あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのロリカード-55

 トリステイン艦隊、『オストラント』号。
ツェルプストー家の財力を使い、コルベールが作り上げた渾身の蒸気船。
飛行機と船を折衷させたような、周囲の艦とは明らかに一線を画した特異なデザイン。
風石をふんだんに使用し、石炭燃焼による蒸気機関を搭載。
そして何よりも特筆すべきは、コルベール謹製のジェットエンジンを積んでいた。

 アーカードから教わった知識と、それを体現できるコルベールの技術力。
SR-71『ブラックバード』の特殊な燃料を不完全ながらも錬金した、卓抜したメイジとしての実力。
タルブ戦後も研究をし続け、爆発力は落ちるもののSR-71のそれよりも遥かに扱いやすい燃料を開発。
それらが噛み合い実現させた、世界で唯一にして最速の船。それが『オストラント』号であった。
コルベールは設計から建造まで全てを手掛け、遂にはこのガリアとの一戦の前に完成させたのだった。

 アニエスも納得ずくで、戦争の早期終結の為に、コルベール自身不本意ながらもその集大成を使うことになった。
本来は探検船としての用途であり、各種最新技術を詰め込んであるものの、武装は最低限の物しか積んでいない。
しかしてハルケギニアの枠を遥かに超え、オーバーテクノロジーの粋を集約した船。
単純な巡航速度は言うに及ばず、旋回性能も非常に高い。
一度ジェットエンジンによる推進力を得れば、直線距離に於いては風竜ですら追いつけない。
特定の艦を狙った奇襲作戦に於いて、これほど有用な船は他にないのであった。

 ルイズとタバサはオストラント号の上から、ジョゼフの乗る艦を万感の想いで見つめていた。
旗艦の周囲にある、一隻のフリゲート艦。
そこにジョゼフがいる。そしてジョゼフを倒せば、この戦は終結するだろう。
所詮は王の権力と、暗殺による恐怖で縛り付けたガリア軍。
その意志を継ぐ者さえいなければ、あっという間に現体制は崩壊する。


 既にトリステイン艦隊は、『幻影』の艦隊から離れて進みつつある。
それに呼応するように、ガリア艦隊も動いていた。
暫くすればアーカードによる、支援砲撃がある。それが開戦の号砲。
戦争開始まで秒読み段階に入ったその間、ルイズは少し前のやり取りを思い出していた。

  ◆


「あぁ、こうなったら背に腹は変えられない。そっちから言ってきたんだし、『あれは嘘だ』とか無しだよ」
「無論だ」
どことなく嬉しそうなウォルターは、立ち上がって体中についた汚れを払う。
そして「また僕は裏切るわけか・・・・・・」と少しバツが悪そうに言った。
そんなウォルターをアーカードは腕を組んで「今更だろう」と笑う。

 二人の会話が聞こえず何が起こってるのか疑問に思っていると、ウォルターが一所を指差した。
「あれだ、あの旗艦右後方のフリゲート艦にジョゼフがいる」
「・・・・・・どういうこと?」
タバサがウォルターの言葉を疑う。突如そんなことを言い出したことも解せない。
その内容にしても、敵方の将だ、あっさりと信用出来るわけがない。
はいそうですか、とそこに突っ込むわけにはいかない。

 同じようにルイズもウォルターに聞く。
「裏切るの?」
居場所を教えてもらうのはありがたいが、それはつまりウォルターは背信したということ。
タバサの猜疑心とルイズの問いにアーカードが答える。

「懐柔した」
一言、ただそれだけ。ウォルターに裏切らせてこちらへと引き込んだということ。
単純にアーカード自身の目的の為に、最も合理的な方法を選んだに過ぎない。


「・・・・・・わかった、あなたは信用しないけどアーカードを信じる」
タバサは毅然とした目で冷ややかにウォルターを射抜く。
ウォルターは初見の時の、悪い印象が拭い切れない。
そもジョゼフに協力していた時点で、信用するに値しない。
「やれやれ、嫌われたもんだ」とウォルターは肩を竦める。
  「私は・・・・・・個人的な感情だけれど、あなたを少しだけ信頼してるから」
一方でルイズは些少ながらフォローしてやった。
ルイズの言葉に、ウォルターはただ黙って不思議な微笑みを浮かべる。

