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ゼロの使い魔×相棒 ~トリステイン魔法学院特命係~-04a

プロローグ
 神戸尊は沈鬱な気分を抱えながら廊下を歩いていた。こちらからは右京に連絡がまったく取れない。
もしかしたら右京の行き先を知っているかもしれないと思い、小料理屋『花の里』の女将で右京の元妻である宮部たまきに事情を話して尋ねてみたが、返事は芳しくなかった。
「わかりました。ありがとうございました」尊はたまきに礼を述べて、電話を切った。
「たまきさんも駄目か…。くそっ、どこにいるんだよ…」
 尊は、八方ふさがりになりつつある状況に苛立った。
 右京が外出しようとしたときに行き先を聞けなかったことを、尊は今さらだが悔やんでいた。
 尊が右京の身を案じ、特命係の行く末に頭を悩ませているのは、彼が右京を慕っているというよりは、彼が特命係に配属された事情によるところが大きい。
 尊は、表向きの階級は警部補であるが、実際は警察庁警備局に所属する警視である。
彼は警察庁上層部から、特命係と右京が警察にとって必要かどうかを判断するために、右京と身近に接して調査せよという「特命」を受けているのだ。
そのため、いわゆる「庁内エス(警察庁から警視庁に送られるスパイ)」として、二階級降格による左遷を口実に、特命係に半年の期限つきで潜入することになった
(右京には当然秘密にしており、警察庁時代からの知り合いである警視庁警務部人事第一課主任監察官の大河内春樹にも適当にごまかしていた。なお、調査の目的やなぜ尊がその役目に選ばれたのかは定かではない)。
 その目的に加え、右京という人間に個人的にも興味を抱くようになった尊は、ことあるごとに右京と行動を共にするようにしていた。
 だが、最近は特に右京が興味をそそられるような事件もなければ、回ってくる雑用も簡単なものばかりで、尊は正直なところ退屈で、少々気が抜けていた。
 そこへ、右京が突然「少々、出かけてきます」と扉を開けながら言ってきたのである。意表をつかれて慌てた尊が「どちらへ?」と問うたときには、あの謎の鏡に右京が飛びこんでしまった後だった。
 不測の事態とはいえ、右京が姿をくらませてしまったことは、尊にとって非常に都合が悪い。
警察庁の上役にこのことを包み隠さず正確に報告したところで、内村同様信じてはくれないだろう。むしろ、気の緩みから調査対象に逃げられたとして、自分の責任を追及されかねない。
 さらに、こちらの事情を知らない内村によって、今日中に右京が見つからなければ特命係の解散と解雇を申し渡されてしまった。かねてから特命係の廃止を狙っていた内村にとっては、渡りに船だっただろう。
 もし明日まで右京が行方不明のままだった場合、警視庁と警察庁との無用の混乱を避けるために内村の人事勧告が受理され、理不尽にも切り捨てられてしまう可能性もある。
 冗談じゃない。こんなわけのわからないことでクビにされてたまるか。
 こうなったら、無駄だとわかっていても右京が行きそうな場所をしらみつぶしに当たるしかない。尊は、黙って最後通告を待つつもりはなかった。
 廊下の十字路に出たところで、尊は出くわした人物に声をかけられた。
「おお、これはこれは神戸警部補」
「米沢さん!」
 それは、ふちの太いメガネをかけた、坊ちゃん刈りが特徴の警視庁刑事部鑑識課員、米沢守だった。

第四章

 トリステイン魔法学院の学院長室は、本塔の最上階にある。その中で、重厚な作りのセコイアのテーブルに肘をついて気の抜けた顔で鼻毛を抜いている、いかにも暇をもてあました白く長い口ひげと髪をたくわえた老人が、学院長のオスマン氏であった。
 そして、部屋の端に置かれた机に座って、オスマン氏とは対照的に真面目に書き物をしている、緑色の長髪が綺麗な女性が、学院長秘書のミス・ロングビルである。
 オスマン氏は横目でミス・ロングビルを見やると、水ギセルを魔法で取り出し、口元に運んでいく。
