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第七話B 王都トリスタニア ~才人とトリスタニア~


第七話B 王都トリスタニア ~才人とトリスタニア~


此処でクラース達から視点を移して…トリスタニアの街中を歩く一人の少女の姿があった
桃色かかったプラチナブロンドに、魔法学院の制服を着た少女が大通りを歩いている
「ほら、さっさと歩きなさい!!」
それは、ルイズだった…誰が見ても不機嫌そうな顔をして叫んでいる
その後ろには、物珍しそうに辺りを見回す才人の姿があった
「へぇ、此処が王都か…色々と賑やかだよな。」
目の前の光景から、以前アーチェにアルヴァニスタの都へ連れて行って貰った事を思い出す
あそこに負けない位活気がある街並みで、道端でも様々な物が売り買いされている
あれは何だろう、これは…等と見ていると、突然耳を引っ張られた
「イテテテテ!?」
「余所見しないの!!あんたは荷物係なんだから、そんな事してる暇はないの!!!」
解った、と思いっきり引っ張られながら耳元で叫ばれたので、耳の奥でルイズの声が反響する
ようやく離された耳を撫でながら、才人はルイズを睨んだ
「いてぇじゃねぇか…何だよ、クラースさんとキュルケの事、まだ怒ってるのかよ。」
「当然よ。クラース先生とあの女がで、ででで、デートなんて……。」
「仕方ないだろ、そうでもしないとあの指輪貸してくれねぇって言ってるんだし。」
もうこれで何度目だよ、とルイズの癇癪に才人はうんざりするしかなかった
クラースがキュルケと出掛けた後、才人もルイズに連れられてこのトリスタニアにやってきた
本人は買い物だと言っていたが、キュルケと出掛けたクラースの事が気になるのだろう
現にさっきからきょろきょろと、彼等がいないかその姿を探している
「それに、俺に八つ当たりするのも止めて欲しいんだけどな。」
此処に来るまで、何度苛立ちをぶつけられた事か…それにしても、彼女の苛立ちは尋常ではない
「(怒りっぽいからって、こりゃ異常すぎるだろ……まさか、こいつ。)」
口は災いの元だと言う事を学べないのか…才人は思った事を口にした
「もしかしてお前……クラースさんに惚れてるとか?」
返事は返ってこなかった…帰ってきたのはルイズの鉄拳だった
顔にめり込む勢いだったので倒れそうになったが、何とか踏ん張る
「そんなわけないでしょ!?あのツェルプストーの女と先生が一緒ってのが気に食わないだけよ!!」
「さ、さいですか……まぁ、クラースさんにはミラルドさんがいるし、変な事にはならないって。」
鼻を抑えながら才人がそう答える中、ふとルイズは気になった
よく二人の使い魔の会話に出てくる、ミラルドという女性に
「ねぇ、サイト…クラース先生の奥さんって、どんな人?」
「ミラルドさん?そうだな……簡単に言えば、美人で優しい人だな。」
「美人で…優しい?」
「ああ。クラースさんに召喚されてから色々世話になってさ……。」
才人は語った…ミラルドの事を
アセリアの事を色々教えてくれたり、おいしい料理を作ってくれたり
それに、不安になった時には優しく抱きしめてくれた事…そんな事を話した
「ふーん……何か聞いてても、良い人だって思うわ。」
「だろ?きっと俺とクラースさんが急にいなくなったから…心配してるだろうなぁ。」
才人は空を見上げ、ミラルドやアーチェ、ユークリッド村の人々の事を思い浮かべた
そして、地球にいる両親や友達の事も…
「サイト……。」
そんな才人の姿を見て、ルイズは二人を呼び出してしまった事を少し後悔した
そして今更だが気付かされた…彼等にも彼等の生活があったんだという事を
「(でも…仕方ないじゃない、あんた達がゲートを潜ってこっちに着ちゃったんだから。)」
召喚した使い魔を戻す魔法なんてない…ルイズにはどうにも出来ない問題だ
だんだんと胸の奥がもやもやしてきたので、それを払うべく声をあげた
「ほ、ほら、ぐずぐずしないで…さっさと買い物に行くわよ。」
「何だよ、人が感傷に浸ってるのに…つめたい奴だな。」
才人の言葉に、ルイズは反論しなかった…今だけはやめておこうと思ったからだ
ルイズが歩き出すと才人もその後に続き、二人は通りを歩いていくのだった
「これとこれ…あとこれもお願いするわ。」
「ありがとうございます。」
トリスタニアのとある店で、ルイズは買い物を終わらせて店を後にする
そんなルイズの後を、彼女の買った物を両手で持つ才人が後を追う
「えっと、次は向こうにあるお店にいって……。」
「おいおい、まだ買うつもりかよ。」
才人が悲鳴に近い声で訴える…既に彼の手には十分すぎる程の荷物があった