 ウォルターにとっては、自分の目的の為だったのだろう。
それでも、攫われてからアーハンブラ城で救出されるまでの扱いには感謝していた。
はっきり言って、初見でジョゼフに勝てるとは思えない。今現在戦っても勝てそうもない。
ウォルターが誤魔化したからこそ、今自分はこうして生きているとも言えた。


「では、私は地上から88mmで砲撃しつつ支援しよう」
敵艦の死角から、一撃で中枢を破壊する方が効率が良い。
正面から撃てば、敵の魔法や竜騎兵によって多少なりと阻まれる可能性もある。
「お前達は例によってコルベールの船で、一直線にフリゲート艦を狙うといい」
当初の予定目標は敵旗艦であったが、もし違っていた場合の損耗をアーカードは考えた。
よってヨルムンガント一掃のついでにウォルターを懐柔し、正確な位置を知ることにしたのだった。

「当然こやつも付き合わせる」
そう言ってアーカードは、有無を言わさず命令するようにウォルターを見る。
「あぁ、わかってる。・・・・・・だけど、僕らが直接乗り込んだ方が早くないか?」
アーカードと自分がまとめて乗り込んだ方が、手早く、楽に、片が着く筈だ。

「それは我々の仕事ではない、・・・・・・な?」
アーカードはタバサへと視線をやる。タバサは無言で頷いた。
「ルイズも露払いをしてやれ」
「わかってるってば」
どの艦に乗っているかはわかったものの、易々とは乗り込ませてはくれないだろう。
いずれにせよ『エクスプロージョン』など、虚無で援護する必要がある。
そしてタバサがジョゼフに負けるようなことがあれば、速やかにタバサを連れて離脱。
その際に・・・・・・自分がジョゼフと一戦交える必要が、あるやも知れない。

   勿論確実に勝つのであれば、アーカード達が邪魔な敵艦隊を全滅させるまで待つ。
然るべき後に、全員で乗り込めば良い。それが最も安全と言えるだろう。
だが、そこまでアーカードにおんぶにだっこというのは憚られた。
これは戦争だ。経緯や目的はどうあれ、国と国の戦。
なれば一人にだけ押し付けるのは、道理にそぐわないというものである。
それに、敵軍の被害も最小限に抑えたいと考えていた。

 アーカード一人に任せたら、敵軍は殲滅に追いやられてしまうだろう。
こと戦争とはかくあるべきである、というアーカードは正真正銘の化物であり、情などは埒外。
目的達成の至上命令に於ける、単なる障害物。闘う意志で立つ者に例外は無い。
何も知らずただ命令に従って戦争に駆り出される軍人だろうと、アーカードは容赦無く殺す。
微塵の躊躇も無く、一片の後悔も無く、鏖殺する。
鉄火を以て闘争を始める者に人間も非人間もなく。
殺し、打ち倒し、朽ち果てさせる為に。殺されに、打ち倒されに、朽ち果たされる為に。
それが全て。それを違える事は、神だろうと悪魔だろうと誰にも出来ない唯一ツの理。
主人であるルイズの命令でも、それを侵すことは出来ない。

「アーカード、程々にね」
だからせめて『命令』ではなく、『お願い』としてルイズは言ってみた。
「なるべくな」
そしてアーカードは酷く化物らしい笑みを浮かべる。正直あまり期待は出来なかった。


「・・・・・・復讐かぁ」
ウォルターはタバサの境遇を思い返し、その答えに当たる。
しかも極上の復讐相手。動機も、強さも、因縁も、あらゆる要素が高水準で揃っている。
そりゃ自分達に、獲物を横取りされたくはないに決まっている。
そも横取りされる気分というもの・・・・・・ウォルター自身、嫌と言うほど身にしみている。

「あぁそうそう、ビダーシャルもいるから気をつけて」
ウォルターは言い忘れてたかと、気付いて言った。ビダーシャル、エルフの名を。

「えっ?だけどエルフは確か・・・・・・」
ルイズは記憶違いに疑問符を浮かべる。姫さまから聞いた話では、エルフは殺されたと。
そのおかげで聖戦発動が回避されたと、さらに規模の大きい戦にならずに済んだと姫さまは安堵していた。
ロマリアの密偵が掴んだ情報らしかったが・・・・・・。実は生きていて、しかも未だに協力している・・・・・・?