 しかし、オスマン氏がくわえる寸前に、水ギセルはミス・ロングビルの手元に収まってしまった。彼女が羽ペンで水ギセルを操ったのだ。
 ミス・ロングビルが、呆れたような声でオスマン氏に注意した。
「オールド・オスマン。水ギセルはこれで十二本目ですよ。健康のためにもご自制ください」
「ふう…まだ若い君にはわからんだろうが、この歳になると、一日々々をいかに過ごすかが何より重要な問題になってくるのじゃよ」
 オスマン氏は眉間に皺を作り、重々しく目を瞑りながら、机で書き物を続けるミス・ロングビルにさりげなく近づいていく。
「だからといって、たびたび私のお尻を撫でたり、ご自分の使い魔を悪用なさるのはおやめください」
 ミス・ロングビルが、小さなハツカネズミを『レビテーション』で浮かせ、遠くに落とした。
 目論見を見破られたオスマン氏が、自分の肩に乗ったハツカネズミにナッツをやりながら、いかにも哀愁漂う様子で話しかけた。
「おお、この年寄りの数少ない楽しみを奪うとは…老いぼれはさっさと死ねということか。わしが心許せる友達はもはやお前だけじゃ、モートソグニル。して、今日の色は?」
 モートソグニルは、ちゅうちゅうと鳴いた。
「おお、そうか今日も白か。しかし、ミス・ロングビルは黒が最も映えると思わんかね?」
「オールド・オスマン」
 ミス・ロングビルの、絶対零度を思わせる声がした。
「今度やったら、王室に報告します」
「カアッ! 王室が怖くて魔法学院学院長は務まらんわッ!」
 オスマン氏が目を大きく見開いて怒鳴った。その迫力は、百歳とも、三百歳を超えているとも噂される老人のものとは思えなかった。
この気力と精神力の強さがオスマン氏のメイジとしての実力を物語っているといえるだろう。
「減るもんじゃなし、下着を覗かれたくらいでカッカしなさんな! そんなお堅いことだから婚期を逃すのじゃ!」
 開き直った上にコンプレックスをついてくるセクハラジジイに、ミス・ロングビルの中で何かが切れた。
 思い切り尻を蹴り上げてやろうと足を振りかけたとき、学院長室の扉が勢いよく開けられた。
「オールド・オスマン! 至急お耳に入れたいことが!」
 息せき切らして入ってきたのは、コルベールだった。
「どうした?」
 オスマン氏は、何事もなかったかのようにコルベールを迎え入れた。一方のミス・ロングビルも、机で書き物を続けていた。魔法にも勝る早業であった。
あと少しのところで色ボケジジイに私刑を与えられなかったミス・ロングビルが、その理知的な顔をわずかに歪ませて舌打ちしたことに気づいたものはいなかった。
「昨日、ミス・ヴァリエールが召喚した使い魔の平民のことで図書館で調べものをしていたところ、大変なことがわかりまして…」
「大変なことなどあるものか。すべては小事じゃ」
「まずはこれをご覧ください」
 コルベールが、一冊の古い書物を手渡した。
「んん? 『始祖ブリミルの使い魔たち』とは、まーたずいぶんと古臭い文献を引っ張り出してきたのう。これがどうしたね、ミスタ…ええと…」
「コルベールです!」
「おお、そうじゃったそうじゃった。君はどうもせっかちでいかんよ、コルベールくん。で、いったい何がわかったのかね?」
「こちらをご覧ください」
 コルベールは一枚の紙を示した。それは、右京の左手に刻まれたルーンをスケッチしたものだった。
 開かれた書物のページとスケッチを見比べたオスマン氏の表情が変わった。目が光り、厳しい色になった。
「ミス・ロングビル。しばらく席を外しなさい」
「はい」ミス・ロングビルが立ち上がり、部屋を出て行った。
 彼女の退室を見届けたオスマン氏は、静かに口を開いた。
「さて、詳しく説明してくれ。ミスタ・コルベール」
シュヴルーズを医務室に連れていったルイズと右京――医務室に勤めるメイジの治癒魔法に目を奪われていた右京をルイズが引きずって出てきた――を待っていたのは、教室の片づけであった。
普通であれば、授業を中止にしたことと教師に怪我を負わせた罰として、謹慎なり出席停止なりの処分が下されるのだが、彼女たちに与えられたのは、魔法の使用を禁じた教室掃除だけ
