あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

萌え萌えゼロ大戦(略)-20


「……にわかには信じられませんわね。これは」
 学院長室でテーブルに置かれた砕けた煉瓦を前にして人差し指を額に
当てるエレオノール。その煉瓦はオスマンの言葉を信じなかった彼女に
真実を伝えるもの――厳重な『固定化』と『硬化』が施されていながら
中心を貫く一条の穴から真っ二つになっている。トリステイン王国が誇る
魔法研究の最先端を自負する王立魔法研究所、通称『アカデミー』の
主席研究員であり、そこで土魔法の研究を行っているエレオノールには、
それが常軌を逸する結果としか思えなかった。
「お前さんもアカデミーの主席を務めるならいい加減理解せんかい。
 お前さんの妹が呼び出した使い魔の持っとる銃は、スクウェアメイジが
束になってかかっても防げん。ワシが生徒を傷つけんよう約束させとらん
かったら、決闘をふっかけたミスタ・ロレーヌが蜂の巣になっとるところじゃ。
 ことがことだけに手紙には詳しく書くわけにはいかんかったが、
お前さんの妹の爆発はぐずぐずになったところの最後の一押しでしかないわい」
 そう言って溜息をつくオスマン。いったい何度目だろうか。
ヴァリエール家は決闘を受けて立った側に過ぎず、ルイズも故意に本塔を
破壊したわけではないことは理解してもらえたが、その原因を
エレオノールは頑として認めようとしなかった。

(まぁ、ワシでも実際にあの銃を見とらんかったら信じられんがの。
 しかし、妹は妹で頑強な理想家じゃが、姉も姉じゃったのぉ……
すっかり忘れとったわい)

 オスマンは内心嘆息する。それほどふがくが持つ機関短銃は、この
ハルケギニアにおいてオーバーテクノロジーなのだ。それこそ動作不良を
起こしている『破壊の杖』、そして聖地でまれに見つかる『場違いな
工芸品』が実際に稼働している状態だといえる。オスマンはエレオノールが
変な研究意識を出してふがくの機嫌を損ねないかだけを心配していた。
銃どころかふがくを解体して研究する、などと言い出したが最後、
この国はそこに住む人間ごと瓦礫の山にされかねない。
 そんなオスマンの心境を知ってか知らずか。エレオノールは小さく
溜息をつくと人差し指で眼鏡をついと持ち上げた。
「……とにかく、2、3日で戻ってくるらしい『姫殿下のお願い』で
出払っている妹が戻ってから直接話を聞くことにします。それまでここに
滞在させてもらいたいと思いますが……妹の部屋を使わせてもらっても?」
「まぁ、ミス・ヴァリエールの部屋はお前さんにとっては懐かしい部屋
じゃろうがの。
 姫殿下が使っていた貴賓室を使うとええじゃろう。今のお前さんは
ラ・ヴァリエール公爵の名代。誰も文句は言わんよ」
「ありがとうございます」
「世話には姫殿下からもご指名を受けたメイドをつけよう。お前さんの
妹とも懇意にしておるからの。暇があれば話を聞いてみるのもええじゃろ」
「おちびと……?」
 オスマンからその話を聞いたエレオノールは驚きの表情を隠せなかった。
彼女の妹、ルイズが平民と親しくするなど、ラ・ヴァリエール領にいた
ときには考えられなかったからだった。


 それから時をさかのぼり、払暁のニューカッスル――

 突如として城に舞い降りた3人に、城内は騒然となった。たちまちルイズたちは
杖を構えるアルビオン兵に取り囲まれ、その騒動は一人の年老いたメイジが
彼女たちの前に姿を現すまで続いた。

「……トリステイン王国よりの密使、とは貴殿らのことか?」
 ウェールズ皇太子の侍従を務めるパリーと名乗った老メイジは、ルイズの
言葉の真贋を確かめるような視線で3人を見る。
「証拠を!証拠をお見せします。
 ……これは、アンリエッタ姫殿下からお預かりした『水のルビー』です」
 そう言って、ルイズは制服の内ポケットから透き通った水色に輝く
大粒の宝石がついた指輪を取り出す。『水のルビー』を見たパリーの顔が
一変し、ルイズたちを包囲していた兵を直ちに下がらせた。
「戦時故、大変失礼を致しました。大使殿。
 皇太子殿下は現在不在にて、しばしお待ちいただくことになります。
ささ、こちらへ」
 礼を失したことを詫びるように深々と頭を下げるパリー。パリーに
案内されるまま歩を進めるルイズとギーシュ。しかし、ふがくがさっきの
騒動の最中から全く動かないことにルイズがようやく気づく。
「……ふがく?」
「……全部躱したと思っていたんだけど……一発掠ってたみたいね」
 ふがくがそう言うと、かしゃんと乾いた音を立てて金の額飾りが石の
床に落ちる。頬を伝う赤いオイル。がくりと膝をつくふがくに、ルイズたち
のみならずパリーたちも騒然となった。
「水メイジを!急ぐのだ!」


