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ゼロと魔獣のような悪魔-03


ゼロと魔獣のような悪魔―3
使い魔生活の始まりー1


うっすらと夜が明け、カーテンの隙間から光が差し込んでくる。
「……」
眩しさを感じ顔をしかめてビーニャは寝返りをうつ。
光に背を向けてまた寝ようかとも考えたが、床の硬さが寝るに至るまでに意識を安らかにさせてくれない。
薄眼を開けてしばらくぼけっとしていたが、こうしていても仕方がないのでやむなく起きようと上半身を起こす。

ぴき…ごきぐき……

「あいったたた…」
硬い床の上に寝ていた所為だろう。
身体の各所が変に固まっていて少し動かすだけで痛みが走る。
それでもそのままにはしておけないので我慢しながらゆっくりと体をほぐしていく。
手足をほぐし、首をまわして寝違いを正す。
そして背伸びを

ビキッ

「!!!!!あいっつ!!」
しようと両手を上にあげて伸びをしようとした瞬間、するどい痛みがビーニャを突き抜けた。
「~~~~~~!!」
背中を擦りながらしばらく蹲り、ふと目を横にやれば天蓋付きのベッドがある。
立ち上がって見ればベッドでは自分がこうなっている元凶、桃色チビことルイズがすやすやと眠っていた。
(こっちは堅い床で寝て体中痛いってのに!)
まだ背中をさする。目尻にはうっすらと痛みによる涙も浮かんでいる。
なのにこいつは柔らかで大きなベッドで夢心地。
それを見ているうちに意識もはっきりして昨日のいざこざも思い出してきた。
「…ムカツク」
テーブルの上に置いてあるランプをつかんでベッドに近づく。
ルイズはやはり起きる気配は無い。
「すぅ……う…ん…」
部屋にうっすらと差し込む光が眩しいのか、寝返りをうって背中を見せる。
「……」
全くの無防備だ。
これで頭めがけて何回か殴りつければ簡単にコイツは死ぬだろう。
そうすればこの左手の変な文字消えてアタシは自由、こんなとこさっさとおさらばできる。
すっ、とランプを顔に振りおろせる位置に上げる。
「……?」
だが、どうにもそれから動く気がしない。
なんだかこのまま振り下ろして、その後に起こることが、ルイズがどうなるかを考えていまいそれが全く楽しめそうにないのだ。
いや、むしろ非常に不快になりそうなのだ。
(?……あれ……)
普段の自分なら躊躇せずにやれた筈。
これは一体どうしたことだろう。
しかもいつの間にか振り上げたランプを下ろしている自分がいる。
「……」
「んー……」
そんな目の前でルイズがこちらに寝返りをして顔がこっちを向く。
(…アホくさ。
 別に今じゃなくてもいいわね。
 殺そうと思えばこんだけ隙だらけならいつでも殺せそうだし)
ルイズの顔を見ているうちに昨日の契約を思い出した。
(……おぇっ)
何が悲しくてこんな奴とキスしなくてはならなかったのか、魔力が満ちてたら有無を言わさず消しとばしていた。
(でもあれは仕方なかったのよ。
 あそこで騒ぎ立てるより大人しくしているように見せかけて、後から手のひら返してやれば。うん)
自分で納得するとビーニャはランプをテーブルに戻した。
「あーあ」
ぼりぼりと頭をかきながらイスにどっかりと腰かける。
そうしてどうしたもんかなと考えた矢先、ふと自分の恰好が気になった。
白い飾り気のない地味なパンティ、上はこれまた素っ気ないキャミソール。
(そういやアタシ昨日からこのまんまよね…)
下着姿で学園のあちこちを走り回っていたのだ。
レイム様にはとても見せられないけど、人間のガキなんかに見られても恥ずかしくもなんともないし。
「とは言っても、服なんて無いわよねぇ…」
気付いた時にはこの下着姿だった。
自分の来てきた服はどこへやら、多分服の各所に仕込んである道具や武器のナイフもろとも保管されているだろう。
もし手元に戻ってきても果たして着ることはできるかどうかも不安だ。
ズタボロで血でもついているような服はご免だし。
どうしたもんかと部屋を見渡すとイスに引っ掛けてある女子用の制服が目に入った。
(あ、これコイツが脱ぎっぱなしにしてたやつ)
手にとってしげしげと眺める。
(そういえば背丈も同じぐらいだし…着れるかな?)
ごそごそとブラウスを着てボタンを留める。
悪くない。
胸が少しだけきついぐらいだ。
スカートも穿いてみるとこれも大丈夫、ウエストがきついだけ。
くるっと回ってみる。
今までこんな服は着たことがなかったのでなんだか新鮮な気分だ。
今日はこれでいこうとイスに腰掛けると扉の向こうからノックが聞こえた。
「おはようございます。お洋服をお持ちしました」
話し方から察するにおそらく小間使いの使用人だろう。
昨日走り回ってるときにそれらしいのを結構見たし。
しかしたかが服ごときでいちいち使用人参上とは良い御身分だ。さすが金に物を言わせる馬鹿な貴族のおガキ様が通う学園と言ったところか。
あ、そうだ。
受け取って良い感じの服だったらアタシが貰おう。
イスから立ち上がりドアに手をかける。
「はいはい。今開けるわよ」
ガチャリと錠を解除してドアを開けた。
「きゃあ!」
「あ?」
ドアを開ければ目の前には黒髪の女。
恰好からしてメイドというやつだろう。
だが、それがなぜか尻もちをついてこちらを見上げているのだ。
「?服もって来たんじゃないの?」
腰を抜かしているメイドに手を伸ばして掴まれという仕草をする。
「え、あ、すみません!
…ちょっとびっくりしてしまいまして」
「は?びっくりってなによ」
「扉を開けた時に制服が目に入ったので、てっきりミス・ヴァリエールかと思ったのですが…」
「顔見たらアタシでしたーってわけね。
何も転ぶほど驚くことは無いんじゃない?
 …アンタの名前は?」
つかまれと手を伸ばし、シエスタが手を取って立ち上がる。
「すみません。私の名前はシエスタと申します」
「んーシエスタね…っと」
ビーニャがシエスタを起こした時、何やら抱えている物に目をやる。
「そういや何か持って来たって?服らしいけど」
「あ、そうでした。
こちらのお洋服の修繕と洗濯が終わったのでお届けに来たんです」
そう言ってシエスタが畳まれていた服を拡げて見せる。
「あっ!その服!」
てっきりルイズの物かと思いきや目の前に現れたソレはビーニャの物だった。
ぐわしと服を掴んでまじまじと見つめる。
シエスタがびくっと驚いたようだがそれどころではない。
半ば諦めかけていた服だったので喜びも格別だ。
「ん~!良かった~!」
シエスタから奪い取るようにして受け取った服を抱きしめて頬ずりするビーニャ。
驚いていたシエスタもそのビーニャの表情を見て笑顔になる。
「思い入れのあるお洋服なんですか?」
その言葉ににぱっと笑顔を向ける。
「その通りよ!
 これは一番最初にレイム様に貰った物なんだから!」
かなりご機嫌だ。
そんなビーニャにシエスタがふとした疑問を質問してみる。
「そのレイムさんとはどのような方なんでしょうか?」
様、と呼んでいることからここに来る前のビーニャの目上の人だと想像したのだが、