――ルイズは元から魔法をほとんど使えないから意味はなかったが――で済んだ。生徒たちの警告を無視して、ルイズに魔法を使わせたシュヴルーズにも一定の落ち度があるという理由からであった。
 掃除を自分でやったことがほとんどないルイズでは、教室の修復は相当時間がかかるだろうと思われたが、意外にも昼食が始まる前には終わってしまった。
右京が休みなく、無駄のない動きで手際よく窓ガラスを運んで張替えたり、机を並べなおしたり、煤だらけの壁や床を雑巾で綺麗に磨いたりと、作業のほとんどを一人でこなしてしまったからであった。
ルイズがやったのは机を拭くことだけだった。それすらも、最後のほうは右京に手伝ってもらった。
 二人は昼食をとるため、食堂へと歩いていた。
 道中、二人はしばし無言だった。
「ねえ」先に口を開いたのはルイズだった。暗い声であった。
「はい?」
「あんたは、もうわかってたんでしょ?」
「何をでしょう?」
「だから……わたしがなんで“ゼロのルイズ”って呼ばれてるか、よ」
 ルイズは言いにくそうにしていたが、自分から話を切り出した手前、絞り出すようにしてなんとか言い切った。
 右京は、少し間を置いてから、ルイズに質した。
「ミス・ヴァリエール」
「え?」
「この世界では、メイジが魔法に失敗すると爆発が起きるのですか?」
 今のルイズには、右京の言い方は皮肉にしか聞こえなかった。顔を歪めて、烈火のごとく吠えた。
「わたしだけよ! 普通は失敗したら何も起きないの! 悪かったわね、才能も成功率も“ゼロ”の落ちこぼれメイジで!」
 ルイズの剣幕に怯むことなく、右京は確認する。
「では、あなただけが魔法を使おうとすると爆発するというわけですね?」
「そう言ってるでしょ! なによ、あんたまで馬鹿にするわけ!? 使い魔の分際で…」
「おかしいですねえ」
 目に涙を滲ませて怒りを露にするルイズであったが、突然発された右京の違和感の表明に、矛を収めた。
「普通ならば魔法に失敗したら何も起きない。しかしミス・ヴァリエールだけが魔法を使おうとするとすべて爆発。単純に同じ『失敗』でくくるには、この二つの結果はあまりにもかけ離れているとは思いませんか?」
「だからなによ? 使いたい魔法が使えないんだから『失敗』なのは同じじゃない」
 右京は、左手の指を立てて反論した。
「いいえ。大きな違いです。何もないところを爆発させたということは、何らかの力がそこを爆発させるように働いたことに他なりません。あなたが事前に爆弾ないしは火薬の類を仕掛けておき、
杖を振るタイミングに合わせてそれらを起爆させているというなら話は別ですが」
「そんなわけないでしょ! なんでわたしがそんなことしなくちゃならないのよ?」
 答えながらルイズは首をかしげた。右京の説明は回りくどいので、何を言いたいのかが最後の結論を聞くまでわかりにくい。
「おっしゃるとおり。『魔法を使うと爆発する』ということは、すなわち『爆発の魔法を使った』と言い換えることができます。ですから、あの爆発は紛れもなく、ミス・ヴァリエール、あなたの魔法なのですよ」
 ルイズははっとさせられた。右京はさらに続ける。
「周りの方々がおっしゃるように、本当に魔法の才能がないのなら、爆発させることさえできないでしょう。そもそも、昨日僕を召喚し、使い魔の契約を交わしたことで、あなたは少なくとも『サモン・サーヴァント』と『コントラクト・サーヴァント』の
二つの魔法を成功させているのですから、『才能も成功率も“ゼロ”』というあなたへの評価は、適当なものではありません」
「……!」ルイズは、右京の意図をようやっと悟った。
言葉が、出てこなかった。
「それどころか、前例がない『人間の召喚』を実現し、さらに契約を成功させたことを考慮すると、あなたには才能がないどころか、むしろ特別な才能を秘めていると見るべきだと僕は思うのですが、これは素人考えでしょうか?」
 言い終えると、右京は穏やかな微笑を浮かべた。
ルイズは、一瞬時間が止まったような錯覚に陥った。