なのに、彼女はまだ買うつもりでいるのだから当然の訴えだ
「当然よ、女の子には必要な物が沢山あるんだから…本当、荷物係がいて助かるわ。」
「…鬼だ、俺の目の前には鬼がいる。」
可愛らしい顔をしていはいるが、根は酷い鬼が…ぶつぶつと文句を呟く
そんな才人を面倒臭そうに見ると、仕方ないとばかりに口を開いた
「ほら、後で何か美味しいもの食べさせてあげるから…頑張りなさいよ。」
「えっ、マジで!?」
此処に来て楽しみと言えるのが食事くらいなので、才人の顔は一気に明るくなる
だから、ルイズの「単純…」という声も聞こえなかった
「解ったらさっさと行くわよ。」
「ああ。でも、此処って人の通りが激しいから……。」
才人の言うとおり、狭い通りを大勢の人が行き交いしているので歩きにくい
そんな才人の苦労を知ってか知らずか、ルイズはどんどん先へ行く
「おーい、ルイズー、待ってくれよ…うわっ!?」
「きゃっ!?」
ルイズに追いつこうとした時、才人は通行人の一人と真正面からぶつかってしまった
手に持っていた荷物がバラけ、才人は仰向けに倒れる
「(いてぇ、思いっきり倒れた……ん?)」
起き上がろうとしたが、顔に妙な弾力間がある事に気付いた
柔らかい、そして視界が暗い…そう思っていると声が聞こえてきた
「ごめんなさい…大丈夫?」
視界が明るくなったと同時に、目の前に女性の顔が見えた
相手は白のワンピースを着た綺麗な女性だった…それに胸もある
その胸が自分の顔を覆っていたと知り、才人は顔を赤らめた
「い、いや、こっちこそすんません。ぶつかっちゃって…。」
「ティアお姉ちゃん、大丈夫?」
隣から、彼女の連れらしい少女が心配そうに覗き込んでくる
「ニナ…私は大丈夫。でも、この人が…。」
「お、俺は大丈夫です。この通り、全然平気ですから…ハハハ。」
そう言うと、才人は起き上がってバラけてしまった荷物を拾い始めた
ティアと呼ばれた女性も手伝ってくれ、荷物はすぐに集まった
「ありがとうございます、拾うの手伝って貰って。」
「そんなに沢山の荷物を持って大変ね。おつかいでも頼まれてるの?」
「ええ、ちょっと買い物に付き合わされてね…大変ですよ、もう。」
笑いながらティアの返事に受け答えする才人…その視線は終始彼女の胸に向けられていた
そんな事に気付かない彼女は、才人に微笑を返してくれる
「じゃあ、私達はこれで…おつかい、頑張ってね。」
「はい、そちらも気をつけて。」
ティアは連れの少女と共にその場を後にし、やがて人混みの中へと消えた
二人が見えなくなるまで手を振った後、才人は自分の顔に手をやる
「(ティアさん、だっけ……凄くでかい胸してたよなぁ。)」
彼女の胸の感触が残る顔を撫でる才人…周囲の人がいぶかしむ位、にやけながら
あのメロンみたいな大きい胸の感触を知る事が出来たので、此処に来たのも悪くはなかった
「さて、と…ルイズ、次は何処に………ルイズ?」
辺りを見回してみると、見知らぬ通行人ばかりでルイズの姿は見えない
何度かルイズの名を呼んでみるが、返事は返ってこなかった
「ひょっとして……はぐれた?」
それに気付いた時…才人は途方にくれるしかなかった
「はぁ…どうすっかなぁ。」
ルイズを探し、荷物を両手で抱えながら才人はトリスタニアを歩き回った
知らない道をぐるぐる回った結果、今では路地裏にたどり着いてしまう始末だ
「こんな所にあいつが来るわけねぇよなぁ…戻るか。」
しかし、帰ろうにも入り組んだ路地裏からはそう簡単には出られなかった
「えーと、確かこっち…いや、あっちだったか?」
右に左に、前に後ろに…
あちこっち歩き回っても、中々大通りに出る事は出来ない
「やべぇ、マジでやべぇ…このままだとルイズに会うどころか帰れなくなるぞ。」
だんだんと彼の中に危機感が募っていく…そんな時だった
「や、止めてください。」
向こうの方から、嫌がる女性の声が聞こえてきた
それも、何処かで聞いた事のある声…気になった才人は先へ進んでみた
「止めてくださいって言われて止める奴なんていないだろ?」
「だからよ姉ちゃん、俺達と楽しい事しようぜ。」
すると、柄の悪い男達が数人、若い女性を取り囲んでいた
男達に取り囲まれ、困惑するその女性には見覚えがあった
良く見てみると…普段着を着ているが、間違いなくシエスタだった
「シエスタ!?」
「あっ……さ、才人さん。」
才人の声を聞いて、シエスタが此方に振り向いた
当然、彼女を取り囲んでいる男達も才人の方を振り向く
「んん、何だお前…こいつのツレか。」
「えーと…まあ、そんな感じ。そんな事よりシエスタを離してやれよ、嫌がってるじゃないか。」
才人の言葉に男達は顔を見合わせ、やがて大声で笑い出した