「あぁそれブラフ。ビダーシャルが聖戦発動をやめろってんで、嘘の情報を流したんだ」
「であれば・・・・・・少し厄介か」
タバサとルイズでは手に余る。
アーカードは「手助けはいるか?」といった視線を投げ掛けた。

「いいえ、そこまで手は煩わせないわ。エルフは私が受け持つ」
虚無の担い手だけが、強力なエルフに対抗できる。
ガンダールヴを得て、ヨルムンガントを粉砕したアーカードもゴリ押し出来るだろう。
だが、ここは自分が行くべきだ。それにエルフがいるなら・・・・・・少し考えもある。
エルフの強さは間近に見ていたし、恐ろしいとも確かに思う。が、アーカードに比べればまだマシだ。

(それに・・・・・・少し自分の力を試してみたいしね・・・・・・)
己の強さを存分に発揮出来る相手。
アーカードの戦闘狂な部分が、少し伝染してしまったのかも知れない。


 ルイズは大きく強く頷く。
アーカードもルイズを信頼している。召喚されたばかり頃の、かよわい少女ではない。
アーカードの認める相応しき主人へと変貌を遂げた。今や何の憂いもない。

「まぁビダーシャルはそんなに乗り気じゃないし、既にジョゼフには辟易している筈だ。
 多分闘わなくても済むと思うけど、ジョゼフの遁走に手を貸すくらいはするかも知れないな」

 ウォルターは楽観的に私見を述べる。
自分が敗北したことで、もはやジョゼフの勝ちの目は0なのだ。
もはやジョゼフに付き合い続ける義理はない。

「さぁ行くがいい、征って終わらせてこい」
アーカードは言い切った。信頼に対して信頼で応える。
これ以上求められない主人と従僕の関係。メイジと使い魔の絆。

「ええ、征ってくる」
ルイズは自信と誇りを含んだ笑みで、アーカードに応えた。



 ルイズとタバサはシルフィードに乗って飛び、アーカードとウォルターが残される。
「いい主人だね・・・・・・」
感慨に耽るようにウォルターはしみじみ呟く。
「ははっ、そうだろうとも。いい女達だ」

 「インテグラとどっちが?」などと、イジワルな質問でもしてやろうと思ったが。
比べるものではないのだろうなと、ウォルターはどこかで感じ入る。
そんな次元の低いものではないのだ。何物よりも強固な絶対の信頼関係に、優劣などは存在しない。

(インテグラは・・・・・・)
自分のことをどう思っていてくれたんだろうか。
人生、主君、信義、忠義、あらゆるもの。己の全てのものを賭け、納得して反逆した。
そう、「納得した」と言い聞かせるように。そしてアーカードと闘った・・・・・・。

(もしも裏切らない道を選んでいたなら・・・・・・)
今更思っても詮無いことだと、苦笑する。

(まっいいさ。幸運なことに、これ以上ない好機を得られるわけだしね)




 艦隊と艦隊の相対距離が、少しずつ、そして確実に詰まっていく。
ルイズはアンリエッタから預かった風のルビーを見つめた。
始祖の祈祷書は未だ新たなページを見せてはくれない。
テファのこともある、エルフとの戦は出来得る限り避けたい。
――――――その為に、自分に出来ること。

「いよいよね」
掛けられた声に気付いて、ルイズは振り向く。
「本来なら気楽にいけって言うとこだけど、今くらいは気張っていきましょ」
炎色の髪をたなびかせ、キュルケが言った。
「そうね、今くらいは気合を入れないとね」
ルイズはキュルケの笑みに同じように返す。
かつては仇敵であったツェルプストー家の、キュルケともこうして理解し合えたのだ。
(そうよ、エルフとだって・・・・・・)


 ルイズは大きく何度も深呼吸をして、逸る心を落ち着ける。
手は綺麗に、心は熱く、頭は冷静に。

 魔力を高めるのに、感情の起伏は必要だ。昂ぶりが力になる。
しかして感情に身を委ね、振り回されてはいけない。
それでは不安定な力として、己や周囲をも危険に晒してしまう。
支配する、制御する、管理する、操作する、己の意志で必要な分だけを引き出す。
人の身では持て余しかねない虚無の力を、最も理想的な形で使いこなす。
ついぞ『無想』を会得することは叶わなかったが、それでもやらねばならない。