 ヴァリエール家の末娘として将来を嘱望されていたにもかかわらず、幼少のころから魔法を使おうとすると爆発させる「失敗」しか起こせなかった。
父や母は失望を隠さず、長姉には厳しく叱られ、いつしか“ゼロのルイズ”と呼ばれるようになってしまった。自分を慰め、認めてくれたのは体の弱い次姉と、今は疎遠になってしまった歳の離れた婚約者だけだった。
学校で本格的に習えば魔法を扱えるようになるからと、両親に頼み込んで入った全寮制の魔法学院でもそれは変わらなかった。劣等感と無力感、そして“ゼロのルイズ”と呼んで侮蔑する者を増やしただけだった。
挙句の果てに、家族からは「家に帰って花嫁修業をしろ」といわれる始末だ。
そんな状況であったから、『サモン・サーヴァント』で人間を召喚してしまったことも、魔法の才能がない“ゼロのルイズ”ゆえの、いつもの「失敗」の一つとしか周囲は受けとめなかった。
自分でさえそう思っていた。まともな使い魔一匹すら召喚できないのかと。
だが、考えてみれば確かに右京の言うとおりだ。
わたしは、誰もやったことがないことをやってのけたんだ。
憐憫や慰めでも、叱咤激励でもなく、実例をあげて論理的な説明でもって自分の力が認められたのは、ルイズにとって初めてのことだった。
授業の前に言っていた「他の人にはない才能を秘めている」とは、そういう意味だったのか。
そこまで考えたとき、ルイズの胸中に熱いものがこみ上げた。
ぐっと唇をかみ締める。そうしないと、マグマのように噴き上がる感情が涙となってあふれてしまいそうだったからだ。
「ミス・ヴァリエール」
と、右京が突然声をかけてきた。
「…え?」
「僕は教室の修繕が完了したことを学院長に報告にまいりますので、先に食堂へ行っていただけますか?」
「なんで? ていうか、あんた学院長室の場所知ってるの?」
「ええ。昨日学内を出歩いたときに、部屋の配置を確認しておきましたので。では、失礼いたします」
 そう言うと、右京は踵を返して歩いていってしまった。
「あっ、ちょっと! …もう、主人を差し置いて勝手なことばかりするんだから…」
 だが、言葉とは裏腹に、ルイズは右京を強く引き止めようとはしなかった。
 小さくなっていく右京の背中を見つめ、見えなくなったところで、誰にも聞こえないほど微かな声でこう呟いた。
「……ありがと……」
 聞こえてはいないはずだが、口に出してしまったら無性に気恥ずかしくなって、ルイズは早足で食堂に向かった。いつの間にか熱い感情は凪ぎ、不意に涙がこぼれることはなくなっていた。

 右京は、迷うことなく最上階にある学院長室に向かっていた。
 ルイズには「修繕が終わったことを学院長に報告に行く」と言ったが、実際にはそのようなことは指示されてなどいない。学院長のオスマン氏に会うための口実だった。
 彼の目的は、今朝キュルケが「元の世界に帰る方法を知っている人物」として教えてくれたオスマン氏からその情報を入手すること、そして自分とルイズを取り巻く状況について問い質すことだった。
 右京が先ほどルイズにかけた言葉は、最初から彼女を励ますために出てきたわけではなかった。今まで得た情報をもとに、自分の身辺について思案を巡らせる中で出てきたものだった。右京の考えは、ルイズに言ったことのもっと先にあったのである。
 それは、事と次第によっては、容易に元の世界に帰ることができなくなるかもしれないという危惧を右京に抱かせるほどのものだった。だから一刻も早く確認しなければならない。
 ハルケギニアに強い好奇心と魅力を感じていた右京ではあったが、長居するつもりはなかったのである。
 学院長室の前までやってきた右京に、緑色の髪を持つ知的な印象の女性が挨拶した。右京も挨拶を返す。
 女性は、学院長秘書のミス・ロングビルと名乗った。
 右京は、さっそくミス・ロングビルに尋ねた。
「オスマン学院長にお会いしたいのですが…」
「どういったご用件でしょう?」
「私と我が主人のことで、至急学院長にご相談したいことがございまして」
