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ゼロと電流-07a


「幕間~ガリアの王女~」



 ガリア王都リュティスの東端にそびえる巨大かつ壮麗な宮殿ヴェルサルテイル。
 さらにその中心グラン・トロワ。
 ガリア王族が住み暮らす宮殿と、その中心かつガリアの政治中枢でもあるグラン・トロワ。
 そこから少し離れた位置に存在する小宮殿プチ・トロワへ、一人のメイジが姿を見せた。
 美男子ではあるが骨細ではない。騎士としての力強さすら感じさせるその姿は、彼の実力そのままを現していた。
 彼の名はバッソ・カステルモール。ガリア東薔薇騎士団の若き花壇騎士である。
彼は今、ガリア王女イザベラへの報告を携えて現れたところだった。

「報告いたします」

 王女への礼を作法通りに済ませ、カステルモールは報告書を手に取った。
 報告と言っても、殆どはわかり切ったことの再確認に過ぎない。プチトロワ周辺の様子、王女の予定、グラン・トロワからの連絡などである。
 カステルモールの実力ならば、ここで使い走りのようなことをしている場合ではないのだ。同年代のガリア騎士の中で屈指の使い手である彼ならば、最前線に出たとしても手柄は立て放題だろう。
 しかし、彼はイザベラの側に置かれていた。
 国王ジョゼフ直々の命令である。逆らうことは無論許されない。
長いが省略を許されない形式的な報告の途中で、イザベラは席を立つ。

「姫殿下?」
「もういい。次からは通常と変わったことだけ報告しなさい」
「しかし、この報告は通例として……」
「意味のない通例は廃止。私が今決めた、文句ある?」
「滅相もございません」

 イザベラは気が短くやや癇癪持ちではあるが、頭は決して悪くない。
 廃止するのが本当に拙いものならばそう簡単に廃止などしない。実際に無駄だと判断した上で、速攻決済しているのだ。

「それに、そろそろ完成する頃だしね」
「完成、ですか?」

 そういえば、ここに来る途中の中庭では、数人の土メイジがゴーレムを作っていた。しかも、数人かがりで一つのゴーレムを作っていた。
 聞いてみると「とにかく大きくて堅い土ゴーレムを作れ。動かなくてもいい」と命令されたらしい。
 そこで、王女の命令なのかと尋ねてみる。
 あっさりと、認められた。

「土くれのフーケが捕まったそうよ」
「トリステインでしたか。噂は聞いております」
「フーケのゴーレムを破壊したメイジがいるって話でね」

 解呪でなく、破壊。文字通り、物理的な破壊だったのだ。
 イザベラは、土くれのフーケ捕縛の顛末を印したという報告書の束を丸めて、自分の肩を叩いている。

「近くで捕縛を見てたガーゴイルからの報告さ」

 イザベラがガーゴイルと呼ぶ少女を、カステルモールは知っている。
 確かに、あの御方ならばトリステインと縁の深い場所にいらっしゃるだろう。

「挑戦しがいがあるじゃないか」

 言いながら兜を被る王女に、カステルモールは微かに眉をしかめる。
色遣いのデタラメな趣味の悪い兜には、未だに目が慣れない。
 あの兜こそ、ガリア王家に古来より伝わるマジックアイテムである、という噂もあるが眉唾物だ。そもそも、あの赤青黄色、三色の悪趣味な兜など、ガリアのどんな文献にも載っていない。本当に王家古来から伝わっているものなら何処かに記録があるはずだろう。
 そんな兜を被ったイザベラは、さらに妙な筒を小脇に抱えて早足で歩き出す。

「カステルモール、ついておいで」
「は。お供します」

 できたかい、とイザベラは中庭に顔を出す。
 土メイジを指揮していた一人が、イザベラに気付くと姿勢を正し、今し方できあがったばかりだと報告する。

「で、これが本当にフーケとやらのゴーレムより堅いんだろうね」
「土のライン十数人が総掛かりで、堅固さだけを考えて作ったものです。動きこそしませんが丈夫さだけなら随一かと」
「まあいいさ」

 イザベラは運んできた筒を持ち直す。
 その筒を見ているカステルモールの視線に気付くと、ニヤリと笑い、

「こっちには魔法はかかってないよ。異世界の科学とやらで作られたものさ」

 どうしてわかるのか、と尋ねれば、自分の被った兜を示す。

「お父様にいただいたこれが教えてくれるのさ。マシンバッハとバッハボルトの力をね」

 数分後、見事に、しかしあっさりと破壊されたゴーレムを見つめ、王女は溜息をついていた。

「こんなもんか……だったら、ザボーガーってのも大したこと無いんだろうね」

 ヘルメットをぺしぺしと叩きながら報告書に目を通すイザベラ。
 聞き慣れぬ言葉に、カステルモールは眉をひそめる。

「失礼ですが姫殿下。ザボーガーというのは、土くれのフーケを捕縛した者の名前でしょうか?」

 それだけの腕を持つメイジが一朝一夕に生まれたとは考えられない。何らかの形で名前が轟いているはずだ。あるいは、偽名か。それとも訳あって隠されていたか。
 まさか一人前ですらない学生が主であるとは、カステルモールには想像もつかない。

「いいや。捕縛した奴の、使い魔さ」
「使い魔ですと?」

 ならば、主がいる。使い魔の主が。その主が、どれほどのメイジなのか。
カステルモールの思いに応えるように、イザベラは唇を嘲笑の形に釣り上げた。

「どうでもいいのさ、糞忌々しいメイジのことなんて」

 ルーンが怪しく輝いたような気がして、カステルモールは眉をひそめる。

「ザボーガーがなんであろうとも、それがマジックアイテムである限り、このわたしに使いこなせないはずがないんだからね」



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