 オストラント号の砲台は私。
虚無の『爆発』で以て、的確に進むべき道を切り拓かねばならない。
タバサは後方でシルフィードに乗り、場合によってはすぐに自分を拾って飛び立てるようにしている。
タバサは魔力を温存する為に然るべき時まで戦えない。それまではタバサの分までフォローする必要がある。
  (・・・・・・絶対に勝つ、勝って笑う)
ルイズはゆっくりと目を瞑る。
そしていつでも『エクスプロージョン』を放てるよう、詠唱し始めた。


 北花壇騎士として、いくつの任務を請け負ってきただろう。
どれだけの死線を越えてきただろう。
キメラドラゴン、地下水、ミノタウロスのラルカス、火竜、コボルド・シャーマン、アーカード。
どれもが難敵、それでもどうにか生き延びてきた。

 騎士としての任務外でも多く戦った。
アーカードが終わらせてしまったが、フーケは強かった。
ウォルターには、まるで勝てるビジョンが浮かばない。
そのウォルターが駆るヨルムンガント相手には、逃げるのが精一杯だった。
盲目の炎術師メンヌヴィルに負けた。憎き虚無の担い手ジョゼフに負けた。
そして・・・・・・アーカードに負けた。

 一つ歯車が狂っただけで死にかねなかったことも多かった。
実際に死んだも同然の状態にも陥った。


「・・・・・・お姉さま、本当にやるのね?」
ふと、シルフィードが小声で話し掛けてくる。
「もう無理に復讐をする必要はないと思うのね」
タバサはただ黙ってシルフィードの言葉を聞く。
シルフィードの言いたいことはわかる。母さまは心は戻らないまでも帰ってきた。
これ以上己が身を晒し、その命を懸けて復讐をする意義はあるのか。そういうことだろう。

 だがジョゼフを放置するわけにはいかない。
復讐を抜きにしても、ジョゼフは殺さねばならない。
同じ王族としての責任とは言わない。が、いずれにせよ暴走を止めねば国家が破壊される。
大勢の人間が不幸になってしまう。世界の正義の為に、ジョゼフは必ず討たねばならない。
あの男を説き伏せるという選択肢は存在しない。狂人に常人の理屈は通じない。

「お姉さまが死にそうになった時に、どれだけシルフィが心配したことか・・・・・・。
 あの胸が大っきいハーフエルフがいなかったら絶対死んでたのね。もうあんな思いはごめんなのね」

 タバサは目を瞑る。自分が死んでしまえば、悲しむ者がいる。
ただ制裁を加えたいと言うのなら、アーカードに任せればいい。
間違いなく、嬉々として殺してくれるに違いない。


「それでも・・・・・・私がやらなくちゃいけない」
誓いであり、義務と言っても良い。
自分の中で渦巻く行き場の無い感情に決着をつけ、前に進む為にも・・・・・・。
アニエスのように、復讐相手を赦すことは出来ないし、それほど達観してもいない。
コルベールのように、ジョゼフは贖罪の為に生きているわけでもない。
あの男は・・・・・・この手で殺さねばならない。

「お姉さまが頑固なのは、シルフィよ~くご存知なのね。それでも言うのね」
「・・・・・・大丈夫、勝算はある」
「本当?絶対に勝てるのね?絶対に死なないのね?」
「戦いに・・・・・・絶対はない」

 シルフィードは「それじゃ駄目なのね」とぶうたれる。
今までも任務などで勝算の薄い戦いは多かったが、ここまで食い下がるのは初めてだった。
一度ジョゼフ相手に死に掛けてるだけあり、いざ決闘の時が近付いてシルフィードも気が気じゃないのだろう。

「信じて」
「うぅ・・・・・・」
使い魔としては、主人にそう言われたら黙るしかなかった。
改めて言われて、「信じることが出来ない」なんて言える筈もない。

「お姉さまはいじわるなのね。シルフィがいないと作戦も成り立たないっていうのにね」
「ありがとう、感謝している」
「はぁ・・・・・・もうしょうがないのね。お姉さまにはシルフィがついてなくっちゃ駄目なのね」