 ミス・ロングビルは少し考えた。自分を退出させるときは大抵重要な話をしているときだから、そんな用事はまず後にしろといわれるに違いない。
 しかし今回は、コルベールの言葉から推測するに、自分の目の前にいるこの男のことについて話しているようだ。ならば、一応オスマン氏に言っておくほうがいいだろう。
 ミス・ロングビルは、右京の目を見すえて答えた。
「わかりました。ですが、オスマンはただいま重要なお話をされていますので、面会できるかどうかは保証しかねます。その点はあらかじめご了承ください」
「了解いたしました。よろしくお願いいたします」
 ミス・ロングビルは、学院長室の扉に体を向けて、ノックした。

 学院長室では、コルベールが口角泡を飛ばして、右京の左手に浮かんだルーンについて調べた結果たどり着いた自説を、オスマン氏に説明していた。
「ふむ…始祖ブリミルの使い魔『ガンダールヴ』か…」
「そうです。彼の左手に刻まれたルーンは、伝説の使い魔『ガンダールヴ』のものとまったく同じであります!」
 オスマン氏は、コルベールのスケッチと書物のルーンをまじまじと見比べた。
 コルベールがなおも興奮した様子でまくし立てる。
「すなわち、あの男性は『ガンダールヴ』ということです! これが大事でなくてなんなんですか! オールド・オスマン!」
「確かに、ルーンは同一のものじゃ。ルーンが同じならば、ただの平民であったその男が『ガンダールヴ』になった、という説も考えられぬ話ではないのう」
「どういたしましょうか?」
 オスマン氏は、身を乗り出したコルベールを手で制した。
「まぁ、落ち着きたまえ。現時点では『可能性がある』というだけの話じゃ。それだけでそう決めつけるのは早計じゃろう」
 そのとき、扉がノックされた。
「誰じゃ?」
「わたしです。オールド・オスマン」
 扉の向こうから聞こえてきたのは、ミス・ロングビルの声だった。
「なんじゃ?」
「オールド・オスマンに、至急面会をしたいという方がいらしています」
「誰かね?」
「昨日、ミス・ヴァリエールが呼び出した使い魔の男性、スギシタウキョウさんです」
 まさしく、今自分たちが話題にしている男の名前を聞いたコルベールが、慌てた様子でオスマン氏に伺いを立てた。
「オールド・オスマン!」
「これも、始祖ブリミルのお導きか…。わかった、入ってもらってくれ」
 オスマン氏は渡りに船だと考えた。向こうのほうから面会を、しかも至急に求めているとは――いったいどのような話をするのか、興味がわいたのである。
 オスマン氏の許可を受け、扉が開けられた。話題の使い魔が二人の前に姿を現した。
「ご多忙の中、お時間を割いていただき、まことにありがとうございます。私は、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔をしております、杉下右京と申します」
 右京は、かしこまって挨拶をした。
「私は、トリステイン魔法学院の学院長、オスマンじゃ」
「私は、当学院で教職を仰せつかっております、コルベールです。二つ名は、『炎蛇』のコルベールです」
 簡単に自己紹介してから、オスマン氏がしみじみとした調子で言った。
「そうか、君が…ミス・ヴァリエールが召喚した、人間の使い魔か。私に話したいことがおありのようじゃが、何用かな?」
「お聞きしたいことがいくつかございますが、まずは単刀直入に申し上げます。このハルケギニアと、別の世界をつなぐことができる方法をご存知ありませんでしょうか?」
 右京の突拍子もない質問に、二人は驚いたようだった。
「『別の世界』とは……いったいどういうことかね?」
「僕は、この世界の人間ではありません。ミス・ヴァリエールによって召喚された、別の世界の人間なのです」
 右京の言葉を聞いたときの二人の顔は違っていた。怪訝な顔をしたコルベールに対し、オスマン氏は厳しい目で右京を品定めするかのように見据えたのだった。


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