まあ、この手の人間が素直に話を聞くとは思っていなかったが
「馬鹿かお前、んなの聞くわけないだろうが……おい。」
リーダーらしき男の声に、仲間の一人が近づいてきた
懐からナイフを取り出したので、思わず才人は後ずさる
「えっ、ちょっと……いきなり刃物出すなんてありかよ。」
そうは言っても相手はやる気のようで、ナイフを此方に向かって突き出してきた
咄嗟にその一撃を避けるが、相手は続けてもう一撃繰り出してくる
「くっ…この!!」
「うわっ!?」
後でルイズに怒られる事を覚悟しつつ、荷物を暴漢に向かって投げつけた
顔にぶつかって一瞬怯んだ隙をついて、男の急所を蹴り上げる
「ぐふっ!?」
男の急所は共通…それをよく知っている才人の一撃を受け、相手はその場に蹲った
その手から零れ落ちたナイフを、反射的に手に取る
「野郎、抵抗する気か……お前等、やっちまえ!!!」
リーダーの言葉に、男達は一斉に得物であるナイフを取り出した
そして、これまた一斉に才人に向かって襲い掛かる
「何でこうなっちまうんだよ…くそ、やるしかないよな。」
ナイフを手に構える才人…その時、左手のガンダールヴのルーンが輝きだした
相手は五人…けれど、才人は怯まずに相手に向かっていった
「でりゃ!!」
まずは一人目…思いっきりナイフを振って相手の手から弾き飛ばす
顔面にパンチを叩き込んで、地面に沈めた
「たあっ!!」
二人目と三人目は攻撃をしゃがんで避け、足払いを掛けた
バランスを崩した二人は、重なり合って倒れる
「これで、どうだ!!」
残った二人も、すれ違いにナイフの柄を首筋に当てて沈黙させた
僅か数秒足らずで、才人は全員を倒してしまった
「俺って…実は凄くね?」
得意げになる才人…これも、ガンダールヴの恩恵故であった
このままいけるかもと思ったが、そんな彼の快進撃もそこまでだった
「おい、お前…それ以上動くんじゃねぇ。」
何故なら、相手がシエスタの首筋にナイフをかざしていたからだ
「シエスタ……くそ、定番過ぎる卑怯さだぞ。」
「まさか、ガキ一人に皆やられちまうとはな…おら、全員起きろ!!」
リーダーの一喝に、倒れた全員がふらつきながらも立ち上がった
相手はシエスタの首筋にナイフをつけたまま、ゆっくりと近づいてくる
「さあ、ナイフを捨てな…でねぇと、この姉ちゃんの首から血が噴出すぜ?」
「さ、才人さん……。」
相手は脅しではない事を証明する為、ナイフでシエスタの首の皮を一枚切った
切った箇所から赤い血が流れ、痛みと恐怖から彼女の顔が歪む
「解ったらさっさとナイフを捨てろ、今度は本当にやっちまうぞ。」
「お前……解ったよ。」
いくらガンダールヴの力で強化されたとはいえ、この位置から突っ込んでも間に合わない
相手の指示通り、才人は手に持っていたナイフを捨てた
「そうだ、それで良い…おい、お前等、たっぷりとお返ししてやれ。」
周囲の男達が手をボキボキ鳴らしながら、ゆっくりと近づいてくる
あれだけやったのだから、タダですむわけがない
やられる…恐怖のあまり、才人は目を瞑った

………

だが……数秒が過ぎ、十数秒が過ぎても相手が殴りかかってこない
「(あれ…全然来ないぞ、どうしたんだ?)」
「おい、もう固まってなくて良いぞ。」
疑問を浮かべる才人に、男達とは違う若い男性の声が聞こえてきた
恐る恐る目を開けると、自分を取り囲んでいた男達が再び地面に沈んでいた
「えっ、なんだ、一体何が……。」
「才人さん!!」
目の前の光景に戸惑っていると、シエスタが抱きついてきた
一体何があったんだ…と彼女に尋ねようとした時、再度声が聞こえた
「危なかったな、お二人さん?」
声の方を向くと、その先には髪の長い男性が立っていた…手には刀を吊るした紐が握られている
その足元には、何故かキセルを加えた犬までいた
犬は男達のリーダーを踏みつけている…奴も気絶しているらしい
「えっと…あなたが助けてくれたんですか?」
「話は後だ。此処はこいつ等の縄張りだからな…すぐに他の奴等が来るぞ。」
その言葉に、慌てて才人は散らばった荷物を回収する
そしてシエスタと共に、青年に連れられて路地裏を後にした

………………

「ここまでくれば、後は大丈夫だろ。」
追っ手が来ていないのを確認しながら、青年はそう答える
彼の案内により、才人とシエスタは無事大通りへと出る事が出来た
「あの…ありがとうございます、俺達を助けてくれて。」
「別に…仕事でたまたま通りかかっちまっただけだからな、礼なんていらねぇよ。」
才人の感謝の言葉に、青年はそう答える
その隣で「わん!!」と、犬も軽く吼えた
「何にせよ、裏通りにはああいう輩が多いからな…今度からは注意しろよ。」