「決まってるじゃない!」
シエスタに向けて大きな声で返事する。

「アタシのご主人様!
  悪魔たちを支配する存在!
  とっても強くて頭も良くて素敵な大魔王様よ!」

「…え?」

流石にこの答えにはシエスタも言葉を失いかけた。
よりにもよって「悪魔」と来たものだ。
どう反応すれば良いのか正直困ってしまう。
悪魔なんておとぎ話の中でしか聞かない存在なのに、それが彼女の元ご主人様だったと言われても。
(…!そうだ!
 きっと「悪魔みたい」な人なんだ!)
と、それはそれで問題大有りなのだがシエスタはそう自分に納得させることにした。

「ところでこの服直してくれたのってアンタ?」
「あ、どこかまずいところでもあったでしょうか?」
気に入っていた服ならば個人のこだわりの部分などもあったかもしれない、
「全然問題無し!正直言って助かったわ。
アタシ細かい裁縫とか駄目なのよー。
やっても見たんだけどうまくいかなくてさー」
(何となく分かる気が…)
心の中で思っても言わない。
「感謝するわ。
あ、そうだ!アンタのこと気に入ったから何か願い事があるなら叶えられるもの
だったら叶えてあげる!」
「いえ!そんなお礼だなんて」
両手を前にいいえ結構ですのポーズを取る。
自分にとってはお礼をされるようなことをしたつもりはないのだ。
それに何となく嫌な予感がするのだ。

「遠慮しないでいいわよー。
殺したいヤツとかいない?代わりにぶっ殺してア ゲ ル♪」
(ひぇぇ…!)
当たりである。
 「ほ、本当に大丈夫ですから!
  別にお礼なんてされるようなことはしていないので!
  お気持ちだけで十分ですから!」
 「えー」
 ビーニャは不満げだが、この申し出にはいと答えて本当の流血沙汰にでもなったりしそうでシエスタは気が気でない。
 なんとかビーニャを説得してこの場を収めようとする。
「そういうことなら仕方ないわね」
「分かっていただけましたか…」
「じゃあ今からムカツクやつを探しに行けばいいわね」
ずるっとシエスタはその場にすっ転ぶ。
駄目駄目である。
「で、ですからーっ!……ひぃ!」
「?」
シエスタが何か言おうとしたようだがその続きがない。
かわりにぶるぶる震えながら口をぱくぱくさせている。

「何 を し て い る の か し ら ?」

「うヴ!?」
まるで地獄から響くような重低音が聞こえビーニャはびくりと震え、変な声をあげて立ったまま動けなくなる。
そのまま人形のような硬い動きでゆっくりと振り返ると、

鬼、いや、鬼神がいた。
真っ赤な怒りのオーラを立ち昇らせるネグリジェを着た鬼などリィンバウムでもお目には
かかれないだろう。
人間には無い筈の角まで見える。
寝癖で髪の毛が角のように見えるのかもしれないが。
「昨日の夜に洗濯をするように言っておいたけど終わってるの?
 そしてそれは私の制服なんだけど、アンタが着てどうするのかしら」
だらだらと顔を流れる汗。
「ア…アッハッハ…ハッ…」
ひきつった笑顔を浮かべるしかない。
ふと背後でバタンと扉を閉める音が聞こえたので振り返ればシエスタがいない。
どうにも出来ないと判断して離脱したようだ、うん正しい。

「ビーニャ」
見ればルイズがにっこりとほほ笑んでいる。
さっきの鬼の面影はない。
しかし、
「何か言うことは?」
いつの間にか手に持っていた杖から火花のような物が見える。
見ただけ誰もがまずいと思う状況だ。
もはや逃げ場なし。
ビーニャはふっと笑うと精一杯の笑顔でルイズに言った。

「アンタの言うことなんて聞くわけないでしょ、バーカ」

ルイズの部屋から爆音が学園に響き渡った。




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