あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのロリカード-60

 ビダーシャルが風石を発動させようとした一瞬――――――。
眼前にルイズの姿が飛び込んでいた。まるでまばたきの合間に割り込んできたかのように。
雪風の領域から一歩踏み出したと思ったら、ジョゼフの加速が如き速度で。
ルイズはその右手で握った剣の間合いに置いている。

 間断なくサーベルの刃が抜き打たれ、反射の障壁を切り裂く。
同時に風石によってビダーシャルは空へと飛び上がった。

「ッッ・・・・・・!?」
冷や汗が全身に流れる感覚を覚え、一人空中から見下ろす。
ルイズの放ったサーベルは、ビダーシャルの首があった位置でピタリと止められていた。
一撃で決めるつもりだった攻撃を回避されたことに、ルイズは肩を竦める。
「少し話したいことがあるんだけど?」

 ビダーシャルの目が細まる。
サーベルを寸止めたことから見る限り、本来ならばこちらの命を握った状態で話したかったことなのだろう。
「・・・・・・良かろう」
それでも聞くだけ損はないというものであった。
「ありがとう、それじゃ少し離れましょう」


 フリゲート艦の後方船尾、タバサとジョゼフがいる前方船首から離れた位置。
タバサの巨大に渦巻くアイス・ストームの余風を背中に感じながら・・・・・・。
宙に浮いたまま見下ろすビダーシャルと、見上げるルイズの形で話を始める。

「・・・・・・して、我から先手を取ろうとしてまで、交渉したかったこととは?」
「えぇ、改まったから言うけど・・・・・・。私が勝ったら、もうこんなことはやめて欲しいの」
「こんなこと、とは?」
「あの狂王ジョゼフに力を貸すような真似をすることよ。交渉するなら私達にして」
「もはや争わずとも、我は帰るつもりだ。それにもはやお前たちと交渉する意義も少ない」  
 人間達は互いを喰い潰し疲弊した。当分は聖戦も発動されないだろう。
本来の予定とは食い違ったものの、結果論だが上出来であった。

「いいえ、意義はあるわ。これからもエルフ種族とは争いたくないもの」
「なに?」
「ティファニアを知っているでしょ?ハーフエルフで、私の友達でもあるわ。
 彼女と接して・・・・・・そしてあなたとこうして話していてもわかる。
 言葉がある、こうして話せる、意思疎通が出来る。人間とエルフは解り合える」


 ビダーシャルは「何を馬鹿な」と呆れる。
そんな簡単に理解し合えるなら、長きに渡る戦の歴史はない。
世迷言とまでは言わないが、それでも夢物語と言って良いもの。

「確かに確執はある。けれど諦める理由にはならないわ。時間は掛かるかも知れないけど・・・・・・」
「・・・・・・その割には、いきなり攻撃してきたようだが?」
友好的な申し出をするにも拘わらず、最初に攻撃したことが解せない。

「まずは対等に見て欲しかったからよ。エルフが私達人間より強大で、下に見ているのは知ってるわ」
「そんなことで・・・・・・?」
「わかりやすいでしょ?」

(単純だな・・・・・・)
至極明快。確かに人間に対してエルフは下に見ている。
強さも文明も叡智も、人間のそれよりも上だという自負がある。
同じ種族同士で争う愚かな人間達を、蛮族と呼び習わしているのも偏見と言えるだろう。
そんな中で、せめて強さの一点で対等以上であると。人間の優位性を示したかったということ。

 勝てば官軍。勝者こそが正義。
敵対している勢力同士、相対した時点で既に戦闘は始まっていると言える。
不意の初撃でもそれを卑怯とは言えず、そんな方法でも勝ちを示したいという理屈は理解できる。


「本当は初手で決めて、勢いのままに認めてもらいたかったのだけど・・・・・・。流石はエルフね」
ビダーシャルは押し黙る。回避出来たのはたまたまだった。
さっさと退散しようとして、風石を作動させたタイミングが重なっただけ。
都合良く間に合ったに過ぎない。

「本当に・・・・・・おまえ達は好戦的な種族だ。我らから見れば愚か極まりない」
「・・・・・・そうね、確かに愚かかも知れない。それでも少しずつ前に進むわ」
絶対の意志を瞳に秘めたルイズは、愚直にビダーシャルを見つめ続ける。
それは恐れも脅えもなく、ただ真っ直ぐな感情。

「それにね、私達は強行手段に出ることも可能なのよ。なにせこっちにはアーカードがいる。
 貴方の作ったヨルムンガントをも片手で捻った・・・・・・、最凶の吸血鬼というジョーカーがある。
 そんな切り札をチラつかせることも出来るけれど、それはしないわ。それでは対等に見てもらえない」