いくぞ、ラピード…彼は連れの犬の名を呼び、その場から立ち去っていく
「本当に、ありがとうございました。」
とシエスタが言うと、彼は後ろ向きのまま手を振り、やがて見えなくなった
二人は彼の姿が見えなくなった後、落ち着ける場所を探してその場から歩き始めた
「私、今日非番だったんです。それで、王都に買い物に着たんですけど…。」
「その途中で、あいつ等に絡まれたってわけだ。」
昼前の噴水広場にて……
ベンチに腰を掛けて、才人とシエスタはそこで落ち着き、話をしていた
「裏通りに引き込まれた時は、私もう駄目かと思いました。でも、才人さんが来てくれたから…。」
「いや、結局俺もさっきの人に助けられたから…。」
助けに行ったつもりが助けられて……ちょっと間抜けだと思った
でも、二人とも無事だったのでよしとしよう
「あの犬さん、凄かったんですよ。暴漢達を反撃する間も与えずに一瞬で倒しちゃったんです。」
「へぇ、そうなんだ……って犬!?」
「はい、才人さんの周りの人を倒したのが犬さんで、私を捕まえていた人を倒したのがあの人です。」
あの犬が…確かに普通の犬とは少し違うようだったが、まさかそれ程とは
というより、犬に助けられてしまうなんて…
「そうか……俺って、犬より弱いんだな。」
「し、仕方ないですよ、私人質になってたんですから…それに、最初は凄かったじゃないですか。」
「そ、そう…かな?」
「はい。あの時の才人さん…とても格好良かったです。」
シエスタのフォローに、才人も少しは気が楽になった
しかし、持っている荷物を見て大事な事を思い出した
「あっ、それよりも…ルイズの事、どうすっかなー。」
「ミス・ヴァリエールがどうかしたんですか?」
「いや、今日はルイズと買い物に来たんだけど…あいつとはぐれたんだ。」
どうしよう…と、ルイズが何処にいるのかと才人は頭を悩ませる
下手に動き回ればまた迷うだろうし、一旦街の入り口まで戻ろうか…
「よぉ、お二人さん…何か悩んでんのか?」
そんな時、二人に元気よく声を掛けてくる男が現れた
服装は先程の男同様、この辺では見ない服装で、胸当てを着用している
「え、えっと…悩んでると言えば悩んでるんですけど…。」
「悩んでるんだったら、少し占いで見てもらったらどうだ?すぐそこでやってんだけど…。」
どうやら、男は客寄せの為に自分達を呼んでいるらしい
だが、こういう勧誘は怪しいものなので、すぐに返事は出せなかった
「ん、何だ…俺の事信用出来ないってか?」
「いや、そんな事は……。」
そうは言っても、歯切れの悪い言い方がそれを肯定している
「ん~、まぁそうだよな……じゃあ、これが俺の証明って事で。」
男は少し考えた後、二人の目の前にスッと拳を突き出した
何をするんだろう…そう思って二人が見ていると、彼の拳から花が出てきた
「わぁ、綺麗な花ですね…それに見た事ないです。」
「これは東の方に咲くティートレーイの花って言うんだ、一つあんた達にあげるぜ。」
男から花を受け取り、シエスタと才人は再度彼の顔をのぞく
彼は満面の笑みを浮かべており、何だか信じられそうになった
「じゃあ……ちょっとだけ、占って貰っても良いですか?」
「よし、来た。あいつの占いは五つ星だからな、期待しても良いぜ。」
話が決まり、男は占い師の所まで案内しようとする
が、その前に大事な事があったと、二人に振り返る
「自己紹介がまだだったな…俺はティトレイって言うんだ、よろしくな。」
男…ティトレイが自身の名を名乗り、才人は横目で先程貰った花を見る
これ、自分の名前をつけてんのか…面白い人だな
「わたしはシエスタです、よろしくお願いします。」
「あっ…お、俺は平賀才人…才人って言います、よろしく。」
挨拶が終わると、二人はティトレイに連れられてその場を後にする
その後、クラース達が此処へやって来るのだが、二人がそれを知る事はなかった
ティトレイに連れられて、二人は件の占い師の所へとやってきた
簡易的なテーブルに白いテーブルクロスが掛けられ、椅子には女性が座っている
黒髪の美女…彼女が占いをするらしいが、彼女はカードを見ていた
「おーい、ヒルダーーー、客連れて来たぜ。」
「ああ、ティトレイ…何処に行ってるのかと思えば。」
ティトレイに呼ばれた女性は顔をあげ、三人に振り向く
ヒルダと呼ばれたこの占い師は占いをしていたらしい、彼女のカードを覗き込んだ
「また俺達の今後を占ってたのか……で、どうだった?」
「そうね、この前と同じよ…今は時が来るのを待つしかないわ。」
「そうか…まあ、果報は寝て待てって言うしな。」
うんうんと頷くティトレイ…その間に、ヒルダはカードを整理する
