そして、そのまま魚のソテーに手を伸ばす。
そして、そのまま魚のソテーに手を伸ばす。
「ちょっと! ご主人様の話を聞きなさい!」
「断る! 今の俺は人に非ず! ただ一匹の飢えた狼! ゆえに眼前のご馳走を食べつくすのみ!」
「――うっ!」
「――うっ!」
己の使い魔から放たれる、『名伏しがたい何か』に気圧され言葉を詰まらせるルイズ。
九郎はソテーを食いちぎると、空いた手で焼きたてのパンを丸かじる。
餓鬼の如き怒涛の食いっぷりに、周囲の生徒達は最初こそ驚いていたが、しばらくすると笑い出した。
九郎はソテーを食いちぎると、空いた手で焼きたてのパンを丸かじる。
餓鬼の如き怒涛の食いっぷりに、周囲の生徒達は最初こそ驚いていたが、しばらくすると笑い出した。
「お祈りすらせずに食べだすとは、所詮は平民か」
「さすがはゼロのルイズの使い魔だな。下品なことこの上ない」
「まあ、ピッタリなんじゃないの? ゼロのルイズにはね」
「さすがはゼロのルイズの使い魔だな。下品なことこの上ない」
「まあ、ピッタリなんじゃないの? ゼロのルイズにはね」
「……負けない」
青い髪をした約一名を除いて、嘲り声が生徒達から囁かれた。
それは九郎が食事を終わり、ルイズに地獄の折檻をされるまで続いた。
それは九郎が食事を終わり、ルイズに地獄の折檻をされるまで続いた。
「ほー、あいつ、いい食いっぷりだな。コック冥利に尽きるってもんだ」
食堂の様子を見ていたコック長のマルトー。
変なところで九郎を気に入っていた。
食堂の様子を見ていたコック長のマルトー。
変なところで九郎を気に入っていた。