 ビダーシャルの顔が歪む。
使わないと言いつつも、それを言った時点で既に使っていることとあまり変わらない。
こちら側からすれば、鬼札を切らずとも、伏せずとも、相手が持っているという事実だけで充分過ぎる脅威。

「とりあえず・・・・・・仕切り直しましょうか。私が貴方に勝ったら改めて、互いが互いを尊重する対等な交渉を願うわ」
ルイズは「どう?」といった表情でビダーシャルの回答を待った。


 ビダーシャルは考える。
少し前であれば「話にならない」と突っぱね、一刀に切り捨てていたかも知れない。
だが今は少し違う。ジョゼフと交渉したこと、その結果、それまでの過程。
そして人間と関わったことによる、己自身の心境の変化。
現在の戦力状況も含め、様々な要素がビダーシャルの心を動かす。

 虚無という悪魔の力を超えかねない悪魔を使役しながらも、それに頼らず突貫してきた少女。
その実力で以て実際にこの場に立ち、エルフである自分を前にして一歩も引かず。
あまつさえ交渉の為に・・・・・・対等に見てもらう為に闘いを提案し、微塵にも負ける気を見せていない少女。

「あっ、もちろん殺し合いじゃないから」
ルイズは付け足す。その言葉にビダーシャルは笑いを零した。
「フッ・・・・・・ははっ」
「・・・・・・?私、何かおかしなこと言った?」
殺してしまっては交渉どころではないので、ルイズからすれば当たり前の前提条件。

 だがビダーシャルには、それがおかしかった。
宿敵同士たる人間とエルフが相対すれば、そこにあるのは血戦である。
こちらが殺さないように加減することはあっても、その逆はまず無い。
人間はエルフを前にして、逃げるか若しくは決死の覚悟で攻撃して返り討ちにあうのが常。
改めて正面からの闘争を望もうとする気概だけでも、十分評価に値するというものだが・・・・・・。
それをさらに少女は互いに殺さないように戦うつもりなのが、ビダーシャルには酷くおかしかった。

「・・・・・・良かろう。但し――――――」
ビダーシャルはルイズの覚悟を確かめる。
「なに?」
「――――――我が勝ったら、そのままお前を捕えさせてもらう」
対等と言うからには、当然こちらの提案にも飲んでもらうのが筋である。
ここまで来ておいて我が身可愛さで退くとも思えないが、それでもしっかりと聞きたかった。

「成立ね」
ただ一言。それでルイズの覚悟も知れた。
負けるつもりは無いが、仮に負けたとしても対等な交渉。それも悪くない。
勝てば虚無の担い手の一人を確保し、悪魔の力の復活を防げる。
捕えた場合のアーカードの出方が懸念事項だが、生かして捕えておく以上はいくらでも交渉材料にできる。
こちらのリスクは、精々が闘争による命の危険。それも死合ではなく試合だからそこまで憂慮すべきものでもない。

   そしてルイズとビダーシャルは、同時に呪文を紡いだ。


◇†


 冷やされた空気が裂くように渦巻き、術者を中心として拡がりながら巨大に上昇していく。
スクウェアメイジであるタバサの魔力が込められたアイス・ストーム。
それは一種の怪物のように唸りをあげ、空の上で地震が起こってると錯覚するかの如く周囲を震わせる。

(なるほど、このまま広がり続ければ・・・・・・)
ジョゼフはタバサの狙いをすぐに察する。
このまま氷嵐が拡大し続ければ、狭いフリゲート艦の上では逃げ場がない。
触れただけで切り裂かれるだろう鋭き氷粒は、そのまま加速への対策になる。
間隙を塗り潰すように暴れる氷嵐には、加速であろうとも入り込むことは出来ない。

「だが所詮は、アーハンブラ城での焼き直しだぞ・・・・・・シャルロット」
聞こえないとわかっていながら、ジョゼフは語りかける。
前回はジョゼフの周囲に氷嵐を展開させて狭めていき、今回はタバサの周囲に氷嵐を展開させて拡げている。
対象を変えて範囲効果のベクトルが逆に向いているだけで、その本質・・・・・・狙いは変わっていない。

 ジョゼフは杖を構え詠唱する。
氷嵐が広がる速度はかなりのもの。十秒と掛からずに氷嵐に巻き込まれるだろう。
しかしエクスプロージョンの詠唱の方が早い。

(残念だよ・・・・・・)
その一言に尽きた。
再戦に際し、大した考えもなく挑んできたことにジョゼフは溜息を吐く。
範囲を縮小ではなく拡大している故に、魔力消費はアーハンブラ城の比ではないだろう。
さらには術者自身を中心として展開している為に、自由に動き回ることも出来ない。
復讐と激情に駆られ、思考能力を失っているのか。
  (所詮はこんなものか・・・・・・)
炎のように燃え上がった感情が、一気に氷点下まで落ちた心地。
一言、つまらない。ジョゼフは無感情に杖を振り下ろし、エクスプロージョンを開放する。