それを終えると、今度はシエスタと才人へ視線を向ける
「それで…占って欲しいのはそこの二人?」
「ああ、ヒラガサイトにシエスタ…何か悩んでるみたいだったから連れてきた。」
ふーん、と占い師のヒルダはじっと二人の顔を見つめる
「確かに、色々と悩んでそうね……で、貴方達は何を占って欲しいの?」
「え、えっと……私の仕事の運勢とか占ってもらって良いですか?」
「俺はルイズ…はぐれた奴がいるんだけど、そいつが何処にいるとか占えます?」
「それだけ?」
二人がそれぞれ占って欲しい事を言うが、ヒルダは納得した様子ではない
その言葉の意味が解らない二人に、ヒルダは微笑する
「歳若い二人が一緒に占って欲しいと言えば、恋愛運だと思ったのだけど……。」
「ええっ、そんな…私とサイトさんは別にそんな関係じゃ…。」
少し顔を赤らめながら、シエスタは自分達の関係を否定する
彼女の態度を見れば、少しは脈有りだと思うのだが…
「そうですよ。俺なんか、シエスタには勿体ないくらいですから。」
鈍感な才人はそれに全く気がつかなかった…その時、シエスタは少し残念そうな顔をしていた
「まあ、そう言うならいいけど…で、どちらから占うの?」
「そうだな……シエスタ、先に占ってもらったら?」
「えっ、良いんですか?なら、私から……。」
才人の勧めでシエスタが最初という事になり、椅子に腰掛けた
ヒルダは持っているカードを使って占いを始める…絵柄は見た事のないものだった
途中色々と質問され、それに答えながら占いは行われていき……
「結果が出たわ…正直に言うと、このまま仕事を続ければ貴方にとって良くない事が起こるわね。」
結果は思わしくないものだった…それを聞いて、才人はヒルダに向かって怒鳴った
「そんな、どうして!?シエスタは何時もちゃんと仕事してるのに……。」
「そこまでは私にも解らないわ…心当たりは彼女自身が良く知ってるみたいだけど。」
その言葉に才人がシエスタを見ると、彼女は思いつめた表情をしていた
それに結果を聞いてもそれ程驚かない…何処か納得しているようでもある
「シエスタ…学院で何かあったのか?」
「それは…いえ、何でもありません。何も…ないんです。」
だが、彼女は何も言おうとしなかった…後の事を考えれば、言えなかった
これではあんまりだと思ったティトレイは、ヒルダに尋ねる
「なあ、ヒルダ…どうにか出来ないのか?」
「そうね、気休め程度だけど……宝石が貴方のラッキーアイテムかしらね。」
「宝石?」
「そう、それを身に着けていれば厄災から持ち主を守ってくれるわ。」
完全な保障は出来ないけどね、とヒルダは付け加える
「宝石か……そう言えば、確か…。」
才人はポケットに手を突っ込み、ごそごそとある物を探す
すぐにそれは見つかり、ポケットから取り出したそれをシエスタに渡した
シエスタが受け取って確認すると、瞳くらいの大きさの黒い宝石だった
「これは?」
「ブラックオニキス、前にクラースさんから貰った奴だけど…シエスタにあげるよ。」
「そ、そんな…頂けません、こんな高価な物…。」
慌ててシエスタはブラックオニキスを返そうとするが、才人はそれを拒んだ
「シエスタには会った時から世話になってるからさ…お礼の意味も込めてって事で。」
と言っても、貰い物なので有難みないかもしれないけど…
「でも……。」
「良いんじゃないかしら。貴方の事を大切に思う人からの物の方が、効果があるかもしれないわよ。」
「ほら、占い師のお姉さんもこう言ってるし…な。」
シエスタはヒルダ、ティトレイ、才人と見て最後にブラックオニキスを見た
黒の宝石を愛おしそうに指で撫でた後、ギュッと握り締める
「サイトさん……解りました、大事にしますね。」
ありがとうございます、とシエスタは笑顔で感謝する
これで、シエスタの事は上手くいったと思いたい
「さて、と…じゃあ次は俺の番だな。人を探しているんですけど……。」
「サイト~~~~~~!!!!」
占いを始めようとした矢先、聞き覚えのある声が聞こえてきた
才人が振り向くと、ルイズが此方に走ってくるのが見えた
「あれ、ミス・ヴァリエールじゃないですか?」
「サイトが探してる女の子か…良かったな、占う前に見つかって。」
ティトレイは喜んでいるが、才人は全然喜んでなかった
何故なら、向かってくる彼女の表情が、自分の無事を安堵しているようには見えなかったからだ
「この…馬鹿犬!!!」
その証拠に、才人に向かって飛び膝蹴りを喰らわせようとした
喰らっては大変と、その一撃を避ける
「避けんな。」
「避けるわ、んなの!!」
「あんたって奴は…勝手にいなくなったと思ったら、女の子と一緒にいるなんて…。」
「仕方ないだろ、お前がさっさと行っちまうんだから…それに…。」
