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BRAVEMAGEルイズ伝第一章その3

第一章~旅立ち~

その3 キュルケおねえさま


「……あ~~~~~~っ!よく寝たぜ……」
 寝袋から這い出て、見慣れない部屋だなとあたりを見回す。
そうか、召喚されたんだったなと思い直し目をパッチリとさせる。
召喚主であるルイズはまだぐうぐうと寝こけていた。ムサシは早起きである。

「おーい、ルイズ。朝だゼ」
「んんぅ~……」
 ねぼすけのご主人に起きる兆しは見られない。
持ち物の中にあるすっきりミントSでも使えばたちどころに目覚めるだろう。
だがこの世界では手に入らない品だろうし、第一もったいない。よって却下。
 かつてヒゲじいとレバンからもらったムサシの腕時計を見てみる。
たしか、起こせと言われた時間にはまだ早い。
それにムサシのそばには昨晩脱ぎ捨てたルイズの下着を含めた衣服類が。

「やれやれ、村長の仕事だってこんなに退屈じゃなかったぜ……しょーがねえ、さっさとすませるぜ」
 かつてのオサメル村長代理を務めたムサシでも、洗濯をやることになるとは考えていなかった。
溜息まじりに衣類を持って部屋のドアを開ける。

「って言っても……、おいらこの建物のことなーんも知らねえしなぁ」
 だだっ広い廊下を行くムサシには生徒や教師の姿は見えない。
まだ早朝なのだ、無理もなかった。
どうしたものかと歩いていると、目前によたよたとなにやら大きなカゴを持った人が歩いているのが見えた。
所謂お手伝いさんであろうか、そういえばヤクイニックにいたときには見かけなかったなと思い出す。

「おうい、おはよう!」
「きゃっ!」
 後ろから声をかけたものだから、びっくりしたのか持っていた洗濯カゴを取り落としそうになる。
すんでのところでムサシが支えて落下を免れた。

「おっと、すまねえ!びっくりさせちまったみたいだな」
「あ、いえ…あれ、子供……?」
 きょとんとしたどんぐり眼でメイドはムサシを見つめた。
 わずかにそばかすが散ってはいるが、人当たりの良さそうな顔立ちをしている。
奉公人の服がよく似合い、ルイズとはまた違った健康的な体形。
座り込んだまま、やがて合点が行ったようにああ、と頷いた。

「あなたが、ミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう坊や?」
「へえ、もうおいらのこと知ってんのかい」
「噂になってたわ、召喚の魔法で人間の子供を喚んだって……」
「子供じゃねえぜ。おいらはムサシ!よろしくな!」
「ムサシくん、なんだか不思議な名前。私はシエスタっていうの、よろしくね」
 ムサシは歳の割にゴツゴツした手を差出し、にっと白い歯を見せて笑う。
シエスタはその邪気の無い笑顔に同じく笑顔と握手で答えた。

「シエスタ、悪いけど洗濯はどこでやればいいのか教えてくれないかい?」
「あら、どうしたの?」
「ルイズの服を洗うのも、使い魔の仕事として当たり前なんだとよ」
「まあ」
 シエスタがくすくす笑って、ムサシ制服を持つ手に手を重ねた。
ムサシは怪訝そうな顔で見上げる。

「使い魔が洗濯するなんて、普通ないことなのよ?」
「そうなのか?」
「ええ、それは私たちの仕事だもの……」
「なんだいルイズのやつ、適当言いやがったな」
 ぶつくさ文句を垂れて、洗濯物をシエスタに委ねる。
受け取った制服を大きなカゴの上に積みながら、シエスタはムサシの頭に手を置いた。

「だめよ、貴族様にそんな事を言ったら鞭で打たれちゃうわ」
「はン、ワケもなく威張るヤツに頭下げるなんておいら好かないぜ」
「うふふ、ムサシくんマルトーさんみたい」
「うん?誰だいそりゃあ」
「料理長さんよ、私たちには優しいんだけどね……」
 話ながら洗濯カゴをよいしょと持ち上げようとしたシエスタの腕から、不意に重みが消えた。
ムサシが自分の身体ほどもあるそれを、軽々と持ち上げている。

「おっと、力仕事ならおいらの出番だぜ」
「わ、力持ちなのねムサシくん。じゃあ、洗濯は私がやってあげるから、お願いできるかな」
「おう、任せときな!それでマルトーさんってのはどういう人なんだい?」
 ひとしきり話し込みながら、洗濯場まで案内してもらう。
ついでに、この学院の地理をある程度まで教えてもらった。
おかげで真っ直ぐルイズの部屋に帰れそうである。