「……それで?大使殿は今どうしている?」
「大使殿を運んできた『フガク』というガーゴイルの側に。
 いやはや。人間そっくりなガーゴイルでして。『癒し』の魔法がある
程度は効果を及ぼしたようで出血……と言えばよいのでしょうか?
とにかく損傷も回復しつつあるようです」
 ニューカッスル城郭直下の秘密洞窟港より城内へ続く通路の途上。
侍従のパリーからウェールズ皇太子が不在中の状況について説明を受ける。
パリーの話から、東の空で自身が見たあの不可思議な流星群がその
『フガク』であると確信したウェールズ皇太子は、アンリエッタ姫からの
密書を携えたルイズたちについて考えを巡らす。
「トリステイン魔法学院からラ・ロシェール上空を経由してニューカッスルまでを
一晩で飛ぶ人間そっくりなガーゴイル、か。大使殿は確かにラ・ヴァリエール
公爵家の者だと?」
「はい。それにグラモン元帥のご子息も。密書の内容は殿下にお会いした
ときに明かす、とのことで」
「分かった。すぐに会おう」


「……もう大丈夫だって!掠ったのだってちょっと油断してただけだし!」
 頭に包帯を巻かれ強制的に椅子に座らされたふがくが抗議の声を上げる。
なお、翼は治療を受ける際に外している。オイルの流出自体は自動漏洩
防止装置の働きですぐに止まったが、ルイズたちにはほぼ同時にかけられた
治癒魔法の効果だと思われていた。
「し、心配したんだからね!いきなり血を流して膝をつくから……椅子
じゃなくてしばらく横になってなさい!」
「だからそんな必要ないってば!」
 言い合う二人。そんな二人に挟まれておたおたするしかないギーシュも、
ノックの後に部屋に入ってきた二人の人物の姿に気づかなかった。
「これはまた元気なことだな」
 唐突に聞こえたその声に背を向けていたルイズが振り返る。そこには
短銃を収めた革製のホルスターと長剣としての機能を併せ持った杖を佩き、
青を基調に金ボタンと金糸で飾られたアルビオン空軍の士官服を着た
金髪の青年と、先ほどの老メイジ、パリーがいた。

「遠路はるばるようこそ。ノックはしたが気づかなかったようでね。
入らせてもらった」
 そう言ってさわやかに笑う青年。整った顔立ちに青い瞳が涼風のような
印象を与える。ルイズは一瞬誰かと思ったが、今ここに来るべき人間に
思い当たって小さくあっと声を上げた。
「勝手に入った非礼を詫びよう。
 私は……アルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官……と言っても
本国艦隊はすでに戦列艦『イーグル』号しか存在しない、無力な艦隊
だがね。まぁ、その肩書きよりこちらの方が通りがいいだろう」
 そこまで言って、青年は一度言葉を切る。そして威風堂々、名乗った。
「アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」
 ギーシュは口をあんぐりと開けた。ふがくは礼を失しない程度に興味
深そうに皇太子を見つめる。
 ウェールズ皇太子は、にっこりと魅力的な笑みを浮かべると、
ルイズたちに席を勧めた。
「改めて、アルビオン王国へようこそ。大使殿。さて、御用の向き伺おうか」
 唐突のことに心の準備ができていなかったルイズ。しかし、すぐに
気を取り直して制服の胸ポケットからアンリエッタ姫の手紙を取り出すと、
恭しくウェールズ皇太子に近づき、一礼をして手紙を手渡した。
 ウェールズ皇太子は、愛しそうにその手紙を見つめると、封蝋に接吻する。
それから慎重に封を開き、中の便箋を取り出して読み始めた。
 ウェールズ皇太子はしばし真剣な顔で手紙を読み、そのうちに顔を上げた。
「姫は結婚するのか?あの、愛らしいアンリエッタが。私の可愛い……従妹は」
「そ……そのとおりです。皇太子さま」
 ルイズの肯定の言葉を聞き、再びウェールズ皇太子は手紙に視線を落とす。
最後の一行まで読み終えると、ウェールズ皇太子はルイズたちに微笑んだ。
「了解した。姫は、以前渡した手紙を返して欲しいとこの私に告げている。
 何より大切な、姫からの手紙だが、姫の望みは私の望みだ。そのように
しよう」
 その言葉にルイズの顔が輝いた。
「手紙は私の部屋にある。一緒に来てもらいたい」