「ああ~~~!!!」
弁解の途中でルイズが大きな声を出したので、思わず才人は竦む
彼女が驚いたのは、才人が持っている袋が幾つか汚れていたからだった
「あんた、私の買った物をそんなにボロボロにして…。」
「そ、それは俺の命が危なかったから仕方なく…。」
「言い訳すんな!!」
「はぐぅ!?」
話も碌に聞かず、ルイズは才人の急所を蹴り上げる
不意を付かれてその一撃に才人は膝をつく
「馬鹿、この馬鹿!!」
「げふっ、ま、待てルイ…ぐほっ!?」
「み、ミス・ヴァリエール、落ち着いてください。」
足で散々踏まれまくる才人は弁明の余地なく、地面に沈んだ
シエスタは何とかルイズを落ち着かせようとするが、あたふたするばかりだ
「何だか騒がしい連中だな…ま、これで一件落着って事で良いのか?」
「良いんじゃない?」
隣で様子を見るティトレイとヒルダの言葉は、騒がしい三人には聞こえなかった
「全く…理由があったならちゃんと言いなさいよね。」
ヒルダとティトレイと別れ、才人達は道を歩いていた
あれから何とかルイズを宥める事に成功し、事情を話して納得させる事が出来た
だが、その頃には才人は体中をあちこち痛める辛い思いをする事となったが
「お前が素直に人の話を聞いた事があるのかよ。」
「過ぎた事を何度も言わないでよ、男らしくないわね。」
じゃあ、お前は女らしくねぇよ…と言おうと思ったが、止めておいた
口は災いの元というのを、そろそろ学習しなければならない
「それにしても…何であんたまで付いてくるの?」
ルイズのその言葉は、才人の隣を歩くシエスタに向けられたものだった
別に一緒に行こうとも言っていないのに、彼女は自分達に付いてきた
「だって、サイトさんは命の恩人ですから…お礼がしたいんです。」
「ふーん…まあ、良いんじゃないの。」
特に興味もなさそうに告げると、ルイズはそっぽを向く
しかし、横目でチラッと二人の様子を見ていた
「ああ、腹減ったな…そういや、今朝はあんまり食べれなかったし。」
「だったら、あそこで何か買います?美味しそうな果物が並んでますよ。」
「おっ、本当だな。」
黒髪の少年と少女…傍から見れば、お似合いのカップルとも言える
別に使い魔の少年が誰と付き合おうと構わない…キュルケ以外なら
構わない…筈なのだが
「(妙にイライラするのは何でなのよ。)」
あの二人を見ていると、そんな気分になってくる
別に彼等は自分にとって、何も悪い事はしていない筈…
「(……ああ、解ったわ。きっとこれは…。)」
その理由が解ったと思ったルイズは、二人に近づく
そして、シエスタが買ってくれた果物を頬張る才人の耳を引っ張った
「イテテテテ、何すんだよ!?」
「使い魔が主人を放っておいたら駄目でしょ、あんたは荷物持ちとして連れて来たんだから。」
そう、自分がイラついていたのはこいつが使い魔としての責務をしていないから…
実際、こうやって諌めた事でルイズの中で気分が落ち着いた
「解った!?」
「わ、解った…解ったって!?」
しぶしぶ了承する才人の声を聞き、解れば良いのよとルイズは耳を引っ張るのを止める
耳を押さえる才人をシエスタが心配するが、ルイズは気にせず先に行く
「(全く、あいつは本当に使い魔らしくないわね…今一度、ビシッと教育する必要があるわ。)」
今度はそれに必要な物を買いましょ…と碌に前を見ずに考えていた
だから、ルイズは前から来る人に気付かずにぶつかってしまった
「イタッ!?」
そのショックで地面に思いっきり尻餅をついてしまう
それに気付いた才人とシエスタが、後ろから駆け寄ってくる
「ルイズ、大丈夫か?」
「大丈夫じゃないわよ、思いっきり地面にお尻をぶつけちゃったわ。」
イタタ…と地面にぶつけたお尻を擦りながら、ぶつかった相手を見上げた
「おっと、失礼した…大丈夫かな、貴族のお嬢さん。」
ぶつかった相手の男は丁寧にルイズに謝る
よく見ると、相手は三人組で、男二人に女一人の組み合わせである
それぞれ武器を持っている事から、相手は傭兵のようだ
「あんた達、傭兵?次からはちゃんと前見て歩きなさいよね。」
「お前…兄貴に向かって生意気でヤンス。」
余所見していたのはあんただろうに…と、太っちょの男は憤慨する
だが、そんな彼を男は制止させる。
「まあ、待てジョン…此処で貴族と問題を起こしたら面倒だ。」
「それは…そうでヤンスが。」
彼の言葉に、太っちょの男はそれ以上言う事なく黙った
「仲間が失礼した…我々は漆黒の翼という者、以後お見知りおきを。」
男は礼儀正しく、ルイズに向かってお辞儀した
「漆黒の翼?漆黒の翼って何なんですか?」
「おお、良くぞ聞いてくれたな少年!!」