「手伝ってくれてありがとう、洗濯物は私がミス・ヴァリエールの部屋に返しておくから」
「何から何まですまねえ、ありがとうな!」
 手を振って駆けて行くムサシを見て、シエスタは微笑んだ。
故郷に残した幼い兄弟たちをどこか思い出させるその溌剌さが、シエスタにはうれしかった。
にこやかに手を振り返し、さあ洗濯を頑張ろうと気合を入れなおした。

「お、ここだここ。ルイズー……なんだ、まだ寝てらあ」
 ムサシは、かつてヒゲじい達からもらった腕時計を見る。
そろそろ朝食の時間が差し迫っていた。

「まったくしょうがねえ」
 水の巻でもあれば水をぶっかてやれたのだが、生憎ここにレイガンドは無い。
ムサシはルイズの眠るベッドの縁に手をかけた。

「ぇいやっ!」
 ムサシはその剛力を以てルイズの眠るベッドを持ち上げた。
さらに真上にポーンと投げる、まるでお手玉だ。
当然ベッドの上のルイズは落下の浮遊感を味わうこととなる。

「ふにゃっ!」
「おう、起きたかい?」
「なななな、ななな」
「なんだい、まだ寝ぼけてんのか?」
「起きた!起きたからやめて!降ろせーーーーっ!」
 ひいはあと荒い呼吸をしつつ地面に降り立ったベッドから転げ落ちるように退く。
キッ、と睨みつけるが涼しい顔で「おはよう」とムサシは言った。
睨みつけようとしたが時間を確認すると確かに朝食の時間がそろそろ近い。
朝っぱらからスリリングな体験をしたルイズは遅れたらどうするの、と怒鳴りかける。
しかしそんな時間も惜しい、慌てて身支度を始めた。

「ああもう急がなきゃ、ほら制服を出して」
「こいつか?」
「ほら着せて。モタモタしないの」
「おいおい、おいら女の服なんか着せたこと無いぜ」
「ああもう自分で着る!役立たずー!」
「朝っぱらからうるせえなあ」
 まったく何よこの使い魔は、生意気ばっかりで何も役に立ちゃしない。
使い魔になってくれるって言ったときは少しは嬉しかったけど、役に立たないんだったら意味が無い。
やっぱりこいつを使い魔にしたのは失敗だったかしら。

「はぁ……」
「溜息なんて景気が悪いぜ」
「うるさいわよ」
 支度を済ませたルイズは文句を垂れつつムサシを連れて廊下に出た。
そこで、同じく隣室から出てきた赤毛の女性と鉢合わせになる。

「おはよう、ルイズ」
「……おはよう、キュルケ」
「で、でけぇ」
 でっかいふたご山がちょうど頭の上くらいの高さにそびえていた。
ムサシはキュルケの顔を確認するために2、3歩下がらざるを得なかった。
無論この"でけぇ"には身長、体格その他諸々を含めて言った言葉だったのだが、キュルケはどこか勝ち誇った笑いを浮かべる。

「それ、あなたの使い魔?」
「そうよ」
 どこか敵意の篭もったやり取りにムサシはなんとなく察する。
この2人はコジローにとっての自分みたいなものなのだろう、と。
ちなみに、敵対心が一方だけひどく強いというのも合致してある意味的を射ている。
やがてルイズとムサシを見比べたキュルケが笑い出した。

「あっはは、使い魔に子供を召喚するなんて。あなたらしいわルイズ」
「うるさいわね」
「私はね、すっごいのを喚んだのよ。もちろん、誰かさんと違って一発で成功したわ」
「あらそう」
 嫌悪感を隠しもしない表情で存在な返答を返すルイズに構わずキュルケは一方的に話し続ける。
手招きをすると、部屋から大きなトカゲが現れた。

「使い魔にするならやっぱりこういうのがいいわよねーフレイムー」
 大きな身体に真っ赤な皮膚、そして燃え盛る尾の先端。
ムサシは火トカゲを始めて見るが、大きさと火以外は案外普通だ。
王国でおかしな生き物や兵器とチャンバラした歴戦の勇士には動じるほどのことでもなかった。

「これ、サラマンダー?」
「そうよー、火竜山脈のね。好事家に見せたら値段なんかつけらんないわよー」
 暑そうにも関わらず頬ずりするキュルケをルイズはひどくうらやましがった。
唇をぎゅっと噛み締めるご主人に対しムサシはしげしげとフレイムを眺めている。

「ずいぶん人懐っこいなあ」
「あら、よく見たらけっこうカワイイじゃない、もみ上げが男前よ坊や」
 流し目を送り、自分の魅力を最大限に研ぎ澄ませて色香を放つ。
酒場のママと呼ばれていたタンブラーさんを思い出した。
ムサシにじり寄ってくるキュルケに対し、ルイズは目の前に立ちふさがって胸を張る。
キッと睨みつけるも胸を張り返されてルイズは少なくない精神的ダメージを受けた。