 シルフィードを説得したタバサは、ゆっくりと確認するように頷く。
(もう・・・・・・負けない)
復讐前だというのに、自分でも驚くほど落ち着いている。
激情に駆られて今までのような無茶はしない。場合によっては退く決断も要る。
二度と無様な醜態は晒さない。ルイズに尻拭いなどさせない。
全てを完遂して未来をその手で掴み取る。自分は・・・・・・もう孤独ではないのだ。




 ウォルターが軽やかな足で戻って来る。
「とりあえず地上軍は止めてきた」
トリステインの地上軍はいないものの、対空攻撃でもされたら邪魔臭いことこの上ない。
事と次第によっては地上軍とも同時に戦わねばとアーカードは考えていたが、それは杞憂に終わった。

 ジョゼフ直属であることと、ヨルムンガントを率いていたことから、実質的な地上軍の最高権限はウォルターにあった。
よって進軍・攻撃中止の命令は呆気なく伝わり、余計な手間を掛ける必要もなくなった。
これで空中艦隊にのみ専念出来る。準備は整った。

「尤も僕が止める以前にヨルムンガントが全部破壊されちゃったから、士気はガタ落ちだったけど」

 ウォルターは内心嬉しさを隠し切れなかった。
もう二度と、アーカードと共闘することなんて考えていなかった。
ワルシャワのあの日が・・・・・・思い起こされる。
また肩を並べて闘えることが、素直に嬉しかった。


 空を見上げ、トリステイン艦隊とガリア艦隊の距離を測る。
「・・・・・・そろそろか」
アーカードは88mmを持ち上げる。残砲弾の数では到底全ては落とし切れない。
オストラント号が進む道筋の敵艦を、的確に選んで支援する必要がある。
いざ飛び立とうとした瞬間、ウォルターが声を上げた。

「あっ・・・・・・」
「なんだ?」
「いやぁ~・・・・・・」
ウォルターは思わず言葉を濁す。アーカードは眉を顰めた。

「歯切れが悪いな」
「ヤッバイなぁ・・・・・・、元素の兄弟を忘れてた」
「誰だ?」
「こっちにいる数少ない手練れの連中さ」
アーカードは「ふむ・・・・・・」と考える。
こっちにいる手練れと言えばルイズの母親、烈風カリンを思い出した。
彼女ほどの強さは、恐らくハルケギニアでも早々いるものではないと思われる。
が、ウォルターが言うくらいだ。相当な使い手なのは確かだろう。

「その連中がジョゼフの命令で、ちょっと任務請け負ってんだよね」
ウォルターは言いにくそうに続ける。

「標的は虚無の担い手。ティファニア、ヴィットーリオ。一応は攫って来いって命令」
「それならば問題なかろう」
ティファニアにはアンデルセンが、ヴィットーリオには大尉がそれぞれついている。
最低でも烈風カリンと同等以上の実力者でなければ、まず負けることはない。


「そして、トリステインのアンリエッタ女王」
「なんだと?」

「元素の兄弟は四人。んで当然余るから、国のトップを狙う命令もついでにね。
 水魔法で傀儡にするって話だった。だけど教皇ヴィットーリオと女王アンリエッタ。
 この二人に限っては、最悪殺してしまっても構わないって命令だ。
 トップが死んで国が荒れ、より一層の混沌が見られるならばそれも良しってね」

「いずれにせよ遅かろう。戻っても間に合うとは限らんし、既に終わっている可能性もある」
「まっ、確かにそうなんだけど」
アンリエッタにはアニエスがついている。念話での交信は出来なかった。
未だに血は飲んでいない半人前だが、腐っても吸血鬼。そこらのメイジには遅れをとるまい。
感覚を集中させると、アニエスがまだ滅していないということだけはわかった。
だがそれがイコール、アンリエッタの無事に繋がっているかはまた別である。
これから襲われる可能性。アンリエッタのみが殺されている可能性。

(昼間に襲われた場合が厄介か・・・・・・いや、無用に心配しても詮無いな)

 今はアニエスを信じよう、我が血族の強さを。




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