聞いたこともない単語に、才人が疑問を相手に投げかける
すると、待っていましたと言わんばかりに叫んだ男は仲間二人に向かって振り向く
「ジョン、ミリー、例のヤツをやるぞ。」
「解ったでヤンス、兄貴。」
「ええ、こんな街中で……仕方ないわね。」
太っちょの男は即座に、女性のほうは少し困惑しつつも了承する
そして、彼等は独特のポーズと共に自己紹介を始めた

「私は音速の貴公子、グリッド!!」
リーダーらしく、格好良いポーズを決めるグリッド
剣を引き抜き、頭上高く掲げる

「おいらは大食らいのジョン、でヤンス!!」
力自慢である事を示すようにポーズを決めるジョン
その体格に似合った斧を、背中に担いでいる

「私は疾風のミリー!!」
自身の愛らしさと疾風を表現したポーズを決めるミリー
二本のナイフを、クルクルと手の内で玩ぶ
三者三様に、それぞれポーズを決めながら名乗りを上げ、最後の締めへと入る

「「「我等三人、人呼んで最強の傭兵集団…漆黒の翼!!!」」」

決まった…我等の勇姿は深く彼等の胸に刻まれたに違いない
そう思っているグリッドに対し、才人達の反応は…
「へー、そうなんだ…で、知ってるか、ルイズ、シエスタ?」
「全然知らないわ。」
「私も…聞いた事ありません。」
「馬鹿なぁ!?」
三者のコメントに崩れ落ちるグリッド、そんな彼をジョンが心配する
「兄貴、大丈夫でヤンスか?」
「大丈夫だ、ジョン…少しばかり、眩暈がしただけだ。」
弟分に支えられ、何とか立ち上がるグリッド
しかし、表情はまだショックの後が残っている
「グリッド、私達まだそれらしい活躍してないじゃない。知られてないのも当たり前よ。」
「まあ、それはそうなんだが…漆黒の翼と言えば、色々と有名だろ?」
「私達『は』、まだそんなに有名じゃないでしょうが。」
ベシっと、ミリーの突っ込みがグリッドに入る
彼は頬を人差し指で掻いた後、改めて三人に振り返った
「…まぁ、そういう訳で。今後活躍を予定している漆黒の翼をよろしく頼む。」
では…と、グリッドは一足早くその場を去っていく
他の二人も、グリッドの後を追いかけていった
「…何だったんだ、あれ。」
「さあ…でも、もうあいつ等と会う事なんてないでしょ。」
「それより、早く行きませんか?周囲の視線が…。」
シエスタの言うとおり、周囲の人々の怪しんでいる視線が集中してくる
そういう事で落ち着くと、三人は再び歩きだした
この時、彼等とは長く関わっていく事になるとは誰も思わなかった

『腹は減っては…』
才人「やっぱ王都ってだけあって広いよなー、広いから迷子になったけど。」
ルイズ「もう二度と迷子になんかならないでよね、アンタを探すの大変だったんだから。」
才人「それは悪かったって…で、これからどうするんだ?」
ルイズ「そうね…そろそろ昼頃だし、何処かで食事にでもしたいわ。」
才人「そいつは賛成だ、俺もう腹減ったし…さっきの約束、守ってくれよな。」
ルイズ「約束…ああ、あれね、一応守ってはあげるわよ。」
才人「一応って…まあ、早くどっかで飯食いたいなぁ。」
『ルーンの秘密』
シエスタ「それにしても、あの時の才人さん凄かったです。」
ルイズ「あの時って…ああ、暴漢に絡まれたっていう…。」
シエスタ「はい。あの時才人さんはナイフを巧みに使って相手を倒したんです。」
才人「でも、結局は俺も助けられたけどな…あの長髪の人と犬にさ。」
ルイズ「ふーん…ギーシュの時もそうだけど、あんたって本当は剣士なの?」
才人「いや、俺剣なんて使った事ないし…自分でもどうしてあんな風に動けたのか…。」
ルイズ「………もしかしたら、契約のせいかもしれないわね。」
才人「契約?」
ルイズ「使い魔を召喚して契約を交わすと、使い魔には特殊能力が宿る事があるのよ。」
ルイズ「例えば、猫の場合だと猫が喋れるようになるとか。」
才人「へぇ…じゃあ、俺が剣を使えるようになったのもルイズとの契約のお陰ってわけか。」
ルイズ「そう言う事…まぁ、あんたは先生のおまけだったからそれくらいあった方が良いかもね。」
才人「おまけっていうな…見てろよ、何時かお前をギャフンって言わせてみせるからな。」
ルイズ「はいはい、期待しないで待ってるわ。」
『伝説の傭兵』
才人「さっき会った漆黒の翼って人達…傭兵ってあんな面白い人達ばかりなのか?」
ルイズ「そんなわけないでしょ、傭兵なんて金にしか目のない奴等ばかりよ。」
ルイズ「おまけに、自分の身が危なくなったらさっさと逃げちゃうらしいし。」
才人「ふーん…傭兵って格好良い職業だと思ってたけどな。」
シエスタ「でも…確か何十年か前に客員剣士として招かれた傭兵がいるって話がありますよ。」