 ルイズたちは、ウェールズ皇太子に付き従って城内の彼の居室へと
向かった。城の一番高い天守の一角にあるウェールズ皇太子の居室は、
敗走する現状を反映してか、王子の部屋とは思えない質素な部屋だった。
 飾りの一つもない木製の粗末なベッドに、古ぼけた椅子と机が一組。
壁に飾られた、戦の様子を描いたタペストリーが、ほぼ唯一の装飾品とも
いえた部屋――それはルイズたちに『戦に負けるということ』の事実を
何よりも雄弁に語りかけている。
 ウェールズ皇太子は椅子に腰掛けると、古ぼけた机の引き出しを開いた。
そこに入っていたのは、この場には似つかわしくないとも思える宝石が
ちりばめられた小箱。ウェールズ皇太子は首にかけられたネックレスを
外し、小さな鍵になっているその先端部を小箱の鍵穴に差し込んだ。
 開かれた蓋の内側には、アンリエッタ姫の肖像画が描かれている。
今よりも少女らしさが残るその絵をルイズたちが覗き込んでいることに
気づいたウェールズ皇太子は、はにかんで言う。
「宝箱でね」
 箱の中には一通の手紙が入っていた。それがアンリエッタ姫のもので
あるらしい。ウェールズ皇太子はそれを取りだし、愛しそうに接吻する。
「アンリエッタ……」
 ルイズはその様子に胸が痛くなる。果たしてそれを受け取って良いもの
なのだろうか……いや、アンリエッタ姫があの密書に記したことは、
もっと他にあったのではないか?ルイズの思いをよそに、ウェールズ
皇太子は手紙をルイズに手渡す。

「さ……これが以前姫からいただいた手紙だ。このとおり、確かに返却したぞ」
「ありがとうございます」
 ルイズは深々と頭を下げると、その手紙を受け取る。

(すごいボロボロ。何度も読まれたのね……)

 トリステイン王家の百合の紋章が記されたその封筒は、何度も折り
返された上質な紙が傷み丁重に扱わないと破れてしまいそうだ。手紙を
丁寧に制服の内ポケットにしまい込んだルイズに、ウェールズ皇太子は
優しく語りかける。
「明日の朝、非戦闘員を乗せた『イーグル』号がここを出港する。それに
乗ってトリステインへ帰りなさい」
「あの、殿下……。王軍に勝ち目はないのですか?」
 ルイズは躊躇うように問うた。至極あっさりとウェールズ皇太子は答える。
「ないよ。我が軍は三百。敵軍は五万。万に一つの可能性もあり得ない。
 我々にできることは……はてさて、勇敢な死に様を連中に見せること
だけだな。討ち死にするときには真っ先に死ぬつもりだよ」
 はたでやりとりを見ていたふがくは溜息をついた。もはや抵抗ですら
なく、塗りつぶされるだけの最悪の玉砕戦。万歳突撃を敢行する指揮官で
あるウェールズ皇太子にいささかも取り乱した風がないのは、すでに
覚悟を決めているということ。非戦闘員にも玉砕を命じないだけ立派ね
……そう考えるふがくの横で、ルイズが深々と頭を垂れて一礼する。
言いたいことがあるらしい。
「畏れながら申し上げます!
 何故……負けと分かっているのに戦うのですか!?
 姫様の手紙には亡命してほしいと書かれているはず。姫様がご自分の
愛した人を見捨てるわけがございません!」
 ウェールズ皇太子は微笑んだ。ルイズが言いたいことを察したからだ。
「きみは……従妹のアンリエッタと、この私が恋仲……だと?」
 ルイズは頷く。
「そう想像いたしました。とんだご無礼を、お許し下さい」
 ウェールズ皇太子は額に手を当て、言おうか言うまいか、少し悩んだ
仕草をする。そして……静かに言った。
「愛し合っていた。そう。あの手紙はきみが想像しているとおりのものさ。
 確かにアンリエッタが手紙で知らせてきたように、この恋文がゲルマニアの
皇室に渡っては、まずいことになる。なにせ、彼女は始祖ブリミルの名に
おいて、永久の愛を私に誓っているのだからね。
 知ってのとおり、始祖に誓う愛は、婚姻の際の誓いでなければならない。
この手紙が白日の下にさらされたならば、彼女は重婚の罪を犯すことに
なってしまうだろう。ゲルマニアの皇帝からは、重婚を犯した姫との婚約は
取り消され、同盟相成らず……
 トリステインは一国にて、あの恐るべき貴族派に立ち向かわなければ
なるまい」
 ウェールズ皇太子は窓から外を見る。そこに見えるのはニューカッスル城と
大方の疎開も終わり人気の絶えた城下の街、そしてそれらを取り囲む城郭と、
そのすべてを包囲する叛徒の軍――だが、ルイズにはその向こうに
ウェールズ皇太子が別な姿を見ていると確信していた。
「……だが問題ないよ。始祖ブリミルの名において、永久の愛を私に
誓ったのはずいぶん前のこと。
 そう。昔の話さ」
「殿下、亡命なされませ!トリステインに亡命なされませ!」
 熱っぽい口調でウェールズ皇太子にそう言ったルイズ。そこにギーシュが
よってきて、すっとルイズの肩に手を置く。しかし、ルイズの剣幕は
収まらない。その様子に、ウェールズ皇太子は笑いながら言った。