 その瞬間。悪寒を感じた。
獣のように鋭くなったジョゼフの感覚が何かを捉える。
エクスプロージョンを放つことよりも、加速での退避を優先した。
時間を置き去りにするかのように、肉体と精神が世界から分離する。
そしてジョゼフは、頬から流れ出ている一筋の血に気付く。
いつの間にか己の周囲には、無数の氷矢が展開していた。


 これ見よがしなアイス・ストームではなく、音も無く囲んだウィンディ・アイシクルこそが本命。
ジョゼフの正面から見える位置には、氷嵐の中で作り出して氷矢を射出。
視界の範囲外である背後に展開された氷矢は、単純に吹き荒ぶ風のおかげで密かに構築されたのも気付けない。
そしてジョゼフがエクスプロージョンを使う隙を狙い、氷矢は一斉に襲い掛かったのだった。

 よくよく見れば、心なしか規模が小さくなった氷嵐の壁。
そして空間各所に配置してある殺意が満ち込められた氷の矢。
ほんの数瞬でも加速の発動が遅れていれば、串刺しになっていたことだろう。
死にはしないまでも、重傷は免れなかった。
加速は確かに強力な虚無魔法だが、加速を開始する前の反射神経まで加速されるわけではない。
故に使う前に潰す。虚を突いて殺す。当然の狙い。

 ジョゼフは心の中で堪え切れず失笑した。
つまらない?とんでもない。
再戦にあたって大した考えなしでやって来た?心から詫びよう。          ・・・・・
殺気を振り撒く冷眼すらも布石。激情に駆られ、復讐にのみ心を傾け支配されていると思わされた。

 ジョゼフは周囲の氷矢を、ゆっくりと手でどかしながら安全な空間を作り出す。
次いで加速の世界から解き放たれると、軌道を変えられた氷矢は虚空を貫いた。  

 氷嵐が少しずつ晴れて消えていく。
ジョゼフは新たな攻撃に一応の注意を払いながら、消えゆく氷嵐を眺めつつ考える。
二つの魔法を同時に使うことは、不可能ではないが至難。
ウィンディ・アイシクルを使った時点で、アイス・ストームはそれ以上の拡大は停止。
巨大な氷嵐と無数の氷矢で、相当な魔力を使った筈。
まだ若くスクウェアになったばかりのシャルロットからすれば、打ち止めと言っても良いほどだろう。

 命中すれば終わりであるし、もし回避されれば、当然警戒されてそれ以上の追撃は難しい。
故にこそ、先の一撃に全身全霊を懸けたに違いない。恐らくは相討ちも辞さない覚悟だったのだろう。
何故ならこちらのエクスプロージョンを、シャルロットが防ぐ手段はないからである。
よってまんまと氷矢を回避されたシャルロットに残されるのは、精々が逃げるだけ。

 タバサを逃がさない為に、氷嵐が晴れる瞬間にジョゼフは加速で一気に近付く。
エクスプロージョンで消し飛ばしても良いが、それでは味気がない。
姪の健闘を讃え、敗北を認識させた上で、この手で殺してやるのがせめてもの慈悲。

 獲物を狙う肉食獣のように姿勢を低く様子を窺っていたタバサの首筋に、いつの間にかナイフを当てられていた。
「・・・・・・ッ!?」
ひんやりとした刃の冷たさにタバサは目を見開き、ジョゼフを見上げる。
伯父と姪の視線が絡み合う。ジョゼフは笑い、タバサは睨む。
「良かったぞ、シャルロット。だが一歩足りなかった。そしてもう次のチャンスはない」
「・・・・・・」
タバサはただ押し黙ったまま、視線だけで射殺さんとするほどジョゼフを睨み続ける。  

「さらばだ、シャルロット。これで・・・・・・終わりだ」
首に突きつけたナイフをひく瞬間、タバサが口を開くのを見てジョゼフは止める。

「そのセリフはやめた方がいい。大抵は"これで終わり"じゃない」
相手が勝利を確信した時にこそ、隙が生まれる。
数多くの死闘を経験し、多様な修羅場を潜り、命の懸かった窮地を乗り越えてきた。
そんなタバサだからこその言葉。

 最後に恨み言の一つくらい聞いてやろうと思って止めた手を、ジョゼフは再び動かす。
タバサの言葉を一笑に付し、大振りのナイフは少女の・・・・・・か細い首をあっさりと落とした。


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