才人「客員剣士?」
ルイズ「それは私も母様から聞いた事があるわ…剣と魔法に卓越した、凄い人がいたって。」
ルイズ「でも、私は母様の話でも信じられないわ…傭兵が陛下直々に招かれたなんて。」
シエスタ「殆ど伝説のような物ですからね…当時を知る人しかその傭兵の存在を知りませんから。」
才人「伝説の傭兵ってわけか…だったら、俺もそんな傭兵みたいに伝説の一つでも残して…。」
ルイズ「調子に乗るんじゃないわよ、この馬鹿。」
才人「イタタタ、冗談、冗談だから…そんなに耳引っ張んなって!?」
『才人からのプレゼント』
シエスタ「♪」
ルイズ「どうしたのよ、あんた…宝石を見つめてにやにやと。」
シエスタ「あっ、ミス・ヴァリエール…これ、才人さんからプレゼントして貰ったものなんです。」
ルイズ「サイト…から?」
シエスタ「はい、本当はミスタ・レスターから頂いたそうなんですけど…。」
ルイズ「ふーん…良かったじゃない、プレゼントなんかもらえて。」
シエスタ「はい…今後の事で色々と不安だったんですけど、これのお陰で大丈夫そうです。」
シエスタ「私、頑張ります…この先、何があっても。」
ルイズ「………。」
才人「ルイズー、そんな所でボーっと突っ立ってるとまたはぐれるぞ。」
ルイズ「サイト……ふんっ!!」
才人「ぐえっ…い、いきなり何すんだよ!?」
ルイズ「………何となく。」
才人「何となくって…ちょ、おい、待てよ、コラ!!!」

「なぁ…そろそろ昼飯にしようぜ。」
漆黒の翼の面々と別れ、更に歩いた頃に才人がルイズに尋ねる
街に着てから色んな事があったので、お腹はすっかり減っていた
「そうね…確かにお腹も空いてきたから、何処かで昼食を取りたいわね。」
ルイズにもそれには賛成で、何処か良い店はないだろうかと探してみる
貴族に相応しい、品位ある店を……
「きゃっ!?」
その時、風が通り過ぎたような感覚をルイズは感じた
スカートが捲れそうになり、両手でそれを押さえつける
「何、今の…風が通り過ぎたかと思ったけど。」
「あの子が走っていったみたいですよ、ほら。」
シエスタの言葉に前を見るが、その先には通行人が数人見えるばかり
子どもの姿は影も形もなかった
「あの子って誰よ?そんな子いないじゃない。」
「いえ、今さっき男の子が走っていったんですけど…もう見えなくなっていますね。」
「男の子がねぇ…ルイズのスカートでも捲ったのか?」
才人が、男の子が去ったという先を見つめていると、後ろから騒がしい幾つもの足音が聞こえてきた
ルイズとシエスタが後ろを振り返ると、大勢の男達が此方に向かって走ってきていた
誰もが我先にと、一生懸命走っている
「な、何よあれ!?」
「きゃあ!?」
彼等の尋常ではない様子に、ルイズとシエスタは道の端へと飛びのいた
「えっ、どうし……ぎゃあああっ!?」
唯一逃げるタイミングを逃した才人は、走ってくる集団に飲み込まれてしまった
彼等が去った後、そこには背中に幾つもの足跡を残した才人がうつ伏せで倒れていた
「才人さん、大丈夫ですか!?」
「ううっ…大丈夫じゃあ、ないかも…。」
「ちょっと、大丈夫!?」
背中に幾つもの足跡を残す才人にシエスタだけではなく、ルイズも駆け寄ってくる
心配してくれてるのか…と思ったが、彼女は才人が持っていた荷物を拾い上げる
「ああ、良かった…こっちは無事みたいね。」
「おい、少しは俺の事も心配しろよ!!」
ルイズが心配したのは買った品物だけ、才人は眼中になかった
そんな時、一人のおじさんが後ろからよろよろと歩いてきた
「ふぅ、ふぅ、ふぅ…駄目だ、全然追いつけねぇ。こりゃこのレース負けだな。」
肩で息をする状態で独り言を呟くと、それがルイズの耳に入った
ルイズは壁にもたれかかって休もうとするおじさんへと近づく
「あんた、さっきの一団と関係ありそうね…あれは一体何なの?」
「き、貴族様…え、えっとですね、今レースをやっていましてね。一着でゴールしたら賞金が出るんですよ。」
相手が少女とはいえ貴族なので、おじさんはおどおどしながら答える
「ふーん、レースねぇ……行くわよ、才人。」
「ん、何処に?」
「決まってるでしょ、そのレースの開催者に文句言ってやるのよ。もう少しで私の買い物が台無しになる所だったってね」
「…俺の事は範疇にないんだな、やっぱ。」
解っていた事だが…この様子では昼食はもう少しお預けになりそうだ
おじさんにそのレースの開催場所を詳しく教えてもらい、ずんずんとルイズは歩いていく
諦めてその後に才人は続き、シエスタも一緒になってその場所へと向かった


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