「ひ、人の使い魔に色目使わないでよ!ツェルプストー家の人間はやっぱり浅ましいったら!」
「おおこわいこわい」
 ウフフと笑って軽くいなすその様子は、やっぱりからかわれてるんだなとムサシは思う。
自分もコジローに対してこういう風に振舞っているフシがあるのでルイズの援護にも回れずムサシは苦笑する。
それを自分に対する蔑みと取ったかルイズはムサシの頭に平手を叩きつけるのだった。

「ずいぶんとでっけえ食堂だなあ。ナメクジ岩だって収まっちまいそうだ」
「食事がまずくなるようなこと言わないでよ……」
 長テーブルごとにマントの違う学生が、ずらりと並んで食事を待っているようだ。
ルイズは真ん中のテーブルについた、学年ごとに分かれているらしい。
学問に励んだ記憶がないムサシには、たくさんの生徒が生活している様はやはり新鮮に見えた。

「おいらの席はあるのか?」
「あんたはそこよ」
 ルイズが床を示すと、そこには皿に載せられた黒パンとスープがあるだけ。
これではまるで犬か何かの食事だ。
ムッとしつつもあぐらをかき、パンを一かじりして、思わず口からこぼれ落とす。
今まで村のベーカリーで食べていた美味しいパンに慣れ親しんで忘れていた。
ムサシは、ナメクジ、風呂、そしてこのパンとかいう食べ物が大嫌いだったのだ。
だがしかし、ヨーグルトになった牛乳すらおいしくいただくムサシは食べ物を粗末にするのは嫌いなタチだ。
なので、スープでボソボソのパンを流しこんで食事とした。
だがこんなもので満たされるムサシのお腹ではない。
ムサシは何も言わずに視線と溜息を残して、のそのそと食堂を出て行った。

「……な、なによ。私が悪いみたいな顔して……生意気なのよ、あいつ」
 口を厳しくしていても、ムサシの反応が薄いことに少々焦っていた。
キュルケ以外とはまともに会話したのも久しいルイズにとってムサシは唐突に得たとはいえパートナーである。
ムサシは、出来る範囲で使い魔の仕事をする、と言っていた。
元の世界に戻りたい、とは何度も口にしていたものの、それは今すぐどうこうできなさそうだったし。
ルイズの頭が冷えたころ、急に彼がこのまま戻ってこなくなったりするのでは、と思い始めた。
朝食を夢中で食べ、デザートもそこそこに食堂を後にした。

「どうすっかなあ……」
 ムサシは中庭の使い魔が集まる広場の近くで、自分の荷物を開いていた。
なにやら白い塊を見つめて思案している。

「腐らしちまってももったいねえや。いただきます!」
 ばくっと噛み付いて咀嚼する。
なんとも美味そうな顔でさんざん噛み締め、やがて喉を鳴らした。

「食った食った、やっぱり食うなら握り飯に限るぜ」
 中に牛肉の入った、お城の料理長特製『ワギュウおにぎり』を存分に味わったムサシ。
ムサシの道具袋に入ってる食料の中で、彼の好物である『おにぎり』はこれ一つだった。
この世界にもお米があるとは限らない、おにぎりとは今生の別れかもなとムサシはしみじみ思うのであった。
そんな寂しさを背中に漂わせ、ルイズはまだ食堂にいるだろうかと廊下をとぼとぼ歩く。
すると向かいから、つい今朝方知り合った顔が歩いてきた。

「ああ、シエスタ」
「こんにちはムサシくん、顔にお米が……」
「!?今『お米』って言ったよな?」
「え、ええ」
「あるのか!?」
 数分後、厨房に招かれたムサシはホカホカのおにぎりに齧りついていた。
それはシエスタの故郷、タルブで栽培されている珍味『オコメ』を蒸して丸めた、半ば餅団子のようなものであった。
だがムサシのしかるべき飯炊き指導により、これからはおいしいご飯にありつけそうだ。
マルトーともウマが合うのか、出会ってすぐに意気投合。
「腹が減ったらいつでも来い!」とまで言われて、ムサシのお腹は安泰になりそうである。

「あれ?ルイズ、もう飯食ったのか?」
「……」
 ルイズと合流したとたん、なんかモジモジしたと思ったら引っぱたかれたが。

「いきなりなんだよ、ルイズ!」
「うるさい!さ、探したでしょ!授業に行くわよ!」
 半ば引きずるようにして、教室へと急ぐ二人。
小さな歩み寄りは、ルイズの小さな心の揺れから、始まりを告げるのであった。

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