「――それはできんよ。
 それに、そのようなことは、一行も書かれていない。
 私は王族だ。嘘はつかぬ。姫と、私の名誉に誓って言うが、ただの
一行たりとも、私に亡命を勧めるような文句は書かれていない。
 そして、アンリエッタは王女だ。自分の都合を、国の大事に優先させる
わけがない」
 その口調には苦しみがにじみ出ている。その口ぶりから、ルイズの
指摘が当たっていたことがうかがえた。ウェールズ皇太子は、そっと
ルイズの肩を叩く。
「きみは、正直な女の子だな。ラ・ヴァリエール嬢。正直で、まっすぐで、
いい目をしている。
 一つ忠告しよう。そのように正直では大使は務まらぬよ。しっかり
しなさい」
 ウェールズ皇太子は微笑んでいる。白い歯がこぼれる、さわやかで
魅力的な笑み――アンリエッタ姫が心奪われた笑みだった。
「しかしながら、亡国への大使としては適任かもしれぬ。明日にも滅ぶ
政府は誰より正直だからね。何故なら、もはや名誉以外に守るものが
ないのだから」
 それから机の上に置かれた、ある意味ここには不似合いなほど精巧に
作られた水が張られた盆の上に載った針を見つめる。形からそれは時計
であるとふがくにも分かった。
「そろそろパーティの時間だ。きみたちは、我らが王国が迎える最後の
客だ。是非とも出席してほしい。
 さあ、広間へ案内しよう」
 そう言って扉を開けるウェールズ皇太子。だが、ルイズは一瞬ふがくに
目を向けた後、きっぱりと言った。
「……叛徒を退ければ、亡命していただけますか?」
「ルイズ?」
 ギーシュがそう口にするやいなや、ルイズは今度はしっかりとふがくに
向かい合う。
「ふがく、命令……」
「却下」
「な、どうして!」
 命令を途中で却下したふがくに憤るルイズ。だが、ふがくはそれには
お構いなしに言い切る。
「アンタね、ここで私たちが武力介入したらどうなると思っているの?
それも分からないの?」
「そうだよ、ルイズ。僕たちは、ここにいないことになっている人間なんだ。
まさかラ・ヴァリエールやグラモンの旗をここで掲げるわけにはいかないんだよ?」
 ギーシュもふがくと同様に、ルイズが何を言いたいのか理解していた。
 確かにふがくならば、5万の敵兵を焼き払うこともできるだろう。
だが、それは同時にトリステイン王国のアルビオン王国内乱への介入を
世間に知らしめることにもなる。ニューカッスルを包囲する軍勢が貴族派
――『レコン・キスタ』の全勢力であるはずがない。そして、それは
ゲルマニアとの同盟を果たさぬまま、トリステイン一国での宣戦布告に
他ならないのだ。しかし、それでもルイズは食い下がる。
「なら……すべて焼き払えばいいじゃない!敵兵も、あの艦隊も!報告
すらできないように!
 ふがく!」
 そう言ってルイズはふがくの千早の袖にしがみつく。顔を伏せ、その
声は涙混じりになっている。ふがくもルイズの言いたいことは分からない
でもない。だが、それでも実行してはならない命令はあるのだ。ふがくが
それを告げようとしたとき、扉の方から別の声がした。
「いいんじゃない?それ。私も手伝ってあ・げ・る」
 ルイズが振り返る。その視線の先には……
「ル、ルーデル!?」
 そこには――鋼の翼を背負い漆黒の軍服に身を包んだドイツの鋼の
乙女、急降下爆撃機Ju-87スツーカのルーデルが、にこやかに手を振っていた。



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